※本記事は、夢展望株式会社の有価証券報告書(第29期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 夢展望ってどんな会社?
インターネットを通じた衣料品や雑貨の販売をはじめ、ジュエリーの販売を行うアパレル企業です。
■(1) 会社概要
同社は1998年に玩具・雑貨販売事業を目的として設立されました。2005年に衣料品販売事業および自社サイトでのインターネット販売を開始し、2008年に現在の社名へ変更しました。2013年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2015年にRIZAPグループの子会社となっています。その後、2017年にトレセンテ、2018年にナラカミーチェジャパンを子会社化し、2024年以降は越境ECによる海外展開を本格稼働させています。
現在の従業員数はグループ全体で100名、単体で27名です。筆頭株主は事業会社の親会社であるRIZAPグループで、第2位は証券業務を行うSBI証券です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| RIZAPグループ | 45.36% |
| SBI証券 | 3.79% |
| SBIネオトレード証券 | 1.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は津田茂寿氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 津田茂寿 | 代表取締役社長 | 湖池屋、ディーエイチシー等を経て、2024年より同社副社長執行役員。2025年より現職。 |
| 塩田徹 | 取締役会長 | RIZAPグループ取締役等を経て、2024年同社代表取締役社長。2025年より現職。 |
| 佐藤信治 | 取締役(監査等委員) | ジーンズメイト代表取締役社長等を経て、2022年REXT Holdings専務執行役員。2024年より現職。 |
社外取締役は、岡澤耕(トレンドマイクロ元上席執行役員等)、古川純平(中央総合法律事務所パートナー)、木谷倫之(ガーディアン法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アパレル事業」「ジュエリー事業」「トイ事業」を展開しています。
■アパレル事業
幅広い年齢層の女性向けに、オリジナルブランドやイタリア発のシャツ・ブラウスブランド「ナラカミーチェ」などの衣料品・靴・雑貨等を提供しています。また、国内外の若年層向けに「量産型」「地雷系」といったSNSで話題のテイストから、大人カジュアルまで多様なブランドを展開しています。
収益源は、一般消費者からの商品購入代金です。運営は同社および子会社のナラカミーチェジャパン、海外子会社の夢展望貿易(深圳)が行っており、自社ECサイトをはじめ外部ECモール、実店舗、越境ECを通じた中国市場など、国内外で多角的な販売チャネルを構築しています。
■ジュエリー事業
主に婚約指輪・結婚指輪等のブライダルジュエリーに加え、日常を彩るネックレスなどのファインジュエリーの販売を行っています。札幌から福岡までの主要都市において、百貨店やファッションビル等の実店舗を展開するほか、ECサイトによる販売も行っています。
収益源は、一般消費者からの商品購入代金です。運営は子会社のトレセンテが行っており、店舗販売員によるカウンセリング力を強化し、成約率と平均購買単価の向上を図るとともに、インバウンド向けの接客強化やSNSを活用したマーケティングに取り組んでいます。
■トイ事業
国内の玩具メーカーからの発注に基づき、主に中国の協力工場から玩具製品等の雑貨を仕入れ、メーカー向けに販売する卸売事業を展開しています。中国現地での長年の生産管理や仕入れのノウハウを活かしています。
収益源は、玩具メーカー等の法人顧客からの卸売代金です。運営は同社および海外子会社の夢新開發(香港)、夢展望貿易(深圳)が行ってきました。なお、グループ全体のリソース最適化および事業ポートフォリオ再編のため、既存取引を順次終了し、事業を一時停止しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は減少傾向が続いており、直近では大きく減収となっています。利益面においても各段階で赤字が継続しており、仕入原価の上昇や需要予測とのギャップによる機会損失等の影響で赤字幅が拡大する厳しい業績推移となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 49億円 | 52億円 | 47億円 | 45億円 | 35億円 |
| 税引前利益 | -1億円 | -1億円 | -4億円 | -4億円 | -5億円 |
| 利益率(%) | -1.0% | -2.5% | -7.6% | -8.0% | -12.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0億円 | -1億円 | -4億円 | -4億円 | -4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少とともに売上総利益も縮小しています。抜本的な収益構造の改革として不採算店舗の閉鎖などを進め、コスト削減を図っているものの、赤字の解消には至っていません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 45億円 | 35億円 |
| 売上総利益 | 7億円 | 5億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.0% | 13.6% |
| 営業利益 | -3億円 | -4億円 |
| 営業利益率(%) | -6.2% | -10.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が7億円(構成比33%)、販売手数料が5億円(同26%)、広告宣伝費及び販売促進費が2億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
