メタウォーター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メタウォーター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、上下水道や資源リサイクル施設等の設計・建設から運営管理までを一貫して手掛ける水環境インフラ企業です。直近の決算では海外事業の伸長や大型案件の進捗により、売上高は前期比8.2%増、営業利益は7.3%増の増収増益を達成しています。


※本記事は、メタウォーター株式会社 の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. メタウォーターってどんな会社?


日本碍子と富士電機の水環境部門が統合して誕生。上下水道分野における国内有数のエンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


同社は2008年、日本碍子と富士電機の水環境部門が合併し設立されました。2013年には米国現地法人を設立して海外展開を本格化させ、2014年に東証一部へ上場しました。その後も米国や欧州の水処理エンジニアリング企業を相次いで子会社化し、2021年には宮城県の水道事業運営会社を設立するなど、国内外で事業基盤を拡大しています。

現在、連結従業員数は3,077名(単体1,783名)を擁する組織です。大株主構成は、設立母体である富士電機が筆頭株主、日本碍子が第2位となっており、両社で発行済株式の約4割を保有しています。これら事業会社との資本関係を維持しつつ、水環境インフラの持続可能な運営を支える事業を展開しています。

氏名 持株比率
富士電機 20.85%
日本碍子 19.75%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は山口 賢二氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
山口 賢二 代表取締役社長 1987年日本碍子入社。同社事業戦略本部長等を経て2015年執行役員、2019年取締役就任。2021年6月より現職。
酒井 雅史 取締役PPP本部長 1985年日本碍子入社。同社PPP事業部長、サービスソリューション事業本部PPP事業部長等を経て2016年PPP本部長。2022年6月より現職。
藤井 泉智夫 取締役経営企画本部長輸出管理室長 1990年富士電機入社。同社人事総務部長、人事総務企画室長、輸出管理室長等を経て2022年6月より現職。
伊藤 一 取締役システムソリューション事業本部長 1995年富士電機入社。同社プラントエンジニアリング事業本部副事業本部長等を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、相澤 馨(元日東電工代表取締役)、小棹 ふみ子(元関東信越国税局行田税務署長)、田内 常夫(元本田技研工業取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「環境エンジニアリング事業」「システムソリューション事業」「運営事業」「海外事業」の4つの報告セグメントを展開しています。

(1) 環境エンジニアリング事業


国内の浄水場、下水処理場、資源リサイクル施設向けに、機械設備等の設計・建設および保守・維持管理などを提供しています。水処理プロセスの中核となる機械技術や、汚泥などの資源を有効活用する技術を用いて、インフラの新設や更新需要に対応しています。

収益は、主に地方自治体等の公的機関から、機械設備の設計・建設工事の請負代金や、納入後の保守・点検等の対価として受け取っています。運営は主にメタウォーター(親会社)や、子会社の株式会社三東が行っています。

(2) システムソリューション事業


国内の浄水場や下水処理場向けに、受変電設備や監視制御設備といった電気設備の設計・製造および保守・維持管理を提供しています。ICT技術を活用した広域監視システムなども手掛け、インフラの安定稼働と効率化を支えています。

収益は、自治体等の顧客から、電気設備の納入・工事代金や、保守点検・修繕等のサービス料として受け取っています。運営は主にメタウォーター(親会社)に加え、株式会社エス・アイ・シー、株式会社あけぼのエンジニアリングなどのグループ会社が行っています。

(3) 運営事業


国内の浄水場、下水処理場、資源リサイクル施設の運営管理業務を受託しています。PFI(Private Finance Initiative)や指定管理者制度、包括的民間委託など、様々な公民連携手法を用いて、施設の運転操作や水質管理などを包括的に担っています。

収益は、自治体等から施設の運営委託料やサービス対価として長期契約に基づき継続的に受け取っています。運営はメタウォーター(親会社)のほか、メタウォーターサービス株式会社や、各地のSPC(特別目的会社)である株式会社みずむすびマネジメントみやぎ等が担っています。

(4) 海外事業


海外(主に北米・欧州)の浄水場や下水処理場向けに、施設・設備の設計・建設、保守・維持管理などを提供しています。オゾン処理技術やセラミック膜ろ過システムなど、同社グループの独自技術や製品を現地のニーズに合わせて展開しています。

