アサンテ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アサンテ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アサンテは、東証プライム市場に上場し、白蟻防除や湿気対策、地震対策などのハウスメンテナンス事業を展開する企業です。既存木造住宅の長寿命化を支援するサービスを主力としています。2025年3月期の業績は、売上高が140.2億円、当期純利益が6.9億円となり、前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社アサンテ の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アサンテってどんな会社?


アサンテは、既存木造住宅を対象とした白蟻防除や湿気・地震対策を主力とするハウスメンテナンス企業です。

(1) 会社概要


同社は、1970年5月に白蟻防除を目的とした「三洋消毒社」として創業し、1973年9月に法人化されました。1994年1月に現在の商号である株式会社アサンテに変更し、CI(コーポレートアイデンティティ)を導入しました。その後、2013年3月に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2014年4月には同市場第一部へ指定されました。

同社の従業員数は連結で983名、単体で954名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)、第2位は個人株主、第3位は従業員持株会となっています。事業においては、全国農業協同組合連合会(JA全農)等の農協関連組織と業務提携を行っています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.11%
宗政 ヨシ 7.57%
アサンテ従業員持株会 3.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は宮内 征氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
宮内 征 代表取締役社長 1994年同社入社。HA事業部長、営業本部長、人材開発部長等を歴任。2019年常務取締役営業本部長を経て、2020年6月より現職。
中尾 能之 常務取締役経営本部長兼 経営企画部長 1986年三菱銀行入行。2015年同社入社。経理部長、総務人事部長、管理本部長等を歴任。2025年4月より現職。
石上 祥光 取締役管理本部長 1990年同社入社。千葉支店長、資材部長、お客様相談室長、技術部長、コンプライアンス本部長等を歴任。2025年4月より現職。
濱里 徹志 取締役営業本部長兼 法人営業部長 1996年同社入社。茨城支店長、法人営業部長、営業本部副本部長等を歴任。2025年4月より現職。ハートフルホーム取締役を兼任。
松尾 俊吾 取締役人事本部長 1994年同社入社。総務人事部長、管理本部副本部長兼システム部長等を歴任。ヒューマン・グリーンサービス監査役を経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、名取 俊也(元最高検検事・弁護士)、田中 道昭(日本ストラテジック・ファイナンス総合研究所社長)、大村 尚子(公認会計士・元ナイル監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ハウスアメニティ事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ハウスアメニティ事業


既存の木造家屋を対象に、「白蟻防除」「湿気対策」「地震対策」などの各種施工サービスを提供しています。JA(農業協同組合)等との業務提携を基盤としており、提携先農協等の取扱業者として営業活動を行うほか、自社営業員による提案も行っています。

収益は、施工サービスを提供した顧客(家屋所有者)からの施工代金によって構成されています。提携先経由の場合は、提携先が代金を回収し精算する形態もとられます。運営は主に株式会社アサンテが行っています。

(2) その他事業


上記主力サービス以外に、住宅リフォーム、害虫・害獣(ゴキブリ、ネズミ等)の防除、高断熱施工などのサービスを提供しています。また、太陽光発電システムに関連する業務なども含まれます。

収益は、リフォーム工事や駆除サービスの提供に対する対価として顧客から受け取ります。運営は株式会社アサンテおよび連結子会社の株式会社ハートフルホームが行っており、ハートフルホームは建築・リフォーム事業を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移を見ると、売上高は130億円台後半から140億円前後で安定的に推移しています。2024年3月期に一時的な利益の落ち込みが見られましたが、2025年3月期には売上高・各利益ともに回復傾向を示しており、増収増益となりました。利益率は経常利益ベースで8%台を回復しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 139億円 137億円 141億円 137億円 140億円
経常利益 17億円 13億円 14億円 10億円 12億円
利益率(%) 12.3% 9.8% 9.9% 7.2% 8.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 6億円 9億円 4億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を比較すると、売上高は2.4%増加し、売上総利益も増加しました。販管費はほぼ横ばいで推移したため、営業利益は約30%の大幅な増益となりました。これにより、営業利益率は前期の6.9%から8.7%へと改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 137億円 140億円
売上総利益 94億円 97億円
売上総利益率(%) 68.9% 69.2%
営業利益 9億円 12億円
営業利益率(%) 6.9% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が37億円(構成比43.9%)、賞与引当金繰入額が2億円(同2.7%)を占めています。労働集約的な事業特性から人件費の比率が高い構造となっています。

