※本記事は、日本軽金属ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第14期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本軽金属ホールディングスってどんな会社?
アルミナ、化成品、板、押出製品から加工製品まで、アルミニウムの総合的なソリューションを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1939年3月の日本軽金属設立に遡ります。その後、1963年10月にいすゞ自動車と折半出資で日本フルハーフを設立、1999年10月に東洋アルミニウムを吸収合併するなど事業を拡大しました。2012年10月に持株会社である日本軽金属ホールディングスを設立し、東京証券取引所に上場しています。
現在の同社グループは連結従業員数12,123名、単体従業員数61名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行、第3位は日軽ケイユー会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.78% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.12% |
| 日軽ケイユー会 | 3.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は朝来野修一が務めており、取締役9名中5名が社外取締役で占められています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 朝来野修一 | 取締役社長(代表取締役)品質保証統括室長 | 1988年日本軽金属入社。日軽エムシーアルミ代表取締役社長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 岡本一郎 | 取締役会長(代表取締役) | 1981年日本軽金属入社。同社代表取締役社長や日本軽金属ホールディングス代表取締役社長を経て、2026年4月より現職。 |
| 松平弘之 | 取締役社長全般補佐、グループ統合戦略室長 | 1989年新日軽入社。日本軽金属常務執行役員などを経て、2026年4月より現職。 |
| 岡本泰憲 | 取締役 | 1980年日本軽金属入社。同社副社長執行役員や日本軽金属ホールディングス副社長執行役員などを経て、2013年6月より現職。 |
社外取締役は、林良一(元三菱商事理事)、土屋恵子(元アデコ取締役)、田中達也(元富士通代表取締役社長)、細野哲弘(元資源エネルギー庁長官)、三宅潔(元みずほ銀行取締役副頭取)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アルミナ・化成品、地金」「板、押出製品」「加工製品、関連事業」「箔、粉末製品」を展開しています。
■アルミナ・化成品、地金
アルミナ、水酸化アルミニウム、各種化学品およびアルミニウム合金等を製造・販売しています。幅広い産業向けに高品質な素材を提供しており、顧客の多様なニーズに応える基礎素材として重要な役割を担っています。
製品の販売による収益を主な収益源としています。事業の運営は、日本軽金属、日本電極、日軽エムシーアルミなどが担っており、国内外の関係会社と連携しながら製造から販売までの体制を構築しています。
■板、押出製品
アルミニウム板およびアルミニウム押出製品を製造・販売しています。半導体製造装置、トラック架装、自動車部品など、様々な産業製品の部材として利用される高付加価値な製品を顧客に提供しています。
製品の販売を通じて顧客から対価を受け取る収益モデルです。事業の運営は、日本軽金属、日軽金アクト、理研軽金属工業などが中心となって行っており、各社の専門技術を活かした製造・販売を展開しています。
■加工製品、関連事業
産業部品、景観関連製品、冷凍・冷蔵庫用パネル、輸送関連製品などのアルミニウム加工製品の製造・販売を行っています。また、運送、情報処理、保険代理などのサービス提供も手がけ、幅広い分野で顧客の課題解決を支援しています。
製品の販売代金や工事契約、サービスの提供対価を収益源としています。事業運営は、日本フルハーフ、日軽パネルシステム、日軽金ALMO、日軽物流などのグループ各社が担当しており、多角的な事業展開を行っています。
■箔、粉末製品
アルミ箔、パウダー、ペーストなどの粉末製品を製造・販売しています。リチウムイオン電池外装用箔、医薬包材向け加工箔、電子材アルミパウダーなど、先進的な用途に不可欠な機能性材料を提供しています。
製品の販売対価を主な収益源としています。事業の運営は、東洋アルミニウム、東洋アルミエコープロダクツなどが主力となって行っており、国内外の製造・販売拠点を通じてグローバルに製品を供給しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業の着実な成長がうかがえます。経常利益についても一時的な落ち込みがあったものの、その後は回復基調で推移しており、収益性の改善が進んでいます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4866億円 | 5170億円 | 5237億円 | 5502億円 | 5855億円 |
| 経常利益 | 229億円 | 89億円 | 190億円 | 198億円 | 236億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 1.7% | 3.6% | 3.6% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 49億円 | 56億円 | 51億円 | 21億円 | 64億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の順調な拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る実績を残しています。各段階の利益率も改善傾向にあり、コスト上昇圧力に対して適切な販売価格の改定や高付加価値製品へのシフトが寄与していることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5502億円 | 5855億円 |
| 売上総利益 | 953億円 | 1015億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.3% | 17.3% |