収益は、海外の自治体や民間企業から、プラント建設や機器販売、メンテナンスサービスの対価として受け取っています。運営はメタウォーター(親会社)および、米国のMETAWATER USA, INC.、Aqua-Aerobic Systems, Inc.、オランダのRood Wit Blauw Water B.V.などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりで推移しており、成長基調にあります。利益面では、経常利益が90億円から110億円前後の水準で安定して推移しています。当期利益についても安定的な黒字を確保しており、インフラ事業特有の底堅い需要に支えられた堅実な業績動向が見て取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,334億円 1,356億円 1,507億円 1,656億円 1,791億円
経常利益 111億円 88億円 91億円 105億円 100億円
利益率(%) 8.3% 6.5% 6.0% 6.3% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 52億円 48億円 39億円 41億円 28億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、販管費の増加により営業利益率はやや低下傾向にあります。売上原価率は80%弱の水準で推移しており、コストコントロールが利益確保の鍵となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,656億円 1,791億円
売上総利益 344億円 387億円
売上総利益率(%) 20.8% 21.6%
営業利益 99億円 106億円
営業利益率(%) 6.0% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が71億円(構成比25%)、賞与が24億円(同9%)、研究開発費が24億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は海外事業の大幅な増収増益が全体の成長を牽引しました。システムソリューション事業や運営事業も堅調に推移しましたが、環境エンジニアリング事業は大型工事の端境期等の影響で減収減益となりました。全体としては各セグメントがバランスよく収益に貢献する構造となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
環境エンジニアリング事業 529億円 524億円 30億円 24億円 4.5%
システムソリューション事業 526億円 572億円 37億円 34億円 6.0%
運営事業 289億円 318億円 21億円 22億円 7.0%
海外事業 312億円 377億円 11億円 26億円 6.9%
連結(合計) 1,656億円 1,791億円 99億円 106億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金と外部調達を活用して、投資活動に資金を振り向ける「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -55億円 133億円
投資CF -31億円 -41億円
財務CF 113億円 120億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.3%で市場平均(46.8%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社はグループの存在意義を明確にするため、パーパス(わたしたちの目的)として「地域と共生し、水と環境の循環を守り、人々の暮らしを支える」を制定しています。また、企業理念として「続ける。続くために。」を掲げ、水・環境インフラを持続可能なものにすることを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「変革に挑戦しつづける自立した個を尊重し、そうした多様な個が協働する活力ある組織をつくる」ことを重視しています。社会インフラを支える責任感に加え、変化に対応できる挑戦的で創造的な風土の醸成を目指しています。また、安心・安全・健康を最優先に考える姿勢も根底にあります。

(3) 経営計画・目標


同社は長期ビジョンの実現に向け、2027年度(2028年3月期)を最終年度とする「中期経営計画2027」を策定しています。国内市場における公民連携の拡大や海外市場での事業機会を捉え、持続的な成長を目指しています。

* 2027年度 受注高:2,000億円以上
* 2027年度 売上高:2,000億円
* 2027年度 営業利益:130億円

(4) 成長戦略と重点施策


国内では、老朽化対策や財政難への解決策として導入が進む「ウォーターPPP」等の公民連携への対応を強化しています。海外では、欧米を戦略エリアと位置付け、再生水市場や高度処理プロセスへの対応に注力するほか、グループ企業間の連携強化によるシナジー創出を図っています。

* 事業拡大に向けた成長投融資(研究開発、アライアンス、SPCへの出資等)
* 将来の安定成長に向けた基盤投資(人的資本、DX、健康経営等)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人を最大の財産」と捉え、「働きたい会社No.1」を目指しています。多様な個が活躍できるよう、テレワークや週休3日制度などの柔軟な働き方を整備するとともに、女性管理職の登用などダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。また、社員の成長ステージに応じた幅広い研修プログラムを提供し、プロフェッショナル人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 16.5年 8,710,495円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.8%
男女賃金差異(正規雇用) 73.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(1.9%)、1人当たり研修費(91千円)、障がい者雇用率(2.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内外の政治情勢・経済状況


同社グループは国内および北米・欧州を主な拠点として事業展開しています。為替変動や物価高騰、サプライチェーンの停滞など、各国の政治・経済状況の変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、市場動向の早期把握や製品の貯蔵化、価格交渉等で対策を講じています。

(2) 自然災害、感染症等のパンデミック


大規模な自然災害や感染症が発生した場合、工事の中断や設備の損壊、作業中止等により業績に影響が出る可能性があります。特に公共事業の割合が高いため、地域社会への影響も懸念されます。同社はBCP(事業継続計画)を策定し、定期的な訓練を通じて有事の際の対応体制を整備しています。

(3) ガバナンス・コンプライアンス


公共事業の割合が高いため、入札制度や建設業法等の法的規制を遵守することが極めて重要です。法令違反や海外子会社の内部統制不備が発生した場合、指名停止処分等により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス規程の制定や教育、海外子会社へのモニタリングを通じてリスク低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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