※本記事は、NSユナイテッド海運株式会社の有価証券報告書(第100期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NSユナイテッド海運ってどんな会社?
鉄鋼原料をはじめとする資源や製品の海上輸送分野で専門性と総合力を兼ね備えた海運会社です。
■(1) 会社概要
1950年に日鐵汽船として設立されました。1962年に東邦海運と合併して新和海運と改称し、2010年には日鉄海運と合併して現在のNSユナイテッド海運となりました。合併による構造改革や船隊整備を通じて経営基盤を強化し、内外航にわたる専門性と総合力を兼ね備えた海運企業として事業を展開しています。
現在の従業員数は連結で669名、単体で261名です。筆頭株主は事業上の緊密な関係にある日本製鉄で、第2位も事業連携を行う事業会社の日本郵船、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。事業の要となる主要な関係会社との連携のもと、安定した海上輸送サービスを提供しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 33.36% |
| 日本郵船 | 18.35% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長は山中一馬氏が務めており、取締役9名のうち4名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山中 一馬 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1986年新日本製鐵(現日本製鉄)入社。同社人事・労政部部長、鹿島製鐵所総務部長、執行役員などを歴任。2020年に同社社外取締役に就任し、2023年より現職。 |
| 宮本 教子 | 取締役専務執行役員 | 1983年日本郵船入社。同社IRグループ長、経営委員、常務経営委員、監査役などを経て、2023年より現職。 |
| 藤田 透 | 取締役常務執行役員 | 1984年新和海運(現NSユナイテッド海運)入社。同社安全管理グループリーダー、執行役員、取締役執行役員を経て、2022年より現職。 |
| 北里 真一 | 取締役常務執行役員 | 1987年新和海運(現NSユナイテッド海運)入社。同社経理グループリーダー、総務グループリーダー委嘱の執行役員などを経て、2022年より現職。 |
| 金光 潔 | 取締役常務執行役員 | 1984年新和海運(現NSユナイテッド海運)入社。同社石炭グループリーダー、油送船グループリーダーなどを歴任。執行役員等を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、大西節氏(みずほフィナンシャルグループ元代表取締役副社長)、吉田正子氏(東京海上日動火災保険元常務取締役)、竹ケ原啓介氏(日本政策投資銀行元設備投資研究所長)、加野理代氏(田辺総合法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「外航海運事業」「内航海運事業」および「その他」事業を展開しています。
■外航海運事業
鉄鉱石、石炭、鉄鋼製品、非鉄鉱石等を輸送する撒積船や、LPG等を輸送するタンカーを用いて、国際的な海上輸送サービスを提供しています。主要顧客は日本製鉄をはじめとする国内外の資源・エネルギー関連企業であり、長期的な輸送契約を基盤としつつスポット輸送にも柔軟に対応しています。
顧客からの運賃や貸船料、運航手数料が主な収益源です。運営は親会社であるNSユナイテッド海運のほか、船舶の貸渡等を行うNEW HARVEST S.A.や船舶管理を行うNSユナイテッドマリンサービスなどの子会社・関連会社が連携して行っています。
■内航海運事業
国内水域において、鉄鋼製品、石灰石、セメント等を輸送する撒積船や、LPG、LNG等を輸送するタンカーを運航しています。国内の電力会社や製鉄所向けに火力発電用燃料や鉄鋼原料などの安定的な海上輸送網を提供しています。
国内の荷主から受け取る運賃や貸船料などが主な収益源となります。事業の運営は主に子会社のNSユナイテッド内航海運やNSユナイテッドタンカーなどが担当し、内航海運における専門的な輸送サービスを展開しています。
■その他
海運事業をサポートするための情報システム管理や、経理・総務などのバックオフィス業務の受託サービスを提供しています。グループ全体の業務効率化や情報セキュリティの強化を目的とした事業です。
グループ内からの業務受託に伴う手数料等が主な収益源です。情報サービス業等はNSユナイテッドシステムが、総務・経理などの業務受託はNSユナイテッドビジネスが担当し、グループの事業基盤を支えています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は為替や市況の影響により変動が見られますが、直近の2026年3月期は計画的な老齢船の売却等により、経常利益および当期利益は前年度から増益に転じました。安定的な長期契約を背景に、堅調な利益水準を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,959億円 | 2,508億円 | 2,331億円 | 2,474億円 | 2,298億円 |
| 経常利益 | 266億円 | 334億円 | 222億円 | 190億円 | 210億円 |
| 利益率(%) | 13.6% | 13.3% | 9.5% | 7.7% | 9.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 275億円 | 324億円 | 167億円 | 151億円 | 172億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年度比で減少しましたが、売上原価の減少等により売上総利益は増加し、売上総利益率および営業利益率ともに改善しています。効率的な運航とコスト管理の徹底が奏功し、本業の収益性は高まっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,474億円 | 2,298億円 |
