テクマトリックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テクマトリックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のITサービス企業です。情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業、医療システム事業を展開しています。直近決算では、クラウドセキュリティ製品の需要拡大や海外企業の買収効果等により、売上収益・利益ともに過去最高を更新し、増収増益となりました。


※本記事は、テクマトリックス株式会社 の有価証券報告書(第41期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. テクマトリックスってどんな会社?


独自の目利き力で海外の最先端IT製品を発掘・販売する情報基盤事業と、医療・CRM等の開発事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1984年にニチメンデータシステムとして設立され、2000年に現在のテクマトリックスへ社名変更しました。2005年にジャスダックへ上場し、2013年には東証一部(現プライム)へ市場変更しています。2022年には連結子会社PSPがNOBORIを吸収合併し医療事業を再編、2024年にはマレーシアのサイバーセキュリティ企業を買収し海外展開を加速させています。

連結従業員数は1,738名、単体では619名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は日本カストディ銀行です。第3位には米国のステート・ストリート銀行が名を連ねており、機関投資家や信託銀行が上位株主を占める構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 17.67%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 11.76%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505025(常任代理人 株式会社みずほ銀行決済営業部) 7.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役社長最高執行役員は矢井 隆晴氏です。社外取締役比率は63.6%です。

氏名 役職 主な経歴
矢井 隆晴 代表取締役社長最高執行役員 1988年ニチメン(現双日)入社。同社ネットワークセキュリティ事業部長、クロス・ヘッド代表取締役副社長等を経て、2024年4月より現職。
依田 佳久 取締役専務執行役員医療システム事業部門長 1987年ニチメン(現双日)入社。同社医療システム事業部長、NOBORI代表取締役社長等を経て、2022年5月より現職。PSP代表取締役を兼務。
鈴木 猛司 取締役常務執行役員アプリケーション・サービス事業部門長CRMソリューション事業部長 1989年ニチメン(現双日)入社。同社CRMソリューション事業部長、カサレアル取締役等を経て、2022年5月より現職。
志賀 健也 取締役常務執行役員情報基盤事業部門長ネットワークセキュリティ事業部長 2000年同社入社。ネットワークセキュリティ事業部営業本部本部長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、安武 弘晃(Junify Corporation, Co-founder and CEO)、海部 美知(ENOTECH Consulting,LLC CEO)、堀江 愛利(Women's Startup Lab, Inc., Founder & CEO)、久保 征人(Bright&Keen代表取締役)、佐々木 英之(元ルクセンブルグみずほ信託銀行社長)、江幡 奈歩(阿部・井窪・片山法律事務所パートナー)、平等 弘二(TDペイメント代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報基盤事業」「アプリケーション・サービス事業」「医療システム事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 情報基盤事業


北米を中心に高い技術力を持つ製品を見極め、仮想化ソリューション、次世代ネットワーク、サイバーセキュリティ、ストレージ等のITインフラ構築を支援しています。また、独自の保守・運用・監視サービスも提供しています。

製品の販売代金やサービスの利用料、保守料が主な収益源です。運営は主にテクマトリックスが行い、連結子会社のクロス・ヘッド株式会社やOCH株式会社がネットワークエンジニア派遣や運用監視を担当し、マレーシアのFirmus Sdn. Bhd.等が海外展開を担っています。

(2) アプリケーション・サービス事業


コンタクトセンター向けCRMシステム、ソフトウエア品質保証ツール、金融機関向けリスク管理システム、教育機関向けスクール・コミュニケーション・プラットフォーム「ツムギノ」などの開発・販売・クラウドサービス提供を行っています。

システム開発の対価やパッケージソフトのライセンス料、クラウドサービス(SaaS)の月額利用料が収益源です。運営はテクマトリックスのほか、株式会社カサレアル(教育・開発)、アレクシアフィンテック株式会社(金融システム)などが行っています。

(3) 医療システム事業


医療機関向けに、医用画像管理システム(PACS)や医療情報クラウドサービス「NOBORI」などを提供しています。画像データだけでなく、医療施設内で発生する様々な情報を一元管理するソリューションを展開しています。

医療機関からのシステム導入費用やクラウドサービスの利用料が収益源です。運営は主に連結子会社のPSP株式会社が担い、合同会社医知悟が遠隔画像診断インフラを、株式会社A-Lineが被ばく線量管理システムを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は5期連続で増加しており、直近では600億円を突破しました。税引前利益も毎期着実に増加しており、増収増益のトレンドを維持しています。利益率は10%〜11%程度の水準で安定的に推移しており、事業規模の拡大と収益性の維持を両立していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 309億円 365億円 460億円 533億円 649億円
税引前利益 34億円 37億円 51億円 59億円 64億円
利益率(%) 11.0% 10.2% 11.0% 11.0% 9.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 24億円 30億円 35億円 41億円

