ジャパンマテリアル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャパンマテリアル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャパンマテリアルは、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場しています。半導体や液晶関連工場向けの特殊ガス供給等を行うエレクトロニクス関連事業を主力とします。直近の業績では、主要顧客である半導体メーカーの設備投資拡大を背景に売上高・各段階利益ともに増加し、増収増益を達成しています。


※本記事は、ジャパンマテリアル株式会社の有価証券報告書(第29期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ジャパンマテリアルってどんな会社?


同社グループは、エレクトロニクス関連事業を主力に展開する企業です。

(1) 会社概要


1997年の設立後、1999年に特殊ガス販売管理業務を開始しました。2006年に特殊ガス供給装置製造や供給配管設計施工事業を譲り受け、インフラ事業を強化しています。2011年に東証二部・名証二部へ上場し、2013年に第一部へ指定されました。その後も積極的なM&A等を通じて半導体製造装置メンテナンスや技術サービスへと事業領域を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結で1,646名、単体で455名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長の田中久男氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は取締役の田中智和氏となっています。

氏名 持株比率
田中久男 10.24%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.74%
田中智和 8.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長執行役員を田中宏典氏が務めています。また、取締役15名のうち6名が社外取締役であり、社外取締役比率は40.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
田中宏典 代表取締役社長執行役員 2006年入社。生産管理本部長、北上事業所長などを歴任。2024年に常務取締役、2025年に専務取締役を経て、2026年4月より現職。
田中久男 代表取締役会長 2003年入社し営業統括本部長に就任。2006年に代表取締役社長に就任し、同社の成長を牽引。2026年4月より現職。
甲斐哲郎 常務取締役社長付 2017年入社。執行役員営業本部長、執行役員PM本部長などを歴任。2024年に常務取締役上席常務執行役員を経て、2026年4月より現職。
田村安 取締役常務執行役員FS本部長 2018年入社。営業本部プロジェクト推進部長、生産副本部長を経て、2024年に取締役執行役員FS本部長に就任。2025年6月より現職。
長谷圭祐 取締役社長付 2013年入社。技術本部長、管理本部長などを歴任し、2024年に取締役常務執行役員管理本部長に就任。2026年4月より現職。
田中智和 取締役社長付 1991年東和商工入社。管理本部長、技術本部長、エレクトロニクス事業部長などを歴任し、2026年4月より現職。東和商工の社長も兼任。
坂口好則 取締役執行役員グラフィックスソリューション事業部長 1998年入社。グラフィックスソリューション事業部長等を経て、2013年に執行役員に就任。2015年6月より現職。
矢内信晴 取締役社長付 2016年JMエンジニアリングサービス取締役に就任。2017年に同社へ入社し、取締役執行役員TFM本部長を経て、2026年4月より現職。
喜多照幸 取締役(常勤監査等委員) 1971年日本工営入社。同社常務執行役員等を経て、2011年に同社常勤監査役に就任。2012年に取締役管理本部長などを歴任後、2022年6月より現職。


社外取締役は、大島次郎(元東芝マテリアル社長)、杉山賢一(S-tation社長)、沼沢禎寛(元ジャパンディスプレイ社長)、松原幸男(元エア・ウォーター副社長)、今枝剛(公認会計士今枝会計事務所所長)、高橋裕子(and Legal 弁護士法人弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エレクトロニクス関連事業」「グラフィックスソリューション事業」「太陽光発電事業」を展開しています。

エレクトロニクス関連事業


半導体や液晶関連工場向けに、製造工程で不可欠な特殊ガスを主軸としたインフラ事業を展開しています。特殊ガスの供給装置の開発・製造から供給配管の設計・施工、さらにガスの販売や管理業務に至るまで一貫したサービスを提供しています。

収益源は、特殊ガス供給装置や配管施工によるイニシャル収益と、ガス販売やメンテナンス、超純水・薬液等のトータルファシリティマネジメントによる継続的なオペレーション収益です。同社やJMテックなどのグループ各社が運営しています。

グラフィックスソリューション事業


デジタルサイネージプレーヤーやマルチディスプレイコントローラーなどのIT・映像関連機器の販売、放送業界向けのソフトウェア販売などを行っています。店舗や公共施設、医療機関、社会インフラなどで使用される映像表示システムを提供しています。

収益源は、海外メーカーから仕入れた映像関連機器やソフトウェアの販売代金、システム開発・コンテンツ制作費などです。同社が機器等の販売を行い、シーセットがソフトウェア開発、バック・ステージが映像コンテンツ制作を担っています。

太陽光発電事業


エネルギーの安定供給と地球温暖化対策などの環境保護に貢献するため、太陽光発電事業を展開しています。三重県内等で太陽光発電所を稼働させ、再生可能エネルギーの普及に取り組んでいます。

