ジャパンディスプレイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャパンディスプレイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する中小型ディスプレイの製造・販売大手です。主力の車載やスマートウォッチ向け製品に加え、センサー事業など新規領域への転換を進めています。第23期は液晶スマートフォン向け事業の縮小等により減収となり、営業損益および最終損益ともに赤字が継続しています。


※本記事は、株式会社ジャパンディスプレイ の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジャパンディスプレイってどんな会社?


中小型ディスプレイデバイス及び関連製品の開発、製造、販売を行う企業です。「世界初、世界一」の独自技術を基盤に、車載機器やウェアラブルデバイス向け製品を展開しています。

(1) 会社概要


2012年、日立製作所、東芝、ソニーの中小型ディスプレイ事業を統合し設立されました。2014年に東証一部(現プライム)へ上場。その後、モバイル向け液晶の競争激化等を経て構造改革を進め、2020年にいちごトラストとの資本提携を実施しました。現在はディスプレイ専業からの脱却を掲げ、事業ポートフォリオの変革に取り組んでいます。

連結従業員数は4,141人、単体では2,639人です。筆頭株主は日本企業への投資を行う資産運用会社の関連事業体であるいちごトラストで、発行済株式の約78%を保有しています。第2位は信託銀行、第3位はLED大手の日亜化学工業です。

氏名 持株比率
いちごトラスト(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 78.19%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 1.96%
日亜化学工業株式会社 0.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表執行役社長CEOは明間純氏が務めています。社外取締役は取締役5名中3名を占め、過半数となっています。

氏名 役職 主な経歴
明間 純 代表執行役社長CEO 2002年セイコーエプソン入社。2015年ジャパンディスプレイ入社、調達部門や事業企画部門を経て、調達統括部長などを歴任。2025年6月より現職。
スコット キャロン 取締役取締役会議長指名委員会委員長報酬委員会委員長 2006年いちごアセットマネジメント代表取締役社長。2008年いちご代表執行役会長。2020年ジャパンディスプレイ代表取締役会長、2021年同社代表執行役会長CEOなどを経て、2025年6月より現職。
植木 俊博 取締役監査委員会委員長 1981年日本アイ・ビー・エム入社。同社技術理事、AvanStrate代表取締役社長兼CEO、日本電解代表取締役社長兼CEOなどを経て、2020年8月より現職。


社外取締役は、小関珠音(大阪公立大学大学院教授)、伊藤志保(公認会計士)、辻村隆俊(SID Japan Regional Vice-President)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ディスプレイ事業」およびその関連製品に関する事業を展開しています。

(1) ディスプレイ事業


電子機器の出力装置として画像を表示するディスプレイの開発、設計、製造および販売を行っています。主な用途は、自動車のインパネ等に使われる車載機器、スマートウォッチ、デジタルカメラ、VR機器などです。同社は中小型領域に強みを持ち、低温ポリシリコン(LTPS)技術などを活用した高精細・低消費電力な製品を顧客に提供しています。

