※本記事は、株式会社ケアサービス の有価証券報告書(第34期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ケアサービスってどんな会社?
通所介護(デイサービス)を主力とする在宅介護事業と、葬儀関連のエンゼルケア事業を柱とする企業です。
■(1) 会社概要
1970年に寝たきり老人等の布団乾燥消毒業として創業し、1991年にケアサービスを設立しました。1992年のケアセンター開設以降、訪問入浴やデイサービス等の介護事業を拡大し、2004年に大阪証券取引所ヘラクレス(現グロース)へ上場を果たしました。2015年には中国・上海に現地法人を設立し海外展開も試みましたが、2025年3月期に同子会社の清算を決定しています。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
2025年3月31日現在の従業員数は、連結・単体ともに1,040名です。筆頭株主は有限会社友愛(43.83%)で、第2位は代表取締役社長の福原俊晴氏(14.29%)、第3位はケアサービス従業員持株会(3.98%)となっており、創業者一族および関係者が大株主の上位を占める安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社友愛 | 43.83% |
| 福原俊晴 | 14.29% |
| ケアサービス従業員持株会 | 3.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は福原俊晴氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 福原 敏雄 | 代表取締役会長 | 1970年サンセルフ福原創業。1991年同社設立に伴い代表取締役社長に就任。2019年より現職。 |
| 福原 俊晴 | 代表取締役社長 | 2004年レッグス(現CLホールディングス)入社。2010年同社入社。経営企画部長等を経て2019年より現職。 |
| 木高 毅史 | 取締役副社長管理本部長 | 日本レストランシステム常務取締役、ドトール・日レスホールディングス常務取締役を経て2020年同社入社。2023年より現職。 |
社外取締役は、藤好優臣(藤好公認会計士事務所代表)、園部洋士(至高法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「在宅介護サービス事業」および「シニア向け総合サービス事業」を展開しています。
■(1) 在宅介護サービス事業
東京23区を中心とした首都圏において、通所介護(デイサービス)、訪問入浴、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援、小規模多機能型居宅介護等のサービスを提供しています。また、福祉用具の貸与・販売や配食サービスも行っています。特にデイサービス施設のドミナント展開を推進し、地域密着型のサービス提供を行っています。
主な収益源は、介護保険制度に基づく介護報酬および利用者からの自己負担金です。また、配食サービス等は介護保険外の収益となります。運営は主にケアサービスが行っています。
■(2) シニア向け総合サービス事業
日本国内および中国において、エンゼルケアサービス(湯灌、死化粧、納棺など)を提供しています。また、日本国内では遺品整理やハウスクリーニング等のクリーンサービスも手掛けています。エンゼルケアは創業期より「最後の介護」と位置付けられています。
主な収益源は、葬儀社や冠婚葬祭互助会などの発注者から受け取るサービス料です。運営は主にケアサービスが行っています。なお、中国においては子会社が事業を行っていましたが、清算手続きが進められています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は87億円から99億円へと右肩上がりで推移しており、堅調な事業拡大が続いています。経常利益に関しても、3.2億円から5.8億円へと増加傾向にあり、利益率も改善しています。直近の2025年3月期は増収増益となりましたが、当期純利益は前期比で若干の減少となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 87億円 | 90億円 | 92億円 | 96億円 | 99億円 |
| 経常利益 | 3.2億円 | 3.3億円 | 4.8億円 | 5.6億円 | 5.8億円 |
| 利益率(%) | 3.7% | 3.7% | 5.1% | 5.8% | 5.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.9億円 | 1.9億円 | 3.6億円 | 3.8億円 | 3.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益、営業利益ともに微増となりました。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しており、安定した収益性を維持しています。営業利益率は5.3%と、前期と同水準を保っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 96億円 | 99億円 |
| 売上総利益 | 13億円 | 13億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.1% | 13.4% |
| 営業利益 | 5.2億円 | 5.2億円 |
| 営業利益率(%) | 5.4% | 5.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.4億円(構成比31%)、役員報酬が0.9億円(同11%)を占めています。売上原価に関しては詳細な内訳データがありません。
■(3) セグメント収益
