ジャパンマテリアル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャパンマテリアル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する企業です。半導体や液晶工場の製造工程に不可欠な特殊ガス供給やインフラ管理を行うエレクトロニクス関連事業を主力としています。直近の業績は、売上高527億円、経常利益113億円と増収増益を達成しています。


※本記事は、ジャパンマテリアル株式会社 の有価証券報告書(第28期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジャパンマテリアルってどんな会社?


半導体・液晶関連工場向けの特殊ガス供給やインフラ構築・管理を一貫して提供する「トータルソリューションカンパニー」です。

(1) 会社概要


1997年に三重県四日市市で設立され、当初は半導体関連部品の販売を開始しました。その後、特殊ガス販売管理業務やメンテナンス事業へ進出し、2006年には東和商工を子会社化して特殊ガス供給装置製造などの機能を取り込みました。2011年に上場を果たし、現在はプライム市場に所属しています。M&Aや海外展開を通じて事業領域を拡大しています。

連結従業員数は1,653名、単体では429名体制です。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う日本カストディ銀行で、第2位は創業者で社長の田中久男氏、第3位は日本マスタートラスト信託銀行となっています。半導体産業を支える黒子として、安定した株主基盤のもと経営が行われています。

氏名 持株比率
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 11.34%
田中 久男 10.24%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は田中久男氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
田中 久男 代表取締役社長 2003年同社入社、営業統括本部長を経て、2006年3月より現職。ジャパンマテリアル国際奨学財団理事長も兼務。
田中 宏典 専務取締役執行役員営業本部長 2003年東和商工入社。同社執行役員生産管理本部長、北上事業所長、熊本事業所長などを経て、2025年4月より現職。
甲斐 哲郎 常務取締役上席常務執行役員PM本部長 2017年同社入社。執行役員営業本部長、常務取締役執行役員生産本部長などを経て、2024年6月より現職。
長谷 圭祐 取締役常務執行役員管理本部長 2013年同社入社。技術本部長、執行役員管理本部長などを経て、2024年6月より現職。
田中 智和 取締役常務執行役員技術本部長 1991年東和商工入社。同社代表取締役専務、エレクトロニクス事業部長などを経て、2024年6月より現職。
田村 安 取締役執行役員FS本部長 2018年同社入社。生産副本部長などを経て、2024年6月より現職。
坂口 好則 取締役執行役員グラフィックスソリューション事業部長 1998年同社入社。グラフィックスソリューション事業部長などを経て、2015年6月より現職。
矢内 信晴 取締役執行役員TFM本部長 2016年JMエンジニアリングサービス取締役。2017年同社入社、6月より現職。
喜多 照幸 取締役(常勤監査等委員) 日本工営常務執行役員などを経て、2011年同社常勤監査役、取締役管理本部長を歴任。2022年6月より現職。


社外取締役は、大島次郎(元東芝マテリアル社長)、杉山賢一(S-tation代表)、沼沢禎寛(元ジャパンディスプレイ代表取締役専務)、今枝剛(公認会計士今枝会計事務所所長)、高橋裕子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エレクトロニクス関連事業」「グラフィックスソリューション事業」および「太陽光発電事業」を展開しています。

エレクトロニクス関連事業


半導体や液晶工場向けに、特殊ガスの供給装置製造、配管設計施工、ガス販売管理、製造装置のメンテナンスなどのインフラサービスを提供しています。主な顧客は半導体・液晶デバイスメーカーであり、工場の立ち上げ(イニシャル)から稼働後の運営管理(オペレーション)までを一貫して支援します。

収益は、顧客からの装置販売代金、工事代金、管理業務委託料、メンテナンス料などから得ています。運営は、ジャパンマテリアルを中心に、東和商工(配管設計施工)、JMテック(ガス販売管理)、JMエンジニアリングサービス(装置メンテナンス)などのグループ会社が連携して行っています。

グラフィックスソリューション事業


デジタルサイネージプレーヤーやマルチディスプレイコントローラーなどのIT・映像関連機器の販売、および関連ソフトウェアの開発・販売を行っています。商業施設、交通機関、放送業界などが主な顧客で、製品の用途開発や保守も手掛けています。

収益は、顧客への機器やソフトウェアの販売代金、コンテンツ制作費などから得ています。運営は主にジャパンマテリアルが機器販売を行い、シーセットがソフトウェア開発、バック・ステージが映像コンテンツ制作を担当しています。