収益は、国内外の電機メーカーや自動車部品メーカー等への製品販売から得ています。運営は主にジャパンディスプレイ本体が行い、製造工程の一部を海外製造子会社や協力会社に委託する体制をとっています。近年は従来のディスプレイ専業から、センサー事業や先端半導体パッケージング事業など、保有技術を応用した新領域への拡大を図る「BEYOND DISPLAY」戦略を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は減少傾向にあり、利益面では経常損失および当期純損失が続いています。競争激化や事業構造改革に伴う費用の計上などが影響しており、厳しい経営状況が継続しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,417億円 2,959億円 2,707億円 2,392億円 1,880億円
経常利益 -327億円 -80億円 -429億円 -332億円 -404億円
利益率(%) -9.6% -2.7% -15.9% -13.9% -21.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -427億円 -81億円 -258億円 -443億円 -782億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は約2割減少し、営業損失および経常損失の赤字幅が拡大しています。売上総利益段階からマイナスとなっており、固定費等の負担が重い状況がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,392億円 1,880億円
売上総利益 -65億円 -97億円
売上総利益率(%) -2.7% -5.1%
営業利益 -341億円 -371億円
営業利益率(%) -14.3% -19.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料諸手当が64億円(構成比23.5%)、研究開発費が45億円(同16.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、アプリケーション別の売上高が開示されています。車載向けは減少したものの売上構成比を高めていますが、スマートウォッチ・VR等向けや液晶スマートフォン向けは大幅に減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
車載 1,332億円 1,259億円
スマートウォッチ・VR等 735億円 536億円
液晶スマートフォン 324億円 86億円
連結(合計) 2,392億円 1,880億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業キャッシュ・フローがマイナスで、投資キャッシュ・フローもマイナスですが、借入等の財務キャッシュ・フローで資金を調達している「勝負型」の状態です。ただし、長期間の赤字継続により財務基盤が弱体化しており、資金繰りに注意が必要です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -176億円 -255億円
投資CF -134億円 -82億円
財務CF 329億円 257億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-169.9%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.5%で市場平均を大きく下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「今までにない発想と、限りない技術の追求をもって、人々が躍動する世界を創造し続ける。」を企業理念に掲げています。「世界初、世界一」の独自技術を経営基盤とし、よりよい社会の実現に貢献する製品・サービスを世界中の顧客に提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、人、社会、地球が健全であるために、企業倫理を遵守した経営を行うことを目的として、「JDI倫理規範(JDI Ethics)」を制定しています。また、リスクの未然防止やコンプライアンスの徹底に加え、持続可能な社会の実現と自社の成長を両立させるサステナビリティ経営を推進しています。

(3) 経営計画・目標


事業環境の大きな変化を受け、過去に策定した中期経営計画の財務目標については見直しを進めています。新たな戦略「BEYOND DISPLAY」の下、事業モデルの抜本的改革に取り組み、これら要素を精査した上で、新たな財務目標を適切なタイミングで設定する予定です。

(4) 成長戦略と重点施策


「BEYOND DISPLAY戦略」を掲げ、ディスプレイ事業への依存からの脱却を図っています。具体的には、センサー事業の拡大および先端半導体パッケージング事業への参入を進めるとともに、ディスプレイ事業では高付加価値製品への集中とアセットライト化を推進します。

国内生産体制については、固定費負担の大きい茂原工場でのパネル生産を終了し、石川工場への集約を決定しました。石川工場をディスプレイ、センサー、半導体パッケージの生産を行う「MULTI-FAB」として活用し、生産性とコスト競争力の向上を目指します。また、車載事業の子会社化等による競争力強化も図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「世界初、世界一」の技術開発に挑戦し続けるエンジニアを含め、成長に貢献する優秀な人材の確保・育成を重視しています。専門分野別教育や階層別研修の充実を図るとともに、社員のエンゲージメント向上施策を推進しています。また、多様な人材が能力を発揮できるよう、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの理解促進や柔軟な働き方の支援に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 49.3歳 22.4年 7,586,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 2.9%
男性労働者の育児休業取得率 94.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 69.7%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 70.3%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 58.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者(正社員)に占める女性の割合(38.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向・競争環境の変動


製品市場の変動や競争環境の影響を受けるリスクがあります。景気や消費者嗜好の変化等により市場が変動した場合、売上減少や過剰在庫、工場稼働率低下による損失が発生する可能性があります。また、競合他社との競争激化により販売価格が低下する恐れもあります。

(2) 資金調達


運転資金確保のため、いちごトラスト等からの借入を行っています。借入が困難になった場合や資産売却等が計画通り進まない場合、事業遂行に支障をきたす可能性があります。また、新株予約権の行使状況によっては資金不足や株式の希薄化が生じるリスクがあります。

(3) 継続企業の前提に関する重要事象等


長期間の赤字継続と純資産減少により、継続企業の前提に重要な不確実性が認められる状況にあります。収益力の改善や財務健全化に向けた施策を進めていますが、これらが計画通りに進まない場合、資金繰り等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。