| 営業利益 | 217億円 | 256億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 4.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が232億円(構成比31%)、荷造発送費が133億円(同18%)を占めています。売上原価は4839億円で、売上原価合計の構成比については詳細な内訳の記載はありませんが、原材料費等のコスト変動が原価に影響を与えています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの収益動向を見ると、全ての報告セグメントにおいて前期比で増収を達成しています。特に「加工製品、関連事業」および「箔、粉末製品」セグメントでは増収とともに利益の改善が顕著であり、全体の業績向上を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アルミナ・化成品、地金 | 1655億円 | 1836億円 | 115億円 | 99億円 | 5.4% |
| 板、押出製品 | 1036億円 | 1112億円 | 56億円 | 57億円 | 5.1% |
| 加工製品、関連事業 | 1722億円 | 1777億円 | 32億円 | 60億円 | 3.4% |
| 箔、粉末製品 | 1089億円 | 1130億円 | 55億円 | 77億円 | 6.8% |
| 連結(合計) | 5502億円 | 5855億円 | 217億円 | 256億円 | 4.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 121億円 | 256億円 |
| 投資CF | -191億円 | -181億円 |
| 財務CF | 62億円 | -98億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.7%で市場平均をわずかに下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念として「アルミニウムを核としたビジネスの創出を続けることによって、人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していく」と掲げています。同社グループの強みであるアルミニウムに関する広範な知見の蓄積と多様な事業群を最大限に活用し、企業価値の向上と持続可能な社会の実現への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
基本方針において「健康で安全な職場をつくり、『ゼロ災害』を達成する」「多様な価値観を尊重し、長期的かつグローバルな視点で人財を育成する」など、人財を大切にし、多様性を活かす文化を重視しています。また、持続可能な社会を実現するため、サーキュラーエコノミーの構築に積極的に取り組む姿勢も明示しています。
■(3) 経営計画・目標
2035ビジョンに向けた第1ステップである3ヵ年の中期経営計画において、経常利益300億円超の安定収益基盤を早期に確立し、長期的にはROIC(投下資本利益率)10%以上、計画期間内はROIC8%以上の実現を目指しています。
* 経常利益目標:300億円超
* ROIC目標:長期的には10%以上、計画期間内は8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
基本方針「新しい価値づくり」として、既存ビジネスの収益力強化と新規ビジネスの創出を図り、アルミリサイクルによる低炭素素材の供給など循環型サプライチェーンの構築を推進します。また「プロセス変革」により、AI・データを活用したデジタル化や組織改革を行い、経営体制を強化していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な価値観を尊重し、長期的かつグローバルな視点で人財を育成する」ことを基本方針とし、従業員を新たな価値を創造する最大の財産「人財」と位置付けています。人的資本経営を通じて「働きがいのある職場づくり」や「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進し、自律的なプロフェッショナル人財の創出を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 50.6歳 | 20.5年 | 9,563,554円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.7% |
| 男性育児休業取得率 | 74.6% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 74.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 76.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 84.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職の女性定期採用比率(12.8%)、休業災害件数(15件)、新任管理職研修の修了率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢及び景気動向等の影響
同社グループの製品需要は販売している国・地域の経済情勢や景気動向の影響を受けます。特に日本国内の景気後退による需要の縮小や、顧客ニーズの大幅な変化が発生した場合、販売の減少などを通じて同社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格や商品市況の変動
主要原材料であるアルミニウム地金等を海外から調達しており、これらの価格変動部分は基本的に製品価格に転嫁しています。しかし、価格上昇の製品コストへの影響を完全に排除できるわけではなく、特に最終ユーザーに近い加工製品等において転嫁が困難となる場合、収益を圧迫するリスクがあります。
■(3) 製品・サービスの品質問題
安全で安定した製品やサービスを提供し続けるために品質保証・管理活動を推進していますが、製品やサービスに関して重大な品質問題が生じた場合、代品納入や補償の対応が求められるほか、顧客等からの信頼性低下による売上減少など、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。



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