※本記事は、株式会社リボミックの有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リボミックってどんな会社?
同社は、RNAを成分とする次世代新薬「アプタマー医薬」の研究開発に特化したバイオベンチャーです。
■(1) 会社概要
同社は2003年に設立され、2005年よりRNAアプタマーを利用した新規医薬品の開発を本格的に開始しました。2014年に東京証券取引所マザーズへ株式を上場し、2017年には米国に子会社を設立してグローバル展開を進めています。2026年には軟骨無形成症治療薬の第3相臨床試験の開始許諾を得ています。
同社の従業員数は単体で25名です。少数の専門的な研究員やスタッフにより機動的な研究開発体制を構築しています。筆頭株主をはじめとする上位株主は、信託銀行や海外の金融機関などが占めており、市場からの資金調達等を通じた事業推進の基盤となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| BNP PARIBAS LONDON BRANCH FOR PRIME BROKERAGE CLEARANCE ACC FOR THIRD PARTY | 2.82% |
| BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG(FE-AC) | 1.82% |
| 松井証券 | 1.57% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は中村義一氏が務めています。取締役における社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村義一 | 代表取締役社長兼事業推進本部長 | 東京大学医科学研究所教授等を経て、2005年同社取締役最高技術責任者ファウンダーに就任。2012年代表取締役社長、2024年より事業推進本部長を兼務。東京大学名誉教授。 |
| 大岩久人 | 取締役執行役員管理本部長 | 住友銀行、大和証券SMBC、SMBC日興証券等で要職を歴任。デジタルアセットマーケッツ等を経て、2021年同社に入社し、執行役員管理本部長に就任。同年より現職。 |
| 安達健朗 | 取締役執行役員研究開発本部長 | 日本学術振興会特別研究員を経て、2016年同社に入社。主任研究員、執行役員探索研究部長等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、西畑利明(元参天製薬取締役専務執行役員)、松藤千弥(東京慈恵会医科大学学長・理事)、藤原俊伸(近畿大学薬学部教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、単一セグメントの中で「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しています。
■(1) 創薬事業
自社で創製したアプタマー医薬品の研究開発を行い、製薬企業等へのライセンスアウトによる収益獲得を目指しています。重点領域として眼科疾患や軟骨無形成症などの希少疾患を対象としており、革新的な新薬シーズを創出しています。
ライセンス契約に伴う契約一時金、開発進展に応じたマイルストーン収入、上市後のロイヤルティーが主な収益源です。現在は軟骨無形成症や滲出型加齢黄斑変性の治療薬として期待される医薬品の開発を同社が中心となって進めています。
■(2) 創薬支援事業
同社が保有するアプタマー創薬基盤技術「RiboART System」等のプラットフォームを活用し、製薬企業等からの研究開発課題や標的分子に対する創薬活動を支援しています。光免疫療法やAIを用いたアプタマー技術の応用も進めています。
共同研究の提携先から支払われる研究受託収入や、プラットフォーム技術の導出に伴う契約一時金などを収益源としています。同社がパートナー企業と共同で研究を進めることで、早期かつ安定的な収益確保を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
創薬ベンチャーという事業特性上、研究開発に向けた先行投資が継続しており、直近5期間にわたり経常利益および当期利益は赤字で推移しています。ライセンス契約や共同研究の獲得時期によって収益が変動するため、中長期的な視点での事業進捗が重視される収益構造となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | -16.4億円 | -16.5億円 | -9.8億円 | -10.1億円 | -11.4億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -16.8億円 | -16.5億円 | -10.2億円 | -10.2億円 | -11.5億円 |
■(2) 損益計算書
研究開発活動の活発化に伴い、直近2期間において営業赤字が継続し、その赤字幅は拡大傾向にあります。将来の医薬品上市やライセンスアウトを見据えた先行投資が積極的に行われていることが示されています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | -10.5億円 | -12.1億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費の主要な内訳として、役員報酬が1.3億円、給料手当が0.9億円を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業の赤字を資産の売却や資金調達で補填する「救済型」の傾向を示しています。研究開発型のバイオベンチャー特有の先行投資フェーズにあり、新株発行等の財務活動による資金確保で事業を推進しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -10.0億円 | -11.1億円 |
| 投資CF | 0.7億円 | 2.9億円 |
| 財務CF | 6.7億円 | 9.1億円 |
企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は95.4%で、市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応える」を企業理念に掲げています。人の生命と健康に関連する新薬開発企業として高い倫理性を持ち、最新の科学や技術に基づく研究活動を推進することで、医療の発展と人々の健康増進に貢献することを存在意義としています。
■(2) 企業文化
同社は、大学等のアカデミアとの連携を重視する「産学連携」の文化が根付いています。多様なバックグラウンドや専門性を持つ研究員が集まり、小規模ながら機能的で垣根の低い組織を形成しています。社員一人ひとりが自律的に探求し、粘り強く挑戦し続けることを推奨する風土を持っています。
■(3) 経営計画・目標
中長期的な成長のための事業目標として、「医薬品提供の実現」「次世代アプタマー・テクノロジーの開発」「社会に対する企業価値の創出」の3項目を掲げています。具体的な数値目標は設定されていませんが、将来的に持続的な事業収益を計上できる創薬企業へと進化することを目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
自社創薬におけるパイプラインの拡充と、早期の知財化による競争優位性の確保を推進しています。特に、軟骨無形成症治療薬の第3相臨床試験の実施や、次世代のAIアプタマー技術等の新規技術開発に注力しています。また、製薬企業との共同研究やライセンスアウトの実現に向けた事業開発活動を強化しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
新たな技術を世に送り出すため、多様な専門性を持つ人材の採用と育成に取り組んでいます。社員が安全で能力を存分に発揮できる環境を整えるとともに、社内での知見共有や学会への参画、自律的なキャリア成長を支援しています。過度な残業の抑制や有給休暇の取得推奨を通じたワークライフバランスの実現も図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 6.5年 | 7,087,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.5% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | - |
※男性育児休業取得率は該当者がいなかったため省略されています。非正規雇用労働者の男女賃金差異は該当者が派遣社員のみのため含めておりません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(68.1%)、健康診断受診率(100%)、ストレスチェック参加率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医薬品研究開発の不確実性
創薬事業では、新たな候補品の創出や臨床試験の成功確率が低いという不確実性が伴います。試験において予期せぬ副作用が発生した場合など、開発中止を余儀なくされる可能性があり、その際は新たな探索から長期間と多額の費用が必要となるため、同社の事業計画に大きな影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 収益の不確実性
同社の収益は、提携先からの契約一時金やマイルストーン収入、ロイヤルティーに依存しています。ライセンス契約を成立させるためには厳しい評価基準をクリアする必要があり、また提携先の経営環境変化によって開発が中止される場合もあります。採算性を十分に確保できない場合、収益獲得が遅延するリスクがあります。
■(3) アプタマー医薬分野の競合激化
アプタマー創薬の基盤技術に関する特許の一部が失効しているため、新規参入が容易となっており、国内外の製薬企業や研究機関との開発競争が激化する可能性があります。また、抗体医薬などの競合製品が先に市場で優位性を確立した場合、同社開発品に対する評価や需要が相対的に低下する懸念があります。



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