※本記事は、NSユナイテッド海運株式会社の有価証券報告書(第97期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NSユナイテッド海運ってどんな会社?
同社は日本製鉄グループと日本郵船グループを背景に持つ海運会社で、鉄鋼原料やエネルギー資源の海上輸送を主力事業としています。
■(1) 会社概要
1950年に日鐵汽船として日本製鐵から分離独立して創業しました。1962年に東邦海運と合併し新和海運となり、2010年には日鉄海運と合併して現在のNSユナイテッド海運となりました。2015年にはNSユナイテッド内航海運を完全子会社化し、グループの総合力を強化しています。2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。
連結従業員数は657名(単体232名)です。筆頭株主は鉄鋼メーカーの日本製鉄、第2位は大手海運会社の日本郵船、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 33.36% |
| 日本郵船 | 18.35% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長社長執行役員は山中一馬氏が務めています。社外取締役比率は23.1%(3名/13名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山中 一馬 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1986年新日本製鐵入社。日本製鉄執行役員、常務執行役員などを歴任し、2023年6月より現職。 |
| 宮本 教子 | 取締役専務執行役員 | 1983年日本郵船入社。同社常務経営委員、監査役などを経て、2023年6月より現職。 |
| 宮井 成彦 | 取締役常務執行役員 | 1984年新和海運入社。同社近海グループリーダー、執行役員などを経て、2021年6月より現職。 |
| 藤田 透 | 取締役常務執行役員 | 1984年新和海運入社。同社安全管理グループリーダー、執行役員などを経て、2022年6月より現職。 |
| 北里 真一 | 取締役常務執行役員 | 1987年新和海運入社。同社経理グループリーダー、執行役員などを経て、2022年6月より現職。 |
| 谷水 一雄 | 取締役相談役 | 1981年住友金属工業入社。新日鐵住金常務執行役員、同社代表取締役社長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 山中 一馬 | 取締役 | 1986年新日本製鐵入社。日本製鉄常務執行役員などを経て、2023年6月より現職(代表取締役社長と兼務)。 |
社外取締役は、大西節(元みずほフィナンシャルグループ副社長)、井上龍子(弁護士・元農林水産省)、吉田正子(元東京海上日動火災保険常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「外航海運事業」、「内航海運事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 外航海運事業
鉄鉱石、石炭、鉄鋼製品、非鉄鉱石、穀物などを運ぶ各種専用船や不定期船、LPGや石油製品などを運ぶタンカーを世界規模で運航しています。大手鉄鋼メーカーや電力会社などの顧客に対し、資源・エネルギー・製品の海上輸送サービスを提供しています。
収益は主に顧客からの運賃収入や貸船料収入、運航手数料などからなります。運営は同社が中心となり、シンガポールのNS UNITED BULK PTE.LTD.やパナマの船舶保有子会社などが事業を行っています。
■(2) 内航海運事業
国内水域において、鉄鋼製品・原料、石灰石、セメント、LPG、LNGなどの海上輸送を行っています。主要顧客である国内産業界に対し、内航船による安定的な輸送サービスを提供しています。
収益は顧客からの運賃収入や貸船料収入などが中心です。運営は主に子会社のNSユナイテッド内航海運、NSユナイテッドタンカー、その他関連会社が行っています。
■(3) その他
上記海運事業に関連する情報処理サービスの提供や、不動産賃貸などの事業を行っています。
収益は情報サービス料や賃貸料などからなります。運営はNSユナイテッドシステム、NSユナイテッドビジネスなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2019年3月期から2023年3月期までの5期間の推移を見ると、売上高は2021年3月期に一時減少したものの、その後急激に回復・拡大し、2023年3月期には2500億円規模に達しています。経常利益も同様に2022年3月期から大幅に伸長し、利益率も13%台の高水準を維持しています。
| 項目 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,511億円 | 1,484億円 | 1,385億円 | 1,959億円 | 2,508億円 |
| 経常利益 | 78億円 | 55億円 | 55億円 | 266億円 | 334億円 |
| 利益率(%) | 5.2% | 3.7% | 4.0% | 13.6% | 13.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 93億円 | 59億円 | 61億円 | 236億円 | 276億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は約549億円増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は若干低下したものの、依然として高い水準を維持しており、営業利益も前期の267億円から325億円へと増加しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,959億円 | 2,508億円 |
| 売上総利益 | 326億円 | 394億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.6% | 15.7% |
| 営業利益 | 267億円 | 325億円 |
| 営業利益率(%) | 13.6% | 13.0% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給与が35億円(構成比51%)、賞与引当金繰入額が5億円(同7%)を占めています。売上原価に関しては、海運業費用及びその他の営業費用が2115億円(構成比100%)を占めています。