収益源は、太陽光発電システムによって発電した電力を電力会社等へ販売することによる売電収入です。本事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、順調な事業拡大が伺えます。経常利益も一時的な落ち込みがあったものの、その後は回復し、直近では過去最高水準を記録しています。利益率も高い水準を維持しており、安定した収益基盤と高い成長性を両立していることがわかります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 380億円 465億円 486億円 527億円 580億円
経常利益 97億円 113億円 82億円 113億円 151億円
利益率(%) 25.6% 24.3% 16.9% 21.5% 26.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 52億円 68億円 46億円 57億円 84億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。特に営業利益率が上昇しており、コストコントロールや高付加価値サービスの提供により、本業の収益性が一段と高まっていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 527億円 580億円
売上総利益 162億円 198億円
売上総利益率(%) 30.7% 34.1%
営業利益 112億円 146億円
営業利益率(%) 21.2% 25.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が14億円(構成比28.1%)、役員報酬が7億円(同12.8%)、減価償却費が6億円(同11.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の「エレクトロニクス関連事業」は、半導体工場の設備投資拡大が継続し、特殊ガス供給装置や配管施工などのイニシャル部門が好調に推移したことで大幅な増収となりました。「グラフィックスソリューション事業」は放送局向け案件の減少等により減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
エレクトロニクス関連事業 506億円 560億円
グラフィックスソリューション事業 19億円 17億円
太陽光発電事業 2億円 2億円
連結(合計) 527億円 580億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で生み出したキャッシュを元に、投資や借入金の返済等を賄っている健全な状態(健全型)です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 142億円 96億円
投資CF -27億円 -64億円
財務CF -21億円 -26億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.1%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「技術を磨き 産業を支え 未来を拓く」を企業理念として掲げています。「安全最優先」の意識のもと、顧客の期待を超えるサービスを提供し、取引先や地域社会と共に繁栄する関係を築くことを重視しています。社員一人ひとりが競い合い、協力しながら成長する「Win-Win-Win(トリプルウィン)」に到達することを目指し、持続可能な社会発展に貢献するとしています。

(2) 企業文化


同社は、「人」「環境」「地域」「世代」「技術」の5つのつながりを大切にする経営ビジョンを掲げています。多様な人材が活躍できる仕組みや職場環境を整え、環境負荷の削減だけでなく事業を通じて環境価値を生み出す活動を重視しています。また、地域活性化のため共に発展していくことや、世代を超えて助け合いながら働くこと、技術の継承を企業の取り組みの軸とする文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業活動における収益性の向上を図るため、企業が本業で稼ぐ力を表す「売上高営業利益率」および「連結営業利益」を重視する経営指標として定めています。また、役員報酬のうち「業績連動報酬」については、連結営業利益の結果に基づいて算出される仕組みとしており、本業の収益拡大に組織全体でコミットする体制を敷いています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社の中長期的な目標は、半導体の国内生産を支える「黒子」として貢献することです。半導体生産工場の立ち上げから運営までを引き受け、半導体メーカーが開発・設計に注力できる関係性を築くことを戦略としています。そのための最重要課題として優秀なエンジニアの確保を掲げ、自社教育による育成を進めています。また、トータルファシリティマネジメント等の展開により安定収益基盤の強化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は事業の持続的成長のため、人的資本を重要な経営基盤と位置づけています。半導体製造工場を一貫して支える体制強化に向け、専門性の高い技術者やオペレーション人材の確保・育成を最重要課題とし、新卒採用に加えて多様な業種からのキャリア採用やシニア層の登用を進めています。また、ダイバーシティ推進や健康経営に注力し、安心して働ける職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.5歳 7.2年 6,374,052円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.9%
男性育児休業取得率 46.2%
男女賃金差異(全労働者) 76.8%
男女賃金差異(正規雇用) 79.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(89.8%)、新規採用における女性採用比率(8.5%)、健康診断受診率(99.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定業界への依存


同社グループはエレクトロニクス関連事業が連結売上高の96.7%を占めており、主に半導体および液晶関連工場向けのサービスを提供しています。半導体市場は短期的な好不況の振幅が大きく、主要顧客の設備投資動向によって急激な需要変動が生じる可能性があるため、変化への対応が遅れた場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の取引先への依存


同社の連結売上高において、主要顧客であるキオクシアグループへの売上高が35.0%と大きな割合を占めています。同社は長期安定取引の継続と新規顧客の開拓に努めていますが、何らかの事情によりこれら取引先との取引が縮小された場合、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 為替相場変動による影響


同社グループは海外企業から材料・商品・製品の輸入および海外への輸出を行っています。当該取引に関連して、為替予約取引等を利用して為替リスクのヘッジに継続的に取り組んでいますが、急激な為替の変動に対して適切に対処できない場合、同社の業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。