FFRIセキュリティ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

FFRIセキュリティ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するFFRIセキュリティは、サイバー・セキュリティやソフトウェア開発・テストを主力事業として展開しています。直近の業績では、セキュリティ製品やナショナルセキュリティ・サービスの需要増を背景に大幅な増収増益を達成しており、国家安全保障領域でも成長を続ける研究開発企業です。


※本記事は、株式会社FFRIセキュリティの有価証券報告書(第19期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. FFRIセキュリティってどんな会社?


サイバー・セキュリティのコア技術研究と製品開発、ソフトウェアテスト事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


2007年7月に株式会社フォティーンフォティ技術研究所として設立し、包括的セキュリティリサーチサービスを提供開始しました。2009年5月に「FFRI yarai」の販売を開始し、2014年9月に東京証券取引所マザーズへ上場しています。2020年6月に現社名へ変更し、2021年にはシャインテックを完全子会社化しました。

従業員数は連結で236名、単体で172名です。大株主については、筆頭株主が創業者の鵜飼裕司氏で、第2位は同社役員の金居良治氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
鵜飼 裕司 24.55%
金居 良治 18.23%
THE BANK OF NEW YORK, TREATY JASDEC ACCOUNT 2.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は鵜飼裕司氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
鵜飼 裕司 代表取締役社長 元eEye Digital Security社。2007年同社設立、取締役副社長最高技術責任者等を経て、2009年3月より現職。
金居 良治 専務取締役最高技術責任者兼ナショナル・セキュリティ事業本部長 元eEye Digital Security社。2007年同社設立。2018年6月に専務取締役最高技術責任者となり、2023年10月より現職。
田中 重樹 常務取締役最高財務責任者兼経営管理本部長 元バリオセキュア・ネットワークス。2008年同社入社。2018年6月に常務取締役最高財務責任者となり、2022年4月より現職。
川原 一郎 取締役事業開発及びyarai事業担当兼事業開発本部長 元インフォサイエンス。2012年同社入社。2023年10月に事業開発及びyarai事業担当となり、2026年1月より現職。
梅橋 一充 取締役製品開発本部長 元ソーバル。2008年同社入社。執行役員事業本部長等を経て、2023年10月より現職。


社外取締役は、平山孝雄(元ヴイエムウェア公共営業部アドバイザー)、松本勉(横浜国立大学上席特別教授)、山口功作(合同会社側用人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「サイバー・セキュリティ事業」および「ソフトウェア開発・テスト事業」を展開しています。

(1) サイバー・セキュリティ事業


サイバー・セキュリティの基盤技術とリサーチ能力を活かし、マルウェアや脆弱性を狙う外部脅威からシステムを守る製品・サービスを提供しています。主に官公庁や防衛関連組織、重要インフラ企業などを顧客としており、標的型攻撃対策製品「FFRI yarai」のほか、安全保障関連のナショナルセキュリティ・サービスも手掛けています。

収益源は、製品のサブスクリプションライセンスやパーペチュアルライセンスの販売、保守サービス料、およびセキュリティ調査・分析・受託開発の手数料です。主にFFRIセキュリティが運営し、パートナー企業を通じた販売やOEM提供なども行っています。

(2) ソフトウェア開発・テスト事業


ソフトウェアの設計・開発・評価・解析などの業務に関わる技術者の派遣や、ソフトウェアの不具合により顕在化するリスクを回避するためのテスト計画・設計・実施を提供しています。品質保証業務を通じて、製品開発の安全性と信頼性を支援しています。

収益源は、顧客企業からのテスト業務委託料や技術者派遣に伴う手数料です。主に子会社のシャインテックが本事業を運営しており、必要に応じてサイバー・セキュリティ事業への人材リソースの提供や連携も行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間において、売上高および経常利益ともに力強い成長を継続しています。特に近年のナショナルセキュリティ市場の拡大を捉え、利益率も大きく向上する傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 18億円 20億円 24億円 30億円 43億円
経常利益 2億円 2億円 5億円 9億円 15億円
利益率(%) 8.8% 12.7% 22.1% 29.0% 33.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.9億円 1億円 4億円 6億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。原価や販管費の増加を上回る増収効果により、高い営業利益率を維持・向上させています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 30億円 43億円
売上総利益 20億円 26億円
売上総利益率(%) 66.8% 60.7%
営業利益 8億円 14億円
営業利益率(%) 26.9% 31.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4億円(構成比30%)、販売促進費が2億円(構成比15%)を占めています。売上原価については、労務費が9億円(構成比56%)、経費が7億円(同44%)を占めています。