(3) セグメント収益


サービス別の売上高を見ると、主力の「白蟻防除」が堅調に推移し、全体の約4割を占めています。「地震対策」は微減となりましたが、「湿気対策」および「その他」が増加し、全体としての増収に寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
白蟻防除 58億円 60億円
湿気対策 28億円 28億円
地震対策 35億円 35億円
その他 16億円 18億円
連結(合計) 137億円 140億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の営業活動で得た資金を借入金の返済や自己株式の取得などの財務活動に充てており、投資活動は抑制的な傾向にある「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.5億円 11.2億円
投資CF 3.8億円 -0.6億円
財務CF 12.3億円 -26.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人と技術を育て、人と家と森を守る」を経営理念として掲げています。シロアリ対策や地震対策などを通じて顧客に安全・安心・快適を提供し、既存住宅の長寿命化を推進することで、環境問題などの社会課題解決にも貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「誠実な経営の推進」を掲げ、コンプライアンスを重視し、ステークホルダーからの信頼獲得に努めています。また、「お客様満足度の向上」を重視し、最高のサービスと技術の提供を目指すとともに、「従業員満足度の向上」により、社員が生き生きと働ける環境づくりを推進する風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は2026年3月期を初年度とする中期経営計画において、2028年3月期に以下の数値目標を掲げています(ローリング方式により毎期見直し)。

* 売上高:160億円
* 営業利益:18億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:11億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は持続的な成長に向けて、JA(農協)との提携を基盤とした既存エリアの深耕と新規エリアの開拓、PR活動の強化による認知度向上、企業提携先の拡大に取り組みます。また、M&Aによる事業領域の拡大や、デジタル化による営業力強化、施工効率向上のための研究開発なども重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、営業から施工、アフターメンテナンスまで自社従業員で行う体制をとっており、人材を最も重要な資本と位置づけています。スキル向上やマネジメント能力開発に向けた研修制度の充実を図るとともに、多様な人材が心身ともに健康で活躍できる職場環境の整備や人事制度の拡充に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.1歳 12.9年 5,713,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全労働者) 50.4%
男女賃金差異(正規) 53.2%
男女賃金差異(非正規) 42.6%


※女性管理職比率については、有価証券報告書に記載がありませんでした。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員1人当たり研修時間(11時間)、女性社員数(156人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材確保と育成


同社の事業基盤の維持・拡大には人材が不可欠です。労働需給の逼迫により人材獲得競争が激化する中、必要な人材を十分に確保できない場合や、社員教育が計画通り進まない場合は、事業展開が制約され、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 市場環境と需要動向


主力サービスの対象となる既存木造住宅の約2,600万戸は潜在需要として存在しますが、白蟻被害は目に見えにくいため需要が潜在化しやすい特性があります。景気動向や個人の消費マインドの低下により需要が顕在化しない場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 主要提携先との関係


同社は農協(JA)等との業務提携に基づき営業活動を行っています。これらの提携契約が期間満了や解除等により終了した場合、あるいは契約内容が同社に不利な条件に変更された場合、販売基盤に影響が生じ、業績が悪化する可能性があります。

(4) 気候変動・異常気象


白蟻防除施工は白蟻の活動状況に左右され、これは気温や湿度等の気象条件の影響を受けます。また、営業活動は訪問販売が主体であるため、猛暑や大雪、暴風雨などの異常気象が発生した場合、営業や施工活動が停滞し、業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。