東光高岳 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東光高岳 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する東光高岳は、電力インフラを支える電力機器事業や計量事業、GXソリューション事業等を展開しています。直近の業績は、売上高1,066億円で前期比微減、経常利益は63億円と前期比で減益となりましたが、スマートメーターやEV充電器等の需要を取り込み事業基盤の再構築を進めています。


※本記事は、株式会社東光高岳 の有価証券報告書(第13期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東光高岳ってどんな会社?


日本の電力インフラを支える重電機器メーカーであり、スマートメーターやEV充電インフラ等の次世代エネルギー事業にも注力する企業です。

(1) 会社概要


2012年に高岳製作所と東光電気が経営統合し、共同持株会社として設立されました。2014年には両社を吸収合併し、現在の商号へ変更しています。その後、ベトナム企業の持分法適用関連会社化やGXソリューション事業本部の新設など、海外展開や脱炭素社会に向けた事業体制の強化を推進しています。

連結従業員数は2,547名、単体では1,849名が在籍しています。筆頭株主は同社の主要販売先でもある東京電力パワーグリッドで、発行済株式の約35%を保有しています。第2位以降には、資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
東京電力パワーグリッド 34.97%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.96%
日本カストディ銀行(信託口) 4.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は一ノ瀬 貴士氏が務めています。なお、社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
一ノ瀬 貴士 代表取締役社長 東京電力にて東京支店設備部長等を歴任。同社常務執行役員を経て、2021年6月より現職。
水本 州彦 取締役専務執行役員 東光電気入社後、エネルギーソリューション事業本部長、電力プラント事業本部長等を歴任し、2024年6月より現職。
若山 達也 取締役常勤監査等委員 高岳製作所入社後、経営企画部長、取締役常務執行役員等を歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、金子 禎則(現東京電力パワーグリッド代表取締役社長)、三島 康博(元フタバ産業代表取締役社長)、植村 明(元日本証券テクノロジー代表取締役社長)、高田 裕一郎(元さくら情報システム代表取締役会長)、和田 希志子(ふじ合同法律事務所弁護士)、守谷 誠二(現東京電力ホールディングス取締役監査委員会委員長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電力機器事業」「計量事業」「GXソリューション事業」「光応用検査機器事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電力機器事業


発電所や変電所、配電線などで使用される変圧器、開閉装置、監視制御システムなどの製造販売および据付工事を行っています。電力会社をはじめとするインフラ事業者や一般産業向けに、電力の安定供給を支える機器を提供しています。

収益は、製品の販売代金や工事請負代金から得ています。運営は、同社およびタカオカエンジニアリング、タカオカ化成工業、東光器材などが主に行っています。特に、その他の関係会社である東京電力パワーグリッドが主要な販売先となっています。

(2) 計量事業


各家庭や工場などで電力使用量を計測するスマートメーターなどの各種計器の製造販売を行っています。また、計器の有効期限満了に伴う取替工事(失効替工事)なども請け負っており、電力計量システムの中核を担っています。

収益は、計器類の製品販売や取替工事の請負代金から得ています。運営は、同社およびワットラインサービス、東光東芝メーターシステムズなどが行っています。この事業においても、東京電力パワーグリッドが主要な販売先となっています。

(3) GXソリューション事業


脱炭素社会の実現に向け、エネルギー計測・制御機器や電気自動車(EV)用急速充電器、エネルギーマネジメントシステム等の製造販売を行っています。また、スマートグリッド関連事業やシンクライアントシステム等のITソリューションも提供しています。

収益は、機器の販売やシステム構築、ソリューションサービスの提供から得ています。運営は、同社およびミントウェーブが行っています。カーボンニュートラルに向けた多様なソリューションを展開し、新たな収益源としての成長を図っています。

(4) 光応用検査機器事業


半導体パッケージや電子部品などの微細な形状を検査する三次元検査装置の製造販売を行っています。独自の3D計測技術を活用し、精密機器メーカー等の製造ラインにおける品質管理を支援しています。

収益は、検査装置の販売および保守サービスから得ています。運営は主に同社が行っています。半導体業界の設備投資動向に影響を受ける事業ですが、高度な技術力を背景にニッチトップを目指しています。

