パルグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パルグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のパルグループホールディングスは、アパレルおよび3COINSなどの雑貨事業を展開する企業グループです。2022年2月期は、EC販売の強化や雑貨事業の好調により、売上高は前期比23.7%増、経常利益は大幅な増益を達成しました。コロナ禍からの回復傾向が鮮明です。


※本記事は、株式会社パルグループホールディングス の有価証券報告書(第50期、自 2021年3月1日 至 2022年2月28日、2022年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. パルグループホールディングスってどんな会社?


衣料品や雑貨の企画製造・小売を行う企業グループです。「3COINS」や「CIAOPANIC」等のブランドを展開しています。

(1) 会社概要


同社は1973年、株式会社スコッチ洋服店のカジュアル部門を分離して設立されました。1994年に300円ショップ「3COINS」を出店し雑貨事業に進出しました。その後、積極的なブランド開発と出店を続け、2016年に持株会社体制へ移行し現商号に変更しました。2021年にはディスカウントストア業態のローカスト株式会社を設立しています。

2022年2月末時点で、連結従業員数は3,632名、単体では66名です。筆頭株主は同社役員が代表を務める株式会社スコッチ洋服店で35.74%を保有しています。第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は日本カストディ銀行(信託口)と、資産管理を行う金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
スコッチ洋服店 35.74%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.17%
日本カストディ銀行(信託口) 8.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は井上隆太氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
井上英隆 代表取締役会長 1961年スコッチ洋服店設立、同社代表取締役社長。1973年同社設立、代表取締役社長。2008年より現職。
井上隆太 代表取締役社長 1989年帝人入社。2007年同社専務取締役管理本部長。2008年より現職。ナイスクラップ代表取締役社長兼任。
有光靖治 取締役兼執行役員副社長兼内部監査室長兼管理本部長 1953年帝人入社。1998年同社入社。2011年取締役副社長。2016年より現職。パル取締役兼任。
渡辺隆代 取締役 1984年大同酸素入社。2014年スコッチ洋服店代表取締役。2019年より現職。パル取締役兼任。


社外取締役は、樋口久幸(元レッキス工業取締役会長)、寺西賢作(元鴻池組代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「衣料事業」、「雑貨事業」および「その他」事業を展開しています。

衣料事業


「CIAOPANIC」「mystic」など、多様なコンセプトのブランドを通じて衣料品の企画・販売を行っています。トレンドを的確に捉えた商品を、一般消費者を対象に店頭およびECサイトで販売しています。

収益は、主に一般消費者への商品販売による代金です。運営は主に連結子会社の株式会社パルや株式会社ナイスクラップ等が行っています。

雑貨事業


「3COINS(スリーコインズ)」や「salut!(サリュ)」などのブランドを展開し、生活雑貨の販売を行っています。特に3COINSは300円を中心とした価格帯で、ファッション性の高い雑貨を提供し、100円ショップとの差別化を図っています。

収益は、店舗およびECにおける一般消費者への商品販売によるものです。運営は主に株式会社パルや株式会社マグスタイルが行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、店舗開発や人材派遣業などを行っています。

収益は、各事業のサービス提供対価です。運営は株式会社P.M.フロンティアや株式会社クレセントスタッフ等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2018年2月期から2022年2月期までの業績推移です。2021年2月期は新型コロナウイルス感染症の影響で大幅な減益となりましたが、2022年2月期は売上・利益ともにV字回復を果たしています。特に経常利益は前期比で大きく伸長し、コロナ禍前の水準に近づいています。

項目 2018年2月期 2019年2月期 2020年2月期 2021年2月期 2022年2月期
売上高 1,232億円 1,305億円 1,322億円 1,085億円 1,342億円
経常利益 70億円 78億円 92億円 11億円 77億円
利益率(%) 5.7% 6.0% 6.9% 1.0% 5.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 48億円 70億円 3億円 40億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大幅に改善しました。特に営業利益率は前年の1.3%から5.6%へと大きく向上しており、収益性が高まっています。