| 売上総利益 | 280億円 | 290億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.3% | 12.6% |
| 営業利益 | 202億円 | 205億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 8.9% |
販売費及び一般管理費(一般管理費)のうち、役員報酬及び従業員給与が42億円(構成比50%)、賞与引当金繰入額が5億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
外航海運事業は市況の堅調な推移や効率的な配船により利益を確保しましたが、為替の円高基調などにより売上は減少しました。内航海運事業は電力関連貨物の輸送量が堅調に推移し、売上が増加しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 外航海運事業 | 2,162億円 | 1,971億円 |
| 内航海運事業 | 313億円 | 327億円 |
| 連結(合計) | 2,474億円 | 2,298億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは改善型のパターンを示しています。営業で稼いだ資金と船舶などの資産売却によって得た資金を、有利子負債の返済などに充てることで財務体質の強化を進めています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 349億円 | 354億円 |
| 投資CF | -82億円 | 20億円 |
| 財務CF | -178億円 | -282億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.8%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も63.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「誠実で良質な海上輸送サービスの提供を通じて社会の発展に貢献する」という基本理念を掲げています。さらに、信用・信頼される堅実な経営の実践、安全運航と環境保全の両立、お客様の要請への即応と自己変革の挑戦、人を育て活かす活力あるグループの構築という4つの経営理念により、企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
安全運航の徹底を最優先とし、常に船舶運航技術の向上に向けて研鑽を積む文化が根付いています。また、人的資本戦略に基づき、多様な人材が誇りや意欲を持ち、自ら考え行動できる環境整備を重視しており、働く喜びを実感できる活力あふれる組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けたビジョンとして「クリーンでサステナブルな海上輸送における必要不可欠な存在」を目指しています。中期経営計画「FORWARD 2030 Ⅱ」において、財務規律を維持しつつ継続的な利益成長を図るため、以下の財務目標を定めています。
* 営業利益:200億円
* ROE:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存中核事業領域の深化と新規成長事業領域の拡大を事業戦略に掲げています。特に環境対応への投資を重点施策としており、メタノール二元燃料船やアンモニア燃料船の導入、省エネデバイスの活用などによりGHG排出量の大幅削減を目指します。また、船舶DXを通じた安全・運航効率の向上にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を企業価値創造の基盤と位置づけ、「自ら考え行動し、専門性と広い視野をもって課題解決に挑む人材」の育成を進めています。陸上社員には挑戦と成果を評価する人事制度を運用し、海上社員には安全運航水準を維持・向上するための体系的な教育訓練を実施するなど、人材の確保・育成・定着に向けた環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.2歳 | 14.4年 | 11,966,894円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.3% |
| 男性育児休業取得率 | 84.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 51.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人権研修受講率(100%)、平均法定時間外労働時間(9.6時間)、健康診断受診率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コンプライアンスリスク
ハラスメントや贈賄、不正、インサイダー取引などの法令違反が発生した場合、損害賠償だけでなく企業の信用低下や事業活動に影響を及ぼす可能性があります。同社は内部統制・コンプライアンス委員会を定期的に開催し、全社的なコンプライアンス意識の徹底を図っています。
■(2) 人権に関するリスク
サプライチェーン上で差別や強制労働などの人権侵害が発生した場合、取引停止や信用失墜につながる恐れがあります。同社は「ビジネスと人権」への関心の高まりを受け、人権デューデリジェンスの推進や取引先向けガイドラインの策定を通じて、人権尊重の取り組みを強化しています。
■(3) 人材確保リスク
安定的な事業継続と安全運航には、海陸ともに優秀な人材の確保が不可欠です。環境対応による新資格要件への対応や、地政学リスク・感染症等に伴う船員配乗費用の増大、離職による人材流出が進んだ場合、事業に大きな影響を与える可能性があります。
■(4) 情報セキュリティリスク
業務全般でITネットワークを活用しているため、サイバー攻撃やシステム障害などによる情報漏洩やデータ改ざんが発生した場合、信用や営業活動に悪影響を及ぼすリスクがあります。同社はセキュリティ規程の整備やバックアップ体制の構築等の対策を進めています。



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