太陽光発電事業


エネルギーの安定供給と環境保護への貢献を目的に、太陽光発電所の運営を行っています。三重県内などで発電所を稼働させています。

収益は、発電した電力の売電収入により得ています。運営はジャパンマテリアルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は長期的に拡大傾向にあり、直近では500億円を超える規模に成長しています。経常利益も高い水準を維持しており、利益率は概ね20%前後で推移しています。当期は売上高、利益ともに前期を上回り、堅調な業績を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 352億円 380億円 465億円 486億円 527億円
経常利益 89億円 97億円 113億円 82億円 113億円
利益率(%) 25.2% 25.6% 24.3% 16.9% 21.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 51億円 52億円 68億円 46億円 57億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は20%台後半から30%台へと改善傾向にあります。営業利益も大幅に増加し、高い収益性を確保しています。コストコントロールと売上拡大がバランスよく機能していることが窺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 486億円 527億円
売上総利益 120億円 162億円
売上総利益率(%) 24.7% 30.7%
営業利益 78億円 112億円
営業利益率(%) 16.0% 21.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比27.1%)、役員報酬が6億円(同12.7%)、減価償却費が5億円(同10.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の「エレクトロニクス関連事業」は、半導体工場の稼働率改善やトータルファシリティマネジメントの拡大により増収増益となり、全社業績を牽引しました。「グラフィックスソリューション事業」も積極的な営業活動により大幅な増収増益を達成しています。「太陽光発電事業」は概ね横ばいで推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
エレクトロニクス関連事業 469億円 506億円 88億円 122億円 24.1%
グラフィックスソリューション事業 15億円 19億円 2億円 4億円 18.9%
太陽光発電事業 2億円 2億円 1億円 1億円 58.0%
その他 2億円 2億円 0億円 0億円 6.7%
調整額 - - -15億円 -15億円 -
連結(合計) 486億円 527億円 78億円 112億円 21.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 42億円 142億円
投資CF -51億円 -27億円
財務CF -21億円 -21億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「技術を磨き 産業を支え 未来を拓く」を企業理念として掲げています。安全・安心を基軸とした「安全最優先」の意識のもと、質の高い商品やサービスを提供し、顧客、地域、社員が共に繁栄し成長する「Win-Win-Win(トリプルウィン)」の関係構築を目指しています。

(2) 企業文化


「人」「環境」「地域」「世代」「技術」の5つのつながりを大切にする経営ビジョンを持っています。多様な人材が活躍できる職場環境の整備、環境負荷の削減、地域社会との共生、世代を超えた助け合い、そして最先端技術の継承と創造を重視する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


事業活動における収益性の向上を図るため、「売上高営業利益率」および「連結営業利益」を重視する経営指標として掲げています。また、中長期的には日の丸半導体の復活に黒子として貢献することを目標とし、半導体工場の立ち上げから運営までを一貫して引き受けることで、顧客とのWin-Win関係を築くことを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


半導体工場の立ち上げ(イニシャル)から運営(オペレーション)までを担う体制を強化し、安定収益基盤の拡大を図る戦略です。特に、エンジニアの確保・育成を最重要課題とし、自社教育による人材育成を推進しています。また、トータルファシリティマネジメントや半導体装置メンテナンスの展開により、既存分野での深耕と新分野への拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人をつなぐJM」をビジョンに掲げ、多様な人材が活躍し、仕事への充実感とゆとりある人生を両立できる環境整備を進めています。特に、半導体関連の専門人材確保のため、新卒だけでなくキャリア採用やシニア採用(Work by 3G)にも注力し、実践を通じた教育でプロフェッショナルを育成する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.4歳 7.0年 5,902,362円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.0%
男性育児休業取得率 45.5%
男女賃金差異(全労働者) 71.3%
男女賃金差異(正規雇用) 79.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 58.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規採用における女性採用比率(16.0%)、有給休暇取得率(85.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定業界への依存


同社グループの売上の大部分はエレクトロニクス関連事業が占めており、特に半導体および液晶関連市場の動向に強く影響を受けます。これらの市場は需給バランスや価格変動が激しく、顧客の設備投資動向によっては同社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の取引先への取引依存


主要顧客であるキオクシア株式会社グループへの売上依存度が高く、連結売上高の4割近くを占めています。同社グループは長期安定取引の継続や新規顧客開拓に努めていますが、主要顧客との取引が縮小した場合、業績に重要な影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保・育成


事業拡大に伴い、特にエンジニアなどの専門人材の確保が重要な課題となっています。外部からの採用が困難な状況下で、自社教育による育成を進めていますが、十分な人材を確保・育成できない場合、事業展開や競争力に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。