メンバーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メンバーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場するネットビジネス支援企業です。大手企業や成長企業のデジタルビジネス運用を専任チーム型で支援するサービスを展開しています。当期の連結業績は、売上収益が前期比18.2%増の177億円と伸長した一方、積極的な人材投資等により営業利益は23.2%減の14億円となりました。


※本記事は、株式会社メンバーズの有価証券報告書(第28期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. メンバーズってどんな会社?


企業のデジタルビジネス運用を専任チームで支援し、社会課題解決とビジネス成果の両立を目指す企業です。

(1) 会社概要


1995年に設立され、インターネット黎明期よりWebサイト制作等の支援事業を開始しました。2006年に名古屋証券取引所セントレックス市場へ上場し、2017年には東京証券取引所市場第一部へ指定替えを行っています。その後、2020年に社内カンパニー制へ移行し、特定の技術領域に特化したカンパニーを次々と設立するなど組織再編を進めました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はプライム市場に上場しています。

同社グループは、親会社であるメンバーズと、再生可能エネルギー関連事業を行う子会社等により構成されています。連結従業員数は2,274名、単体では2,274名です。筆頭株主は創業者の剣持忠氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位はかつて資本業務提携関係にあったデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムです。

氏名 持株比率
剣持 忠 22.27%
日本カストディ銀行(信託口) 15.33%
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム 12.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役兼社長執行役員は髙野明彦氏が務めています。取締役7名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は71.4%です。

氏名 役職 主な経歴
剣持 忠 代表取締役兼会長執行役員 1995年同社代表取締役社長に就任。複数のグループ会社取締役などを経て、2023年4月より現職。
髙野 明彦 代表取締役兼社長執行役員 日本興業銀行、新生銀行を経て2005年同社入社。常務執行役員、取締役専務執行役員などを歴任し、2023年4月より現職。


社外取締役は、甘粕潔(元日本公認不正検査士協会専務理事)、金井政明(良品計画代表取締役会長)、玉上進一(プレステージ・インターナショナル代表取締役)、安岡美佳(北欧研究所代表)、三宅香(元イオン執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ネットビジネス支援事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) EMC事業


大手企業向けに、デジタルを活用したビジネス成果とユーザーエンゲージメントの向上を支援する専任チーム「EMC(Engagement Marketing Center)」を提供しています。顧客視点での課題発見から、デジタルサービスやプロダクトの開発・運用までを包括的に支援します。

収益は、顧客企業から受け取る運用支援サービス料等が主な源泉です。運営は主に同社が行っており、顧客専任のデジタルクリエイターチームを編成してサービスを提供しています。

(2) PGT事業


デジタル・IT技術への投資に積極的な成長企業を対象に、「Product Growth Team(PGT)」を提供しています。デジタルクリエイターが顧客専任チームを編成し、顧客と一丸となってデジタルプロダクトの開発を推進することで、内製化支援や長期的な運用体制の構築を行います。

収益は、顧客企業から受け取る開発・支援サービス料等が主な源泉です。運営は主に同社が行っており、データ分析やSaaS導入など特定の専門領域に特化した社内カンパニーもこの事業に含まれます。

(3) その他事業


ネットビジネス支援事業以外に、障がい者雇用支援サービスおよび再生可能エネルギー発電事業を展開しています。特に環境分野では、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めています。

収益は、サービスの提供対価や売電収入等です。運営は、同社および連結子会社のメンバーズエナジー等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は順調に拡大傾向にあり、直近5期間で倍増近い成長を見せています。一方、利益面では、2022年3月期までは増益基調でしたが、直近の2023年3月期は減益となりました。これは将来の成長を見据えた積極的な人材採用や育成投資によるコスト増が要因です。当期利益も同様の傾向を示していますが、黒字基調は維持しています。

項目 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
売上収益 89億円 106億円 121億円 149億円 177億円
税引前利益 10億円 12億円 12億円 19億円 14億円
利益率(%) 10.9% 11.7% 10.3% 12.7% 7.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 9億円 9億円 14億円 10億円

