エフテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エフテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の自動車部品メーカー。ホンダを主要顧客とし、サスペンション等の足廻り部品を製造します。当期は北米での新機種量産や円安効果により売上高は大幅な増収となりました。利益面では営業利益・経常利益ともに前期比で増益となり、最終損益も増益で黒字を確保しています。


※本記事は、株式会社エフテック の有価証券報告書(第68期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エフテックってどんな会社?


自動車の足廻り機能部品(サスペンション、サブフレーム等)の開発・製造を行う独立系自動車部品メーカーです。

(1) 会社概要


1947年に福田製作所として創業し、1959年より本田技研工業との取引を開始しました。1988年に現社名へ変更し、2006年には東証一部(現プライム市場)へ指定替えを果たしました。早期からグローバル展開を進めており、1986年のカナダ進出を皮切りに、米国、フィリピン、中国、タイなどへ拠点を拡大。近年では2022年にインドの拠点を子会社化するなど、成長市場への展開を加速させています。

連結従業員数は7,754名、単体では745名が在籍しています。筆頭株主は主要顧客であり資本提携関係にある事業会社、第2位は信託銀行、第3位は創業者一族の個人です。

氏名 持株比率
本田技研工業 13.63%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.85%
福田 秋秀 4.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は福田祐一氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
福田 祐一 代表取締役社長 1994年入社。海外事業本部本部長、管理本部長、営業・北米統括などを歴任し、2015年4月より現職。
藤瀧 一 取締役兼専務執行役員兼グローバルSED統括 1978年本田技研工業入社。1981年同社入社。生産本部長、営業本部長、北米子会社社長などを経て、2020年4月より現職。
青木 啓之 取締役兼専務執行役員管理本部長兼グローバル 事業管理担当 1982年埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入行。2015年同社入社。管理本部長を経て、2020年4月より現職。


社外取締役は、友野直子(弁護士・T&Tパートナーズ法律事務所パートナー)、古閑伸裕(日本工業大学基幹工学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「北米」、「アジア」の各報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


自動車部品(サスペンション、サブフレーム等)およびそれに伴う金型、機械器具等の製造・販売を行っています。マザー工場としての機能や研究開発機能を持ち、国内自動車メーカー向けに製品を供給しています。

製品の販売代金を主な収益源としています。運営は主にエフテック、フクダエンジニアリング、九州エフテック、リテラが行っています。

(2) 北米


米国、カナダ、メキシコにおいて、自動車部品および関連する金型・設備の製造・販売を行っています。同社グループの売上高の過半を占める主力市場であり、現地自動車メーカー向けに大規模な生産体制を構築しています。

製品の販売代金を主な収益源としています。運営は主にF&P Mfg., Inc.(カナダ)、F&P America Mfg., Inc.(米国)、F&P Mfg. de Mexico(メキシコ)などが行っています。

(3) アジア


中国、フィリピン、タイ、インドネシア、インドにおいて、自動車部品および関連する金型・設備の製造・販売を行っています。成長市場における需要を取り込むため、各国の拠点で生産・販売を行っています。

製品の販売代金を主な収益源としています。運営は主に偉福科技工業(中山)有限公司(中国)、F-TECH Philippines Mfg., Inc.(フィリピン)、F-TECH Mfg. (Thailand) Ltd.(タイ)などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期に一時減少しましたが、その後回復し当期は過去最高水準となっています。利益面では、原材料価格や輸送費の高騰等の影響を受け利益率が低下傾向にありましたが、当期は増収効果等により絶対額としての利益は増加しています。

