※本記事は、テクマトリックス株式会社 の有価証券報告書(第42期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. テクマトリックスってどんな会社?
同社は、最先端ITインフラの提供から医療システムまで幅広いITソリューションを展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1984年にニチメンデータシステムとして設立され、1996年には自社開発のコンタクトセンター向けシステム「FastHelp」を発売しました。2000年にテクマトリックスへ社名を変更し、2005年にジャスダック上場を果たしました。近年は2022年にPSPを子会社化して医療システム事業を強化し、2024年にはマレーシアのFirmusを子会社化してASEAN展開を加速させています。
現在の従業員数は連結で1,825名、単体で666名となっています。筆頭株主をはじめ、上位株主は資産管理業務などを行う信託銀行等の金融機関で構成されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.17% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.92% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505025 | 4.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.0%です。代表取締役社長最高執行役員は矢井隆晴氏が務めています。社外取締役比率は63.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 矢井 隆晴 | 代表取締役社長最高執行役員 | ニチメン(現・双日)を経て同社入社。情報基盤事業部門長等を歴任し、2024年より現職。 |
| 依田 佳久 | 取締役専務執行役員 | ニチメン(現・双日)を経て同社入社。医療システム事業部長等を経て、PSP代表取締役を兼任し現職。 |
| 鈴木 猛司 | 取締役常務執行役員 | ニチメン(現・双日)を経て同社入社。CRMソリューション事業部長等を歴任し現職。 |
| 志賀 健也 | 取締役常務執行役員 | 同社入社後、ネットワークセキュリティ事業部の各営業部長等を歴任し現職。 |
社外取締役は、堀江 愛利(Women's Startup Lab Founder & CEO)、久保 征人(Bright&Keen代表取締役)、赤津 恵美子(フューチャー・ミー代表取締役社長)、佐々木 英之(元・みずほコーポレート銀行参事役)、江幡 奈歩(阿部・井窪・片山法律事務所パートナー)、平等 弘二(元・東芝テック執行役員)、五十嵐 知子(ソラコム取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報基盤事業」「アプリケーション・サービス事業」「医療システム事業」を展開しています。
■情報基盤事業
海外の最先端セキュリティ技術や仮想化ソリューション、ネットワーク機器等の輸入販売および保守・運用・監視サービスを提供し、一般企業や通信キャリアなどを顧客としています。近年はAIを活用した高度なセキュリティ対策ソリューションの提供も強化しています。
顧客からの製品購入代金や継続的な保守・運用サービス料などを主な収益源としています。事業運営は同社のほか、クロス・ヘッドやOCH、マレーシア最大手のセキュリティ事業者であるFirmusなどが担っています。
■アプリケーション・サービス事業
特定業務向けのシステム開発やクラウドサービス(SaaS)、自社開発のCRMシステム「FastSeries」の販売、ソフトウェア品質向上のためのテストツールなどを幅広く提供しています。金融機関向けのリスク管理システムや教育機関向けの校務支援システムなども展開しています。
システム開発の受託費用やパッケージソフトの販売代金、クラウドサービスのサブスクリプション利用料などを主な収益源としています。同社を中心に、アレクシアフィンテックやカサレアルなどが運営を行っています。
■医療システム事業
医療機関向けに、クラウド型医用画像管理システム(PACS)の「NOBORI」や遠隔画像診断インフラなどを提供し、医療情報の効率的な一元管理と地域医療をサポートしています。一般生活者向けのPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)サービスの開発や、AIを活用した新規事業にも取り組んでいます。
医療機関からのシステム導入費用やクラウドサービスの継続的な利用料などを主な収益源としています。運営はPSPを中心に、医知悟やA-Lineなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、クラウドサービスの拡大やM&Aの効果もあり、売上収益は右肩上がりで成長を続けています。利益面でも増益傾向が続いており、安定した利益率を維持しながら企業規模を拡大していることがわかります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 365億円 | 460億円 | 533億円 | 649億円 | 717億円 |
| 税引前利益 | 37億円 | 51億円 | 59億円 | 64億円 | 79億円 |
| 利益率(%) | 10.2% | 11.0% | 11.0% | 9.9% | 11.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 24億円 | 30億円 | 35億円 | 41億円 | 52億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益が順調に伸びるなかで売上総利益率も向上しており、付加価値の高いサービス提供が進んでいることがうかがえます。営業利益率も10%台をキープし、効率的な収益確保を実現しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 649億円 | 717億円 |
| 売上総利益 | 121億円 | 140億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.6% | 19.6% |
| 営業利益 | 67億円 | 78億円 |
