メンバーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メンバーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するメンバーズは、制作やマーケティング、デジタルサービス開発、脱炭素などの領域でDX伴走支援サービスを展開しています。企業のDX投資拡大を背景に直近の売上収益は過去最高を更新し、営業利益も前期比で大幅な増益を達成するなど、収益性が高まり好調に推移しています。


※本記事は、株式会社メンバーズの有価証券報告書(第31期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. メンバーズってどんな会社?


メンバーズは、専門スキルを持つデジタルクリエイターが顧客専任チームを編成し、伴走型のDX支援を提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1995年に設立され、ダイレクトマーケティング支援を開始しました。2006年の上場を経て、2020年には子会社7社を吸収合併してカンパニー制へと移行しています。2024年に事業領域を制作やデジタルマーケティング、開発、データ活用支援の4事業に再編し、2026年にはアジケを完全子会社化してデザイン体制を強化しました。

現在の従業員数は連結で2,866名、単体で2,836名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者の剣持忠氏であり、第2位および第3位には資産管理業務などを行う信託銀行の信託口が続いており、創業者と機関投資家が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
剣持 忠 22.48%
日本カストディ銀行(信託口) 9.11%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役兼社長執行役員は髙野明彦氏が務めています。社外取締役比率は71.4%です。

氏名 役職 主な経歴
髙野 明彦 代表取締役兼社長執行役員 1999年日本興業銀行入行。2005年同社入社。常務執行役員、取締役専務執行役員等を経て2023年代表取締役兼社長執行役員に就任。2024年より現職。
剣持 忠 取締役 1995年同社代表取締役社長に就任。エンゲージメント・ファースト取締役などを経て2023年代表取締役兼会長執行役員に就任。2026年より現職。


社外取締役は、奥村武博(奥村武博公認会計士・税理士事務所所長)、安岡美佳(デンマーク・ロスキレ大学准教授)、三宅香(日本気候リーダーズ・パートナーシップ共同代表)、福士博司(東洋紡社外取締役)、池照直樹(ケンタッキー・フライド・チキン常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、DX伴走支援サービス事業を展開しています。

(1) DX伴走支援サービス事業


同社グループは、企業のデジタル化を共に手を動かしながら推進するDX伴走支援サービスを提供しています。制作やUIUX、マーケティングDX、デジタルサービス開発、データ活用、脱炭素DXの5領域において、多様な専門スキルを持つデジタルクリエイターが顧客専任チームを編成してハンズオンで支援を行います。

収益源は、顧客企業に提供する企画・実行フェーズにおける専門的な伴走支援サービスに対する対価です。顧客自身のデジタル人材育成と内製組織の確立を支援することで継続的な取引関係を構築しています。運営はメンバーズのほか、デザイン領域に強みを持つアジケなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の売上収益は直近5期間で一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では一時的な落ち込みが見られたものの、直近の期では高付加価値なDX領域への転換や稼働率の改善が奏功し、税引前利益および当期利益ともに大幅な増益を達成して収益性が回復しています。

項目 22年3月期 23年3月期 24年3月期 25年3月期 26年3月期
売上収益 149億円 177億円 205億円 223億円 244億円
税引前利益 19億円 14億円 1億円 5億円 16億円
利益率(%) 12.7% 7.9% 0.7% 2.1% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 10億円 1億円 3億円 12億円

(2) 損益計算書


売上収益が順調に伸長する中で、DX領域への事業シフトや人材の稼働率向上が進んだことにより、売上総利益は大きく増加しています。将来への投資による販売費及び一般管理費の増加を吸収し、営業利益も前期比で大幅に改善しました。

