※本記事は、株式会社ジェイエスエスの有価証券報告書(第51期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジェイエスエスってどんな会社?
同社は全国でスイミングスクール等の会員制スポーツクラブを展開し、水を通じて健康づくりに貢献する企業です。
■(1) 会社概要
1976年に設立され、スイミングスクールの受託運営を開始しました。1979年に直営事業を開始し、1991年にジェイエスエスに商号を変更しています。2013年にJASDAQに上場し、2020年には日本テレビホールディングスと業務資本提携を締結して事業基盤を強化しました。
同社グループの従業員数は連結で467名、単体で448名です。筆頭株主はメディア事業を展開する日本テレビホールディングスであり、第2位は食品事業会社の江崎グリコ、第3位は個人の関健二氏となっています。事業会社との資本提携を通じて、相乗効果の創出を図りながら持続的な成長を目指しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本テレビホールディングス | 24.84% |
| 江崎グリコ | 9.22% |
| 関健二 | 4.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は藤木孝夫氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤木孝夫 | 代表取締役社長 | 1976年に瀬戸田船食に入社後、1978年に同社へ入社。執行役員西部事業部長、役員待遇事業部長、取締役事業部長を歴任し、2002年1月より現職。 |
| 奥村征照 | 取締役会長 | 1964年第一レースに入社。日軽商事、竜奥興業を経て1979年に同社取締役就任。代表取締役社長、代表取締役会長を歴任し、2008年6月より現職。 |
| 濱治雅弘 | 常務取締役管理本部長 | 1981年同社に入社。西日本事業部関西地区担当次長、管理本部総務・人事担当部長、管理本部長、取締役管理本部長を歴任し、2024年4月より現職。 |
| 藤木航 | 常務取締役事業本部・営業推進本部管掌 | 2003年同社に入社。事業本部営業部店舗開発担当次長、事業本部店舗開発営繕部部長、取締役店舗開発管理本部長を歴任し、2025年5月より現職。 |
| 宮本倍幸 | 取締役営業推進本部長 | 2007年ティップネスに入社しスクール事業部長等を歴任。同社取締役執行役員を経て、2023年ジェイエスエス取締役営業戦略室長。2024年4月より現職。 |
社外取締役は、山脇幹雄(山脇幹雄税理士事務所代表)、安達徹(安達計算センター代表取締役)、奥田智子(いぶき法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「スイミングスクール運営事業」の単一セグメントを展開しています。
■(1) スイミングスクール運営事業
同社グループの主力事業であり、全国でスイミングスクールやテニススクール、フィットネスクラブ等を運営しています。子供からシニアまで幅広い年齢層を対象とし、独自の指導マニュアルに基づくプログラムを提供しています。また、スキースクールなどの企画課外活動やスポーツ用品の販売も行っています。
収益源は、直営事業所における会員からの月会費や各種サービス利用料、および受託事業所における施設所有者からの業務委託料です。また、スポーツ施設でのスポーツ用品販売や機器類の販売収入も得ています。これらの事業運営はジェイエスエスおよび子会社のワカヤマアスレティックスが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近2期間の業績推移を見ると、会員獲得に向けたキャンペーン施策や水泳授業の受託強化が奏功し、売上高は増加傾向にあります。利益面でも、売上原価の低減などにより経常利益は大幅な増益を達成しており、堅調な利益成長を維持しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 84億円 | 85億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 5.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は向上しています。販売費及び一般管理費は増加したものの増収効果が上回り、営業利益および営業利益率ともに前年を上回る実績を確保し、収益性の改善が進んでいます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 84億円 | 85億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.8% | 17.1% |
| 営業利益 | 3億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3億円(構成比28%)、支払手数料が1億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はスイミングスクール運営事業の単一セグメントであるため、事業全体の売上高の推移を示しています。直営事業収入や商品売上の堅調な推移が全体収益を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 連結(合計) | 84億円 | 85億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で創出した資金を借入金の返済や設備投資に充当する健全型の状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1億円 | 7億円 |
| 投資CF | 0.2億円 | -0.7億円 |
| 財務CF | 0.6億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「水を通じて健康づくりに貢献する」という経営理念のもと、スイミングスクールの運営を中心とした事業を展開しています。青少年の健全育成と将来の高齢化社会、健康志向、余暇の有効利用といった社会的課題に真摯に取り組み、事業を通じた地域社会への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、子供に関してはスクールの活動を単なる運動指導ではなく「教育事業」の一環として捉える価値観を重視しています。安全第一の授業展開を徹底するとともに、各種マニュアルに基づく専門性の高い指導を実施しており、地域に密着した教育重視の姿勢が企業文化として根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、財務の健全性を維持しながら資本の効率性を高めることで、企業価値の向上を図ることを基本方針としています。中長期的には内部留保を新規事業所の設備投資に充当し、利益の最大化を目指しています。
・株主資本利益率(ROE)の向上
・配当性向の最適化を通じた株主還元
・既存事業所の底上げと新規出店による会員数の増大
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、同社は会員集客の強化およびM&A戦略を軸とした積極的な投資を推し進めます。エリア展開の拡大による収益性確保に加え、水泳の原点回帰と安全強化、競技力の向上を図ることでブランド力を高めます。
・M&A戦略の推進と新規領域への進出
・4泳法の指導強化とトップレベル選手の育成
・コンパクトタイプ施設の展開(年間2事業所程度の出店)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材獲得競争が激化する業界において、上場企業としての強みを活かした労働環境の整備や教育環境の強化に注力しています。成長が見える教育システムや評価制度の導入により人材育成を推進するほか、女性活躍や多様性の確保、ワーク・ライフ・バランスの向上に向けた福利厚生の充実を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.9歳 | 15.1年 | 4,650,976円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.1% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 82.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 103.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の社員に占める比率(36.6%)、社員の有給取得率(51.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況等の影響
同社の売上高の大部分は、会員からの会費や運営受託料に依存しています。対象顧客が一般個人であるため、経済状況や雇用情勢の悪化、消費税増税による買い控え、ライフスタイルの変化などが生じた場合、会員数の獲得に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 会員数の動向と少子化の影響
同社は子供会員の構成比が高いことが特徴ですが、日本の子供人口は減少傾向にあります。独自の教育ノウハウによる会員獲得を進めているものの、少子化の加速や予測しない事態の発生により想定した会員数を獲得できなかった場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(3) 競合と市場環境の変化
フィットネス業界では、異業種からの参入や多店舗展開などにより競争が激化しています。同社は教育重視の地域密着型経営で差別化を図っていますが、競合施設の進出や顧客ターゲットの重複が生じた場合、売上の低下や広告宣伝費の増加により収益が悪化するリスクがあります。
■(4) 施設の補修修繕やコスト上昇
既存施設のリニューアルや広告宣伝を実施していますが、補修修繕工事が特定の時期に集中した場合、一時的な費用増大を招く可能性があります。また、プール施設の水温管理や空調、送迎バスの運行に伴う電力料金や燃料価格が上昇した場合、運営コストが増加し業績に影響する可能性があります。



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