| 営業利益率(%) | 10.3% | 10.8% |
売上原価の多くは外注費が318億円(構成比89%)を占めています。また、販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が26億円(構成比17%)、賞与が12億円(同8%)と人件費が大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
情報基盤事業と医療システム事業が全社の収益を牽引し、増収増益に貢献しています。アプリケーション・サービス事業は売上を伸ばしたものの、先行投資や人件費増などの影響で当期は営業赤字となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 情報基盤事業 | 458億円 | 519億円 | 53億円 | 66億円 | 12.7% |
| アプリケーション・サービス事業 | 95億円 | 102億円 | 1億円 | -1億円 | -1.5% |
| 医療システム事業 | 101億円 | 102億円 | 13億円 | 13億円 | 13.0% |
| 調整額等 | -5億円 | -6億円 | -億円 | -億円 | -% |
| 連結(合計) | 649億円 | 717億円 | 67億円 | 78億円 | 10.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で投資を行いながら借入金の返済等も進める「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 68億円 | 131億円 |
| 投資CF | -60億円 | -11億円 |
| 財務CF | -8億円 | -36億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は21.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「より良い未来を創造するITのプロフェッショナル集団」を企業理念に掲げています。今後の社会・産業にとって必要不可欠な領域における事業を加速し、社会課題を解決するためのサービス提供を通して、持続可能な社会の創造に向けて取り組むことを使命としています。
■(2) 企業文化
最先端のテクノロジーと解決すべき社会課題を発見する「目利き力」と、発見した課題を解決する「業務ノウハウ」を詰め込んだソリューションの提供を価値創造の源泉としています。逃げずに粘り強く対応し、常に学び続けるという企業文化を一層浸透させ、社員一人ひとりが挑戦し成長できる環境を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年に新中期経営計画「Creating Customer Value in the New Era」を発表し、中長期的な収益力の強化とストック比率の向上を目指しています。2027年3月期の目標として以下の数値を掲げています。
* 連結売上収益:800億円
* 連結営業利益:86億円
* 連結営業利益率:10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
情報基盤事業ではクラウド事業者への展開やマネージドサービスの拡充、アプリケーション事業では特定市場向けのSaaS推進と生成AI活用、医療システム事業ではクラウド型PACSへの転換やAIプラットフォーム事業の推進を重点施策としています。また、M&AやASEANなどへの海外展開による事業規模拡大も図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員の挑戦と成長を支援し、やりがいを醸成する組織風土を実現しながら、組織の能力を最大化する」ことを基本方針としています。経営戦略に沿った人材の確保や次世代リーダーの育成、社員の専門性向上とダイバーシティ&インクルージョンの推進を掲げ、従業員エンゲージメントの向上にも積極的に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.0歳 | 8.5年 | 8,464,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.3% |
| 男性育児休業取得率 | 81.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 80.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 61.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性労働者の割合(正社員)(30.4%)、労働者に占める女性の割合(正社員)(26.9%)、障がい者雇用率(2.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外ベンダーとの取引に関するリスク
主力製品である海外のネットワーク機器やソフト開発ベンダー等の製品仕入において、仕入先の買収や倒産、販売網の見直しなどにより従来同様の販売代理権が継続できなくなる可能性があり、製品調達に支障が生じた場合は業績に影響が及ぶリスクがあります。
■(2) 取扱い製品の競争力低下リスク
IT業界における技術革新は急速で競争も激化しています。そのため、同社や仕入先による技術革新への対応や価格低下への対応が遅れた場合、事業の競争力が低下し、業績や財政状態に悪影響を与えるリスクがあります。
■(3) 優秀な人材の確保に関するリスク
高付加価値なストック型ビジネスを拡大するためには優秀な人材の確保と育成が不可欠です。IT人材の獲得競争が異業種を含めて熾烈になる中で、必要な人材を十分に確保・育成できない場合、事業展開や経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) 情報セキュリティおよびシステム障害のリスク
顧客の個人情報や機密情報を取り扱うため、サイバー攻撃やシステム障害などで情報の漏洩・改竄が発生した場合、損害賠償請求や信用失墜による取引関係の悪化を招くリスクがあります。また、提供するクラウドサービス等の障害も信用力低下につながる恐れがあります。



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