ライフネット生命保険 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ライフネット生命保険 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するライフネット生命保険は、インターネットを主な販売チャネルとする生命保険事業を展開しています。分かりやすく低廉な商品提供を強みとし、パートナー企業との協業も推進しています。業績は好調で、直近では保険収益と税引前利益がともに増加する増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、ライフネット生命保険の有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

1. ライフネット生命保険ってどんな会社?


インターネットを主軸とした生命保険事業を展開し、お客さま視点の分かりやすい保険商品を提供する企業です。

(1) 会社概要


2006年に生命保険準備会社としてネットライフ企画を設立し、2008年に現社名へ商号変更のうえ生命保険の販売を開始しました。2012年に株式上場を果たし、その後KDDIやマネーフォワードなど様々な異業種企業との協業を拡大しています。2025年には東京証券取引所プライム市場へ上場市場区分を変更しました。

現在の従業員数は連結・単体ともに242名です。筆頭株主は業務提携先であるKDDIのグループ会社であるauフィナンシャルホールディングスで、第2位および第3位にはそれぞれ外資系金融機関およびファンドが名を連ねています。

氏名 持株比率
auフィナンシャルホールディングス 18.32%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL (常任代理人 ゴールドマン・サックス証券) 14.29%
ARIAKE MASTER FUND (常任代理人 立花証券) 7.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長は横澤淳平氏が務めており、社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
横澤淳平 代表取締役社長 NTTデータネッツ(現 NTTデータ フィナンシャルテクノロジー)を経て同社に入社。営業本部KDDI事業部長や上級執行役員等を歴任し、2025年6月より現職。
河﨑武士 取締役副社長 シティバンク、エヌ・エイ在日支店等を経て同社に入社。経営企画部長や上級執行役員を務め、2025年6月より現職。


社外取締役は、長谷部潤(東京リレーションズ代表取締役社長等)、阿部絵美麻(宮益坂ザ・ファーム法律会計事務所弁護士)、山下知之(エーオンソリューションズジャパン代表取締役Co-CEO・指名報酬委員長)、原夏代(デロイト トーマツ グループ パートナー等)です。

2. 事業内容


同社グループは、生命保険事業を展開しています。

個人保険事業


インターネットを通じた個人向けの生命保険商品を提供しており、死亡保険、医療保険、がん保険、就業不能保険などのシンプルで分かりやすい保障内容の保険を販売しています。初めてウェブサイトを訪れる顧客にも適した保障を選べるよう工夫し、ストレスフリーな顧客体験を追求しています。

収益源は契約者から受け取る保険料です。主な販売チャネルとして、同社が直接運営するウェブサイトを通じたダイレクトビジネスと、KDDIやマネーフォワードなどのパートナー企業の経済圏に組み込んで展開するパートナービジネスがあり、いずれも同社が運営を行っています。

団体信用生命保険事業


住宅ローン利用者に向けた団体信用生命保険を提供しています。提携する銀行の住宅ローン利用者が、死亡や高度障害などの万が一の事態に直面した際に、住宅ローン残高相当額を保険金として充当する保障内容となっています。

収益源は提携金融機関から受け取る団体信用生命保険の保険料です。auじぶん銀行に向けて提供を行っているほか、新たに京都信用金庫との業務提携契約を締結するなど提携先銀行の拡大を見据えており、同社が事業の運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績をみると、税引前利益および当期利益は一貫して右肩上がりで推移しており、堅調な利益成長を実現しています。特に直近の事業年度においては、大幅な増益を達成し、安定した収益拡大の傾向が読み取れます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 - - - -
税引前利益 53億円 83億円 92億円 114億円
利益率(%) - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 36億円 57億円 60億円 80億円

(2) 損益計算書


損益計算書における直近の利益動向を確認すると、前期の税引前利益が赤字であったのに対し、当期は黒字へと転換しています。親会社の所有者に帰属する当期利益も前期からさらに増加しており、収益性の改善が進んでいることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 - -
営業利益率(%) - -