項目 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
売上高 2,354億円 2,187億円 1,836億円 1,919億円 2,612億円
経常利益 60億円 28億円 24億円 13億円 19億円
利益率(%) 2.5% 1.3% 1.3% 0.7% 0.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 3億円 -12億円 2億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高は大幅に増加し、売上総利益も増加しましたが、原材料価格等の上昇により売上総利益率は低下しています。一方で、販売費及び一般管理費の増加を売上高の伸びが上回り、営業利益率は改善しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期
売上高 1,919億円 2,612億円
売上総利益 156億円 187億円
売上総利益率(%) 8.1% 7.2%
営業利益 11億円 20億円
営業利益率(%) 0.6% 0.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が50億円(構成比30%)、運搬費が25億円(同15%)を占めています。また、研究開発費は22億円(同13%)となっています。

(3) セグメント収益


北米セグメントは新規受注製品の量産本格化や円安効果で大幅な増収となりましたが、主要得意先の生産調整等の影響で営業損失が続いています。日本セグメントは増収ながら減益、アジアセグメントは中国の減産影響等により減益となりました。

区分 売上(2022年3月期) 売上(2023年3月期) 利益(2022年3月期) 利益(2023年3月期) 利益率
日本 204億円 234億円 12億円 4億円 1.8%
北米 1,115億円 1,697億円 -28億円 -10億円 -0.6%
アジア 600億円 681億円 33億円 23億円 3.4%
調整額 - - -5億円 3億円 -
連結(合計) 1,919億円 2,612億円 11億円 20億円 0.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


積極型(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)

項目 2022年3月期 2023年3月期
営業CF 18億円 174億円
投資CF -156億円 -163億円
財務CF 116億円 23億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人間尊重」「チャレンジ精神」「環境・地域社会、株主・従業員との共生」を基本理念として掲げています。また、社是として「わたしたちは世界的視野に立ち、高い志と誠をもって価値を創造し、国家社会に貢献すると共に豊かな未来を築く事に全力を尽くす。」を掲げ、世界中の顧客からNo.1の評価を得ることを目指しています。

(2) 企業文化


基本理念にある通り、自立した個人を重んじ、失敗を恐れずに困難な道を選択する「チャレンジ精神」を重視する文化があります。また、「モノづくりの本質追求」を掲げ、高品質な製品を効率的に生産し、顧客に提供することを全社的な行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


第15次中期経営計画(2023年4月~2026年3月)では、「稼ぐ力を向上させ持続的に成長し社会に貢献する」を方針としています。最終年度の数値目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:3,000億円
* 連結営業利益:80億円
* 連結売上高営業利益率:2.7%

(4) 成長戦略と重点施策


「Back to Basics」として既存事業の収益力強化と財務体質の健全化を進める一方、「Challenge for New」として北米におけるEVメーカーへの営業強化やサステナビリティ経営の構築を掲げています。特に、足廻り機能領域(サブフレーム、サスペンション、ペダル)の専門メーカーとして、世界No.1の評価獲得を目指し、新技術開発やネットワーク構築を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間尊重」の理念のもと、性別や国籍等を越えた多様性の確保と、チャレンジ精神を持つ人材の育成を方針としています。具体的には、公募制度による海外駐在員選定の導入や、女性活躍推進、シニア世代の技術継承のための「匠制度」などを実施し、多様な人材が能力を発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2023年3月期 41.1歳 18.5年 5,719,572円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.2%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 76.1%
男女賃金差異(正規雇用) 75.2%
男女賃金差異(非正規) 93.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(1.1%)、中途採用管理職比率(27.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境


グローバルに自動車部品事業を展開しているため、各国市場の経済状況や物価動向により消費者の自動車購買意欲が低下し、主要得意先の生産が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 得意先の集中


主要得意先である本田技研工業および同社関係会社への売上高シェアは約6割を占めています。同社グループの売上が減少した場合や、受注計画が想定通りに進捗せず失注が発生した場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 為替相場の変動


海外売上高比率が約9割と高く、北米やアジアでの事業展開が中心です。外国為替相場の変動は、円換算後の業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(4) 特定の原材料等の外部依存


製品製造に必要な一部の部品・原材料を特定の取引先に依存しています。これらの取引先で操業停止やサプライチェーンの寸断などの事態が発生した場合、同社グループの生産や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。