キャリアリンク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キャリアリンク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、BPO関連業務を中心とする事務系人材サービス事業と製造系人材サービス事業を展開しています。当期の業績は、官公庁向けの請負業務や製造加工部門での受注拡大が牽引し、売上高は446億円、経常利益は39億円と増収増益を達成しています。


※本記事は、キャリアリンク株式会社の有価証券報告書(第30期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キャリアリンクってどんな会社?


BPO関連業務や製造・物流業務への人材派遣・請負を通じて企業の業務効率化を支援しています。

(1) 会社概要


同社は1996年に設立され、1997年に一般労働者派遣事業を開始しました。2004年には製造・物流業務への人材派遣を目的とする子会社を設立し、2007年には年金記録台帳の調査業務を受託してBPO関連事業に参入しました。2012年に東証マザーズに上場し、直近の2025年には製造系人材サービスを担うキャリアリンクファクトリーを完全子会社化しています。

同社グループの従業員数は連結で932名、単体で706名です。筆頭株主は資産管理会社とみられるスマートキャピタルで45.45%の株式を保有しており、第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
スマートキャピタル 45.45%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.95%
日本カストディ銀行(信託口) 2.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は成澤素明氏が務めており、全取締役9名のうち3名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
成澤素明 代表取締役社長社長執行役員 1998年エーシーイー・インターナショナル入社。2000年同社入社。2013年代表取締役社長などを経て2021年より現職。
島健人 取締役常務執行役員営業本部長兼BPOビジネスユニット長兼BPOビジネスユニット企画部長 2003年同社入社。2015年執行役員営業本部長兼営業推進部長などを経て2026年より現職。
藤枝宏淑 取締役常務執行役員管理本部長兼経営企画部長 1984年三菱銀行入行。2010年MU事務管理サポート取締役社長。2013年同社入社などを経て2024年より現職。
森村夏実 取締役執行役員管理本部副本部長兼研修部長 1987年第一生命保険相互会社入社。1998年同社入社。2005年取締役などを経て2022年より現職。
前田直典 取締役 1984年日本勧業角丸証券入社。1998年シンキ代表取締役社長。2006年同社取締役会長などを経て2015年より現職。
桑田泰幸 取締役(常勤監査等委員) 1988年福山グランドホテル入社。1990年アコム入社。2010年同社入社、2013年内部監査室長などを経て2022年より現職。


社外取締役は、北村聡子(弁護士)、遠藤今朝夫(公認会計士・税理士)、長谷川岩男(元リコージャパン常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、事務系人材サービス事業、製造系人材サービス事業およびその他の事業を展開しています。

事務系人材サービス事業


BPO事業者や地方自治体・民間企業等へ企画提案型の人材派遣や業務請負を提供しています。BPO関連事業部門、CRM関連事業部門、一般事務事業部門から構成され、様々な業務プロセスの効率化と品質向上、コスト削減を支援しています。

顧客からの派遣料金や請負業務の対価を収益源としています。運営は主に同社およびジャパン・ビジネス・サービスが行っています。

製造系人材サービス事業


食品加工部門と製造加工部門からなり、食品工場や製造現場に関わる業務への人材派遣、請負、人材紹介を提供しています。業務開始当初から労務管理者を配置し、労務管理面やコスト面でメリットのある請負への転換を提案しています。

顧客からの人材派遣・請負対価、人材紹介手数料を収益源としています。運営はキャリアリンクファクトリーが行っています。

その他


法人向けに自動車の運行管理からメンテナンス等の自動車管理に関する事業を行っています。

法人顧客からの自動車管理業務の対価を収益源としています。運営は東京自動車管理が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は400億円から520億円規模で推移しており、経常利益率も変動しつつ推移しています。当期は官公庁向けのBPO案件や製造系人材サービスの受注が堅調に推移し、増収増益を達成しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 431億円 525億円 438億円 404億円 446億円
経常利益 44億円 76億円 33億円 27億円 39億円
利益率(%) 10.3% 14.6% 7.5% 6.7% 8.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 30億円 57億円 22億円 18億円 26億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、売上総利益率は約20%から22%へと上昇しました。営業利益率も6%台から8%台へと改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 404億円 446億円
売上総利益 82億円 99億円
売上総利益率(%) 20.3% 22.2%
営業利益 27億円 39億円
営業利益率(%) 6.7% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が24億円(構成比40.0%)、賞与引当金繰入額が2億円(同3.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


