デジタルハーツホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デジタルハーツホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、エンターテインメント及びエンタープライズ向けのソフトウェアテスト・デバッグ事業を展開。直近の決算では、DHグループ事業の堅調な推移やAGESTグループ事業の大幅増益により、売上高は増収、営業利益・経常利益は増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な増益となりました。


※本記事は、株式会社デジタルハーツホールディングス の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. デジタルハーツホールディングスってどんな会社?


不具合検出のデバッグサービスやシステムテストなどのQAソリューションを主力とする、品質保証の専門企業です。

(1) 会社概要


同社は2001年に創業し、コンソールゲームのデバッグサービスを開始しました。2008年にマザーズ市場へ上場後、2011年に市場第一部へ変更しました。2013年に単独株式移転により持株会社を設立し、現在の体制へ移行しました。2024年にはスピンオフ上場準備の一環として、DHグループとAGESTグループの2グループ経営体制を開始しました。

連結従業員数は1,759名、単体では70名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長の宮澤栄一氏であり、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。創業者が大株主として経営に関与しつつ、機関投資家も株式を保有する構成となっています。

氏名 持株比率
宮澤 栄一 42.29%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.03%
A-1合同会社 5.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表者は代表取締役社長CEOの筑紫敏矢氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
筑紫 敏矢 代表取締役社長CEO 昭和シェル石油、日本IBM等を経て、2017年同社執行役員CFO。2024年4月より現職。
宮澤 栄一 代表取締役会長 2001年デジタルハーツ設立し社長就任。2013年同社代表取締役社長CEO。2024年4月より現職。


社外取締役は、柳谷 孝(元野村證券代表執行役副社長)、牟禮 恵美子(公認会計士)、近澤 諒(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「DHグループ事業」および「AGESTグループ事業」を展開しています。

(1) DHグループ事業


コンソールゲームやモバイルゲーム等のエンターテインメントコンテンツを対象に、ソフトウェアの不具合を検出するデバッグサービスを提供しています。また、ゲームの翻訳・LQA(言語品質保証)、マーケティング支援、受託開発、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の運営なども行っています。

収益は、顧客企業であるゲームメーカー等から受け取るデバッグサービス料や翻訳・開発受託料などが柱です。運営は主に、株式会社デジタルハーツ、Aetas株式会社、株式会社フレイムハーツ、および海外子会社などが行っています。

(2) AGESTグループ事業


Webシステムや業務システム等のエンタープライズ向けシステムを対象に、品質向上のためのQAソリューションを提供しています。具体的には、システムテスト、セキュリティテスト、ERP導入支援、セキュリティ監視、システムの保守・運用支援などを行っています。

収益は、顧客企業からのテストサービス料やセキュリティ診断料、システム開発・保守料などから構成されています。運営は主に、株式会社AGESTやLOGIGEAR CORPORATIONなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上高は順調に拡大傾向にあり、事業規模が成長しています。利益面では、経常利益率が変動しているものの、当期は前期に比べて改善が見られます。当期純利益については、前期比で大きく増加しており、収益性が向上している様子がうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 227億円 292億円 365億円 388億円 397億円
経常利益 20億円 28億円 32億円 21億円 23億円
利益率(%) 8.7% 9.5% 8.6% 5.3% 5.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.8億円 2億円 -8億円 19億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増し、売上総利益も横ばいを維持しています。営業利益については、前期から増加して収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 388億円 397億円
売上総利益 101億円 101億円
売上総利益率(%) 26.0% 25.5%
営業利益 20億円 24億円
営業利益率(%) 5.3% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が29億円(構成比38%)、役員報酬が3億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


DHグループ事業は、国内デバッグの底堅い成長やグローバルサービスの好調により増収となりました。AGESTグループ事業も、国内事業の牽引により増収を達成しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
DHグループ事業 229億円 236億円
AGESTグループ事業 159億円 161億円
連結(合計) 388億円 397億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、本業の利益で借入返済や投資を賄えている「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 18億円 31億円
投資CF -24億円 -0.1億円
財務CF 9億円 -26億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「SAVE the DIGITAL WORLD」を企業理念として掲げています。この理念のもと、主力のデバッグ及びソフトウェアテストサービスを中心に、受託開発や保守・運用、セキュリティ等、様々なサービスを提供することで、増加するデジタルサービスの品質・安全性向上への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「Hearts of Honesty(真摯に物事に向き合い、誠実に仕事に取り組みます)」、「Hearts of Innovation(変わることを恐れず、社会・顧客課題にスピーディーに挑戦します)」、「Hearts of Diversity & Inclusion(多様な仲間を信頼し、笑顔で仕事を楽しみます)」というバリューを掲げています。

(3) 経営計画・目標


同社グループが属するデジタル関連市場は環境変化が速いため、単年度ごとの売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益を経営指標として重視しています。迅速かつ柔軟な経営判断を行うことを方針としています。

(4) 成長戦略と重点施策


DHグループ事業とAGESTグループ事業の成長ポテンシャル最大化を目指し、AGESTのスピンオフ上場準備を進めています。DHグループではグローバル化やAI翻訳エンジンの活用、AGESTグループでは次世代QAエンジニアの育成やAIテストツールの活用による高付加価値化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、専門技術を有する人材の確保や、多様なバックグラウンドを持つ人材の育成を推進しています。DHグループではテスターの確保、AGESTグループでは「AGEST Academy」を通じたエンジニア育成や採用強化を行い、人材基盤の構築に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.0歳 4.0年 7,934,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 27.6%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 88.6%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 94.1%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 90.5%


※管理職比率は提出会社、その他は主要な連結子会社である株式会社デジタルハーツの数値を記載しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) QAソリューションのアウトソーシングの動向


ソフトウェアテストのアウトソーシングが進展することを前提に事業計画を策定していますが、期待通りに進展しなかった場合、事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。エンジニア不足や専門性の高まりにより外部委託の傾向は強まっていますが、市場動向の変動はリスク要因となります。

(2) 業務の受託案件におけるリスク


ソフトウェア開発業務等をプロジェクト単位で受託していますが、顧客都合による仕様変更や認識の不一致等により、当初計画した品質・コスト・納期を維持できずに案件が不採算化する可能性があります。その規模によっては、同社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 市場環境の変化と競争激化


テスト業務のアウトソーシング拡大に伴い新規参入が増加し、競争が激化する可能性があります。また、生成AI等の技術革新への対応が遅れた場合、サービスが陳腐化し競争力が低下する恐れがあります。高い顧客満足度を維持できなくなった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定業種への依存


AGESTグループ事業が拡大しているものの、利益面ではゲーム業種向けのDHグループ事業が高い割合を占めています。そのため、ゲーム市場に大規模な減衰が生じた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。