※本記事は、株式会社パルグループホールディングスの有価証券報告書(第54期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. パルグループホールディングスってどんな会社?
衣料品ブランドと生活雑貨ブランドの店舗・EC販売を幅広く展開し、常に新しいファッションライフを提案する企業です。
■(1) 会社概要
1973年10月にスコッチ洋服店のカジュアル部門を分離し、パルとして設立されました。その後、衣料品の店舗展開を進め、1994年4月には300円ショップ「3COINS」を出店して雑貨事業の展開を開始しました。2001年にJASDAQ市場に株式を上場、2006年には東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されています。2016年9月に持株会社体制へ移行し、現在のパルグループホールディングスに商号を変更しました。
従業員数は連結で4,441名、単体で59名です。筆頭株主は創業者関連とみられるスコッチ洋服店で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スコッチ洋服店 | 36.16% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.43% |
| 井上 隆太 | 5.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長兼社長は児島宏文氏が務めており、社外取締役比率は27.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 児島 宏文 | 代表取締役会長兼社長 | 1983年3月に同社入社。2001年5月に同社取締役、2025年3月に同社代表取締役社長に就任し、2025年11月より現職。 |
| 渡辺 隆代 | 取締役副会長 | 1984年4月に大同酸素に入社。2018年5月にパルの取締役に就任。2024年5月に同社取締役副会長に就任し、2025年11月より現職。 |
| 井上 隆太 | 専務取締役 | 1989年4月に帝人に入社。1995年5月に同社入社および取締役に就任し、2008年5月には同社代表取締役社長を務め、2026年3月より現職。 |
| 為田 招志 | 取締役専務執行役員 | 1981年4月に住友銀行に入行。2011年5月に同社入社および監査役に就任。2025年5月より現職。 |
| 嶋尾 博光 | 取締役専務執行役員 | 1984年4月に三和銀行に入行。2013年5月に同社入社および監査役に就任。2025年5月より現職。 |
社外取締役は、寺西賢作(元鴻池組代表取締役執行役員副社長)、新井良亮(元ルミネ代表取締役社長)、三浦清(元関西アーバン銀行代表取締役兼副頭取執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「衣料事業」「雑貨事業」および「その他」の事業を展開しています。
■衣料事業
同事業は、「常に新しいファッションライフの提案を通じて社会に貢献する」という社是のもと、移り変わるファッショントレンドを的確に捉えた多様なコンセプトの衣料品ブランドを展開しています。一般消費者を対象に、全国の店舗および自社ECプラットフォームを通じて衣料品の販売を行っています。
収益は、店舗やECサイトでの一般消費者への商品販売による売上から構成されています。この事業の運営は、主にパルやナイスクラップ、ノーリーズなどの子会社各社が行っています。
■雑貨事業
同事業は、販売価格330円(税込)の商品を主体とし、ファッション性を高めた雑貨を販売する「3COINS」を中心に展開しています。このほか、ナチュラルテイストの「サリュ」や生活関連雑貨の「バースデイ・バー」、アクセサリー主体の「ラティス」などのブランドを運営し、一般消費者向けに雑貨を提供しています。
収益は、各ブランドの店舗およびECサイトでの商品販売から得られる売上から成り立っています。この事業の運営は、衣料事業と同様に、主にパルやナイスクラップなどの子会社各社が担っています。
■その他
同事業は、衣料事業および雑貨事業の報告セグメントに含まれないその他の事業活動を行っています。人材派遣業などを主な事業内容としており、グループ内外へのサービス提供を展開しています。
収益は、サービスの提供に対する手数料等の収入から構成されています。この事業の運営は、主にクレセントスタッフ等の子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の直近5年間の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりの順調な成長を続けています。特に売上高は着実な伸長を見せており、最新期には2,300億円を突破しました。利益率も継続的に改善しており、直近2期間は11%台の高水準で推移し、強固な収益基盤が確立されていることが伺えます。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,342億円 | 1,645億円 | 1,925億円 | 2,078億円 | 2,347億円 |
| 経常利益 | 77億円 | 161億円 | 188億円 | 239億円 | 271億円 |
| 利益率(%) | 5.7% | 9.8% | 9.8% | 11.5% | 11.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 47億円 | 65億円 | 113億円 | 134億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が順調に拡大する中で、売上総利益率および営業利益率ともに改善が見られます。売上増によるスケールメリットやSNS連携を含む効率的な店舗運営等の施策が奏功し、売上規模の拡大と同時に利益水準の底上げが実現しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,078億円 | 2,347億円 |
| 売上総利益 | 1,163億円 | 1,331億円 |
| 売上総利益率(%) | 55.9% | 56.7% |
| 営業利益 | 237億円 | 271億円 |
| 営業利益率(%) | 11.4% | 11.6% |