項目 25年3月期 26年3月期
売上収益 223億円 244億円
売上総利益 47億円 64億円
売上総利益率(%) 21.2% 26.4%
営業利益 5億円 16億円
営業利益率(%) 2.2% 6.6%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が32億円(構成比66%)、採用教育費が4億円(同9%)を占めています。また、売上原価においてはデジタル人材による労働集約型のサービス提供が主力であるため、労務費が151億円(構成比84%)と大部分を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループはDX伴走支援サービス事業の単一セグメントです。企業のDX内製化需要やサステナビリティに関するニーズを的確に捉えて支援領域を拡大させた結果、売上収益が順調に成長するとともに、高付加価値化の進展により利益面でも高い伸びを記録しています。

区分 売上(25年3月期) 売上(26年3月期) 利益(25年3月期) 利益(26年3月期) 利益率
連結(合計) 223億円 244億円 5億円 16億円 6.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)と言えます。

項目 25年3月期 26年3月期
営業CF 12億円 16億円
投資CF -0億円 -2億円
財務CF -9億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」をミッションに掲げています。マーケティングを人の心を動かすものと捉え、企業と人々の自発的貢献意欲を持った協力関係(MEMBERSHIP)づくりを支援することで、マーケティングや企業活動を社会をより良くするものへ転換し、世界の人々に心の豊かさを広げることを使命としています。

(2) 企業文化


同社は経営指針として「超会社」コンセプトを掲げ、社会への貢献、社員の幸せ、会社の発展の3つを妥協なく同時に実現することを目指しています。社員一人ひとりが高い帰属意識と主体性を持って経営に関わる「全員参加型経営」を組織文化の核心としており、日々の業務を通じた社会課題解決への挑戦を促す風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は2035年をターゲットとした長期ビジョン「FUTURE VISION」のもと、持続的な高成長と社会課題の解決を目指しています。直近の経営計画および長期的な目標として、以下の数値を掲げています。

* 2027年3月期における付加価値売上高成長率15%
* 2027年3月期における営業利益率10%の達成
* 2035年までにインパクト事例1,000件、営業利益100億円の達成

(4) 成長戦略と重点施策


顧客企業においてAIを活用したDX内製化のニーズが高まる中、同社はDX現場支援ポジションへの転換を最重要戦略として推進しています。実践的なプログラムを通じた人材育成によりデジタルクリエイターの専門性を高めるとともに、AIの戦略的利活用や脱炭素領域への事業投資を強化することで、顧客の持続可能なビジネス変革に伴走する体制を確固たるものにしています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本を企業価値創造の起点と位置付け、「異能が輝くデジタルクリエイター集団」の創出を人材戦略の中核に据えています。AI時代において希少化する実装人材を自社で育成するため、体系的な研修プログラム「SINCA」を展開して専門スキルの見える化を図るほか、変化を楽しみながらスキルを高速で更新し続ける学習文化の醸成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
26年3月期 31.1歳 4.2年 5,520,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 32.8%
男性育児休業取得率 84.0%
男女賃金差異(全労働者) 87.8%
男女賃金差異(正規雇用) 88.5%
男女賃金差異(パート・有期) 89.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(47.5%)、離職率(12.1%)、従業員持株会加入率(51.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 生成AIなど技術革新による代替リスク


生成AIをはじめとする技術の加速度的な進展により、既存の主力事業であったWeb運用などの領域で業務の自動化が進む可能性があります。同社は新技術の習得や人材育成を進めていますが、想定を超えて急激な技術革新が進んだ場合、サービスの優位性が消失し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報セキュリティと個人情報保護


事業の性質上、システム上の障害や不正アクセス等による機密情報・個人情報の流出リスクが存在します。同社はプライバシーマークや情報セキュリティマネジメントシステムの認証を取得し、厳重な管理体制を敷いていますが、予期せぬ問題が発生した場合は社会的信用の失墜につながる恐れがあります。

(3) 専門人材の確保・育成と離職防止


DX領域における高付加価値なサービスを持続的に提供するには、高度な専門スキルを持つデジタルクリエイターの確保が不可欠です。人材獲得競争の激化により優秀な人材の採用が困難になる場合や、採用した人材の戦力化の遅れ、高い離職率などが発生した場合は、事業成長の妨げとなる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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