エフテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エフテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エフテックは東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、自動車部品や金型などの製造・販売を行う自動車部品関連事業を主力としています。直近の業績では、売上高は2919億円と微減でしたが、経常利益は75億円と大幅な増益を達成しており、収益力の向上が見られます。


※本記事は、株式会社エフテックの有価証券報告書(第71期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は日本基準です。

1. エフテックってどんな会社?


自動車部品および金型・機械器具の製造・販売をグローバルに展開する専門メーカーです。

(1) 会社概要


1947年に福田製作所として創業し、雑貨玩具部品のプレス加工を開始しました。1959年には本田技研工業の協力工場として自動二輪車の部品加工を始め、1965年から四輪自動車機能部品の開発にも進出しました。その後、1996年に日本証券業協会へ株式を店頭登録し、2001年に東京証券取引所市場第二部への上場を果たしました。

同社グループは連結で7300名、単体で742名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社のホンダ(本田技研工業)であり、第2位には創業家の福田秋秀氏が名を連ねています。第3位には公益事業を行うエフテック奨学財団が入っています。

氏名 持株比率
本田技研工業 13.63%
福田 秋秀 4.76%
エフテック奨学財団 4.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は福田祐一氏が務めており、役員のうち社外取締役が占める割合は約22%です。

氏名 役職 主な経歴
福田 祐一 代表取締役社長 1994年同社入社。海外事業本部長や生産本部長などを経て2014年副社長執行役員に就任。2015年より現職。
藤瀧 一 取締役兼専務執行役員グローバルSED統括 1981年同社入社。亀山事業所長や品質保証本部長などを歴任し、2020年より現職。
若林 圭 取締役兼常務執行役員管理本部長兼アメリカ事業担当 1990年協和銀行入行。2024年同社入社。管理本部長やアメリカ事業担当を経て2026年より現職。


社外取締役は、古閑伸裕(日本工業大学教授)、小山田明代(小山田法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「アジア」の報告セグメントにおいて事業を展開しています。

日本


国内市場向けに、自動車の足回り機能部品であるサブフレーム、サスペンション、ペダルを中心とした自動車部品や、それに伴う金型、機械器具等の製造・販売を行っています。

収益源は、自動車メーカー等への製品および金型・設備の販売代金です。事業の運営は、主にエフテック、フクダエンジニアリング、九州エフテック、リテラなどのグループ各社が行っています。

北米


北米市場(米国、カナダ、メキシコ等)向けに、国内と同様に自動車部品および金型・設備などの製造・販売を展開しています。安定的に高い需要が見込まれる北米市場のニーズに対応しています。

収益源は、現地自動車メーカー等への製品および金型・設備の販売代金です。事業の運営は、エフアンドピー・マニュファクチャリング・インコーポレーテッドなどの各現地法人が担当しています。

アジア


アジア市場(中国、フィリピン、タイ、インドネシア、インド等)において、多様化する市場ニーズに対応した自動車部品および金型・設備などの製造・販売を行っています。

収益源は、現地自動車メーカー等への製品および金型・設備の販売代金です。事業の運営は、偉福科技工業(中山)有限公司をはじめとする各現地の連結子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2600億〜3000億円台で推移していますが、経常利益は直近で大幅な改善を見せています。利益率も過去数年の1%前後から2.6%へと向上しており、原価低減活動や売価改定交渉などの取り組みが成果を上げています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1919億円 2612億円 2988億円 3008億円 2919億円
経常利益 13億円 19億円 30億円 30億円 75億円
利益率(%) 0.7% 0.7% 1.0% 1.0% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 35億円 -28億円 16億円 -5億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となったものの、売上総利益は増加し、売上総利益率および営業利益率ともに改善しています。特に営業利益は55億円から84億円へと大きく伸長しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3008億円 2919億円
売上総利益 253億円 274億円
売上総利益率(%) 8.4% 9.4%
営業利益 55億円 84億円
営業利益率(%) 1.8% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が57億円(構成比30%)、研究開発費が30億円(同16%)、運搬費が17億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


北米セグメントが売上高の大部分を占めていますが、半導体不足等の影響により減収減益となっています。一方、日本とアジアセグメントは構造改革や経費削減の効果が表れ、ともに黒字転換や増益を果たして全社の利益押し上げに貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 301億円 295億円 -11億円 6億円 2.1%
北米 2262億円 2226億円 80億円 59億円 2.7%
アジア 445億円 398億円 -16億円 17億円 4.2%
連結(合計) 3008億円 2919億円 55億円 84億円 2.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で得た資金を設備投資や借入金の返済に充てる健全型のキャッシュ・フロー構造となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 148億円 205億円
投資CF -79億円 -97億円
財務CF -57億円 -69億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人間尊重」「チャレンジ精神」「環境・地域社会、株主・従業員との共生」を基本理念としています。優れた技術力で最適な商品を開発し、最少エネルギーで高効率生産を行うことで、世界中のお客様へ適正な価格で最大の価値を提供することを使命としています。

(2) 企業文化


「わたしたちは世界的視野に立ち、高い志と誠をもって価値を創造し、国家社会に貢献すると共に豊かな未来を築く事に全力を尽くす。」という社是を掲げています。世界中のお客様から顧客満足度No.1の評価を得るとともに、地域社会から期待される企業となることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


第15次中期経営計画(2026年3月期最終年度)において、以下の経営指標を計画しています。
・連結売上高 3000億円
・連結営業利益 80億円
・連結売上高営業利益率 2.7%
・NetDebt/EBITDA 3.1倍以下
・EPS 175円以上

(4) 成長戦略と重点施策


「稼ぐ力を向上させ持続的に成長し社会に貢献する」との全社方針のもと、モノづくりの本質追求による稼ぐ力の強化や、海外子会社へのモニタリング強化による財務体質の健全化を進めています。また、インド市場への経営リソース集中による成長機会の追求や、ESG経営の推進を通じたサステナビリティの実現に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間尊重」を人財戦略の中核に据え、国籍・性別・年齢を問わず従業員が強みを発揮できる環境整備に努めています。自律的なキャリア形成を支援する公募制度や、全社横断的なウェルビーイング向上活動を通じて、働きがいと成長を支える企業文化の醸成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.2歳 18.2年 6,142,335円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育児休業取得率 70.6%
男女賃金差異(全労働者) 77.1%
男女賃金差異(正規雇用) 76.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 67.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人管理職(1名)、中途採用管理職比率(31.8%)、エンゲージメントスコア(47.5)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変動リスク


グローバルに自動車部品の製造・販売を展開しているため、各国の市場における経済低迷や物価動向により消費者の自動車購買意欲が低下し、主要得意先の生産が減少した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 主要得意先への依存リスク


本田技研工業および同社関係会社に対する売上高シェアが約64%を占めています。そのため、同社グループの売上が減少した場合や、受注計画が想定通りに進まず失注が発生した場合には、同社グループの事業や業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(3) サプライチェーンの寸断リスク


製品の製造に使用する一部の原材料や部品を特定の取引先に依存しています。これらの外部事業者において、操業停止やサプライチェーンの寸断などの予期せぬ事態が生じた場合、同社グループの生産活動や業績に悪影響を与える可能性があります。

(4) 環境・気候変動に関するリスク


気候変動による自然災害の頻発が調達・物流網を寸断するリスクがあります。また、社会全体の脱炭素化の流れが加速する中、カーボンニュートラルへの移行要請に対して適切に対応できなかった場合、同社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。