(3) セグメント収益


セグメント別の売上動向をみると、主力である個人保険事業が安定した成長を牽引する一方で、団体信用生命保険事業も住宅ローン利用者の増加等により順調に収益を拡大させており、両事業ともに前事業年度から増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
個人保険 243億円 264億円
団体保険 58億円 80億円
連結(合計) 301億円 344億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型に分類されます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 73億円 88億円
投資CF -143億円 -122億円
財務CF -2億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も21.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供することで、お客さま一人ひとりの生き方を応援する」を経営理念に掲げています。また、「生命保険の未来をつくるオンライン生保のリーディングカンパニー」を目指す姿とし、デジタルテクノロジーを活用しながら一貫して顧客視点で商品・サービスを提供し続けることで、「安心して、未来世代を育てられる社会」の実現を志向しています。

(2) 企業文化


「ライフネットの生命保険マニフェスト」を基軸とした経営を行っています。「正直に、わかりやすく、安くて、便利に。」を行動の原点とし、顧客の声に耳を傾けること、顔の見える会社にすることなどを定めています。また、大切にする価値観「Lifenetter Values」として、顧客起点の「Manifesto driven」、自ら動く「Ownership」、多様な仲間を力にする「Teamwork」、変わり続ける「Growth mindset」、明るく楽しく取り組む「Be ambitious」を掲げています。

(3) 経営計画・目標


同社は2028年度を最終年度とする5年間の中期計画を策定し、中長期的な企業価値向上のために以下の経営目標および財務目標を掲げています。

* 包括資本(Comprehensive Equity)の2,000億円~2,400億円到達
* 株価3,000円以上
* 1株当たり包括資本成長率10%程度

(4) 成長戦略と重点施策


事業の成長戦略として、3つの重点領域に取り組んでいます。AI等のITサービスを活用して利便性を追求する「Tech & Services」、現代の価値観に合わせてブランドを再構築する「Rebranding」、そしてパートナー企業と協調して保険やサービスをシームレスに届ける「Embedded」を推進しています。ダイレクトビジネスの成長に加え、パートナー経済圏への保険ビジネスの組み込みや、銀行向け団体信用生命保険の拡大を通じ、オンライン生保市場における圧倒的な地位の確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を企業価値向上の源泉と捉え、マテリアリティに掲げる「多様性を大切にする」と「成長の機会をつくる」を軸とした人材育成・社内環境整備方針を定めています。多様な知見・経験・アイデアを持つ従業員が尊重し合える組織を目指すとともに、挑戦を通じた個人の成長を事業の成長へと結びつける好循環の創出を図っています。また、中期計画を支える基盤として、既存の枠組みを超えた全社横断的な組織体制への移行と、創業からのマニフェストを基軸とした組織風土の維持・強化を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.8歳 6.3年 8,319,851円


※平均年間給与は株式報酬制度の特別奨励金、選択制確定拠出年金の選択金、賞与及び時間外手当等を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は従業員規模が300人以下のため、男女賃金差異に関する公表義務の対象ではなく、有報には記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(総合)(72)、意思決定者に占める女性の割合(27.3%)、産休・育休後の復帰率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) オンライン生保市場の競争激化

同社グループは、国内生保、外資系生保、大手金融機関の保険子会社に加え、異業種からの新規参入プレイヤーとの競争に直面しています。主力である個人保険事業のダイレクトビジネスにおいて、価格やサービスでの優位性を維持できない場合、新契約の減少や解約の増加を招き、期待される規模の拡大や収益性の向上が実現できず、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 広告宣伝等のマーケティング投資効果

生命保険業では、契約前後の短期間に広告宣伝費が集中的に発生します。同社は認知度向上や新契約獲得のためにテレビCMやウェブ広告などに積極的に資金を投下していますが、消費者ニーズの変化等により期待した営業効果が得られない場合、顧客獲得効率が悪化し、商品の適正な収益性が確保できなくなることで、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) インターネット販売を支える情報システムの安定性

インターネットを主な販売チャネルとするため、保険の販売から契約管理までシステムに大きく依存しています。サイバー攻撃、災害、人為的ミス等によるシステム障害や、新システム導入時のトラブルが発生した場合、サービスの停止による機会損失に加え、社会的信用の失墜や行政処分につながり、事業継続や業績に重大な支障をきたすおそれがあります。

(4) 顧客情報等のセキュリティ管理

オンラインで生命保険事業を展開する性質上、多数の顧客の機密情報や個人情報を電磁的に保有しています。役職員や外部委託先による情報の紛失・不正利用、または外部からの不正アクセス等による情報漏洩が発生した場合、損害賠償負担等の直接的な経済的損失だけでなく、ブランド価値の毀損や信用の低下を招き、中長期的な事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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