■(3) セグメント収益
外航海運事業は、ドライバルク市況の変動があったものの、長期契約による安定収益や円安効果により大幅な増収増益となりました。内航海運事業も、鉄鋼原料輸送の堅調な推移や効率配船により増収増益を達成しました。
| 区分 | 売上(2022年3月期) | 売上(2023年3月期) | 利益(2022年3月期) | 利益(2023年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 外航海運事業 | 1,722億円 | 2,241億円 | 249億円 | 301億円 | 13.4% |
| 内航海運事業 | 237億円 | 268億円 | 18億円 | 24億円 | 9.1% |
| その他 | 0億円 | 0億円 | 0億円 | 0億円 | 0.0% |
| 調整額 | 4億円 | 4億円 | 0億円 | 0億円 | 0.0% |
| 連結(合計) | 1,959億円 | 2,508億円 | 267億円 | 325億円 | 13.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
NSユナイテッド海運のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
同社は、営業活動により潤沢な資金を生み出しており、これは主に事業活動による利益と減価償却費の計上によるものです。一方で、投資活動では船舶の取得に多額の資金を投じていますが、前年と比較すると支出は抑制されています。財務活動では、長期借入金の返済等により資金の支出が見られます。これらの活動の結果、同社の現金及び現金同等物は増加しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 329億円 | 429億円 |
| 投資CF | 1億円 | -20億円 |
| 財務CF | -299億円 | -324億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「誠実で良質な海上輸送サービスの提供を通じて社会の発展に貢献します」という基本理念を掲げています。海運業を通じて世界中の国々と地域を結び、人々の暮らしを豊かにするという使命を担い、経済のグローバル化に伴ってますます重要となる役割を果たしていくことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「信用・信頼」「安全運航・環境保全」「お客様への即応・自己変革」「人を育て活かす」の4つを経営理念として掲げています。堅実な経営の実践、船舶の安全運航と技術向上による環境保全、顧客要請への即応と自己変革への挑戦、そして働く喜びを実感できる活力あるグループの構築を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「FORWARD 2030」において、ESGの取り組みを中核に据え、収益性と社会性を兼ね備えた企業を目指しています。2023年度の目標として以下の数値を掲げていましたが、2022年度時点でこれらを達成しています。
* 営業利益:100億円以上
* ROE目標:10.0%超
* ネットD/Eレシオ目標:1.0倍以下
■(4) 成長戦略と重点施策
「ブランド力の向上」「サステナブルな事業構造の構築」「レジリエントな経営基盤の確立」を重点戦略としています。ESG経営の推進、2050年カーボンニュートラルに向けたアンモニア燃料船やバイオディーゼル燃料船等の導入、財務基盤の強化に取り組んでいます。
* 2030年までに輸送単位当たりのCO2排出量を2019年比20%削減
* 2050年までにカーボンニュートラル実現
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人を育て活かす」を経営理念の一つとし、従業員一人ひとりがプロフェッショナルに育つよう、OJTを軸とした多様な研修機会を提供しています。また、多様な個性を活かし、事業環境の変化に対応できる人材を育成するため、人事制度の見直しや働き方改革、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 39.9歳 | 13.8年 | 10,735,315円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 42.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 67.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 69.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(22.0%)、有給休暇平均取得日数(9.8日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海難事故リスク
海運業においては、海難事故が発生した場合、人命・貨物・船舶の損失や海洋汚染のリスクがあります。同社は安全管理マニュアルの策定や教育・研修を実施し、安全運航に努めていますが、万一事故が発生した場合は、保険でカバーしきれない損失が発生する可能性があります。
■(2) 公的規制及び環境保全
船舶の安全運航や環境保全に関する国際的な規制や法令の変更により、対応費用が増加したり、事業活動が制限されたりする可能性があります。特にGHG(温室効果ガス)排出規制やバラスト水管理条約などへの対応が求められており、これらが業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 海運市況変動リスク
運賃・用船料市況は世界経済の動向や船腹需給バランスの影響を受け変動します。同社は長期契約による安定化を図っていますが、中短期契約で運航する船舶も一定程度存在するため、大幅な市況変動が損失につながる可能性があります。
■(4) 燃料油価格変動リスク
船舶の燃料油価格は原油市場の動向により変動するため、損益に影響を与える可能性があります。同社は調整条項付き契約や燃料油スワップ等でリスク軽減を図っていますが、価格の急激な変動により損失を被る可能性があります。



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