キャリアリンク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キャリアリンク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するキャリアリンクは、BPO関連事業を中心とした事務系人材サービスを展開しています。直近の業績は、大型案件の終了や規模縮小などの影響により減収減益となりましたが、地方自治体や民間企業向けの企画提案型案件の拡大に注力しています。


※本記事は、キャリアリンク株式会社 の有価証券報告書(第29期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キャリアリンクってどんな会社?


官公庁や企業の業務効率化を支援するBPO事業を主力とする人材サービス企業です。企画提案型の業務請負やチーム派遣に強みを持ちます。

(1) 会社概要


1996年に設立され、翌年一般労働者派遣事業を開始しました。2004年に製造技術系事業、2007年にはBPO関連事業を開始し、業容を拡大しました。2012年に東証マザーズへ上場後、2015年に東証一部へ市場変更し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

連結従業員数は898名、単体では687名です。筆頭株主は同社取締役の前田直典氏が代表を務めるスマートキャピタルで、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
スマートキャピタル 45.47%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.25%
日本カストディ銀行(信託口) 2.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長社長執行役員は成澤素明氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
成澤素明 代表取締役社長社長執行役員 2000年同社入社。営業部長、取締役営業本部長を経て2013年代表取締役社長に就任。2015年より現職。
島健人 取締役常務執行役員営業本部長兼営業企画部長 2003年同社入社。営業本部各部長を歴任し、2017年取締役執行役員。2020年取締役常務執行役員に就任し、2025年より現職。
藤枝宏淑 取締役常務執行役員管理本部長兼経営企画部長 三菱銀行出身。MU事務管理サポート社長等を経て2013年同社入社。2019年取締役執行役員、2020年取締役常務執行役員に就任。
森村夏実 取締役執行役員管理本部副本部長兼研修部長 第一生命保険出身。1998年同社入社。取締役営業本部長等を経て、2019年取締役執行役員に就任。2022年より現職。
前田直典 取締役 1984年日本勧業角丸証券入社。シンキ代表取締役社長等を歴任。2006年同社取締役会長に就任後、2015年より現職。
桑田泰幸 取締役(常勤監査等委員) アコム出身。2010年同社入社。内部監査室長を経て、2022年より現職。


社外取締役は、北村聡子(弁護士)、遠藤今朝夫(公認会計士・税理士)、長谷川岩男(元リコージャパン常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「事務系人材サービス事業」および「製造系人材サービス事業」、ならびに「その他」事業を展開しています。

事務系人材サービス事業


BPO事業者や地方自治体、民間企業等の業務プロセスの一部を受託・派遣する「BPO関連事業部門」、テレマーケティング業務を行う「CRM関連事業部門」、一般事務の「一般事務事業部門」で構成されています。業務効率化の企画提案やチーム派遣に特徴があります。

主な収益源は、顧客企業からの人材派遣料や業務請負料です。運営は主にキャリアリンクおよび株式会社ジャパン・ビジネス・サービスが行っています。

製造系人材サービス事業


食品加工や製造加工に関わる業務への人材派遣、請負、人材紹介を行っています。業務開始当初から労務管理者を配置し、請負への転換を提案することで顧客満足度の向上を図っています。

主な収益源は、製造・食品加工現場への人材派遣料や業務請負料です。運営は主にキャリアリンクファクトリー株式会社が行っています。

その他


法人向けに自動車の運行管理からメンテナンス等の自動車管理に関する事業を行っています。

主な収益源は、顧客企業からの自動車管理業務の請負料です。運営は主に東京自動車管理株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期をピークに減少傾向にあり、利益面でも2023年3月期以降は減少が続いています。特に直近の2025年3月期は減収減益となりました。

項目 2021年2月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 303億円 431億円 525億円 438億円 404億円
経常利益 28億円 44億円 76億円 33億円 27億円
利益率(%) 9.2% 10.3% 14.6% 7.5% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 21億円 30億円 56億円 20億円 17億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益および営業利益が減少しています。売上総利益率、営業利益率ともに低下しており、収益性の低下が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 438億円 404億円
売上総利益 91億円 82億円
売上総利益率(%) 20.8% 20.3%
営業利益 33億円 27億円
営業利益率(%) 7.5% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が23億円(構成比41%)、賞与引当金繰入額が1億円(同3%)を占めています。

(3) セグメント収益


事務系人材サービス事業は大型案件の終了等により減収となりましたが、製造系人材サービス事業は受注増により増収となりました。その他事業は微減となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
事務系人材サービス事業 367億円 326億円
製造系人材サービス事業 68億円 75億円
その他 2.9億円 2.8億円
調整額 - -
連結(合計) 438億円 404億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金を借入金の返済や配当支払いに充てつつ、投資活動は抑制的な「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 68億円 27億円
投資CF -6.1億円 -1.3億円
財務CF -13億円 -18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「すべての人に働くよろこびを」という企業理念のもと、雇用の拡大により社会に貢献することを使命としています。「日本一親身な人材サービスカンパニー」を目指し、求職者に多様な就業機会を提供することで、彼らが希望を持てる人生を送れるよう支援することを通じて社会的貢献を果たしていく方針です。

(2) 企業文化


多様な価値観を持つ人材が活躍することが、持続的な機動性と柔軟性、躍動感を併せ持つ企業文化を醸成すると考えています。また、コンプライアンスの徹底や高い倫理性の保持を重視し、法令遵守やガバナンス体制の強化を社会的責任の基本と位置づけています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期から2028年3月期までの3年間を対象とする中期経営計画を策定しています。

* 2028年3月期 売上高:471億円
* 2028年3月期 営業利益:30億円
* 2028年3月期 営業利益率:6.4%

(4) 成長戦略と重点施策


地方自治体および民間企業向けの企画提案型BPO案件を中心に業容拡大を目指しています。特に地方自治体向けには新規取引先の開拓と既存取引先でのシェア拡大、民間向けにはBPO事業者等からの受注拡大に注力します。また、拠点網の充実や要員増強、DX化の推進による競争力強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を一番の経営資源と認識し、優秀な人材の採用と教育研修制度の充実による育成に注力しています。多様な働き方を推進するため人事制度を充実させるとともに、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、女性、障がい者、外国籍の方などが個性を発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.5歳 4.3年 5,148,000円


※平均年間給与は賞与、基準外賃金及び報奨金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.7%
男性育児休業取得率 76.9%
男女賃金差異(全労働者) 82.8%
男女賃金差異(正規雇用) 85.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 98.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(33.3%)、障がい者雇用率(2.52%)、外国籍社員比率(6.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制


労働者派遣法や職業安定法などの法的規制に基づき事業を行っており、許可の取消し事由に該当した場合、事業活動が制限される可能性があります。また、関連法令の改正内容によっては、事業活動や経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 特定の事業部門への依存


事務系人材サービス事業のBPO関連事業部門、特に官公庁や地方自治体との請負取引の売上高構成比が高いため、環境変化により当該取引が急激に減少した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 登録スタッフ及び就業スタッフの確保


雇用情勢や労働需要の変化により、人材の確保が計画通りに進まなかった場合や、顧客の要望に対して十分な人材を確保できなかった場合、事業活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 景気変動に関するリスク


事業内容は景気変動の影響を受けやすく、経済状況の急激な悪化に伴い顧客からの発注が減少した場合、事業活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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