アサンテ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アサンテ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アサンテは東証プライム市場に上場し、既存木造家屋を対象とした白蟻防除、湿気対策、地震対策などの施工を主力とする企業です。直近の業績トレンドは、積極的な広告宣伝の展開などにより売上高が増加し増収となったものの、成長投資に伴う費用支出が先行し減益となっています。


※本記事は、株式会社アサンテの有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アサンテってどんな会社?


木造家屋の白蟻防除・湿気対策・地震対策サービスを主力とし、既存住宅の長寿命化に貢献する企業です。

(1) 会社概要


同社は1973年9月に三洋消毒として設立され、白蟻などの防除業を開始しました。1994年1月に現在のアサンテに商号を変更し、2013年3月に東京証券取引所市場第二部に上場(現在はプライム市場)しました。2020年7月にハートフルホームを子会社化して事業領域を拡大し、2023年11月にはアドバンテッジアドバイザーズと事業提携を結んでいます。

現在の従業員数は連結で1,013名、単体で983名体制で事業を運営しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は個人株主の宗政ヨシ氏、第3位は従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.94%
宗政ヨシ 7.57%
アサンテ従業員持株会 3.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は宮内征氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
宮内 征 代表取締役社長 1994年同社入社。HA事業部長、営業本部長、人材開発部長等の要職を歴任。2019年常務取締役営業本部長を経て、2020年2月より現職。
中尾 能之 常務取締役経営本部長 1986年三菱銀行入行。2015年同社入社し経理部長に就任。総務人事部長、経営企画部長を経て、2026年6月より現職。
石上 祥光 取締役管理本部長 1990年同社入社。千葉支店長、資材部長、お客様相談室長、技術部長、営業本部長等を歴任。2025年4月より現職。
濱里 徹志 取締役営業本部長 1996年同社入社。茨城支店長、法人営業部長、営業本部副本部長を歴任。ハートフルホーム取締役を兼任し、2025年10月より現職。
松尾 俊吾 取締役人事本部長 1994年同社入社。総務人事部長、管理本部副本部長、システム部長等を歴任。2025年4月より現職。


社外取締役は、名取俊也(新丸の内総合法律事務所代表弁護士)、田中道昭(マージングポイント代表取締役社長)、大村尚子(公認会計士・LayerX常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「単一セグメント」で事業を展開しています。

(1) 白蟻防除・湿気対策・地震対策

既存木造家屋を対象に、白蟻の発生予防と駆除を行う白蟻防除、床下の湿気対策、家屋の接合部補強や基礎補修による地震対策を主力サービスとして提供しています。主に全国の木造戸建住宅に住む個人顧客向けに、安全・安心・快適な住環境を支えるサービスを展開しています。

収益は、顧客に対して各種施工サービスを提供し、その対価として代金を受け取るモデルです。全国農業協同組合連合会などの農協等と業務提携し、提携先の取扱業者として営業活動を行っています。事業の運営は同社が主体となり、顧客への直接販売や提携先からの紹介を通じて事業を拡大しています。

(2) その他(住宅リフォーム、害虫・害獣防除等)

主力サービスに加え、既存住宅の長寿命化と快適性向上を目的とした住宅リフォームや、ゴキブリ・ネズミなどの害虫・害獣防除、個人宅向けPCOサービス、高断熱施工などのサービスを提供しています。家屋構造の多様化や住宅メンテナンス意識の高まりに対応しています。

収益は、各施工サービスの提供対価として顧客から代金を受け取ります。リフォームや建築関連事業については、同社および子会社のハートフルホームが主体となってサービスを提供し、顧客ニーズに合わせた高付加価値な提案を通じて収益の多角化と長期的な顧客価値の向上を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績を見ると、売上高は137億円から144億円へと堅調な成長を続けています。一方、経常利益は前期に12億円まで増加したものの、当期は成長基盤の再構築に向けた先行投資や天候不順などの影響により8億円へと減少しています。持続的な売上成長と収益性の両立が今後の焦点となります。