(2) 損益計算書


売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益と営業利益はいずれも増加しました。一方で、営業利益率は前期の11.0%から10.3%へとわずかに低下しています。コスト面では、事業拡大に伴う売上原価や販管費の増加が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 533億円 649億円
売上総利益 182億円 206億円
売上総利益率(%) 34.1% 31.7%
営業利益 59億円 67億円
営業利益率(%) 11.0% 10.3%


売上原価および販売費及び一般管理費の合計579億円のうち、外注費が266億円(構成比46%)、従業員給付費用が148億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


情報基盤事業が大幅な増収増益を達成し、全社の成長を牽引しています。アプリケーション・サービス事業は増収ながらも減益となり、利益率は低下しました。医療システム事業は売上が横ばいでしたが、利益は減少しています。全体として情報基盤事業への依存度が高まっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報基盤事業 352億円 458億円 40億円 53億円 11.5%
アプリケーション・サービス事業 85億円 95億円 3億円 1億円 1.5%
医療システム事業 101億円 101億円 16億円 13億円 12.4%
調整額 -5億円 -5億円 - - -
連結(合計) 533億円 649億円 59億円 67億円 10.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金を借入返済等に充てつつ、将来の成長に向けた投資も自己資金の範囲内で行っている健全型(営業CF+、投資CF-、財務CF-)です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 90億円 68億円
投資CF -19億円 -60億円
財務CF 1億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は21.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「より良い未来を創造するITのプロフェッショナル集団」を企業理念としています。今後の社会・産業にとって必要不可欠な領域における事業を加速し、社会課題を解決するためのサービス提供を通して、持続可能な社会の創造に向けて取り組むことを目指しています。

(2) 企業文化


「逃げずに粘り強く対応し、常に学び続ける」という企業文化を重視しています。顧客価値創造の源泉は業務ノウハウを詰め込んだソリューションの提供であり、それを支えるのは社員一人一人が挑戦し成長できる環境であるとして、この文化の一層の浸透を図っています。

(3) 経営計画・目標


新中期経営計画「Creating Customer Value in the New Era」において、以下の数値目標を掲げています。

* 2027年3月期 売上収益:800.0億円
* 2027年3月期 営業利益:86.0億円

(4) 成長戦略と重点施策


「目利き力」と「業務ノウハウ」を強みに、社会課題解決と顧客価値向上を目指しています。情報基盤事業ではクラウド事業者への展開やセキュリティサービスの強化、ASEAN市場への進出を推進します。アプリ事業ではSaaS化とCRMのアジア展開、医療事業ではクラウド化によるストックビジネスへの転換を進めます。

* 情報基盤事業:2027年3月期 売上収益575.5億円、営業利益68.4億円
* アプリケーション・サービス事業:2027年3月期 売上収益113.5億円、営業利益6.8億円
* 医療システム事業:2027年3月期 売上収益111.0億円、営業利益10.8億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員の挑戦と成長を支援し、組織能力を最大化することを基本方針としています。次世代リーダーの育成、専門性の向上、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を掲げ、女性活躍やシニア人材の活用にも注力しています。また、リモートワークと出社を選択できる柔軟な勤務制度やフリーアドレスなど、自律的な働き方を推奨しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.9歳 8.5年 8,326,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含め、株式報酬費用は除いています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.0%
男性育児休業取得率 61.9%
男女賃金差異(全労働者) 80.5%
男女賃金差異(正規雇用) 81.0%
男女賃金差異(非正規) 76.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、IPA資格取得人数(297名)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(30.5%)、全労働者に占める女性の割合(26.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外ベンダーとの取引について


同社グループの仕入金額の約6割は、米国Palo Alto Networks社などの海外ベンダー製品が占めています。仕入先の買収や日本法人の設立、倒産等により、販売代理権の継続が困難になったり製品調達に支障が生じたりした場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 取扱い製品の競争力について


現在は競争力の高い製品を中心に取り扱っていますが、IT業界の技術革新や競争激化により、技術対応や価格対応が遅れた場合、競争力が低下する恐れがあります。これに備え、ソリューションや自社サービス等の高付加価値ビジネスを増やす構造改善を進めています。

(3) 人材の確保


高付加価値なストック型ビジネスの拡大には優秀な人材が不可欠ですが、IT人材の獲得競争は激化しています。事業拡大に必要な人材を十分に確保・育成できない場合、事業展開や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) サイバーセキュリティについて


顧客の機密情報を扱う事業の性質上、不正アクセスやウイルス等による情報漏洩が発生した場合、損害賠償請求や信用失墜を招く恐れがあります。これに対し、ISMS認証の取得や専門委員会による管理体制の構築、全従業員への研修等の対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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