在宅介護サービス事業は、デイサービスの営業日変更(日曜営業終了)などの影響で微減収減益となりました。一方、シニア向け総合サービス事業(エンゼルケア等)は売上高、利益ともに2桁成長を遂げ、全社の増収増益を牽引しました。全社費用等の調整額の影響により、連結全体の利益率は各セグメント利益率よりも低くなっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 在宅介護サービス事業 | 69億円 | 69億円 | 5.2億円 | 4.4億円 | 6.4% |
| シニア向け総合サービス事業 | 27億円 | 30億円 | 6.4億円 | 7.7億円 | 25.8% |
| 調整額 | - | - | -6.4億円 | -6.9億円 | - |
| 連結(合計) | 96億円 | 99億円 | 5.2億円 | 5.2億円 | 5.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.5億円 | 5.5億円 |
| 投資CF | -1.0億円 | -1.4億円 |
| 財務CF | -1.2億円 | -0.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「お客様一人ひとりの尊厳に共感したサービスを提供し、全従業員とその家族の幸せを追求すること」を企業理念として掲げています。この理念のもと、東京23区を中心とした地域密着型企業としてのブランド確立や、介護保険外サービスの拡充を目指し、すべてのステークホルダーにとって価値ある企業となることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業理念の実践のために、理念に基づいた行動指針と日々の行動目標を記した「ケアサービスフィロソフィ」を制定しています。これを全社で共有することで、従業員一人ひとりが理念を体現し、お客様や地域社会との信頼関係を築くことを重視する文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
当面の間は経常利益率の向上を目指し、中長期的には収益性と資本効率を高めて企業価値を増大させる方針です。具体的な数値目標としては、2026年3月期までの男性育休取得率について、2024年3月期の実績(40.0%)を維持・向上させることを掲げており、2025年3月期には73.3%を達成しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「介護からエンゼルケアまで」の一貫したサービス提供に向け、以下の戦略を推進しています。
1. **首都圏ドミナント戦略の推進**: 東京23区を中心に在宅介護拠点を展開し、地域包括ケアシステムの中で多様なサービスを提供する体制を構築します。
2. **介護保険外事業の拡大**: エンゼルケアサービスの全国展開や、終活関連事業、高齢者の衣食住に関する新サービス開発を進めます。
3. **経営基盤の強化**: 質の高いサービス提供のため、人材採用・育成や内部統制の強化、IT化による業務効率化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「全従業員とその家族の幸せを追求する」という理念のもと、従業員がライフイベントを迎えても働き続けられる環境整備を基本方針としています。人材確保と定着のため、採用エリアの拡大、給与水準の引き上げ、キャリアパスや手当の拡充、研修制度の充実を実施しています。特に女性活躍推進として管理職への登用を積極的に進めているほか、再雇用制度「おかえりなさい制度」や定年後の継続雇用など、多様な働き方を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.3歳 | 7.4年 | 4,350,096円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.6% |
| 男性育児休業取得率 | 73.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 95.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 92.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 122.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 介護保険制度について
主力の在宅介護サービス事業は介護保険制度の影響を強く受けます。3年ごとの制度改正や報酬改定により、介護報酬の引き下げや自己負担割合の引き上げが行われた場合、収益性が低下する可能性があります。同社はこれに対し、エンゼルケアや介護保険外サービスの拡大によりリスク分散を図っています。
■(2) 法的規制について
介護事業を行うには法令に基づく指定基準を満たす必要がありますが、有資格者の退職等により基準を満たせなくなった場合、事業停止や報酬減額等の処分を受ける可能性があります。同社は管理体制の強化やドミナント展開による相互サポート体制の整備、不正防止のためのチェック体制により法令遵守を徹底しています。
■(3) 競合について
高齢化に伴う市場拡大予測により、異業種を含む新規参入や既存事業者の活動が活発化しており、競争激化により利用者の確保が困難になる可能性があります。同社は質の高いサービスや独自の教室活動などで差別化を図るとともに、エンゼルケア事業においても新たな市場開拓を進めています。
■(4) 人材の確保について
事業拡大には専門資格を持つ人材の確保が不可欠ですが、少子高齢化による労働力不足や競合との獲得競争により、十分な人員確保が困難になったり、人件費が高騰したりする可能性があります。同社は給与水準の引き上げや職場環境の整備、採用力の強化等により対策を講じています。



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