エムケイシステム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エムケイシステム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の情報サービス企業です。社会保険労務士事務所や一般法人向けに、社会保険・労働保険・給与計算等の手続きを支援するASPサービス「社労夢」を提供しています。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比24.6%増と伸長し、各段階利益の赤字幅は縮小しましたが、依然として損失計上が続いています。


※本記事は、株式会社エムケイシステムの有価証券報告書(第37期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エムケイシステムってどんな会社?


人事労務管理システムのASPサービスを展開し、社労士事務所や企業の業務効率化を支援する企業です。

(1) 会社概要


1989年に大阪市でエムケイ情報システムとして設立され、労働保険事務組合システムの販売を開始しました。2006年には社会保険労務士事務所向けASPサービスを開始し、現在の主力事業の基盤を築きました。2015年にJASDAQ(スタンダード)へ上場。2016年にはビジネスネットコーポレーションを子会社化してCuBe事業を開始し、2024年には新製品「社労夢FOREVER」を完全リリースしています。

連結従業員数は135名、単体では107名体制です。筆頭株主はエヌエムファミリーで、第2位はエムケイシステム従業員持株会、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
エヌエムファミリー 22.11%
エムケイシステム従業員持株会 4.48%
山下誠路 3.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 兼 社長執行役員は三宅登氏です。取締役5名のうち社外取締役は1名で、社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
三宅 登 代表取締役社長 兼 社長執行役員 1980年東芝ビジネスコンピュータ入社。1990年同社入社。1991年より社長を務める。2018年よりビジネスネットコーポレーション社長を兼務し、2020年4月より現職。
石原 久史 取締役 東芝ビジネスコンピュータ、東芝ソリューション販売取締役などを経て、2020年ビジネスネットコーポレーション入社。2021年同社営業統括執行役員、2023年10月より現職。
渡邊 昌治 取締役 東芝ビジネスコンピュータ等を経て2019年同社入社。法人開発部長、開発統括執行役員などを歴任し、2024年8月よりインフラ・サポート統括執行役員兼ユーザーサポート部長として現職。
竹本 清志 取締役 有限責任監査法人トーマツ、財務省近畿財務局、IMV経営企画部長を経て、2024年4月同社入社。同年6月より管理統括執行役員兼経営管理部長として現職。


社外取締役は、野村公平(弁護士、野村総合法律事務所設立者)です。

2. 事業内容


同社グループは、「社労夢事業」および「CuBe事業」を展開しています。

(1) 社労夢事業


社会保険労務士事務所、労働保険事務組合、および一般法人を対象に、社会保険・労働保険・給与計算等の手続きをサポートする業務支援ソフトウエアをASP方式で提供しています。主力製品の「社労夢」シリーズに加え、マイナンバー管理や電子申請支援などの関連サービスも展開しています。

主な収益源は、ASPサービスの月額利用料、システム導入時の初期設定費用やカスタマイズ作業費、および専用端末やサプライ商品の販売代金です。運営は同社が行っています。

(2) CuBe事業


大手企業の人事総務部門向けに、個社ごとにカスタマイズした業務効率化フロントシステムの受託開発を行っています。また、受託開発で培ったノウハウを活かした中小企業向け人事評価・人財育成クラウドサービス「GooooN」も提供しています。

収益は、顧客企業からのシステム受託開発費用や、クラウドサービスの初期設定費用および月額利用料から構成されます。運営は主に連結子会社のビジネスネットコーポレーションが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第36期に一時減少したものの、第37期には大きく回復し過去最高の水準となっています。一方、利益面では第36期に大幅な赤字を計上しました。第37期は赤字幅が縮小したものの、経常損益、当期純損益ともにマイナスが続いており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 24億円 27億円 29億円 26億円 33億円
経常利益 2.2億円 1.3億円 2.3億円 -3.5億円 -0.4億円
利益率(%) 9.0% 4.7% 7.9% -13.1% -1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.5億円 0.9億円 1.7億円 -6.6億円 -0.3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大きく増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。しかし、販売費及び一般管理費が売上総利益を上回る状態が続いており、営業段階での損失が解消されていません。ただし、営業損失額は前期と比較して大幅に圧縮されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 26億円 33億円
売上総利益 8.6億円 13億円
売上総利益率(%) 32.5% 38.4%
営業利益 -3.5億円 -0.2億円
営業利益率(%) -13.2% -0.7%


