※本記事は、株式会社FFRIセキュリティ の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. FFRIセキュリティってどんな会社?
サイバー・セキュリティ領域の研究開発に特化し、日本発の技術で標的型攻撃対策製品や安全保障関連サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
2007年に設立され、包括的セキュリティリサーチサービスの提供を開始しました。2009年に標的型攻撃対策ソフトウェア「FFRI yarai」の販売を開始し、2014年に東証マザーズへ上場しました。2020年に現在のFFRIセキュリティへ社名を変更し、2021年にはシャインテックを完全子会社化しています。
現在の従業員数は連結で215名、単体で151名です。筆頭株主は創業者の鵜飼裕司氏で、第2位は専務取締役の金居良治氏であり、経営陣が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 鵜飼 裕司 | 24.55% |
| 金居 良治 | 18.23% |
| 田中 重樹 | 2.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は鵜飼裕司氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鵜飼 裕司 | 代表取締役社長 | イーストマンコダックジャパン、eEye Digital Security社を経て、2007年同社設立とともに取締役副社長最高技術責任者に就任。2009年より現職。 |
| 金居 良治 | 専務取締役最高技術責任者兼ナショナル・セキュリティ事業本部長 | eEye Digital Security社を経て、2007年同社設立に参画。2018年専務取締役最高技術責任者、2023年よりナショナル・セキュリティ事業本部長を兼務。 |
| 田中 重樹 | 常務取締役最高財務責任者兼経営管理本部長 | バリオセキュア・ネットワークス(現バリオセキュア)を経て、2008年同社入社。2018年常務取締役最高財務責任者、2022年より経営管理本部長を兼務。 |
| 川原 一郎 | 取締役事業開発及びyarai事業担当兼事業開発本部長 | システムプロ(現システナ)、インフォサイエンスを経て、2012年同社入社。2018年取締役事業推進本部長、2023年より現職。 |
| 梅橋 一充 | 取締役製品開発本部長 | 富士インフォックス・ネット、ソーバルを経て、2008年同社入社。2018年取締役製品開発本部長、2023年より現職。 |
社外取締役は、平山孝雄(元防衛庁海上幕僚監部通信課長)、松本勉(横浜国立大学上席特別教授)、山口功作(元駐日エストニア共和国大使館エンタープライズ・エストニア日本支局長)、中山泰秀(元防衛副大臣)です。
2. 事業内容
同社グループは、「サイバー・セキュリティ事業」および「ソフトウェア開発・テスト事業」を展開しています。
■サイバー・セキュリティ事業
独自の研究開発技術を基盤に、標的型攻撃対策製品「FFRI yarai」などのセキュリティ製品の販売や、政府・官公庁向けのナショナルセキュリティ・サービス、民間向けの調査・分析サービスを提供しています。主要顧客は政府機関、重要インフラ企業、一般企業等です。
収益は、製品のライセンス料(サブスクリプションまたはパーペチュアル)、保守サポート料、および調査・分析・研究開発等のサービス対価から得ています。運営は主にFFRIセキュリティが行っています。
■ソフトウェア開発・テスト事業
ソフトウェアの設計・開発・評価・解析に関わる技術者の派遣や、ソフトウェアの不具合発見・品質確認を行うテストの計画・設計・実施サービスを提供しています。
収益は、技術者派遣やテスト業務の受託に対する対価として受け取ります。運営は子会社のシャインテックが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期間において、売上高は着実に右肩上がりで推移しています。特に利益面での成長が顕著で、経常利益は2022年3月期の1.6億円から2025年3月期には8.8億円へと大幅に拡大しており、利益率も8.8%から29.0%へと大きく向上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 17.8億円 | 19.5億円 | 24.5億円 | 30.4億円 |
| 経常利益 | 1.6億円 | 2.5億円 | 5.4億円 | 8.8億円 |
| 利益率(%) | 8.8% | 12.7% | 22.1% | 29.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.9億円 | 1.4億円 | 3.8億円 | 6.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。売上総利益率は60%台後半の高水準を維持しつつ上昇しており、営業利益率も20%台から27%近くまで改善するなど、収益性が一段と高まっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 24.5億円 | 30.4億円 |
| 売上総利益 | 15.4億円 | 20.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 63.0% | 66.8% |
| 営業利益 | 5.0億円 | 8.2億円 |
