サノヤスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サノヤスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の持株会社。製造業向け(機械部品等)、建設業向け(機械式駐車場等)、レジャー(遊園地機械等)の3事業を展開しています。2021年の造船事業譲渡を経て事業構造を転換中。2025年3月期は建設需要の堅調さや大型案件の完工により、増収増益を達成しました。


※本記事は、サノヤスホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第14期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サノヤスホールディングスってどんな会社?


1911年創業の造船業を祖業とし、現在は機械式駐車装置や遊園地遊具等の製造・メンテナンス等を展開する企業グループです。

(1) 会社概要


同社グループは、1911年に佐野安造船所として創業し、100年以上の歴史を持ちます。1967年に大証二部、1974年に大証一部へ上場しました。2011年に単独株式移転により持株会社体制へ移行し、現在の商号となりました。2021年には祖業である造船事業を譲渡し、事業構造を大きく転換しています。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は960名、単体従業員数は54名です。筆頭株主は駐車場運営事業等を行う事業会社であり、第2位は取引会社で構成される持株会、第3位は同社のメインバンクである都市銀行です。特定のオーナー家に依存しない資本構成となっています。

氏名 持株比率
日本駐車場開発 11.51%
サノヤス共栄会 7.62%
三井住友銀行 4.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は北逵伊佐雄氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
上田  孝 代表取締役会長 三井住友銀行常務執行役員等を経て、2008年サノヤス・ヒシノ明昌(現サノヤス・ライド)入社。2011年同社代表取締役社長に就任し、2021年3月より現職。
北逵伊佐雄 代表取締役社長 三井住友銀行執行役員、SMMオートファイナンス(現マツダクレジット)社長等を経て、2019年同社副社長執行役員に就任。2021年3月より現職。
大門  淳 取締役常務執行役員 三井住友銀行を経て2014年同社入社。総合企画部専任部長、執行役員等を経て2022年6月より現職。サノヤス・ライド社長を兼務。
花田 恵二 取締役執行役員最高品質責任者(CQO) パナソニックエコシステムズを経て2016年同社入社。企画部専任部長、執行役員等を経て2025年4月より現職。サノヤステクノサポート社長を兼務。
久下 鉄也 取締役常勤監査等委員 三井住友銀行を経て2014年同社入社。内部統制推進部専任部長、内部統制・監査部長を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、森薫生(弁護士)、髙橋健二(元日鉄テクノロジー社長)、副島寿香(公認会計士)、山田茂善(太陽有限責任監査法人総括代表社員CEO)、山廣隆文(元SMBCオペレーションサービス会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「製造業向け」「建設業向け」および「レジャー」事業を展開しています。

(1) 製造業向け事業


ショットブラストマシン(表面処理装置)、各種産業機械部品、農機・特装自動車用部品、乳化・攪拌装置、環境装置、医療廃棄物処理装置などの製造・販売を行っています。主な顧客は製造業の企業であり、生産設備の効率化や環境対応に貢献する製品を提供しています。

収益は、製品の販売代金およびメンテナンス料から得ています。運営は主に、サノヤス・エンジニアリング(ショットブラスト)、サノヤス精密工業(部品加工)、みづほ工業および美之賀機械(無錫)有限公司(乳化・攪拌装置、水処理設備)、サノヤス・エンテック(環境装置)が行っています。

(2) 建設業向け事業


機械式駐車装置、建設工事用エレベーター、電気制御盤・配電盤等の製造・販売および空調・給排水・衛生設備の設計・施工を行っています。マンションやオフィスビル、データセンター、通信インフラ等の建設プロジェクト向けに製品・サービスを提供しています。

収益は、製品の販売・設置工事代金、レンタル料、およびメンテナンス料から得ています。運営は主に、サノヤス・エンジニアリング(駐車装置、エレベーター)、サノヤス・エンテック(設備工事)、ハピネスデンキ(制御盤)、松栄電機および松栄電気システムコントロール(通信インフラ向け配電盤)が行っています。

(3) レジャー事業


遊園地向けの遊戯機械(観覧車、ジェットコースター等)の製造・販売・メンテナンスおよび遊園地施設の運営受託を行っています。国内外のレジャー施設やディベロッパーを主な顧客としています。

収益は、遊戯機械の販売・設置工事代金、メンテナンス料、および施設の運営受託料から得ています。運営は主に、サノヤス・ライド(製造・メンテ)およびサノヤス・ライドサービス(運営受託)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期は造船事業譲渡に伴う損失等により大幅な赤字を計上しましたが、その後は黒字化し回復基調にあります。直近の2025年3月期は、建設需要の堅調さや大型案件の完工により、売上高は250億円に達し、経常利益も10億円を超えるなど、収益性が向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 446億円 191億円 201億円 234億円 250億円
経常利益 -52億円 2億円 4億円 6億円 11億円
利益率(%) -11.5% 1.1% 2.0% 2.7% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -37億円 4億円 4億円 5億円 12億円