(2) 損益計算書


売上収益が増加する一方で、営業利益は減少しました。これは事業拡大に伴うコストの増加率が売上の伸びを上回ったためです。売上総利益率は概ね30%前後で推移していますが、営業利益率は低下しており、コストコントロールと投資のバランスが課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期
売上収益 149億円 177億円
売上総利益 48億円 52億円
売上総利益率(%) 31.9% 29.5%
営業利益 19億円 14億円
営業利益率(%) 12.6% 8.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当を含む人件費が24億円(構成比63%)、採用教育費が4億円(同12%)を占めています。売上原価においては、労務費が104億円で売上原価全体の84%を占めており、労働集約的なビジネスモデルであることが分かります。

(3) セグメント収益


同社はネットビジネス支援事業の単一セグメントですが、事業全体としては増収を達成しました。顧客企業のデジタル投資需要は底堅く、Web制作や運用サービスの受注が増加しました。一方で、積極的な採用活動による人件費増や教育コストの増加が利益を圧迫し、利益率は低下しました。

区分 売上(2022年3月期) 売上(2023年3月期) 利益(2022年3月期) 利益(2023年3月期) 利益率
Total 149億円 177億円 19億円 14億円 8.2%
連結(合計) 149億円 177億円 19億円 14億円 8.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た現金を、投資活動(人材や設備等)に充てつつ、借入金の返済も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。本業でしっかりと現金を稼ぎ出し、将来への投資と財務体質の改善をバランスよく進めている状態です。

項目 2022年3月期 2023年3月期
営業CF 17億円 14億円
投資CF -1.0億円 -12億円
財務CF -5億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」をミッションに掲げています。マーケティングを「人の心を動かすもの」と捉え、企業と人々の自発的な協力関係づくりを支援することで、マーケティングや企業活動を「社会をより良くするもの」へと転換し、世界の人々の幸福と社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


「社会への貢献」「社員の幸せ」「会社の発展」を同時に実現することを目指す「超会社」コンセプトを経営指針として掲げています。また、コアバリューとして「貢献」「挑戦」「誠実」「仲間」を重視し、これらをあらゆる活動の根幹としています。社員一人ひとりが自律的に考え行動する「全員参加型経営」も特徴です。

(3) 経営計画・目標


2030年の目指す姿として「VISION2030」を掲げ、日本中のクリエイターの力で気候変動や人口減少などの社会課題解決へ貢献することを目指しています。

* 社員数:10,000名
* 営業利益:100億円
* 2025年目標:売上収益25%成長、営業利益率10%

(4) 成長戦略と重点施策


「DGT(Digital Growth Team)による世界一のデジタルビジネス運用支援」を掲げ、デジタルクリエイター専任チームによる成果型運用サービスの拡大を目指します。従来のWebサイト運用に加え、データ分析やAI活用などの高付加価値領域への対応を強化するため、専門特化型カンパニーの設立や人材育成への投資を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本の最大化」を掲げ、コアバリューへの共感を重視した採用と、クリエイターとしての専門性を高める育成に注力しています。特に、Web運用以外の専門スキルを持つ人材の育成や、次世代リーダーの輩出を目指しています。また、自律分散協働型の組織づくりを推進し、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2023年3月期 29.9歳 3.7年 4,819,977円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 31.8%
男性育児休業取得率 59.1%
男女賃金差異(全労働者) 89.2%
男女賃金差異(正規雇用) 88.0%
男女賃金差異(非正規) 88.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(8.9%)、女性社員比率(44.9%)、ソーシャルクリエイター数(8,349人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保・育成に関するリスク


デジタルビジネス領域における技術者需要の高まりにより、優秀な人材の採用が困難な状況が続いています。採用競争の激化や育成の遅れ、離職率の上昇などが生じた場合、サービス提供能力が低下し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新への対応リスク


AI等の新技術の進化スピードが速く、これらを活用した新サービスが次々と登場しています。同社も技術習得に努めていますが、想定を超える急激な技術革新や代替技術の登場により、同社のサービスの優位性が低下した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 景気変動の影響


同社の主力事業であるインターネット広告やWeb制作は、企業の広告宣伝費や販促費の影響を受けやすい傾向にあります。国内経済の景気後退や企業の広告自粛等により市場成長が鈍化した場合、同社の受注減少につながる可能性があります。

(4) 気候変動に関するリスク


電力価格の上昇に伴う環境価値証書価格の高騰や、省エネ規制の強化による対応コストの増加が懸念されます。また、異常気象による災害リスクも想定され、これらの要因が同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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