販売費及び一般管理費のうち、諸手数料が2.9億円(構成比22%)、給与手当が2.3億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


社労夢事業は増収となりましたが、新製品リリース遅延に伴うコスト増等の影響で営業損失が継続しています。一方、CuBe事業は受託開発案件の増加により大幅な増収増益を達成し、全社の業績回復に寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
社労夢事業 20億円 24億円 -3.8億円 -0.7億円 -2.7%
CuBe事業 6.1億円 9.1億円 0.1億円 0.3億円 3.3%
調整額 -0.2億円 -0.2億円 0.2億円 0.1億円 -
連結(合計) 26億円 33億円 -3.5億円 -0.2億円 -0.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

エムケイシステムは、営業活動で資金を獲得し、投資活動では主に無形固定資産の取得に資金を使用しています。財務活動では、長期借入による収入があったものの、返済や配当金の支払いにより資金が使用されました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -3.2億円 2.8億円
投資CF -3.5億円 -2.3億円
財務CF 7.7億円 -1.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人にやさしいシステムの提供で社会に貢献する」を経営理念として掲げています。「人」にはサービスの利用者だけでなくその先の関係者も含み、「やさしいシステム」とは使いやすさはもちろん、社会保障や人材育成に貢献することで社会基盤を支えるシステムを意味しています。

(2) 企業文化


「人事労務領域総合サービスの提供」を経営方針とし、手続き業務だけでなく年末調整、経費精算、人材育成分野へとサービス領域を拡大することで、顧客である社労士事務所や企業の業務効率化、生産性および付加価値の向上を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


安定的成長モデルの構築を中長期のビジョンとし、事業規模の拡大と収益性の向上を当面の重要課題としています。連結売上高と連結売上高営業利益率を重要な経営指標と位置付け、企業価値と株主価値のバランスの観点からROE(自己資本利益率)の向上にも努める方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


ソフトウエアへの投資拡大による製品の安定供給、ロイヤルカスタマー戦略の推進と法人市場のシェア拡大によるサービスビジネスの成長を目指しています。また、資本収益効率向上のためのコスト競争力強化や、人的資本強化への投資による生産性向上にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本の充実とダイバーシティ推進を最重要課題と位置付けています。女性の活躍推進、男性の育児参画、公正な賃金制度の整備を通じて、従業員の多様性とエンゲージメントを向上させることが成長戦略に直結するとの認識のもと、人材の確保・育成・定着に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.8歳 6.4年 5,166,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.6%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.4%
男女賃金差異(正規雇用) 74.0%
男女賃金差異(非正規) 62.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外部からのインターネットデータセンターへの攻撃

インターネットを活用したサービスを提供しているため、サイバー攻撃のリスクに晒されています。過去には攻撃を受けた事例もあり、防御策を講じていますが、想定を超える攻撃によりサービス停止や情報漏洩が発生した場合、業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報システムの故障・不具合

冗長化などの対策を講じていますが、障害検知の遅延やソフトウエアのバグ等により、主力のASPサービスが停止する可能性があります。これにより顧客信頼の低下や損害賠償が発生し、業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) 個人情報管理

社会保険・労働保険に関連する個人情報やマイナンバー等の特定個人情報を多数管理しています。内部不正やヒューマンエラー、外部攻撃等により情報漏洩が発生した場合、信用毀損や損害賠償を通じて業績や財政状態に深刻な影響を与える可能性があります。

(4) 法的規制等、事業環境に関するリスク

主要顧客である社会保険労務士や労働保険事務組合の業務は法的規制に基づいています。他士業の参入や政府方針の変更等により顧客の業務量や認可件数が減少した場合、また関連法令や電子申請制度の大幅な変更への対応が遅れた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。