アパレル事業およびジュエリー事業において、需要の取りこぼしや仕入原価の上昇などの影響で減収かつ営業赤字の状況が続いています。トイ事業は、取引条件の見直しに伴う既存取引の終了により大幅な減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アパレル事業 | 26億円 | 24億円 | -2億円 | -2億円 | -9.4% |
| ジュエリー事業 | 8億円 | 7億円 | -1億円 | -1億円 | -12.9% |
| トイ事業 | 12億円 | 4億円 | 1億円 | 0億円 | 3.8% |
| 調整額 | -0億円 | -0億円 | -1億円 | -1億円 | 184.8% |
| 連結(合計) | 45億円 | 35億円 | -3億円 | -4億円 | -10.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益の創出や資産の売却等によって得た資金で借入の返済を進める改善局面(改善型)にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -4億円 | 2億円 |
| 投資CF | -1億円 | 2億円 |
| 財務CF | 3億円 | -1億円 |
財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は-64.6%で、スタンダード市場の非製造業平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「日本の『カワイイ』ファッションを国内のみならず、海外の若年層にも届ける」ことを目指し、衣料品や雑貨等のファッション関連商品を展開しています。また、働く女性が日常の生活で輝けるような美しいシルエットの提案や、ブライダルジュエリーを通じた成約率・平均購買単価の向上等、顧客の人生を彩る価値の提供に努めています。
■(2) 企業文化
同社は、最も重要な経営資源の一つである「人材」について、「年齢・性別・バックグラウンドに関わらず、問題意識が高く行動力のある人材を積極的に登用」する文化を持っています。年功序列を排除し、従業員の本質と行動を評価する人事制度を軸として、現場の気づきを経営に反映させ、多様な人材が活躍できる風通しの良い組織づくりを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループでは、各種利益率およびキャッシュ・フローを重視しており、「売上総利益率」「営業利益率」等の向上と「営業キャッシュ・フロー」の安定的な創出を目標としています。抜本的な収益構造の改革と早期の黒字化に向け、不採算店舗の閉鎖や滞留在庫の徹底した圧縮による損益分岐点の引き下げを図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けた重点施策として、「越境EC販売を成長エンジンと位置づけ、年間を通じたIPコラボレーションの拡充やデジタルマーケティングの強化」に取り組んでいます。特に中国市場などの海外市場において、現地SNSを活用したファンコミュニティの形成や実店舗の展開を連動させ、広告投資効率の最適化を図りながらブランド認知度を高めていく戦略です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な人材が活躍できる組織作り」を重要な経営方針と位置付けています。即戦力となる中途採用を中心とし、各従業員が専門性や経験を活かしながら能力を発揮できる組織づくりを推進しています。また、業務の高度化・効率化に対応するため「デジタル技術及び生成AIの活用」を中核とし、従業員のデジタルリテラシー向上や生産性向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.8歳 | 7.1年 | 3,596,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 42.9% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.5% |
| 男女賃金差異(正社員) | 70.3% |
| 男女賃金差異(臨時雇用者) | 18.5% |
※男性労働者の育児休業取得率は、当連結会計年度において対象者がいない状況であったため「-」としています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) EC市場の競争激化と他業種との競合
アパレル事業において、市場調査による流行の早期察知と差別化を図っていますが、仕入先による直接販売(D2C)の展開、大手チェーンのEC本格化、海外事業者の参入等により競争が激化しています。また「コト消費」への変化による他業種との競合が起きており、対応の遅れや広告費の増加が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) インターネット関連の技術革新への対応
主要な販売チャネルであるインターネットでは、技術革新や顧客ニーズの変化のサイクルが極めて速く、新サービスの参入が相次いでいます。同社は適切なシステム投資等を行っていますが、技術革新への対応の遅れによる競争力の低下や、システム投資に伴う人件費等の増加が、事業展開および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外生産拠点におけるカントリーリスク
同社およびナラカミーチェジャパンの製品の多くは、中国をはじめとする海外の協力工場で生産されています。そのため、当該地域での地政学的リスクや感染症の拡大、労働環境の変化、法規制の変更や通関トラブル等が発生した場合、商品の供給体制に支障をきたし、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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