項目 2021年2月期 2022年2月期
売上高 1,085億円 1,342億円
売上総利益 592億円 743億円
売上総利益率(%) 54.6% 55.4%
営業利益 14億円 75億円
営業利益率(%) 1.3% 5.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が180億円(構成比27%)、賃借料が174億円(同26%)を占めています。売上原価については、商品仕入等の費用が売上原価の大部分を占めています。

(3) セグメント収益


衣料事業、雑貨事業ともに増収増益となりました。特に雑貨事業は売上高が前期比42.8%増、セグメント利益が同94.7%増と大きく成長し、全体の業績回復を牽引しました。衣料事業も前期の赤字から黒字転換を果たしています。

区分 売上(2021年2月期) 売上(2022年2月期) 利益(2021年2月期) 利益(2022年2月期) 利益率
衣料事業 755億円 871億円 -8億円 34億円 3.9%
雑貨事業 329億円 470億円 21億円 42億円 8.9%
その他 1億円 1億円 0億円 0億円 -
調整額 2億円 2億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 1,085億円 1,342億円 14億円 75億円 5.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローのパターンは「健全型」です。本業で稼いだ現金を借入金の返済や投資に充てており、財務体質の健全化が進んでいます。

項目 2021年2月期 2022年2月期
営業CF 15億円 80億円
投資CF -12億円 -7億円
財務CF 101億円 -181億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「常に新しいファッションライフの提案を通じて社会に貢献する」ことを社是としています。この実現に向け、商品、サービス、販売技術、財務体質や社員の質などすべての面において成長し、顧客、株主、取引先、社会から信頼される企業となることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同グループは、企業基盤を強化し、高収益体質の構築を目指しています。流行の変化が激しいファッション業界において、移り変わるトレンドを的確に捉え、多様なコンセプトの業態を開発することを重視しています。また、社員の健康と安全を確保しつつ、新しい生活様式に対応した事業運営を行う姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業経営の目標として、ROE(自己資本利益率)12%の安定的達成を掲げています。この目標達成のために、企業基盤の強化と高収益体質の構築に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


同社はEC売上の拡大と生活雑貨ブランドの強化を重点施策としています。自社ECサイト「PAL CLOSET」での売上倍増を目指し、インスタライブ等のIT活用やポイント施策を実施しています。また、巣ごもり需要に対応して「3COINS」などの雑貨事業に注力するとともに、新規出店を加速させ、「高感度ライフスタイル提案型の生活産業」としての成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営理念の実現に向け、社員の質の向上を重要視しています。流行に即した商品企画や仕入を行うため、事業部ごとに各店責任者が集まり販売動向等の検証を行うなど、現場の意見を吸い上げる体制をとっています。また、コロナ禍においても社員の健康面での安全確保を優先しつつ、EC販売強化のために人材リソースを投入するなど、環境変化に応じた柔軟な配置を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2022年2月期 45.3歳 10.0年 5,367,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ファッション動向の変化


ファッション動向は常に変化する流行に左右されるため、業績への影響を排除することは困難です。若年層向けマーケットでの競争も激化しています。同社は複数ブランドを展開し広範囲をカバーするとともに、週単位での動向検証を行い、流行に即した商品企画・仕入に努めています。

(2) 出店政策と保証金


駅ビルや商業施設等へのテナント出店を中心に展開していますが、魅力的な出店先が確保できない場合、業績に影響が出る可能性があります。また、2022年2月末時点で差入保証金が総資産の12.9%を占めており、貸主の倒産等により回収不能となるリスクがあります。

(3) スクラップアンドビルド費用


ファッショントレンドの変化に対応するため、不採算店舗の退店や業態変更を積極的に行っています。これに伴う事業再構築のための費用が必要経費として発生します。

(4) 大規模感染症等の影響


新型コロナウイルス感染症のような世界的な大規模感染症の拡大により、生産工場の閉鎖や店舗休業など、仕入・売上の双方に大きな影響が出る可能性があります。対策として、調達ソースの多角化やEC売上の強化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

【面接対策】パルの中途採用面接では何を聞かれるのか

多様なファッション・雑貨のブランド展開をしている大手アパレル企業のパルへの転職。採用面接は新卒の場合と違い、仕事への取り組み方やこれまでの成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策をすすめましょう。