日本軽金属ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本軽金属ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するアルミニウム総合メーカーです。素材から加工製品まで幅広い事業を展開しています。直近の業績は、売上高5,502億円(前期比5.1%増)、経常利益198億円(同4.0%増)と増収増益で推移し、原材料価格高騰の影響を受けつつも価格改定等で利益を確保しました。


※本記事は、日本軽金属ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第13期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本軽金属ホールディングスってどんな会社?


アルミニウム素材から加工品まで手掛ける国内唯一のアルミニウム総合メーカーです。多角的な事業展開が特徴です。

(1) 会社概要


1939年に日本軽金属が設立され、1940年にアルミニウム生産を開始しました。1949年には東京証券取引所等に上場を果たします。2012年10月、純粋持株会社体制への移行に伴い日本軽金属ホールディングスを設立し、東京証券取引所市場第一部に上場しました。グループ再編を経て、現在は多岐にわたるアルミニウム関連事業を展開しています。

連結従業員数は12,318名、単体では48名が在籍しています。大株主の構成は、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっており、機関投資家が上位を占めています。第3位には従業員持株会である日軽ケイユー会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.76%
日本カストディ銀行(信託口) 6.72%
日軽ケイユー会 3.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は岡本一郎氏が務めています。取締役9名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
岡本 一郎 取締役社長(代表取締役) 1981年日本軽金属入社。同社常務、専務を経て、2013年同社代表取締役社長に就任。2015年6月より現職。
岡本 泰憲 取締役社長全般補佐 1980年日本軽金属入社。同社専務、副社長執行役員を歴任。日本軽金属ホールディングスでは2012年執行役員、2013年取締役を経て2018年より現職。
朝来野 修一 取締役社長全般補佐、品質保証統括室長 1988年日本軽金属入社。日軽エムシーアルミ社長、日本軽金属常務などを経て、2024年日本軽金属ホールディングス上席執行役員。2025年4月より現職。
松平 弘之 取締役社長全般補佐、改革推進室長、コーポレートスタッフ統括室長 1989年新日軽入社。日本軽金属常務、日本軽金属ホールディングス改革推進室長などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、林良一(元三菱商事顧問)、土屋恵子(元アデコ取締役)、田中達也(元富士通社長)、細野哲弘(元特許庁長官・JECC社長)、三宅潔(元みずほ銀行副頭取)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アルミナ・化成品、地金」「板、押出製品」「加工製品、関連事業」および「箔、粉末製品」事業を展開しています。

アルミナ・化成品、地金


アルミナ、水酸化アルミニウム、各種化学品およびアルミニウム合金などを製造・販売しています。素材メーカーとしての基盤となる事業であり、幅広い産業分野に素材を供給しています。

収益は、顧客への製品販売による対価が主な源泉です。運営は、日本軽金属、日本電極、日軽エムシーアルミなどが担っています。また、海外拠点としてタイや中国、インド、アメリカなどにも製造・販売拠点を有しています。

板、押出製品


アルミニウム板およびアルミニウム押出製品を製造・販売しています。これらは自動車部品、鉄道車両、電子材料、建材など多様な用途に使用される中間製品です。

収益は、製品の販売代金および加工賃などから得ています。運営は、日本軽金属、理研軽金属工業、日軽金アクト、日軽形材などが担当しています。タイや中国にも関連会社を展開し、グローバルな需要に対応しています。

加工製品、関連事業


トラック架装(荷台部分)、冷凍・冷蔵庫用パネル、景観製品などのアルミニウム加工製品のほか、運送、情報処理等のサービスを提供しています。最終製品に近い分野での付加価値提供を行っています。

収益は、加工製品の販売や据付工事、運送等のサービス提供対価から得ています。運営は、日本軽金属、日軽パネルシステム、日本フルハーフ、日軽エンジニアリング、日軽物流などが担当しており、多岐にわたる子会社が事業を推進しています。

箔、粉末製品


アルミニウム箔、アルミニウムパウダー・ペースト製品を製造・販売しています。食品包装や電子部品、塗料用素材など、生活に身近な分野から産業用まで幅広く利用されています。