事務系人材サービス事業は地方自治体向けのBPO案件を中心に受注領域の拡大に努めたことで増収となりました。製造系人材サービス事業も既存取引先からの受注量が拡大したことで増収を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
事務系人材サービス事業 326億円 355億円
製造系人材サービス事業 75億円 89億円
その他 3億円 3億円
連結(合計) 404億円 446億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなる「健全型」です。営業活動で得た資金を活用し、借入金の返済や手元資金での投資を行っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 27億円 25億円
投資CF -1億円 -3億円
財務CF -18億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も70.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「すべての人に働くよろこびを」という企業理念を掲げています。雇用の拡大により社会に貢献することを使命とし、「日本一親身な人材サービスカンパニー」を目指して求職者に多様な就業の機会を提供することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


多様な価値観を持つ人材が集い活躍することが、同社の持続的な機動性と柔軟性、躍動感を併せ持つ企業文化を醸成すると考えています。また、人材サービス業として高い倫理性の保持とコンプライアンスの徹底を重視し、プロアクティブなリスク管理体制の構築に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、3年間(2027年3月期から2029年3月期まで)とする中期経営計画を策定しています。2027年3月期は業容の拡大、2028年3月期以降は新たな成長に向けた準備の年度と位置づけています。

* 2027年3月期:売上高491億円、営業利益41億円
* 2028年3月期:売上高516億円、営業利益43億円
* 2029年3月期:売上高543億円、営業利益45億円

(4) 成長戦略と重点施策


主力の事務系人材サービス事業において、地方自治体向け及び民間企業向けの企画提案型BPO案件を中心に事業地域と業務領域の広域化を推進します。製造系人材サービス事業においては請負業務や人材紹介業務の拡大を図ります。また、AIの活用を中心としたDX推進やダイバーシティ&インクルージョンを重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業展開の多様化と社会環境の変化に先行した社内体制を構築するため、優秀な人材の採用と教育研修制度の充実による育成に注力しています。「働き方改革」や人的資本経営を推進し、人事制度の一層の充実を図るとともに、社員の自己啓発意欲醸成とその支援に取り組むことで能力開発に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.3歳 4.4年 5,297,000円


※平均年間給与は、賞与、基準外賃金及び報奨金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.1%
男性育児休業取得率 77.3%
男女賃金差異(全労働者) 83.1%
男女賃金差異(正規雇用) 85.4%
男女賃金差異(無期・有期) 101.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(35.1%)、障がい者雇用率(2.52%)、外国籍社員比率(6.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 関連法規とコンプライアンス


同社グループは、労働基準法、労働者派遣法などの関連業法や個人情報保護法など多岐にわたる法令の適用を受けています。事業運営に関わる重大な過失や違法行為等が生じ、行政指導・改善命令等を受けた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) BPO関連事業部門への依存


同社のBPO関連事業部門の売上高構成比は高く、官公庁(特に地方自治体)との請負取引の比率が高い状況にあります。政策の変更等により官公庁との取引が急激に減少した場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。

(3) 人材確保の不確実性


事業展開において登録スタッフ及び就業スタッフの確保は重要な課題です。雇用情勢の変化により、意図した通りの人材確保ができなかった場合や顧客の要望に対し十分な人材が確保できなかった場合、同社の事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) テクノロジー変化への対応遅延


AI等の技術革新が急速に進む中、新たなテクノロジーの導入遅延や、専門人材の確保・育成が進まない場合、競争力低下により売上が減少する可能性があります。また、不適切なAI利用による情報漏洩や倫理的問題が信用低下を招くリスクもあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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