トレックス・セミコンダクター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレックス・セミコンダクター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トレックス・セミコンダクターは東京証券取引所プライム市場に上場しており、電源用ICに特化したアナログ半導体の開発・製造・販売を主要事業としています。2025年3月期の連結業績は、長期的な市況の回復の遅れと在庫調整の影響により、売上高は前期比減収となり、利益面では損失を計上しています。


※本記事は、トレックス・セミコンダクター株式会社 の有価証券報告書(第30期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トレックス・セミコンダクターってどんな会社?


同社は、電子機器の省電力・小型化に不可欠な電源用ICを主力とするアナログ半導体メーカーです。

(1) 会社概要


同社は、1995年にシンコー電器(現フェニテックセミコンダクター)の子会社として設立され、アナログ電源IC事業を開始しました。2014年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場し、2016年にはフェニテックセミコンダクターを子会社化しました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結1,034名、単体185名です。株主構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は外国法人の常任代理人である銀行、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.22%
PERSHING-DIV. OF DLJ SECS. CORP. 10.82%
藤阪 知之 4.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役 社長執行役員は木村 岳史氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
木村 岳史 代表取締役社長執行役員 リコーを経て2003年入社。開発本部や事業本部の要職を歴任し、2020年取締役常務執行役員。2024年4月より現職。
芝宮 孝司 代表取締役会長執行役員 リコー等を経て1999年入社。営業本部長、事業本部長等を歴任し、2015年代表取締役社長就任。2024年4月より現職。
宮田 敬史 取締役執行役員品質・生産技術本部本部長 リコーを経て2014年入社。品質保証部門長等を務め、2020年6月より現職。ベトナム子会社取締役会長も兼務。
櫻井 茂樹 取締役執行役員管理本部 本部長 中国銀行にてリスク統括部長等を歴任。2022年6月より現職。海外子会社のDirector等を兼務。
前川 貴 取締役執行役員経営企画本部 本部長 リコーを経て1999年入社。マーケティング部長、経営企画部門長等を歴任。2025年4月より現職。
山本 智晴 取締役執行役員営業・マーケティング本部 本部長 ローム等を経て2002年米国子会社入社。2020年執行役員。2024年6月より現職。
石井 弘幸 取締役 1984年フェニテックセミコンダクター入社。同社生産本部技術部長等を経て2020年6月より同社代表取締役社長執行役員および当社取締役。


社外取締役は、池田 耕太郎(元ホームネット取締役)、川俣 尚高(弁護士)、廣瀬 由美(税理士)、薗田 聡(元村田製作所常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「アジア」「欧州」「北米」の各報告セグメントにおいて、半導体デバイス事業を展開しています。

(1) 日本


同社グループは日本国内において、電源用ICやディスクリートなどの半導体デバイスの開発・製造・販売を行っています。顧客は電子機器メーカー等です。
収益は、製品の販売による対価です。販売活動は同社と連結子会社のフェニテックセミコンダクターが行っています。開発は両社で行い、製造についてはフェニテックセミコンダクターが前工程(ウエハ製造)の一部を担当し、その他は外部委託およびグループ内連携を行っています。

(2) アジア


アジア地域(中国、台湾、東南アジア等)において、同社グループ製品の販売活動を行っています。主な顧客は現地の電子機器メーカーや製造受託企業等です。
収益は製品販売による対価です。運営は、特瑞仕芯电子(上海)有限公司、TOREX (HONG KONG) LIMITED、台湾特瑞仕半導體股份有限公司、TOREX SEMICONDUCTOR (S) PTE LTD等の現地法人が行っています。また、TOREX VIETNAM SEMICONDUCTOR CO.,LTDが後工程の一部製造を担っています。

(3) 欧州


欧州全域および周辺地域において、同社グループ製品の販売活動を行っています。産業機器分野などの顧客に対し、製品を提供しています。
収益は製品販売による対価です。運営は、英国に拠点を置く連結子会社であるTOREX SEMICONDUCTOR EUROPE LIMITEDが行っています。

