#メタウォーター転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、メタウォーターの有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. メタウォーターってどんな会社?
水環境分野のエンジニアリングおよび施設の運営事業を展開し、持続可能な社会インフラを支える企業です。
■(1) 会社概要
2008年、日本碍子(現NGK)と富士電機の水環境事業が統合しメタウォーターが設立されました。2014年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。近年はM&Aによる海外事業の強化に注力し、2025年には米国やドイツのエンジニアリング会社を完全子会社化するなど事業領域を拡大しています。
現在の従業員数はグループ全体で3,427名、単体で1,850名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は事業統合の母体である富士電機、第2位も同じく統合母体のNGKであり、両社で約40%を保有しています。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねる安定した資本基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 富士電機 | 20.81% |
| NGK | 19.72% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は山口賢二氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山口 賢二 | 代表取締役社長 | 1987年日本碍子入社。同社事業戦略本部長や執行役員などを経て、2021年より現職。 |
| 酒井 雅史 | 取締役 | 1985年日本碍子入社。同社PPP本部長や執行役員常務などを経て、2026年より現職。 |
| 藤井 泉智夫 | 取締役経営企画本部長輸出管理室長 | 1990年富士電機入社。同社人事総務企画室長や執行役員などを歴任し、2024年より現職。 |
| 伊藤 一 | 取締役システムソリューション事業本部長 | 1995年富士電機入社。プラントエンジニアリング関連の各職を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、相澤馨(元日東電工代表取締役専務執行役員)、小棹ふみ子(元東京国税局日本橋税務署長)、田内常夫(元ホンダオブアメリカマニュファクチュアリング取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「環境エンジニアリング事業」「システムソリューション事業」「運営事業」「海外事業」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 環境エンジニアリング事業
国内の浄水場・下水処理場・資源リサイクル施設向けの機械設備の設計・建設および保守・維持管理などを提供しています。地方自治体などの公共部門を主要な顧客としています。
機械設備の建設にかかる請負代金や、保守・維持管理業務に対する委託料などを収益源としています。運営はメタウォーターや子会社の三東などが担っています。
■(2) システムソリューション事業
国内の浄水場・下水処理場向けに、電気設備の設計・製造や保守・維持管理などを提供しています。こちらも公共部門の上下水道施設が主な顧客となります。
電気設備の製造・納入にかかる販売代金や修繕工事費、監視制御システムなどの保守委託料から収益を得ています。運営は主にメタウォーターやあけぼのエンジニアリングが行っています。
■(3) 運営事業
国内における浄水場や下水処理場、資源リサイクル施設の運営事業を展開しています。自治体のインフラ運営を包括的に支援するサービスを提供しています。
施設の運営業務に伴う委託料などを主な収益源としています。事業の運営はメタウォーターサービスやみずむすびマネジメントみやぎなどのグループ各社が担っています。
■(4) 海外事業
海外市場における浄水場や下水処理場向けの施設・設備の設計・建設および保守・維持管理、さらには民需事業などを幅広く展開しています。
海外での水処理プラント向け機器の販売や設計・施工代金などを収益源としています。運営はMETAWATER USAやAqua-Aerobic Systemsなどの海外子会社が中心となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して右肩上がりの成長を続けており、5年間で安定した事業拡大を実現しています。経常利益についても一時的な増減はあるものの、直近の2026年3月期には過去最高益となる132億円を記録し、利益率も改善傾向を示すなど堅調な推移となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,356億円 | 1,507億円 | 1,656億円 | 1,791億円 | 2,098億円 |
| 経常利益 | 88億円 | 91億円 | 105億円 | 100億円 | 132億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 6.0% | 6.3% | 5.6% | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 48億円 | 39億円 | 41億円 | 28億円 | 53億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率と営業利益率ともに前年より改善しており、事業規模の拡大と同時に収益性の向上も達成する良好なコストコントロールが行われていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,791億円 | 2,098億円 |
| 売上総利益 | 387億円 | 471億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.6% | 22.4% |