(5) その他の事業


同社グループが保有する不動産の有効活用を目的とした事業を行っています。

収益は、保有する賃貸ビル等の不動産賃貸料から得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は900億円台から1,000億円超へと拡大傾向にあります。2024年3月期には売上高1,074億円、経常利益80億円と高い水準を記録しましたが、直近の2025年3月期は減収減益となりました。利益率は変動がありつつも黒字を維持しており、安定した収益基盤を有しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 919億円 919億円 978億円 1,074億円 1,066億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 34億円 42億円 47億円 80億円 63億円
利益率(%) 3.7% 4.5% 4.8% 7.5% 5.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 19億円 25億円 28億円 31億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は微減し、利益面では減益となりました。売上原価率はほぼ横ばいですが、販売費及び一般管理費が増加したことで営業利益率が低下しています。研究開発費の増加などが利益を圧迫する要因となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,074億円 1,066億円
売上総利益 264億円 255億円
売上総利益率(%) 24.6% 23.9%
営業利益 82億円 61億円
営業利益率(%) 7.7% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料諸手当及び賞与が51億円(構成比26%)、研究開発費が36億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の電力機器事業は減収減益となりましたが、計量事業は増収を確保しました。GXソリューション事業は増収ながら研究開発費の増加により赤字に転落し、光応用検査機器事業は大幅な減収減益となりました。全体として、コア事業での収益確保と成長事業への投資負担が見られます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電力機器事業 621億円 599億円 70億円 62億円 10.4%
計量事業 306億円 332億円 47億円 44億円 13.2%
GXソリューション事業 103億円 106億円 3億円 -2億円 -2.0%
光応用検査機器事業 33億円 20億円 8億円 2億円 12.0%
その他の事業 10億円 10億円 6億円 6億円 64.7%
調整額 -89億円 -86億円 -51億円 -52億円 -
連結(合計) 1,074億円 1,066億円 82億円 61億円 5.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東光高岳のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の減少などにより収入となりました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出により、支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や配当金の支払いなどにより、支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 59億円 50億円
投資CF -23億円 -37億円
財務CF 12億円 -33億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「笑顔あふれる未来のため、確かな技術と共創で人と社会のエネルギーを支え続ける」をパーパス(存在意義)として掲げています。また、ビジョン(目指す姿)として「未来のエネルギーネットワークをデザインする “SERAカンパニー” へ!」を掲げ、シームレスにエネルギーをつなぎ、活性化させる存在を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営から現場まで一体となった「SQC(安全・品質・コンプライアンス)ファースト考動文化」の醸成を進めています。また、クレド(信条・価値観)として「Do the right things right(正しいことを正しく行う)」「コミュニケーション+チェンジ×チャレンジ」「圧倒的当事者意識」などを掲げ、これらを日々の行動規範としています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2027中期経営計画」を策定し、SQCファーストの新生東光高岳としての再生と成長の礎を築く期間と位置づけています。

* 2025年度 連結売上高:1,080億円
* 2025年度 連結営業利益:62億円
* 2025年度 親会社株主に帰属する当期純利益:39億円
* 2025年度 ROE:6.4%

(4) 成長戦略と重点施策


「SQCファースト改革」を最優先課題としつつ、電力機器・計量事業といったコア事業の再生と強靭化を進めています。また、成長ストーリーの再構築として、スマートメーター関連事業やEVインフラ事業へリソースを集中させています。さらに、資本コストや株価を意識した経営として、ROE8.0%以上、PBR1.0倍以上の達成を目指し、収益構造改革やサステナビリティ経営の推進に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「仕事こそ人を育てる」という考えに基づき、OJTを中心に、研修(Off-JT)や自己啓発支援を組み合わせた育成を行っています。「人財育成センター」を設置し、社員の成長意欲向上と業界トップの人材育成を目指しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備を進め、女性活躍や育児支援などダイバーシティ推進にも積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.9歳 19.6年 6,756,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.6%
男性育児休業取得率 45.8%
男女賃金差異(全労働者) 73.9%
男女賃金差異(正規雇用) 74.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品・サービスの品質に関するリスク


不適切事案の発生や技術力の低下に伴う品質問題が生じた場合、製品回収や賠償による損失コストの発生、社会的信用の失墜、受注機会の損失などにより、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は「SQCファースト改革」を策定し、品質管理の強化や再発防止に取り組んでいます。

(2) 特定事業への依存に関するリスク


同社グループの売上高の多くは電力会社向け製品が占めており、特に東京電力パワーグリッド向けの販売比率は42.2%に達しています。そのため、電力会社の設備投資動向や経営方針の変更が、同社グループの受注や業績に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 資材調達に関するリスク


主力製品の製造には鉄、銅、油、碍子などの原材料・部品を使用しており、地政学的リスク等による市況高騰が発生した場合、価格転嫁が追いつかずコストが増加し、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は在庫確保や原価低減活動によりリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。