※本記事は、株式会社アルファポリス の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アルファポリスってどんな会社?
インターネット上の人気コンテンツを書籍化する独自のビジネスモデルで、小説や漫画等の出版事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2000年に設立され、インターネット発のコンテンツを書籍化する事業を開始しました。2014年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2021年には海外向け漫画アプリ「Alpha Manga」をリリースしてグローバル展開を開始しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はグロース市場に上場しています。
同社(単体)の従業員数は138名です。大株主構成については、筆頭株主は創業者の資産管理会社であるオフィス梶本で、第2位は創業者で代表取締役社長の梶本雄介氏です。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| オフィス梶本 | 33.36% |
| 梶本 雄介 | 28.90% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は梶本雄介氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 梶本 雄介 | 代表取締役社長 | 1993年に博報堂に入社。2000年8月に同社を設立し、代表取締役社長に就任。以来、現職として経営を牽引しています。 |
| 大久保 明道 | 取締役管理本部本部長 | トヨタファイナンス、SBIモーゲージ(現SBIアルヒ)財務経理部長を経て、2012年に同社入社。2013年より取締役、2015年より現職。 |
社外取締役は、冨永博之(冨永法律特許事務所代表・弁理士)、白石卓也(Digimile代表取締役社長・味の素エグゼクティブマネージャー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ライトノベル」「漫画」「文庫」および「その他」の各ジャンルで出版事業を展開しています。
■ライトノベル・漫画・文庫
主力となるライトノベルや漫画、文庫本を出版しています。ライトノベルは単行本サイズでの刊行が特徴で、後に漫画化される作品も多数存在します。漫画はライトノベルのコミカライズやオリジナル作品を展開しており、電子書籍との親和性が高いジャンルです。文庫ではキャラ文芸や時代小説等を刊行しています。
主な収益源は、書籍および電子書籍の販売による売上です。紙の書籍は取次を経由して書店等へ販売し、電子書籍は各電子ストアを通じて読者に販売されます。運営は主にアルファポリスが行っており、投稿サイト等から選定したコンテンツを編集・出版することで収益を上げています。
■その他
ライトノベル等に属さない一般文芸書、ビジネス書、絵本等を取り扱っています。これまでの枠組みにとらわれない幅広いジャンルの作品を書籍化し、新たな読者層の開拓を行っています。
この事業の収益も同様に書籍および電子書籍の販売によるものです。運営はアルファポリスが行っており、多角的なジャンル展開を通じてポートフォリオの最適化を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移しており、特に直近の2025年3月期は136億円規模まで拡大しています。経常利益も20億円台から30億円台へと伸長し、利益率は20%を超える高い水準を維持しています。当期純利益も順調に増加しており、成長性と収益性を兼ね備えた業績トレンドを示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 77億円 | 91億円 | 93億円 | 103億円 | 136億円 |
| 経常利益 | 22億円 | 22億円 | 24億円 | 23億円 | 32億円 |
| 利益率(%) | 28.1% | 24.2% | 26.1% | 22.1% | 23.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 14億円 | 15億円 | 14億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は70%台半ばで安定的に推移しており、高い収益性を確保しています。営業利益率も20%台を維持しており、販管費が増加する中でも効率的な経営が行われていることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 103億円 | 136億円 |
| 売上総利益 | 76億円 | 102億円 |
| 売上総利益率(%) | 73.4% | 74.9% |
| 営業利益 | 23億円 | 32億円 |
| 営業利益率(%) | 22.0% | 23.7% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が54億円(構成比78%)、給料手当が3億円(同4%)を占めています。売上原価については、経費が18億円(構成比53%)、外注加工費が11億円(同30%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は出版事業の単一セグメントですが、電子書籍販売の体制強化等により電子書籍売上が大幅に伸長したことや、各ジャンルでの刊行点数増加やヒット作の貢献により、事業全体として大幅な増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 出版事業 | 103億円 | 136億円 |
| 連結(合計) | 103億円 | 136億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得たキャッシュを元手に、借入金等による資金調達も行いながら事業拡大に向けた投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 20億円 |
| 投資CF | -3億円 | -2億円 |
| 財務CF | -0.3億円 | 0.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「これまでのやり方や常識に全くとらわれず」、「良いもの面白いもの望まれるものを徹底的に追求していく」というミッションを掲げています。このミッションの下、インターネットを軸に新しいエンターテインメントを生み出し、提供する「最強のエンターテインメント企業」を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、独自のビジネスモデルであるインターネット上からのコンテンツ調達とユーザー評価に基づく選定を重視しています。ミッションに基づき、既存の出版社の枠組みにとらわれない柔軟な発想と、ヒット作を創出するための徹底的な追求を是とする文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、より高い成長性を確保する観点から「売上高」の伸び率において市場全体の伸び率を上回ることを重視しています。また、企業価値の拡大を図る観点から、「営業利益」および「当期純利益」も重要な経営指標として位置づけています。
■(4) 成長戦略と重点施策
出版事業の拡大に加え、蓄積した自社IP(小説・漫画・キャラクター等)を活用した映像、グッズ、ゲーム等の多角展開を目指しています。また、海外市場の開拓や電子書籍販売の強化、ジャンル拡大に向けた編集体制の増強やWeb開発人員の確保にも注力しています。生成AIへの対応や内部管理体制の強化も課題としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
編集担当者が企画から販促まで一貫して担う体制をとっており、幅広い知識とスキルを持つ人材を求めています。即戦力となる中途採用に加え、新卒採用も積極的に行い、将来の成長を担う人材確保に努めています。また、Webサービスの充実に対応するため、エンジニア等の開発人員の増強も進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 34.5歳 | 5.3年 | 6,171,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 39.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | -% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | -% |
| 男女賃金差異(非正規) | -% |
※男女賃金差異について、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合他社との競争について
同社のビジネスモデルが注目される中、類似したモデルでの新規参入が増加する可能性があります。知名度向上や作家・ユーザーの満足度向上策が奏功せず、競合優位性を確保できない場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 原材料市況の変動について
原油価格高騰や円安による紙コストの上昇が出版物の製造コストに影響を与えています。取引先の分散等で対応していますが、想定を超える価格急騰や長期化が生じた場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 出版市場の動向について
情報メディアの多様化による書籍市場の縮小や顧客ニーズの細分化に対応するため、魅力ある書籍の拡充を進めています。しかし、顧客ニーズに合致する書籍の拡充が想定通りに進まない場合、業績等に影響を与える可能性があります。
■(4) 再販売価格維持制度について
書籍等の著作物は再販制度により定価販売が認められていますが、将来的に同制度が廃止された場合、価格競争に陥る可能性があります。これにより業界全体への影響を含め、同社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。



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