| 営業利益 | 106億円 | 129億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が92億円(構成比27%)、諸手数料が46億円(同13%)、賞与が28億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
すべてのセグメントで増収を達成しています。特に海外事業は欧米子会社の好調により売上が急拡大し、全体の成長を牽引しました。環境エンジニアリング事業は大型工事の進捗により大幅な増益となりましたが、システムソリューション事業は研究開発費等の増加により減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 環境エンジニアリング事業 | 524億円 | 585億円 | 24億円 | 45億円 | 7.7% |
| システムソリューション事業 | 572億円 | 612億円 | 34億円 | 26億円 | 4.2% |
| 運営事業 | 318億円 | 335億円 | 22億円 | 24億円 | 7.2% |
| 海外事業 | 377億円 | 568億円 | 26億円 | 33億円 | 5.8% |
| 連結(合計) | 1,791億円 | 2,098億円 | 106億円 | 129億円 | 6.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 133億円 | 151億円 |
| 投資CF | -41億円 | -170億円 |
| 財務CF | 120億円 | -72億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
企業理念「続ける。続くために。」の実践を通じて、持続可能な環境・社会の実現に向けた取り組みを進めています。また、グループの存在意義を明確にするため、「地域と共生し、水と環境の循環を守り、人々の暮らしを支える」というパーパス(私たちの目的)を制定し、事業活動を通じた課題解決を目指しています。
■(2) 企業文化
人を最大の財産と捉え、「安心・安全・健康」を最優先に考えながら、変化に対応できる挑戦的で創造的な企業風土の醸成を重視しています。また、多様性を認め合い、変革に挑戦し続ける自立した個が協働する活力ある組織づくりに向けた「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョンの実現に向けて、2027年度を最終年度とする「中期経営計画2027」を策定しています。当計画の進捗が当初予想を上回ったことから経営目標を上方修正し、事業のさらなる成長に向けた取り組みを全社を挙げて推進しています。
* 売上高:2,450億円
* 営業利益:165億円
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長戦略として、「各事業分野の成長戦略」「企業価値向上に向けた投融資戦略」「サステナビリティに関する取り組み」の3点を重点施策としています。新たな公民連携方式「ウォーターPPP」の導入拡大への対応や、M&Aを通じた海外戦略エリア(欧米市場)の強化、AIやIoT等の技術革新を活用した事業機会の創出を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人を最大の財産」と位置づけ、従業員の雇用、教育、働きやすい環境整備に対して積極的な投資を実施しています。遠隔地勤務制度や週休3日制度の導入、所定労働時間の短縮など、社員のニーズに応じた多様な働き方の構築を進めるほか、成長意欲のある社員に向けた200以上の自己啓発研修プログラムを用意し、個人の能力開発を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 16.8年 | 9,040,509円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.3% |
| 男性育児休業取得率 | 84.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 76.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 67.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」などのセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.0%)、離職率(1.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の政治情勢・経済状況の影響
国内外の政治経済の変動や為替変動、物価高騰、サプライチェーンの停滞などが業績に影響を及ぼす可能性があります。特に中東情勢の緊迫化に伴う原油や化学製品の価格高騰は、製造コストの上昇を招くリスクとして認識されています。
■(2) 公共事業特有の法的規制・コンプライアンス対応
同社事業は公共事業の割合が高く、建設業法や入札制度など多様な法的規制の適用を受けます。法令違反が発生した場合は指名停止や許可取消処分を受ける可能性があり、事業運営において厳格なコンプライアンス管理が求められます。
■(3) 顧客の予算執行に連動する市場環境リスク
公共事業では予算執行の期限が年度末に集中する傾向があります。そのため、関連する土木・建築工事等で工程遅延が発生した場合、同社が担当する工事も期限内に完了できなくなり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報漏洩およびセキュリティに関するリスク
サイバー攻撃やコンピューターウイルスの高度化、さらにはAI利用に伴う機密情報の流出や誤情報の拡散といった新たなセキュリティリスクが存在します。情報システムの障害等により業務が滞る可能性があります。



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