※本記事は、スターフライヤーの有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スターフライヤーってどんな会社?
同社は北九州空港を拠点に、高品質なサービスを提供する「感動のあるエアライン」です。
■(1) 会社概要
2002年に航空運送事業への新規参入を目的に設立され、2003年にスターフライヤーへ社名変更し北九州へ本社を移転しました。2006年に北九州-羽田線で国内定期便の運航を開始し、2007年には全日本空輸との共同運航を開始しています。2011年に東証二部(現スタンダード市場)へ上場を果たしました。
従業員数は単体で806名です。筆頭株主はANAホールディングスで、第2位はジャパネットホールディングス、第3位はエアトリです。いずれも航空運送事業の共同運航やサービス拡充の業務提携などで同社と密接な関係を持つ事業会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ANAホールディングス | 13.61% |
| ジャパネットホールディングス | 13.19% |
| エアトリ | 4.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は町田修氏が務めており、取締役12名中7名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 町田 修 | 代表取締役社長執行役員 | 1987年全日本空輸入社。財務部副部長、ANAウイングス取締役、香港支店長等を経て、2022年より現職。 |
| 橘 一雄 | 常務取締役執行役員 | 1974年全日本空輸入社。ムンバイ支店長、オペレーションコントロールセンター部長等を経て、2025年より現職。 |
| 古川 秀行 | 取締役執行役員 | 1987年全日空整備入社。2015年同社入社。整備本部企画管理部長、総務人事部長等を経て、2024年より現職。 |
| 湯浅 淳一郎 | 取締役執行役員 | 2005年同社入社。営業本部長、空港客室本部長、新規事業部長等を経て、2024年より現職。 |
| 南 聡子 | 取締役執行役員 | 2005年同社入社。整備本部機材計画課長、財務経理部長等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、横山美帆(清水謙法律事務所代表弁護士)、上山信一(慶應義塾大学名誉教授等)、小林建治(アドバンテッジパートナーズプリンシパル)、一木靖司(安川電機上席執行役員)、荒井伸(元国土交通省)、砂川浩(TOTO総務本部担当部長)、増田博之(全日本空輸アジア・オセアニア室部長等)です。
2. 事業内容
同社グループは、「航空運送事業」を主たる事業として展開しています。
■(1) 航空運送事業
国内定期便として北九州-羽田線などを運航するほか、国際定期便として北九州-台北線なども展開しています。また、不定期のチャーター便や、定期旅客便を活用した航空貨物運送も行い、ビジネスとレジャー双方の幅広い顧客に高品質な移動空間とサービスを提供しています。
主な収益源は、旅客からの運賃収入や手荷物料金などのほか、定期旅客便の貨物スペースを利用した貨物運送収入です。また、全日本空輸と国内線の共同運航を行っており、座席の一定割合を同社に卸売りすることでも安定的な収益を得ています。事業の運営は同社が行っています。
■(2) 附帯事業
航空運送事業に付随する様々なサービスを提供しています。機内の液晶モニターを活用した広告枠の販売や、所有する訓練施設・フライトシミュレーターの操縦体験プランの販売を行っています。また、自社のサービスノウハウを活かした教育・研修業務も受託しています。
収益源は、企業からの広告掲載料、施設や体験プランの利用者からの利用料、研修受託に伴う企業や団体からの受託料などです。運営は同社が行うほか、研修業務の一部については子会社のスターフライヤーブランディングビジネスが、予約受付等のコールセンター業務はスターフライヤービジネスサービスが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は新型コロナウイルスの影響から徐々に回復し、211億円から448億円へと連続して増収を達成しています。利益面では初期の赤字から黒字転換を果たし、2025年3月期に経常利益19億円を記録しましたが、直近の2026年3月期は為替の影響等により減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 211億円 | 323億円 | 400億円 | 429億円 | 448億円 |
| 経常利益 | -61億円 | -7億円 | 11億円 | 19億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | -28.6% | -2.2% | 2.6% | 4.5% | 1.5% |
| 当期利益 | -50億円 | 0.7億円 | 9億円 | 19億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益状況を見ると、売上高は前期比で増収となり448億円となりました。また、本業の儲けを示す営業利益も12億円から14億円へと堅調に推移し、営業利益率は3.1%に改善しています。航空需要の増加による旅客数の伸びが営業増益に寄与しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 429億円 | 448億円 |