項目 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 137億円 140億円 144億円
経常利益 10億円 12億円 8億円
利益率(%) 7.2% 8.3% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 7億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し増収を達成していますが、売上総利益率は微減となり、営業利益は12億円から8億円へと減少しています。積極的な広告宣伝などによる販管費の増加が利益を圧迫する構造となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 140億円 144億円
売上総利益 97億円 98億円
売上総利益率(%) 69.2% 68.6%
営業利益 12億円 8億円
営業利益率(%) 8.7% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が38億円(構成比42%)、賞与引当金繰入額が2億円(同3%)を占めています。売上原価の内訳としては、労務費が14億円(構成比36%)、経費が9億円(同23%)を占め、サービス品質を支える従業員の人件費が高い割合を占めることが特徴です。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントのため、サービス別の売上高推移を分析します。主力の白蟻防除は需要喚起策が奏功し62億円へと増加しました。湿気対策やその他事業も増収となりましたが、地震対策は33億円と微減しています。全体としては主力サービスが牽引し、着実な売上成長を実現しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
白蟻防除 60億円 62億円
湿気対策 28億円 29億円
地震対策 35億円 33億円
その他 18億円 19億円
連結(合計) 140億円 144億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金内で投資と借入金の返済を賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 11億円 4億円
投資CF -0.6億円 -1億円
財務CF -27億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「人と技術を育て、人と家と森を守る」を経営理念として掲げています。シロアリ対策や地震対策などを通じて顧客に安全・安心・快適を提供し、既存住宅の長寿命化を推進することで、環境問題などの社会課題解決に貢献することを存在意義としています。卓越した技術の提供を通じて持続可能な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化

あらゆるステークホルダーから厚い信頼を得るため、コンプライアンスを重視し誠実を旨とする企業経営を実践する文化が根付いています。また、「従業員満足度の向上」を方針に掲げ、一人ひとりがイキイキと働ける環境を実現し、やる気を高め組織力を向上させることを重視しています。

(3) 経営計画・目標

2027年3月期を初年度とする3か年の中期経営計画を策定し、成長基盤を再構築する期間と位置付けています。営業・施工人員の増強による売上創出力の拡大を最優先事項として掲げ、最終年度には以下の数値目標の達成を目指しています。

・売上高:169億円
・営業利益:14.4億円
・営業利益率:8.5%

(4) 成長戦略と重点施策

持続的な成長に向けて、5つの重点戦略に取り組んでいます。広告宣伝の高度化と提携先開拓による販売チャネル拡充を進めるほか、AIやDXを活用した業務効率化による生産性向上を図ります。また、個人向けPCOサービスや高断熱施工など新サービスの展開、人的資本への投資強化を通じた採用・定着力の向上を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人材は売上創出の源泉であり、最も重要な資本」と位置付け、人的資本の開発と活用を成長戦略の土台に据えています。処遇改善、充実した教育体制、職場環境の整備を一体で推進し、多様な人材がやりがいを持って健康的に働き、安心して長く活躍できる社内環境の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.8歳 13.0年 5,834,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全) 49.1%
男女賃金差異(正規) 52.0%
男女賃金差異(非正規) 46.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員1人当たり研修時間(16.1時間)、女性社員数(163人)、社内認定・社内検定の取得者数(438名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティの漏洩・遅滞

営業上・技術上の機密情報や顧客の個人情報を保有しており、サイバー攻撃等により情報漏洩やシステム障害が発生した場合、損害賠償責任や社会的信用の失墜が生じ、業績や業務の進行に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材確保と育成の難航

主要サービスの営業・施工には専門知識を持つ従業員が不可欠です。労働市場の逼迫等により、新卒・中途を問わず必要な人材を確保・育成できない場合、事業展開が制約されるリスクがあります。

(3) 法規制・コンプライアンス違反

訪問販売による営業活動が主であるため、特定商取引法などの規制を受けています。従業員の法令違反や悪質な訪問販売に対する業界イメージの低下が生じた場合、社会的信用が毀損し、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 気候変動・異常気象の影響

白蟻の活動は気象状況に大きく影響され、また屋外での訪問営業活動も猛暑や暴風雨などの異常気象による制約を受けます。天候不順が続くことで、需要の減少や営業活動の停滞を招き、財務状況にマイナスの影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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