(2) 損益計算書


売上高は増加傾向にあり、利益率も改善しています。特に営業利益率は前年の2.2%から4.3%へと大きく向上しました。売上総利益の増加に加え、販管費のコントロールや生産性の向上が寄与していると考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 234億円 250億円
売上総利益 53億円 62億円
売上総利益率(%) 22.8% 24.9%
営業利益 5億円 11億円
営業利益率(%) 2.2% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が22億円(構成比42%)を占めています。

(3) セグメント収益


建設業向け事業が大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。機械式駐車装置のリニューアルやメンテナンスが好調でした。レジャー事業は大型案件の完工により増収でしたが、運営受託での天候不順等の影響により減益となりました。製造業向け事業は前期の反動減等により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
製造業向け 101億円 93億円 10億円 9億円 9.5%
建設業向け 98億円 121億円 5億円 13億円 10.9%
レジャー 35億円 37億円 5億円 4億円 11.9%
調整額 -億円 -0億円 -14億円 -16億円 -
連結(合計) 234億円 250億円 5億円 11億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で得た現金を投資や借入返済に回している「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 16億円 15億円
投資CF -8億円 -8億円
財務CF -6億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「確かな技術にまごころこめて ~人と技術を磨き、新たな顧客価値を創出する~」をグループ理念としています。創業以来の技術力に立脚したものづくりの精神を継承し、事業を通じて社会課題を解決し、サステナブルな社会の実現と持続的な企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


グループビジョンを実現するため、組織で大切にすべき価値観として5つの行動原則を定めています。「本業のものづくりとサービスに専念し、お客様に信頼される会社を目指す」「ユニークな製品を適正価格で提供し、収益力の強化に努める」「DXにより仕事を効率化し、常に生産性を向上させる」「R&Dを通じて、新製品・新規事業を次々と創出する」「人財教育と互いの切磋琢磨により、強い人財を育成する」を基本方針として共有しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画<'24-'26>」では、新生サノヤス10周年にあたる2030年度の目標として、売上高500億円、営業利益25億円、営業利益率5.0%、ROE10%以上を掲げています。その通過点となる2026年度計画では、以下の数値を目標としています。

* 売上高:300億円
* 営業利益:10億円
* 営業利益率:3.3%
* ROE:6%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「ソリューションの強化」「イノベーションへの挑戦」「ESG経営の進化・深化」を重点施策として掲げています。産業インフラ・環境分野への積極投資、サノヤステクノサポートをハブとした技術開発、DXによる生産性向上を推進しています。また、M&Aによる事業領域拡大も進めており、2025年6月にはワイヤーハーネス加工機メーカーの小寺電子製作所を子会社化しました。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「強い人財を育成する」を行動原則の一つに掲げ、定期採用・キャリア採用・シニア採用の3方式で多様な人材を確保しています。入社後の階層別研修や「ものづくり塾」、技術人財開発センターによる専門教育に加え、公的資格取得奨励制度などでスキルアップを支援しています。また、65歳定年制の導入や再雇用制度の見直しにより、ベテラン人材の活躍推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 10.0年 5,701,459円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.1%
男女賃金差異(正規雇用) 76.1%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※データは提出会社のものです。非正規雇用の対象者がいないため記載はありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得日数(15.6日)、特定保健指導受診率(86.3%)、ワークエンゲージメントスコア(49.0)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不採算工事の発生に関するリスク


同社グループが施工する工事において、施工段階で当初の想定外の追加工事による原価増等が発生し、不採算工事となる可能性があります。この場合、工事損失引当金を計上することになり、経営成績及び財政状態に悪影響を与えるリスクがあります。

(2) 減損会計の適用によるリスク


製造設備等の事業用資産や、買収に伴い計上したのれんについて、時価の著しい下落や事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により減損損失を計上する可能性があります。これにより、同社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 経済状況、事業環境について


事業は国内景気の動向に大きく左右されます。建設需要や製造業の設備投資動向、レジャー需要の変動が業績に影響を与えます。また、海外展開している事業においては、現地の需要動向や法規制等の変更による影響を受ける可能性があります。

(4) 原材料、資材、エネルギー価格について


地政学リスクの高まり等による鉄や非鉄金属、エネルギー価格の上昇は、コストアップ要因となります。これら調達価格の上昇が製品価格へ十分に転嫁できない場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。