※本記事は、株式会社エムケイシステムの有価証券報告書(第38期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エムケイシステムってどんな会社?
同社は社会保険労務士や一般法人向けに、人事労務領域の手続きを支援するクラウドサービスを提供しています。
■(1) 会社概要
1989年に大阪市天王寺区で設立し、商工業者団体や労働保険事務組合向けのシステム販売を開始しました。2006年に社会保険労務士事務所向けASPサービスを開始し、2007年にはSaaS方式の「ネットde社労夢」をリリースしました。その後、2015年に上場を果たし、2016年にビジネスネットコーポレーションを子会社化してCuBe事業を開始するなど事業領域を拡大しています。
現在、同社グループは連結で130名、単体で104名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の親族等の資産管理会社とみられるエヌエムファミリーで、第2位はエムケイシステム従業員持株会、第3位はOCEANとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エヌエムファミリー | 22.11% |
| エムケイシステム従業員持株会 | 4.14% |
| OCEAN | 3.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 兼 社長執行役員は三宅登氏が務めており、社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 三宅 登 | 代表取締役社長 兼 社長執行役員 | 1980年東芝ビジネスコンピュータ入社。1990年同社入社後、1991年に代表取締役社長に就任。ビジネスネットコーポレーション代表取締役社長を経て、2020年より現職。 |
| 石原 久史 | 取締役 | 1982年東芝ビジネスコンピュータ入社。関東東芝情報機器代表取締役社長等を経て、2020年ビジネスネットコーポレーション取締役副社長。2021年より現職。 |
| 渡邊 昌治 | 取締役 | 1980年東芝ビジネスコンピュータ入社。東芝アイエス・コンサルティングを経て2019年同社入社。開発統括執行役員等を経て、2024年より現職。 |
| 竹本 清志 | 取締役 | 2000年監査法人トーマツ入社。財務省近畿財務局、IMV経理部長等を経て2024年同社入社。管理統括執行役員などを務め、同年より現職。 |
社外取締役は、野村公平(西川・野村法律事務所設立)です。
2. 事業内容
同社グループは、「社労夢事業」および「CuBe事業」を展開しています。
■社労夢事業
社会保険労務士事務所、労働保険事務組合、一般法人の人事総務部門を対象に、社会保険・労働保険・給与計算等の手続きを支援する業務ソフトウエアをクラウド(ASP)方式等で提供しています。また、それらに付随した各種システムの販売も行っています。
収益源は、ASPサービスの月額利用料やシステム導入時の初期設定・カスタマイズによる一時費用のほか、端末機器やサプライ商品の販売収益などで構成されています。本事業の運営は主にエムケイシステムが担当しています。
■CuBe事業
大手企業の人事総務部門向けに、業務プロセスの効率化を目的とした個社ごとのカスタマイズ型フロントシステム「受託開発パターンメイド」や、中小企業向けの人事評価クラウドシステム「GooooN」などを提供しています。
収益源は、受託開発によるシステム構築費用およびクラウドサービスの月額利用料などで構成されています。本事業の運営は子会社のビジネスネットコーポレーションが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は特需などの影響もあり2025年3月期に大きく伸長した後、直近でも高水準を維持しています。利益面では2024年3月期および2025年3月期に赤字を計上しましたが、コスト管理の徹底や収益性改善施策が奏功し、直近の2026年3月期には大幅な黒字回復を果たしています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 27億円 | 29億円 | 26億円 | 33億円 | 33億円 |
| 経常利益 | 1億円 | 2億円 | -3億円 | -0.4億円 | 2億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 7.9% | -13.1% | -1.2% | 7.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.9億円 | 2億円 | -7億円 | -0.3億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
直近の売上高は微減で推移していますが、売上原価の減少により売上総利益が大きく増加しています。これに加え、販売費及び一般管理費も圧縮されたことで、営業利益は赤字から大幅な黒字へと転換しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 33億円 | 33億円 |
| 売上総利益 | 13億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.4% | 45.2% |
| 営業利益 | -0.2億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | -0.7% | 7.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3億円(構成比24%)、地代家賃が2億円(同14%)、業務委託費が1億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
社労夢事業は主力サービスの安定稼働やサポート費用の抑制により増収となり、利益面でも大きく改善しています。一方、CuBe事業は前期の特需の反動で減収となり、営業利益も減少しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 社労夢事業 | 24億円 | 24億円 |
| CuBe事業 | 9億円 | 8億円 |
| 連結(合計) | 33億円 | 33億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に該当します。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 7億円 |
| 投資CF | -2億円 | -2億円 |
| 財務CF | -1億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は32.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人にやさしいシステムの提供で社会に貢献する」を経営理念に掲げています。「人」とは顧客のみならず、その先の企業従業員や家族までを含み、「やさしいシステム」とは利便性に加え、社会保障制度の円滑な運用や人材活用を支える社会基盤の発展に貢献するシステムを意味しています。
■(2) 企業文化
公正で透明性の高い経営と、事業環境の大きな変化に迅速に対応するための柔軟で強固なガバナンス構築を重視しています。また、多様な経験や専門性を持つ人材が相互に連携し、職務の属人化を防ぎながら顧客価値の向上に貢献できるチーム運営を目指す風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、人的資本の充実とダイバーシティ推進を最重要課題と位置づけ、次期中長期目標(2029年3月期を最終年度)として以下の数値目標を掲げています。
* 管理職に占める女性労働者の割合:25%
* 労働者の男女の賃金の差異:85%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「人事労務領域総合サービスの提供」を基本方針とし、主力製品「社労夢」シリーズの安定提供・品質向上に加え、年末調整や経費精算などの周辺領域への対応範囲拡大を進めます。また、大企業向け受託開発の収益管理強化や、各種コスト管理徹底により持続的な成長と収益基盤の維持・拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
各部門の専門性向上と、部門間連携による組織能力の強化を人材戦略の基本としています。従業員が能力を発揮し継続的に成長できるよう、製品や法規、最新のAI技術に関する知識の習得支援を行うとともに、性別や年齢に関わらない公正な評価制度や働きやすい職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.1歳 | 6.7年 | 5,446,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.2% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金の差異(全労働者) | 81.4% |
| 男女賃金の差異(正規雇用労働者) | 80.5% |
| 男女賃金の差異(パート・有期労働者) | 94.2% |
※男性労働者の育児休業取得率は、対象となる男性労働者がいないことを示しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 関連法令の改正や電子申請制度の変動
同社のシステムは社会保険・労働保険関連法令に対応する必要があり、大規模な制度変更が生じた場合、システムの改修コスト増加や対応の遅れが業績に影響を及ぼす可能性があります。また、e-Gov等の電子申請制度の大幅な仕様変更への対応遅延も競争力低下につながるリスクがあります。
■(2) サイバー攻撃および情報システムの障害
同社は個人情報等を扱うクラウドサービスを提供しており、高度なサイバー攻撃によるサービスの停止や情報漏洩が発生した場合、信用毀損や損害賠償につながる恐れがあります。また、システム基盤であるAWSの大規模障害等によりサービス停止が長期化するリスクも存在します。
■(3) システム開発投資に関するリスク
クラウドサービス向けの開発投資が想定を上回った場合や、収益の拡大が進まなかった場合、減価償却負担の増加が業績に影響を与える可能性があります。また、受託開発における短納期化の進行や外部委託先の品質問題により、想定以上のコストが発生するリスクがあります。



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