※本記事は、アズマハウス株式会社の有価証券報告書(第49期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. アズマハウスってどんな会社?
同社は和歌山県を中心に、不動産・建設事業や不動産賃貸事業を展開する地域密着型の企業です。
■(1) 会社概要
同社は1977年に和歌山市で東不動産として設立されました。和歌山県を中心に不動産関連事業を展開し、2004年にはホテルを取得してホテル事業も開始しました。2011年に現在のアズマハウスへと商号変更し、2013年に株式上場を果たしています。近年は同業他社の子会社化を通じて事業基盤の拡充を進めています。
現在の従業員数は連結で224名、単体で147名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は創業役員である代表取締役社長の東行男氏で、第2位も親族である東優子氏となっています。第3位にはスリーエースコーポレーションが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東行男 | 36.15% |
| 東優子 | 15.40% |
| スリーエースコーポレーション | 5.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は東行男氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 東行男 | 代表取締役社長 | 1977年同社入社。1978年取締役、1991年代表取締役社長、2012年代表取締役会長を経て、2014年より現職。興國不動産などの子会社社長も兼務。 |
| 平山豊和 | 専務取締役営業部管掌資産活用部管掌建設部管掌営業業務管理部管掌 | 1996年アクティブマドリード入社。2001年同社入社。2012年営業部長、2015年取締役営業部長を経て、2022年4月より現職。 |
| 大東篤史 | 専務取締役開発事業部管掌賃貸部管掌ホテル部管掌 | 1992年クマイ不動産入社。2003年同社入社。2014年業務管理部長、2015年取締役業務管理部長などを経て、2022年10月より現職。 |
| 真川幸範 | 常務取締役財務部管掌経営企画部管掌経理部管掌 | 1995年又一住宅建設入社。1998年同社入社。2001年総務部長、2008年管理部長、2012年監査役などを経て、2022年10月より現職。 |
社外取締役は、北畑米嗣(北畑会計事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、不動産・建設事業、不動産賃貸事業、資産活用事業、ホテル事業およびその他の事業を展開しています。
■不動産・建設事業
分譲土地販売や建売住宅・注文建築を主力として、不動産の販売や仲介、リフォーム工事などを手掛けています。主な顧客は一般消費者であり、和歌山県内や大阪府内に支店を展開し、地域密着型の店舗運営を行っています。
顧客から住宅の販売代金や建築請負代金、仲介手数料などを受け取ることで収益を得ています。また、不動産取引から派生する損害保険代理業務やローン事務代行業務なども行っており、運営は主に同社が担っています。
■不動産賃貸事業
自社で保有する物件の不動産賃貸経営を主力として、不動産賃貸管理や賃貸仲介を展開しています。和歌山県内に複数の支店を構え、居住用やテナント用の物件を幅広く管理・運用しています。
入居者からの家賃収入や、不動産オーナーからの建物メンテナンス・契約者対応などの管理手数料、契約時の仲介手数料を収益源としています。運営は同社および賃貸住宅センター、シージェーシー管理センターが行っています。
■資産活用事業
土地などの資産を有効活用したいオーナーに対し、資産運用提案型の賃貸住宅や建売賃貸住宅の販売を行っています。和歌山県および大阪府を中心に事業を展開し、安定的な賃貸経営をサポートしています。
オーナーから受け取る賃貸住宅の建築請負代金や物件の販売代金が主な収益源です。不動産賃貸事業と連携したシナジー効果を活かした事業提案を行っており、運営は同社が行っています。
■ホテル事業
和歌山市内でビジネスホテルを3カ所保有し、運営しています。さらに、ホテル運営に付随して焼肉店やカフェなどの飲食店も市内で展開し、宿泊客や地域住民へサービスを提供しています。
顧客から受け取るホテルの宿泊料金や、飲食店での飲食代金が主な収益源です。出張などのビジネス需要や国内旅行・インバウンド需要の取り込みを図っており、運営は同社が行っています。
■その他
東京都内において、不動産および賃貸管理業務のエリア拡大を図ることを目的として事業活動を展開しています。首都圏でのビジネスチャンスの創出を目指しています。
不動産仲介手数料や賃貸管理手数料などを主な収益源としています。事業の運営は連結子会社である興國不動産が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一時期140億円台まで成長しましたが、直近では物価上昇や建築コスト高騰の影響もあり110億円台へと減少傾向にあります。経常利益も売上減に伴って減少しており、利益率は7〜8%台の安定した水準で推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 139億円 | 142億円 | 131億円 | 133億円 | 116億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 12億円 | 10億円 | 12億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 8.4% | 8.1% | 7.4% | 8.7% | 7.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 7億円 | 8億円 | 8億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い売上総利益は減少したものの、売上総利益率は改善しています。一方、営業利益も減少し、営業利益率はやや低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 133億円 | 116億円 |
