サノヤスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サノヤスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場するサノヤスホールディングスは、製造業向け、建設業向け、レジャーの3事業を柱とする持株会社です。2026年3月期は、建設需要の好調やM&Aによる新規子会社の業績寄与により、売上高268億円、営業利益17億円と大幅な増収増益を達成し、好調な業績トレンドを描いています。


※本記事は、サノヤスホールディングス株式会社の有価証券報告書(第15期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サノヤスホールディングスってどんな会社?


同社は製造業・建設業向け設備や遊園地遊戯機械等の製造・保守を手掛ける持株会社です。

(1) 会社概要


1911年に佐野安造船所として創業し、2011年に単独株式移転により持株会社サノヤスホールディングスを設立、東証一部に上場しました。2012年に事業別会社へ再編し、2021年には祖業である造船事業を譲渡。近年はM&Aを推進し、2025年に小寺電子製作所やヤマガタ共同を子会社化しています。

従業員数は連結で1,028名、単体で54名です。筆頭株主は事業会社である日本駐車場開発で、第2位は取引先で構成される持株会のサノヤス共栄会、第3位は主要取引金融機関である三井住友銀行となっています。

氏名 持株比率
日本駐車場開発 13.33%
サノヤス共栄会 8.10%
三井住友銀行 4.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長は上田孝氏、代表取締役社長は北逵伊佐雄氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
上田孝 代表取締役会長 三井住友銀行常務執行役員等を経て、サノヤス・ライド代表取締役社長等に就任。2021年3月より現職。
北逵伊佐雄 代表取締役社長 三井住友銀行執行役員、マツダクレジット代表取締役社長執行役員等を経て、2021年3月より現職。
花田恵二 取締役執行役員最高品質責任者(CQO) パナソニックエコシステムズ等を経て同社入社。サノヤステクノサポート代表取締役社長等を経て現職。


社外取締役は、森薫生(高麗橋中央法律事務所所長)、髙橋健二(元新日鐵住金代表取締役副社長)、副島寿香(有限責任監査法人トーマツパートナー)、山田茂善(太陽有限責任監査法人総括代表社員CEO)、山廣隆文(元三井住友銀行常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「製造業向け」「建設業向け」「レジャー」事業を展開しています。

(1) 製造業向け


製造業向けセグメントでは、ショットブラストマシンや産業機械部品、農機部品、乳化・攪拌装置などの製造・組立を行っています。また、純水・排水処理設備の設計・施工や全自動電線加工装置の開発・販売、環境・医療廃棄物処理装置の製造およびメンテナンスを幅広い顧客に提供しています。

収益源は、各設備の販売代金や保守点検費用などです。運営はサノヤス・エンジニアリング、サノヤス精密工業、みづほ工業、小寺電子製作所、サノヤス・エンテック、美之賀機械(無錫)などの子会社がそれぞれ担当領域を持ち、製品やサービスを提供しています。

(2) 建設業向け


建設業向けセグメントでは、機械式駐車装置や建設工事用エレベーターの製造・レンタル・保守を行っています。さらに、空調・給排水・衛生設備の設計・施工に加え、大規模施設や通信インフラ向けの動力制御盤・分電盤などの設計・製造、電気工事までを建設関連の顧客へ総合的に提供しています。

収益源は、設備販売、工事代金、レンタル料、保守費用などです。運営はサノヤス・エンジニアリング、サノヤス・エンテック、ハピネスデンキ、松栄電機、松栄電気システムコントロール、ヤマガタ共同の各子会社が担い、専門性を活かした事業を展開しています。

(3) レジャー


レジャーセグメントでは、観覧車やジェットコースターなど遊園地向け大型遊戯機械設備の開発・製造、施工、メンテナンスを手掛けています。また、自社製造の遊戯機械の提供にとどまらず、遊園地施設の運営や管理受託も行い、テーマパークを訪れる人々に楽しみと安全な空間を提供しています。

