トレックス・セミコンダクター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレックス・セミコンダクター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレックス・セミコンダクターは東京証券取引所プライム市場に上場し、各種アナログIC製品の開発・製造・販売を主力事業としています。私たちの生活に欠かせない電子機器の心臓部となる「電源用IC」に特化したファブレスメーカーです。直近の業績は、売上高が増加し、経常利益も黒字転換して増収増益の傾向にあります。


※本記事は、トレックス・セミコンダクター株式会社の有価証券報告書(第31期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トレックス・セミコンダクターってどんな会社?


各種アナログIC製品の開発・製造・販売を手掛ける電源用IC特化のアナログ技術のプロ集団です。

(1) 会社概要


1989年にファウンドリ販売会社として旧法人が設立され、1995年に事業を引き継ぎ現在の同社が設立されました。2014年のJASDAQ上場を経て、2016年にフェニテックセミコンダクターを子会社化しました。2018年に東証第一部に上場し、2019年にフェニテックセミコンダクターを完全子会社化しました。

従業員数は連結で1,014名、単体で181名です。筆頭株主はPERSHING-DIV. OF DLJ SECS. CORP.(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店)で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
PERSHING-DIV. OF DLJ SECS. CORP. 13.17%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.80%
藤阪 知之 4.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役会長執行役員は芝宮孝司氏、代表取締役社長執行役員は木村岳史氏が務めています。11名中、社外取締役は4名(36.4%)です。

氏名 役職 主な経歴
芝宮 孝司 代表取締役会長執行役員 アベイズム入社後、リコー等を経てフェニテックセミコンダクター入社。同社営業本部長などを歴任し、2015年より代表取締役社長、2024年より現職。
木村 岳史 代表取締役社長執行役員 リコー入社後、旧トレックスデバイス入社。開発本部長や管理本部上席本部長などを歴任し、2024年より現職。
宮田 敬史 取締役執行役員品質保証本部本部長 リコー入社後、同社に入社。品質保証部部門長、品質・生産技術本部長などを経て、2026年より現職。
櫻井 茂樹 取締役執行役員管理本部本部長 中国銀行に入行し、リスク統括部長やコンプライアンス部長を歴任。大倉工業の社外取締役を経て、2022年より現職。
前川 貴 取締役執行役員経営企画本部本部長 リコー入社後、旧トレックスデバイス入社。マーケティング部長、経営企画室長などを経て、2025年より現職。
山本 智晴 取締役執行役員事業本部本部長 ロームなどを経て同社米国子会社に入社。製品企画・海外統括本部長や営業・マーケティング本部長などを歴任し、2026年より現職。
石井 弘幸 取締役 フェニテックセミコンダクターに入社。生産本部技術部長、事業企画室長などを経て、2020年より同社代表取締役社長に就任し現職。


社外取締役は、池田耕太郎(元SBI新生銀行)、川俣尚高(丸の内総合法律事務所所属)、廣瀬由美(元芝税務署長)、薗田聡(元村田製作所常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「アジア」「欧州」「北米」の事業を展開しています。

日本


同社グループは日本国内で半導体デバイスの開発・製造・販売と製造外注先の管理を行っています。開発から営業まで電源用ICに特化し、低消費電力や小型化の技術を活かした製品を提供しており、主な顧客は電子機器メーカーなどの企業です。

収益は、半導体デバイス製品や顧客仕様に基づくウエハの販売代金として得ています。販売活動は同社とフェニテックセミコンダクターが担い、開発活動も両社で行っています。フェニテックセミコンダクターはウエハ上に素子や回路を形成する前工程も担っています。

アジア


担当地域である中国、台湾、シンガポール、ベトナムなどのアジア各国において、電源用ICなど同社グループ製品の販売活動を行っています。あらゆる電子機器に搭載される半導体デバイスを現地の企業に提供しています。

収益は、アジア各国の顧客への製品販売代金として得ています。運営は、特瑞仕芯电子(上海)有限公司、TOREX (HONG KONG) LIMITED、台湾特瑞仕半導體股份有限公司、TOREX SEMICONDUCTOR (S) PTE LTD等が担っています。

欧州


担当地域である欧州全域や中東欧、イスラエル、トルコ、アフリカ全域において、同社グループ製品の販売活動を行っています。現地で展開する企業に対して、電源用ICなどの半導体デバイスを提供しています。

収益は、欧州や中東、アフリカ地域の顧客への製品販売代金として得ています。当該地域における販売活動などの運営は、子会社のTOREX SEMICONDUCTOR EUROPE LIMITEDが行っています。

北米


担当地域である北米および中南米大陸全域において、同社グループ製品の販売活動を行っています。北米の主要な電機・電子メーカーやスタートアップ企業に対して、電源用ICなどの半導体デバイスを提供しています。

