※本記事は、株式会社ジャパンディスプレイの有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジャパンディスプレイってどんな会社?
同社は車載や各種産業機器向けディスプレイの開発・製造を手掛け、独自の技術力で付加価値を提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2002年に日立ディスプレイズとして設立され、その後、産業革新機構、日立製作所、東芝、ソニーの中小型ディスプレイ事業の統合を経て、2012年に現在のジャパンディスプレイとなりました。2014年には東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年にプライム市場へ移行しました。近年は収益改善を目指し、生産拠点の集約など抜本的な事業構造改革を推進しています。
現在の従業員数は連結で2,333名、単体で1,214名です。筆頭株主は日本企業への投資に特化した資産運用を行ういちごトラストで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は事業会社の日亜化学工業となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| いちごトラスト(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 78.19% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 2.11% |
| 日亜化学工業 | 0.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表執行役社長CEOは明間純氏が務めています。取締役5名のうち3名が社外取締役であり、経営の透明性と監督機能を高めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 明間純 | 代表執行役社長CEO | セイコーエプソン等を経て同社に入社。調達統括部長等を経て2025年6月より現職。 |
| スコット キャロン | 取締役会長 | モルガン・スタンレー証券、いちごアセットマネジメント代表取締役社長等を経て2025年6月より現職。 |
| 植木俊博 | 取締役 | 日本アイ・ビー・エム、ブイ・テクノロジー等を経て同社に入社。執行役員等を経て2020年8月より現職。 |
社外取締役は、小関珠音(大阪公立大学大学院教授)、伊藤志保(公認会計士)、辻村隆俊(SID Japan Regional Vice-President)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ディスプレイ事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
主に車載機器、デジタルカメラ、医療用モニター、各種産業機器などに搭載されるディスプレイおよび関連製品の開発、設計、製造、販売を行っています。電子機器の出力装置として不可欠な画像表示部品を提供し、多様な顧客ニーズに応えています。
製品の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営は主にジャパンディスプレイが行っており、国内の石川工場での生産をはじめ、海外の販売子会社を通じてグローバルな供給体制を構築しています。近年はセンサー分野や先端半導体パッケージング分野への事業展開も推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向が続いており、経常利益および当期利益も継続してマイナスとなっています。事業構造改革を進める中で、製品ポートフォリオの見直しや工場の生産終了等が影響し、事業規模の縮小と損失計上が続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,959億円 | 2,707億円 | 2,392億円 | 1,880億円 | 1,323億円 |
| 経常利益 | -80億円 | -429億円 | -332億円 | -404億円 | -305億円 |
| 利益率(%) | -2.7% | -15.9% | -13.9% | -21.5% | -23.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -162億円 | -152億円 | -460億円 | -820億円 | -78億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、売上総利益が黒字に転換し、営業損失も縮小しています。固定費の削減や人員適正化などの構造改革効果が表れています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,880億円 | 1,323億円 |
| 売上総利益 | -97億円 | 26億円 |
| 売上総利益率(%) | -5.2% | 2.0% |
| 営業利益 | -371億円 | -187億円 |
| 営業利益率(%) | -19.7% | -14.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料諸手当が52億円(構成比24%)、荷造及び発送費が32億円(同15%)、研究開発費が31億円(同15%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業赤字を資産売却+借入で補填する「救済型」となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -255億円 | -233億円 |
| 投資CF | -82億円 | 229億円 |
| 財務CF | 257億円 | 51億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はデータがなく、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は-6.1%で債務超過となっており、市場平均を大きく下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「今までにない発想と、限りない技術の追求をもって、人々が躍動する世界を創造し続ける。」という企業理念を掲げています。独自の高い技術力を経営基盤とし、よりよい社会の実現に貢献する製品やサービスを世界中の顧客に提供することで、持続的な成長と社会課題の解決を目指しています。
■(2) 企業文化
人、社会、地球の持続可能性の確保を経営の前提とし、「サステナビリティ基本方針」を掲げています。また、「倫理規範(JDI Ethics)」を制定し、人権の尊重や職場環境の整備、環境保全を重視するとともに、多様なステークホルダーと良好な関係を保ち、価値の共創を追求する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
成長戦略「BEYOND DISPLAY」のもと、収益の改善と財務の健全化に向けた事業構造の転換を進めています。人員削減や工場再編による固定費の大幅な削減を実施し、最重要課題である債務超過の解消に取り組んでいます。財務基盤の改善進捗を踏まえ、適切なタイミングで新たな財務目標を設定する予定です。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存のディスプレイ事業ではアセットライト化や高付加価値製品への集中により収益構造の改善を図り、国内生産を石川工場に集約して生産性を高めています。また、ディスプレイ技術を基盤に事業領域を拡大し、センサー事業や先端半導体パッケージング事業を新たな成長柱として育成し、企業価値の回復・向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な企業価値向上を実現するため、人材を最も重要な経営資源と位置づけた人材戦略を推進しています。成長分野への適材適所の配置で事業変革を加速し、主体的に変革を推進できる人材の育成と登用を重視しています。また、多様な人材の尊重と働きやすい環境整備により、エンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 50.9歳 | 23.2年 | 6,979,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 93.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 61.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、サプライヤーサステナビリティ自己監査実施率(100%)、倫理規範教育受講率(100%)、人権・ハラスメント教育受講率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 財務状況と上場維持に係るリスク
債務超過や継続的な営業損失の計上により、継続企業の前提に重要な疑義が生じています。各種の構造改革や資金調達を進めていますが、業績回復が遅延した場合、資金繰りへの重大な影響や、上場維持基準への不適合による上場廃止のリスクがあります。
■(2) 市場動向と競争環境の変動
ディスプレイ製品は、搭載される機器の市場動向や競争環境の影響を強く受けます。景気変動や消費者嗜好の変化による需要減少、あるいは競合他社との競争激化による販売価格の低下が生じた場合、売上高の減少や過剰在庫によるコスト増が発生する可能性があります。
■(3) 大地震等のハザードリスク
大地震や気候変動に伴う大型台風、洪水等の自然災害が発生した場合、従業員や設備、サプライチェーンが被害を受け、製品供給に甚大な支障をきたす可能性があります。事業継続計画(BCP)の運用や防災訓練により対策を進めていますが、影響を完全に回避できる保証はありません。



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