収益は、各種箔製品や粉末製品の販売対価が中心です。運営は、主に東洋アルミニウムが担っています。中国、アメリカ、インド、欧州など世界各地に拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、第13期には5,502億円に達しました。経常利益は第11期に一時落ち込みましたが、その後回復し、第13期は198億円となっています。当期純利益も回復基調にあり、第13期は124億円を計上しました。全体として売上規模を拡大させつつ、利益水準の回復・安定化を図っている状況です。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,326億円 4,866億円 5,170億円 5,237億円 5,502億円
経常利益 240億円 229億円 89億円 190億円 198億円
利益率(%) 5.6% 4.7% 1.7% 3.6% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 34億円 168億円 72億円 99億円 124億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約17%前後で安定しており、営業利益率は3.5%から4.0%へと改善しました。コストコントロールと売上拡大により、営業利益額も増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,237億円 5,502億円
売上総利益 886億円 953億円
売上総利益率(%) 16.9% 17.3%
営業利益 182億円 217億円
営業利益率(%) 3.5% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が231億円(構成比31.4%)、荷造発送費が132億円(同18.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで売上が増加しました。特に「板、押出製品」は売上の伸び率が高くなっています。「加工製品、関連事業」が最大の売上規模を維持しており、次いで「アルミナ・化成品、地金」が続いています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
アルミナ・化成品、地金 1,558億円 1,655億円
板、押出製品 948億円 1,036億円
加工製品、関連事業 1,678億円 1,722億円
箔、粉末製品 1,053億円 1,089億円
連結(合計) 5,237億円 5,502億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本軽金属ホールディングスは、長期借入による収入を財務活動の主な源泉としています。営業活動では、非資金損益項目が運転資金の増加を上回り、収入を生み出しました。一方、投資活動では、主に有形固定資産の取得により支出が発生しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 380億円 121億円
投資CF -239億円 -191億円
財務CF -110億円 62億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「アルミニウムを核としたビジネスの創出を続けることによって、人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していく」ことを経営理念として掲げています。この理念のもと、社会課題の解決と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


異なる事業ユニットを市場視点で横断的につなぐ「横串」体制を基盤とした「チーム日軽金」としての一体感を重視しています。全従業員が「お客様のニーズを探索し、解決に導く」マインドを持ち、「探って、創って、作って、売る」という一連の流れを担うことで価値創造を行う文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2023年度から2025年度までの中期経営計画を推進しており、最終年度である2026年3月期の数値目標を掲げています。

* 売上高:5,900億円
* 営業利益:300億円
* 経常利益:300億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:200億円
* ROIC:5.5%

(4) 成長戦略と重点施策


「新生チーム日軽金への取組み」と「社会的な価値の創出に寄与する商品・ビジネスの提供」を基本方針とし、事業グループ制への移行により新商品開発やグループ連携を強化しています。また、カーボンニュートラルへの対応を重要課題とし、アルミのリサイクル技術確立や脱炭素価値の提供を推進しています。デジタル技術を活用した業務改革にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様な価値観を尊重し、長期的かつグローバルな視点で人財を育成する」を基本方針としています。採用では多様な価値観を理解し、チャレンジ精神を持つ人材を求めています。育成面では、グループ中核人財の計画的育成や、従業員の自律的成長を促すための教育プログラム整備を進めており、グループ全体での研修体制強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 50.7歳 21.6年 9,145,380円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 63.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.0%
男女賃金差異(正規雇用) 73.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 78.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(3.42)、総合職の女性定期採用比率(19.2%)、新任管理職層研修の修了率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢及び景気動向等


製品需要は販売国・地域の経済情勢の影響を受けます。特に日本国内の景気後退による需要縮小や顧客ニーズの変化は、販売減少等を通じて財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 為替相場の変動


外貨建ての売上、費用、資産、負債等は邦貨換算されるため、為替相場の変動が影響します。為替予約等によるヘッジを行っていますが、為替変動が業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 金利動向


借入金には変動金利のものが含まれており、支払利息は金利変動の影響を受けます。一部はデリバティブ取引でヘッジしていますが、金利変動が財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) 商品市況変動等


主要原材料であるアルミニウム地金等の価格変動リスクがあります。価格変動分の製品価格への転嫁を進めていますが、完全に排除できるわけではなく、特に加工製品等では転嫁が困難な場合があり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

日本軽金属ホールディングスの転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

日本軽金属ホールディングスの2026年3月期3Q決算は、営業利益20.2%増と好調。トラック架装や自動車部品事業がV字回復し、放熱部材などの成長領域も伸長しています。「なぜ今、日本軽金属ホールディングスなのか?」、転職希望者がどの事業でどんな役割を担えるのか、最新決算から整理します。