| 売上総利益 | 45億円 | 42億円 |
| 売上総利益率(%) | 34.0% | 36.2% |
| 営業利益 | 12億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 9.3% | 8.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比22%)、支払手数料が4億円(同11%)を占めています。売上原価は74億円となっています。
■(3) セグメント収益
不動産・建設事業は分譲土地等の販売件数が減少し、減収減益となりました。一方、不動産賃貸事業は安定的な収益を維持し増収増益となっています。資産活用事業は受注減により減収となり、ホテル事業は増収を確保しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産・建設事業 | 78億円 | 63億円 | 3億円 | 1億円 | 1.7% |
| 不動産賃貸事業 | 38億円 | 39億円 | 11億円 | 11億円 | 28.9% |
| 資産活用事業 | 8億円 | 7億円 | 1億円 | 0.4億円 | 6.4% |
| ホテル事業 | 7億円 | 7億円 | 1億円 | 0.5億円 | 6.8% |
| その他 | 0.7億円 | 0.5億円 | 0.2億円 | - | - |
| 連結(合計) | 133億円 | 116億円 | 12億円 | 9億円 | 7.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 27億円 | 14億円 |
| 投資CF | -14億円 | -11億円 |
| 財務CF | -13億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「より大切に、より迅速に、すべてはお客様のために」をモットーに、商品の品質や性能、サービス向上の追求は無限と考え、お客様満足を徹底的に追求することを経営理念として掲げています。事業活動を通じて広く社会にとって有用な存在であり続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
「企業行動憲章」を定め、働くすべての人々が高い倫理観を持って活動し、社会的責任の重さを自覚することを求めています。あらゆる法令やルールを厳格に順守し、社会から信頼され続ける企業を目指して行動しています。また、公正な競争を通じて付加価値を創出し、経済社会の発展を担う姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
収益性を明確に表す経常利益および売上高経常利益率と、安全性および健全性を表す自己資本比率を重要な経営指標として位置付けています。中長期的な数値目標として以下の水準を維持することを目指し、収益力の向上と事業基盤の拡大に努めています。
・売上高経常利益率:8%以上
・自己資本比率:40%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の持続的な成長を実現するため、既存事業の深耕と周辺領域の派生事業の推進に取り組んでいます。事業運営の効率化に向けたDX化を導入し、生産性と従業員エンゲージメントの向上を図ります。また、危機管理体制やバックオフィスの見直しなどガバナンス体制を強化し、資本効率性を意識した経営を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
個々の目標設定を明確にし、OJTやOFF-JTを通じて従業員のスキルアップの機会を積極的に提供しています。適切な人事評価とフィードバックにより、従業員のモチベーションや生産性の向上を目指す人材育成方針を掲げています。また、作業環境の見直しや仕事と育児・介護の両立支援など、活き活きと働ける職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 52.1歳 | 9.0年 | 5,649,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
同社および連結子会社は規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の平均勤続年数(12.2年)、全体従業員の平均勤続年数(13.1年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産市況の動向
景気動向や金利動向、地価の変動によって購入者の需要が悪化した場合、不動産の評価損を計上する可能性があります。また、販売計画通りに進まず在庫の滞留期間が長期化した場合、同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 法的規制や免許の取り消し
不動産業や建設業、ホテル業、飲食業に関連する「宅地建物取引業法」「建設業法」「旅館業法」などの規制を受けています。将来何らかの理由でこれらの免許や許認可が取り消され、あるいは更新が認められない場合、事業活動に支障をきたし業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 建築資材の調達と価格高騰
事業で用いる多くの建築資材等は石油化学製品を原料としています。これらの建築資材の供給制限や価格高騰が継続した場合、原価の大幅な増加や建築工程の遅延が生じる可能性があります。引渡しの遅れにより、予定された売上や利益の確保が困難となるリスクがあります。
■(4) 人材の確保と育成
事業を確実かつ機動的に推進するためには、専門性の高い人材の確保やマネジメント層の育成が不可欠です。求める人材の採用や教育が計画通りに進まない場合、あるいは有能な人材が社外へ流出した場合、同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。