収益は、北米および中南米地域の顧客への製品販売代金として得ています。当該地域における販売活動などの運営は、子会社のTOREX USA Corp.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績推移を見ると、前期までは売上高が減少傾向にあり、経常損益も赤字が続いていました。しかし当期は売上高が回復に転じ、経常利益も黒字化を達成しています。収益性を示す利益率もプラスに転じており、当期純利益も黒字に回復するなど、業績改善の傾向が確認できます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 319.6億円 257.5億円 239.6億円 250.7億円
経常利益 39.8億円 -24.5億円 -8.2億円 12.7億円
利益率(%) 12.5% -9.5% -3.4% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 25.2億円 -4.2億円 -0.3億円 7.5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、当期は売上高が増加し、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は上昇し、営業損益は前期の赤字から当期は黒字に転換しました。これに伴い営業利益率もプラスとなり、本業の収益力が大きく改善していることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 239.6億円 250.7億円
売上総利益 52.7億円 63.7億円
売上総利益率(%) 22.0% 25.4%
営業利益 -6.3億円 10.9億円
営業利益率(%) -2.6% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与賞与が20.3億円(構成比38.3%)、減価償却費が4.2億円(同8.0%)を占めています。売上原価については、187.0億円(売上高の74.6%)を計上しています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは産業機器向けの販売増により増収となりました。アジアは産業機器向け販売増で増収、欧州は医療機器分野向け販売増で増収、北米も産業機器向け販売増により増収を達成しており、全セグメントで前年を上回る売上を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 165.8億円 173.7億円
アジア 56.2億円 56.8億円
欧州 12.3億円 13.7億円
北米 5.4億円 6.6億円
連結(合計) 239.6億円 250.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 33.6億円 31.3億円
投資CF -37.6億円 -23.6億円
財務CF 4.4億円 -9.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「常に豊かな知性と感性を磨き、市場に適応した価値ある製品を創出し、豊かな社会の実現と地球環境の保全に貢献するとともに、私たちの事業に携わるすべての人々が共に繁栄すること」を企業理念に掲げています。設立以来、アナログ半導体に特化し、価値ある製品の提供を通じた社会課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Powerfully Small!」を製品づくりの目指すべき姿と定め、開発から営業まで電源用ICに特化したアナログ技術のプロ集団として、低消費電力や小型化の技術と提案能力を磨いてきました。ステークホルダーとの関係を常に意識した、ぶれない経営を実践し、共存・共栄の精神ですべてのステークホルダーとともにサステナビリティ推進に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は2026年度を初年度とする新たな中期経営計画を策定し、「CMOS電源ICと半導体パワーデバイスで、持続的成長と共に省エネ社会を推進し、全てのステークホルダーが誇れる半導体企業へ」を基本方針としています。目標とする経営指標としては以下を掲げています。

* ROE二桁(当面の目標)
* 連結配当性向20%以上
* 株主資本配当率(DOE)3%程度

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、産業機器・車載機器を重点分野と位置づけ、市場規模の拡大と高度化する顧客ニーズに対応するため、これまで培ってきた小型化・省電力化の技術を活かした高付加価値製品の開発・販売に注力しています。また、同社とフェニテックセミコンダクターの両事業の強みとシナジーを活かし、製品開発、営業・拡販、生産、人財、DX推進、サステナビリティ推進の各施策を実施し、企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を企業価値創造の源泉である「人財」と捉え、人財戦略として「社内コミュニケーションの活性化で付加価値を生む組織」および「仕事にワクワクできる、キャリアと自己実現を目指せる環境作り」を掲げています。多様な人材の確保、人材育成の支援、ワークライフバランスの充実、やりがいを持って働ける環境の整備を重点施策として推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.5歳 13.6年 7,112,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.1%
男性育児休業取得率 67.0%
男女賃金差異(全労働者) 86.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 84.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 89.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 販売価格の低下リスク


同社グループが属するアナログ半導体業界は、製品寿命の短期化や新興勢力の台頭等により価格競争が激化しています。取引先の値下げ要請や競合他社との価格競争の影響により、販売価格が予想以上に低下する可能性や販売機会を逃す可能性があり、業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(2) 原材料・半製品価格の変動リスク


同社は国内外の複数の取引先から原材料等を購入していますが、金や原油をはじめとする資源価格の上昇等により、製造コストに強い上昇圧力が生じています。これらの購入価格上昇を製品の販売価格に十分に反映できない場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品需要の変動リスク


同社グループの製品は様々なデジタル機器等に使用されており、取引先メーカーにおける最終製品の販売状況に売上高が連動します。経済情勢等の影響で最終製品の需要が激減した場合や、顧客が在庫調整を行った場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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