※本記事は、アルファポリスの有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アルファポリスってどんな会社?
インターネット発のコンテンツを書籍化する出版事業と、自社IPを活用したアニメ制作事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2000年に設立され、出版化支援サービスを開始しました。2008年には第1回「Webコンテンツ大賞」を開催し、その後も各種レーベルを立ち上げて事業を拡大し、2014年に東京証券取引所マザーズへ上場しました。2025年7月にアニメ制作を手掛けるWHITE FOXを、2026年2月には3DCGアニメーション制作を行うNIAアニメーションをそれぞれ連結子会社化し、事業領域を拡大しています。
同社グループの従業員数は連結で215名、単体で146名です。筆頭株主は役員の資産管理会社とみられるオフィス梶本で、第2位は創業者の梶本雄介氏、第3位は信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| オフィス梶本 | 33.36% |
| 梶本 雄介 | 28.90% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は梶本雄介氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 梶本 雄介 | 代表取締役社長 | 1993年博報堂入社。2000年同社設立、代表取締役社長就任。より現職。 |
| 大久保 明道 | 取締役管理本部本部長 | 1996年トヨタファイナンス入社。2012年同社入社。2015年管理本部本部長就任。より現職。 |
社外取締役は、冨永博之(冨永法律特許事務所代表者)、白石卓也(Digimile代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「出版事業」および「アニメ制作事業」を展開しています。
■(1) 出版事業
同社が運営する小説・漫画等の投稿サイトに寄せられたコンテンツの中から、ユーザー評価などを参考に書籍化し、全国の書店や電子ストア等を通じて提供しています。ライトノベルや漫画、文庫、一般文芸書など幅広いジャンルを取り扱っており、継続的な新規コンテンツ獲得のために読者参加型のコンテスト等も定期的に開催しています。
収益源は、出版した紙書籍を書店へ卸すことによる売上や、電子データを各電子ストアを通じて一般消費者に販売することによる売上です。本事業の運営は同社が行っており、限られた経営資源を編集などの企画・制作に注力させるため、紙書籍の販売物流業務は流通業者に委託する体制をとっています。
■(2) アニメ制作事業
主にテレビ放送用や動画配信用のアニメーション等の映像制作サービスを提供しています。出版事業で蓄積した豊富な自社IPの映像化を加速させるとともに、アニメ業界における高品質な映像制作ニーズに応えるため、高い制作能力と技術力を持つスタジオを通じて事業を展開しています。
収益源は、顧客からの請負契約に基づくアニメーション等の制作による売上です。本事業の運営は、当期に同社が全株式を取得し連結子会社化したWHITE FOXおよびNIAアニメーションが担っており、同社グループ内で一気通貫した映像制作が可能な体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社は当期より連結財務諸表を作成しています。電子書籍販売の好調により売上は166億円規模に達し、20%を超える高い利益率を確保して強固な収益基盤を示しています。
| 項目 | 2026年3月期 |
|---|---|
| 売上高 | 166億円 |
| 経常利益 | 35億円 |
| 利益率(%) | 21.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 25億円 |
■(2) 損益計算書
当期の売上総利益率は約74%と高い水準を維持し、安定した付加価値を創出しています。営業利益率も21%に達しており、効率的な事業運営が行われています。
| 項目 | 2026年3月期 |
|---|---|
| 売上高 | 166億円 |
| 売上総利益 | 124億円 |
| 売上総利益率(%) | 74.4% |
| 営業利益 | 35億円 |
| 営業利益率(%) | 20.8% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が68億円(構成比77%)、給料手当が3億円(同4%)、広告宣伝費が3億円(同3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
出版事業は有力IPの続刊や電子書籍の販売増が業績を力強く牽引しました。一方、アニメ制作事業は新規子会社化によるもので、大型案件の納品時期が翌期に持ち越された影響により当期は損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2026年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 出版事業 | 161億円 | 36億円 | 22.2% |
| アニメ制作事業 | 5億円 | -1億円 | -25.9% |
| 連結(合計) | 166億円 | 35億円 | 20.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。
| 項目 | 2026年3月期 |
|---|---|
| 営業CF | 20億円 |
| 投資CF | -13億円 |
| 財務CF | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.8%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「これまでのやり方や常識に全くとらわれず」「良いもの面白いもの望まれるものを徹底的に追求していく」というミッションの下、インターネットを軸に新しいエンターテインメントを生み出し、提供する、最強のエンターテインメント企業を目指しています。
■(2) 企業文化
既存の出版社とは異なる、インターネット上から良質なコンテンツを調達する独自のビジネスモデルを創造しています。多数のユーザー評価をもとに一定以上の読者ニーズを見極め、書籍市場の動向等と合わせて総合的に判断することで、出版時の成功率を高める合理的な選定文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
より高い成長性を確保する観点から、「売上高」の伸び率において市場全体の伸び率を上回ることを重視しています。加えて、企業価値の拡大を図るという観点に立ち、「営業利益」および「当期純利益」も重要な経営指標として位置付けています。
■(4) 成長戦略と重点施策
オリジナルビジネスモデルを活かした出版事業のさらなる拡大と、蓄積した自社IPを活用したアニメ化やゲーム事業等への多角的な展開を目指しています。また、変化の激しい電子書籍市場への柔軟な対応や海外展開を含む新たな販路の確保、生成AIの動向を踏まえた迅速な対応も重点施策として取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
将来の飛躍的な成長を担う多様な人材の確保と、すべての社員がその能力を十分に発揮できる環境づくりの推進を基本方針としています。中途人材の確保と積極的な新卒採用を展開するほか、男女ともに仕事と子育てを両立させながら活躍できる雇用環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 34.8歳 | 5.6年 | 6,709,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 46.7% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 類似ビジネスモデルによる競争激化
インターネット上のコンテンツを書籍化する手法が注目され、新規参入等による競争が激化する可能性があります。同社グループは知名度向上や作家・ユーザー満足度向上の施策を講じて優位性の確保に努めていますが、想定通りの効果が得られない場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 紙のコスト上昇や出版市場の縮小
紙の出版物市場は厳しい状況が続いており、ニーズに合致する書籍の拡充が想定通り進まないリスクがあります。また、原油価格の高騰や円安の進行による紙などの原材料価格の急騰が長期化した場合、印刷・製本コストの増加を通じて財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 特定取引先への高い依存度
紙書籍の販売物流業務を特定の流通業者(星雲社)に、電子書籍の販売を特定の電子取次(メディアドゥ)に大きく依存しています。両社とは良好な関係を維持しているものの、何らかの理由で取引が継続できなくなった場合、同社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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