| 営業利益 | 12億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が8億円(構成比21%)、給料手当等が6億円(同17%)を占めています。また、事業費(売上原価に相当)においては、燃油費及び燃料税が104億円(構成比26%)、航空機賃借料が59億円(同15%)と大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は航空運送事業を主な事業とする単一セグメントであるため、事業全体での収益増減を分析します。航空需要の増加や新規路線の就航などにより、全体として増収を達成しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 航空運送事業 | 429億円 | 448億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業型のキャッシュ・フローを描いています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 53億円 | 16億円 |
| 投資CF | -4億円 | -15億円 |
| 財務CF | -26億円 | -10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は企業理念として、「私たちは、安全運航のもと、人とその心を大切に、個性、創造性、ホスピタリティをもって、『感動のあるエアライン』であり続けます。」を掲げています。安全を至上の責務としつつ、他社にはない新たな価値を創造し、質の高い移動空間とサービスを提供することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は6つの「行動指針」を定め、安全運航への徹底やコンプライアンスの遵守を基礎としています。「自らの仕事に責任と誇りを持つ」「お客様の視点から発想し、創造する」「仲間とともに輝き、ともに挑戦する」といった価値観を重視し、感謝と謙虚さをもって人と社会に接する企業文化の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2026年度から2028年度を対象とする新たな中期経営戦略を策定しています。これまでの国内線を中心とした収益基盤の確立から成長フェーズへ移行し、東アジアを中心とした国際線ネットワークの拡大を軸に事業規模の拡大と収益力の強化を目指しています。安定的な収益源の多様化が目標として位置付けられています。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内線事業の収益性向上を図りつつ、国際線ネットワークの拡大や新規事業領域の開拓等による事業ポートフォリオの高度化を推進します。また、環境にやさしい最新鋭機材への更新を進めるなど、運航効率の向上や機材の最適化によるコスト構造の最適化に取り組みます。あわせて、採用の強化と教育の充実による人材育成も進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、理念への共感が高くチャレンジ精神を持つ「THE STARFLYER 人財」の確保と育成を重視しています。能力や適性を重視した人材登用を行い、中核人材の育成を推進するほか、フレックス勤務やテレワーク制度、育児介護休職制度の拡充により、多様な人材が能力を最大限に発揮できる働き方と環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。給与や賞与は、従業員が担う職務・役割に応じた等級と、その成果や行動に対する評価に基づいて決定されます。年齢や性別にかかわらず、役割と成果に応じた処遇を行うことで、従業員の意欲と能力の向上を図る制度となっています。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.7歳 | 8.6年 | 6,967,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 43.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 43.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 28.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.2%)、男性の平均育児休業取得日数(24日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気動向や国際情勢の変化
航空需要は景気動向に影響を受けやすく、不況によるレジャー需要や企業の出張抑制がビジネス旅客の減少につながる可能性があります。また、国際紛争や伝染病の流行による航空需要の急減や保安規制の強化、それに伴うコスト増が、同社の業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 燃料価格や為替相場の変動
航空運送事業は大量の航空燃料を使用するため、原油価格の変動による影響を強く受けます。また、航空機の賃借料や整備費などの一部が外貨建てで行われているため、為替相場の大幅な変動もリスクとなります。同社はデリバティブ取引を活用し、これらの価格変動リスクの軽減に努めています。
■(3) 特定機材への依存と受領計画の遅延
同社は使用する航空機やエンジンを限定して効率化と安全性向上を図っていますが、特定機種に重大な欠陥が発覚した場合には運航に支障をきたす恐れがあります。また、世界のサプライチェーン混乱により新機材の受領が遅延するリスクがあり、定期便の運航や路線展開の計画に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 専門的な人材の確保困難
安定的な運航と路線の拡大には、運航乗務員や整備士など専門的な資格を持つ人材の確保が不可欠です。航空業界における人材獲得競争が激化する中で、計画通りに人材を確保・育成できない場合や人件費が急騰した場合には、同社の事業運営や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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