販売費及び一般管理費(合計1,059億円)のうち、給料手当及び賞与が282億円(構成比27%)、賃借料が264億円(同25%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力の衣料事業が堅調な伸びを示しており、全体の収益成長を牽引しています。また、雑貨事業も店舗の大型化や商品ラインナップの拡充が奏功して売上を大きく伸ばしており、事業ポートフォリオの両輪として機能していることが分かります。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 衣料事業 | 1,278億円 | 1,448億円 |
| 雑貨事業 | 797億円 | 896億円 |
| その他 | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 2,078億円 | 2,347億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金を元手に借入金の返済を進めつつ、投資も手元資金で賄っており、財務的に優良な健全型の状態にあります。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 220億円 | 213億円 |
| 投資CF | 8億円 | -42億円 |
| 財務CF | -44億円 | -66億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.9%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も50.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「常に新しいファッションライフの提案を通じて社会に貢献する」ことを社是として掲げています。この理念の実現に向けて、商品やサービス、販売技術、財務体質、社員の質などあらゆる面において、顧客をはじめ株主や取引先、広く社会から認められ信頼される企業として成長していくことを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、「社員と株主みんなの幸せのための経営」を経営理念の根底に置いており、社員一人ひとりが「自主性・自発性」を存分に発揮できる状態を重視しています。オープンでクリアな評価制度を持ち、キャリアに関わらず自主提案を歓迎する風土があります。新しいブランドの多くが社員からの提案で生まれており、自発的な行動が会社の成長の原動力となっています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、企業基盤を強化し高収益体質の構築を目指す中で、以下の具体的な数値目標を掲げて企業経営に取り組んでいます。
・2029年2月期の連結売上高3,000億円の達成
・ROE(自己資本利益率)12%の安定的達成
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、成長戦略として「OMO施策の進化」と「ファン・コミュニティの深化」による収益基盤の強化を推進しています。具体的には、社員インフルエンサーによるSNS発信の強化や、自社ECプラットフォームの購買・行動データの解析により、トレンドの早期捕捉と需要予測の精度向上を図っています。また、雑貨事業を中心に商品の拡充や店舗の大型化を進め、経営効率の向上に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社員一人ひとりの自主性や自発性を引き出すことを人材戦略の柱としています。年功や社歴にとらわれない「働きに応じて平等」な人事評価制度を導入し、意欲的な社員にはブランドプロデュースや事業を任せる機会を提供しています。また、多様な働き方に応じたキャリアプランを用意し、現場の販売職を起点とした育成体系を通じて、次世代人材の発掘と育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 45.4歳 | 9.0年 | 12,833,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 36.8% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 65.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 57.6% |
※男性育児休業取得率については、有価証券報告書に該当する数値の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性店長比率(85%)、障がい者雇用率(3.0%)、全従業員における女性比率(54.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替変動による仕入コスト上昇
同社の商品のほとんどは輸入に依存しているため、為替相場の急激な変動による仕入価格の高騰がリスクとなります。特に売上比率の大きい雑貨事業においては、販売価格の上限が設定されている商品もあることから、円安等によるコスト上昇が売上総利益率を圧迫し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) サイバー攻撃等によるシステム障害
商品の発注や在庫管理、ECを通じた販売活動において、情報技術ネットワークやシステムを大々的に活用しています。不正アクセスや自然災害等により大規模なシステムトラブルが生じた場合、サービスの品質低下や事業運営の停止を招く恐れがあり、業績に直接的な悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) カントリーリスクや地政学リスク
商品の大部分を中国をはじめとするアジア諸国から輸入しているため、調達国における政治的・地政学的な問題や経済活動の混乱がリスクとなります。中東等での地政学リスク顕在化により、原油供給や素材調達に問題が生じた場合、商品の仕入に支障をきたす恐れがあり、安定的な供給体制の維持に影響を及ぼす可能性があります。



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