(4) 北米


北・中南米大陸全域において、同社グループ製品の販売活動を行っています。産業機器分野などの顧客に対し、製品を提供しています。
収益は製品販売による対価です。運営は、米国に拠点を置く連結子会社であるTOREX USA Corp.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、2022年3月期から2023年3月期にかけては売上高300億円規模で推移し利益も確保していましたが、直近2期間においては売上高が減少し、損失を計上する厳しい状況となっています。特に直近では経常損失が発生していますが、当期は前期に比べ赤字幅が縮小しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 237億円 309億円 320億円 258億円 240億円
経常利益 12億円 41億円 40億円 -25億円 -8億円
利益率(%) 5.1% 13.4% 12.5% -9.5% -3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 16億円 25億円 -42億円 -0.3億円

(2) 損益計算書


売上高は減少傾向にありますが、売上総利益および売上総利益率は改善しています。一方で、営業損益は依然としてマイナス圏にありますが、前期と比較して損失額は大幅に縮小しており、収益性の回復に向けた兆しが見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 258億円 240億円
売上総利益 40億円 53億円
売上総利益率(%) 15.5% 22.0%
営業利益 -18億円 -6億円
営業利益率(%) -6.9% -2.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与賞与が21億円(構成比36%)、減価償却費が5億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上高を見ると、日本と欧州では減少していますが、アジアと北米では増加しています。特に主力の日本セグメントでの減収が全体の売上減少に影響しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
日本 187億円 166億円
アジア 51億円 56億円
欧州 14億円 12億円
北米 5億円 5億円
連結(合計) 258億円 240億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業で資金を獲得しつつ、さらに資金調達を行って投資を進めている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 19億円 34億円
投資CF -46億円 -38億円
財務CF 27億円 4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-12.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「常に豊かな知性と感性を磨き、市場に適応した価値ある製品を創出し、豊かな社会の実現と地球環境の保全に貢献するとともに、私たちの事業に携わるすべての人々が共に繁栄すること」を企業の理念としています。

(2) 企業文化


同社グループは、「Powerfully Small!」を製品づくりの目指すべき姿と定めています。アナログ技術のプロ集団として、低消費電力・小型化のための技術と提案能力を磨き、電子機器の超小型・軽量化に貢献することを重視する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、永続的な企業価値の向上を図るため、収益力の確保と戦略的投資により中長期的な競争力及び成長力の向上に取り組んでいます。経営指標としては、売上及び各段階利益の最大化に取り組み、ROE二桁を当面の目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、産業機器の自動化・デジタル化や自動車の電子化の進展を背景に、「産業機器」「車載機器」「医療機器」の3市場を集中的に攻略する方針です。技術力とノウハウを結集した差別化製品の創造、グループ内リソースの連携による付加価値向上、戦略的提携による新技術の取り込みを重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な人材の確保と育成支援を通じて、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。新卒・経験者採用やリファラル採用の強化、女性管理職の登用、OJTやOff-JTによる能力開発支援を進めています。また、フレックスタイム制度や育児休業の取得促進など、働きやすい環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.4歳 13.1年 7,324,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.5%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 83.8%
男女賃金差異(正規雇用) 83.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 88.1%


※提出会社の男性育児休業取得率は有価証券報告書に数値の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 販売価格の低下のリスク


半導体業界は販売価格の変動が大きく、取引先からの値下げ要請や競合他社との価格競争により、販売価格が予想以上に低下する可能性があります。コスト低減要求に応えられない場合は販売機会を逃す恐れもあり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料・半製品価格及び販売価格の変動に関するリスク


原材料や半製品の調達価格は市況変動の影響を受けます。価格上昇分を製品価格に転嫁できない場合や、製品価格の引下げを調達価格に反映できない場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 製品需要の変動リスク


同社製品は様々な電子機器に搭載されており、最終製品の販売状況に売上が連動します。経済情勢による需要急減や顧客の在庫調整が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、季節変動による売上の偏重が生じる可能性もあります。

(4) 上場維持基準への抵触に関するリスク


2025年3月末時点で、同社はプライム市場の上場維持基準のうち流通株式時価総額基準を満たしていません。2026年3月末までの改善期間内に適合しない場合、監理銘柄指定を経て上場廃止となる可能性があります。上場廃止となった場合、株式流動性の低下や社会的信用の低下などが生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

トレックス・セミコンダクターの転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

トレックス・セミコンダクターの2026年3月期3Q決算は、営業損益が前年の赤字から大幅黒字化。後工程拠点の譲渡を通じた台湾PANJIT社との戦略的提携や、フィジカルAI向け小型電源ICの好調が目立ちます。「なぜ今トレックスなのか?」「次世代半導体やAI領域でどんな役割を担えるのか」を整理します。