| 営業利益率(%) | 20.3% | 26.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3.0億円(構成比24%)、販売促進費が2.5億円(同21%)、研究開発費が1.7億円(同14%)を占めています。売上原価においては、労務費や外注費などが主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
主力のサイバー・セキュリティ事業が売上・利益ともに大きく伸長し、全社の成長を牽引しています。特にナショナルセキュリティ分野などの需要拡大が寄与し、利益率は30%を超える高水準です。一方、ソフトウェア開発・テスト事業は売上が微減となりましたが、一定の利益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| サイバー・セキュリティ事業 | 19.8億円 | 25.9億円 | 5.5億円 | 8.8億円 | 33.9% |
| ソフトウェア開発・テスト事業 | 4.7億円 | 4.5億円 | 0.3億円 | 0.2億円 | 5.3% |
| 調整額 | -0.3億円 | -0.5億円 | -0.8億円 | -0.8億円 | - |
| 連結(合計) | 24.5億円 | 30.4億円 | 5.0億円 | 8.2億円 | 26.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、サイバーセキュリティ分野における最新技術の研究開発と、それらを反映した製品・サービスの提供を通じて生み出されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長を見据えた研究開発への積極的な投資に活用されています。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達や返済など、事業運営に必要な資金の確保・管理に用いられています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.9億円 | 6.4億円 |
| 投資CF | -0.7億円 | -4.8億円 |
| 財務CF | -0.0億円 | -0.8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「世界トップレベルのセキュリティ・リサーチ・チームを作り、コンピュータ社会の健全な運営に寄与する」を経営理念としています。セキュリティコア技術とリサーチ能力を軸に、顧客のセキュリティリスク管理を強力に支援することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、サイバー・セキュリティの基盤となる技術とリサーチ能力をバックグラウンドに持つ研究開発企業としての文化を有しています。日々発生する新たな脅威に対抗するため、迅速かつ正確な情報収集能力、分析能力、問題解決能力といった強力かつ包括的なセキュリティリサーチ能力を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2028年3月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を策定しています。
* 2028年3月期 売上高:59億6,600万円
* 2028年3月期 営業利益:13億8,600万円
■(4) 成長戦略と重点施策
国内でほぼ唯一のサイバー・セキュリティのコア技術からの研究開発力を活かし、以下の戦略を推進しています。
* 研究開発戦略:攻撃技術の研究をベースにトレンドを予測し、将来の脅威に先回りする形で対策製品・サービスを提供する体制を構築します。
* ナショナルセキュリティ戦略:日本発の企業としての優位性を活かし、サイバー安全保障領域での高品質なサービス・製品提供や、政府プロジェクトへの参画を通じて安全保障の実現に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中期経営計画の成長実現には優秀なエンジニアなどの確保と育成が重要であると考えています。このため、給与水準の見直しや成果基準の公正な評価制度の維持、充実した社内教育制度の提供などを通じて、技術者の育成と全体の技術レベル底上げに取り組んでいます。また、労務環境の整備によりエンゲージメント向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.8歳 | 5.0年 | 7,559,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月所定外労働時間(16.9時間)、有給休暇の平均取得率(69.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品及びサービスに瑕疵が発生する可能性
開発過程での品質チェックを行っていますが、バグや欠陥を完全に排除することは困難です。万が一、製品等にバグ等が発見された場合、修正対応や補償費用が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) サイバー攻撃等による信頼性喪失
同社や同社製品導入ユーザーがサイバー攻撃を受け、情報漏洩等が発生した場合、同社の技術力が否定され、製品・サービスの信頼性を喪失する恐れがあります。これにより販売が停滞し、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 特定事業・市場環境への依存
サイバー・セキュリティ事業は、経済情勢や世界情勢の変動によりユーザーのIT設備投資が抑制された場合、その影響を大きく受ける可能性があります。市場環境が冷え込んだ場合、他の事業分野での挽回が難しく、業績に影響を与える可能性があります。



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