(3) セグメント収益


サイバー・セキュリティ事業はナショナルセキュリティ関連の需要増やOEM販売の好調により大幅な増収となりましたが、ソフトウェア開発・テスト事業は一部リソースをサイバー・セキュリティ事業へシフトした影響などで減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
サイバー・セキュリティ事業 26億円 40億円
ソフトウェア開発・テスト事業 5億円 4億円
連結(合計) 30億円 43億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益により獲得した資金で借入の返済等を行いつつ、必要な投資を手元資金で賄っている健全な状態(健全型)です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6億円 14億円
投資CF -5億円 -0.8億円
財務CF -0.8億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は33.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も64.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念は「世界トップレベルのセキュリティ・リサーチ・チームを作り、コンピュータ社会の健全な運営に寄与する」です。広範なセキュリティコア技術とリサーチ能力を源泉とし、さまざまな角度から顧客のセキュリティリスク管理を支援するとともに、日本発のサイバー・セキュリティ企業としてサイバー安全保障の課題解決に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「世界トップレベルのセキュリティ・リサーチ・チーム」を指向し、国内でほぼ唯一、サイバー・セキュリティのコア技術から研究開発を行う技術探求を重んじています。専門技術を磨き上げることを重視し、国家安全保障など高度な要求に応えるため、社内教育や柔軟な働き方を取り入れ、従業員一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮できる組織づくりを進めています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2027年3月期から2029年3月期までの3ヶ年の中期経営計画を策定しています。中長期的な成長の実現に向けて、優秀なエンジニアなど人材の確保と育成に注力しながら、売上高の増加と適正な利益の確保を目標としています。

* 第22期(2029年3月期)売上高:70億円
* 第22期(2029年3月期)営業利益:20億円

(4) 成長戦略と重点施策


サイバー領域をめぐる国家間競争が激化し、ナショナルセキュリティ市場が急速に拡大する中、研究開発とナショナルセキュリティ領域に戦略を集中しています。純国産企業としての技術的優位性を活かし、政府分科会や国家主導プロジェクトと連携した製品・サービスを提供するとともに、将来予測に基づくシーズ型の研究開発を強化しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループの事業はソフトビジネスであり、人的資本が競争力の源泉であるという考えのもと、優秀な技術者の確保と育成を最重要課題と位置づけています。事業戦略に基づく適正配置を進めるとともに、組織サーベイツールを活用したエンゲージメントの向上や、リモートワーク制度など多様で柔軟な働き方を支える労働環境の整備を継続して推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.1歳 4.9年 7,656,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月所定外労働時間(16.3時間)、有給休暇の平均取得率(73.1%)、女性の育児休業等取得実績(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品及びサービスにおけるバグ・欠陥の発生

プログラムの特性上、バグや欠陥の完全な排除は難しく、万が一問題が発見された場合には補償費用が膨らみ、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、販売時の免責条項設定などで損失を限定する体制をとっています。

(2) サイバー攻撃等による信頼性の喪失

同社や製品・サービスを導入した顧客がサイバー攻撃を受け、機密情報の改ざんや搾取が発生した場合、同社の技術力が否定されることで信頼性を喪失し、販売が一時的に停滞する可能性があります。

(3) 激しい技術革新や陳腐化への対応遅れ

サイバー・セキュリティ分野は環境変化に伴いニーズが変わりやすいため、継続的な研究開発を行っています。しかし、環境変化への対応遅れや競合の台頭により競争力を維持できなくなった場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 特定事業への依存と市場環境の影響

同社はサイバー・セキュリティ事業への依存度が高いため、経済情勢の悪化や世界情勢の変動によって顧客企業のIT設備投資が抑制されるなど市場環境が冷え込んだ場合、他の事業分野で挽回できず業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。