収益源は、遊戯機械設備の販売やメンテナンス費用、遊園地の施設運営・管理の受託料などです。運営はサノヤス・ライドおよびサノヤス・ライドサービスが担当し、設備導入から施設の日常的な運営までを全面的にサポートしています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は191億円から268億円へ右肩上がりで成長し、特に直近2期で大幅な増収を記録しています。経常利益も2億円から17億円へと急拡大し、利益率も1.1%から6.2%へ大きく改善するなど、着実な成長と収益力の強化が進む好調なトレンドにあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 191億円 201億円 234億円 250億円 268億円
経常利益 2億円 4億円 6億円 11億円 17億円
利益率(%) 1.1% 2.0% 2.7% 4.3% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 3億円 1億円 3億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は250億円から268億円へ増収となり、売上総利益も62億円から75億円に増加して粗利率が改善しました。営業利益は11億円から17億円へと大幅に伸び、営業利益率も4.3%から6.2%へ上昇しており、本業の収益性が高まっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 250億円 268億円
売上総利益 62億円 75億円
売上総利益率(%) 24.9% 28.0%
営業利益 11億円 17億円
営業利益率(%) 4.3% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が24億円(構成比41%)、賞与引当金繰入額が2億円(同3%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の建設業向けは、設備設計・施工等の需要が好調で増収となり、利益率も大きく改善して大幅増益を牽引しました。製造業向けも子会社化の効果等により増収増益でした。一方、レジャーは前期の大型案件完工の反動で減収となりましたが、利益率は改善し増益を確保しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
製造業向け 93億円 109億円
建設業向け 121億円 125億円
レジャー 37億円 34億円
連結(合計) 250億円 268億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で利益を生み出しつつ、将来の成長に向けた借入等による資金調達を行い、積極的な投資活動を展開している「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 15億円 34億円
投資CF -8億円 -39億円
財務CF -3億円 8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「確かな技術にまごころこめて ~人と技術を磨き、新たな顧客価値を創出する~」をグループ理念に掲げています。技術力に立脚したものづくりの会社として、従業員一人ひとりがこの理念を実践し、事業を通じて社会課題を解決することで、サステナブルな社会の実現に貢献し持続的な企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、グループビジョンを実現するために組織で大切にすべき価値観や行動を「5つの行動原則」として定めています。本業のものづくりとサービスへの専念、ユニークな製品の適正価格での提供、DXによる生産性向上、R&Dを通じた新製品の創出、人財教育を通じた強い人財の育成を重視し、日々の事業活動の指針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は新生サノヤス10周年にあたる2030年度の目標達成に向けた「中期経営計画<'24-'26>」を推進しています。技術進化とポートフォリオ経営深化により高収益基盤を構築し、さらなる成長トレンドの実現を目指しています。

* 売上高500億円
* 営業利益25億円
* 営業利益率5.0%、ROE10%以上
* 売上高300億円(2026年度計画)
* 営業利益10億円(2026年度計画)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、社会インフラの老朽化や少子高齢化による労働力不足、水資源確保などの社会課題解決を目指し、「ソリューションの強化」「イノベーションへの挑戦」「ESG経営の進化・深化」の3つを重点施策としています。産業インフラ・環境分野への積極投資やM&A、産学連携による新ビジネス創出、DX活用による事業基盤強化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは「人財重視経営」を推進し、多様な人財が能力を発揮できる環境整備に取り組んでいます。階層別研修や「ものづくり塾」などの各種教育プログラムに加え、新卒・キャリア採用を問わず先輩がサポートする「サノヤスファミリー制度」を展開しています。また、65歳定年制度の導入など、ベテラン層の活性化も図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.3歳 9.6年 6,034,616円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※パート・有期労働者の男女賃金差異は、対象者がいないため「-」としています。

また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(19.7%)、従業員一人当たりの平均有給休暇取得日数(15.5日)、特定保健指導受診率(54.0%)、ワークエンゲージメントスコア(49.4)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況及び事業環境の変動リスク


同社グループの事業は国内景気の動向に大きく左右されます。建設工事用エレベーターや電気設備は建設需要に、産業機械部品やショットブラストマシンなどは製造業の需要に、遊園地関連事業はレジャー需要に影響を受けるため、これらが低迷した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料、エネルギー価格の上昇リスク


地政学リスクの高まり等により、鉄や銅などの非鉄金属、原油・ナフサ由来の資材、電力等のエネルギー価格が上昇しています。受注生産を中心とする事業特性上、調達困難やコストアップが生じた場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 不採算工事の発生リスク


同社グループが施工する工事において、施工段階で想定外の追加工事や原価上昇等が発生し、不採算工事となった場合は工事損失引当金を計上することになり、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 減損会計の適用リスク


製造設備などの事業用資産や、買収に伴い計上したのれんについて、事業の収益性が悪化し回復が見込めない場合や資産の時価が著しく下落した場合には、減損損失を計上することになり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。