弁護士ドットコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

弁護士ドットコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場し、法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」や契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」を展開しています。直近の業績は、主力サービスの好調により売上高が前期比24.3%増、経常利益が同6.8%増と増収増益を達成しました。


#記事タイトル:弁護士ドットコム転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、弁護士ドットコム株式会社 の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 弁護士ドットコムってどんな会社?


法律相談サイトの運営や電子契約サービス等のリーガルテック事業を展開し、専門家とユーザーをつなぐ企業です。

(1) 会社概要


2005年に設立され、同年法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」の運営を開始しました。2014年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2015年には契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」を開始しました。2023年には判例データベースを提供するエル・アイ・シーを完全子会社化するなど、事業拡大を進めています。

同グループの従業員数は連結592名、単体564名です。筆頭株主は代表取締役社長兼CEOである元榮太一郎氏の資産管理会社であるAuthense Holdings合同会社で、第2位は創業者の元榮太一郎氏本人です。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
Authense Holdings合同会社 43.49%
元榮 太一郎 21.61%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.53%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長兼CEOは元榮太一郎氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
元榮 太一郎 代表取締役社長兼CEO 2001年アンダーソン・毛利法律事務所入所。2005年元榮法律事務所設立、同年当社設立し代表取締役。参議院議員、財務大臣政務官等を経て2023年6月より現職。
内田 陽介 取締役会長 2000年三菱商事入社。カカクコム取締役、みんなのウェディング代表取締役社長兼CEO等を歴任。2015年当社取締役、2017年代表取締役社長を経て2022年6月より現職。
田上 嘉一 取締役 執行役員 弁護士。アンダーソン・毛利法律事務所、グリーを経て2015年当社入社。2019年6月より現職。エル・アイ・シー等の取締役も兼任。
根垣 昂平 取締役 執行役員 とびら代表取締役社長、メディカルトリビューン取締役副社長を経て2018年当社入社。2023年6月より現職。
澤田 将興 取締役 執行役員 SBIイー・トレード証券、パラカを経て2014年当社入社。2020年執行役員、2022年6月より現職。


社外取締役は、石丸文彦(アコード・ベンチャーズ代表)、村上敦浩(カカクコム社長)、上野山勝也(PKSHA Technology代表)、塩野紀子(元エスエス製薬社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア事業」および「IT・ソリューション事業」を展開しています。

(1) メディア事業


法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」および税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」等のインターネットメディアを運営しています。一般ユーザーには法律・税務相談や専門家検索サービスを提供し、弁護士や税理士には集客支援や業務支援ツールを提供しています。

収益は、弁護士や税理士からの「有料会員登録料(広告料含む)」や「紹介手数料」、および一般ユーザーからのQ&A閲覧等の「月額利用料」から構成されています。また、サイト内の広告枠販売による広告収入も得ています。運営は同社が行っています。

(2) IT・ソリューション事業


契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」を中心に、企業法務ポータルサイト「ビジネスロイヤーズ」、判例データベース「判例秘書」などを提供しています。「クラウドサイン」は契約締結から管理までをクラウド上で完結できるサービスで、多くの企業に利用されています。

収益は、主に企業ユーザーからの「クラウドサイン」のプランに応じた「月額固定料金」および送信件数に応じた「従量料金」からなります。「判例秘書」等の利用料金も収益源です。運営は同社および連結子会社のエル・アイ・シー等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第19期から第20期にかけて、売上高は順調に拡大しており、増収基調が続いています。利益面では、経常利益および当期利益ともに増加しており、売上規模の拡大に伴い利益も着実に成長している傾向が見られます。利益率も安定した水準を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 113億円 141億円
経常利益 13億円 14億円
利益率(%) 11.6% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は高い水準を維持しています。営業利益も増加しており、事業規模の拡大が進んでいます。販管費も増加していますが、積極的な事業展開を継続していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 113億円 141億円
売上総利益 90億円 108億円
売上総利益率(%) 79.4% 77.0%
営業利益 12億円 14億円
営業利益率(%) 10.9% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が34億円(構成比36.1%)、広告宣伝費が20億円(同21.5%)を占めています。売上原価については、人件費やシステム関連費用等が主な内訳となっています。

(3) セグメント収益


両セグメントともに増収となっています。特にIT・ソリューション事業は売上高、セグメント利益ともに大きく伸長しており、全社の成長を牽引しています。メディア事業も売上高は増加しましたが、利益はやや減少しています。全社費用等の調整額の影響もあり、連結営業利益の伸び率はセグメント利益の合計の伸びとは異なります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
メディア事業 45億円 49億円 14億円 13億円 26.6%
IT・ソリューション事業 69億円 92億円 15億円 22億円 24.1%
調整額 - - -17億円 -21億円 -
連結(合計) 113億円 141億円 12億円 14億円 9.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業CFで得た資金等を用いて、借入金の返済や投資を行っている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 12億円 14億円
投資CF -21億円 -6億円
財務CF 28億円 -0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「『プロフェッショナル・テック』で、次の常識をつくる」をミッションとして掲げています。インターネットメディアの運営やIT・ソリューションサービスの提供を通じて、専門家へのアクセスを容易にし、社会の課題解決や生産性向上に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「まだないやり方で、世界を前へ。」というVisionと、「真なるセンスを磨く」というWayを掲げています。また、「ポジティブ魂」「チャレンジ魂」「愚直魂」「インテグリティ魂」「感動魂」という5つのSouls(価値観)を重視しており、これらを体現することで企業価値の向上を図る文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な成長を目指し、収益基盤の強化と事業領域の拡大に取り組んでいます。具体的な全社的な数値目標としては、役員報酬の評価指標として以下の目標値などが設定されており、経営陣に対するインセンティブとして機能させています。

* 2026年3月期 売上高:161億円
* 2026年3月期 営業利益:20億円

(4) 成長戦略と重点施策


「弁護士ドットコム」のコンテンツ拡充やユーザビリティ向上により顧客基盤を拡大し、収益強化を図ります。また、「クラウドサイン」の認知度向上と顧客拡大を通じて電子契約の普及を推進します。さらに、税理士など弁護士以外の専門家領域への展開や、M&Aを含めた周辺領域への進出も積極的に行う方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


今後の事業拡大に向けて、開発部門や営業部門等における優秀な人材の確保と育成を重要課題としています。経営理念に共感し早期に戦力化できる人材を積極的に中途採用するとともに、採用した人材のモチベーションを向上させる人事制度の構築や最適な人員配置を行い、組織体制の強化を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.0歳 3.2年 6,997,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 25.2%
男性労働者の育児休業取得率 120.8%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 74.3%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 75.2%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 131.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新について


インターネット業界は技術革新や顧客ニーズの変化が激しく、新しいサービスが次々と生まれています。予期しない急激な技術革新が発生し、それへの対応が遅れた場合、サービスの陳腐化や競争力の低下を招き、事業や業績に悪影響を与える可能性があります。

(2) 競合について


主力サービスの「弁護士ドットコム」や「クラウドサイン」は、専門家や企業ユーザーからの支持が基盤となっています。今後、何らかの理由で支持を失ったり、競合他社が台頭したりした場合には、競争激化により事業展開に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) サイト運営の健全性について


「みんなの法律相談」等の投稿型サービスにおいて、誹謗中傷や権利侵害などの不適切な投稿が行われるリスクがあります。全件監視体制を構築していますが、十分な対応ができずトラブルが発生した場合、サイトの信頼性が損なわれ、事業や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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