データセクション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

データセクション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

データセクションは東京証券取引所グロース市場に上場し、AIデータセンターの運営等を担うAIインフラ事業やデータサイエンス事業を展開する企業です。2026年3月期の業績は、AIインフラ事業のサービス提供本格化により前期比で大幅な増収となり、経常利益も36.3億円と大幅な黒字転換を果たしました。


※本記事は、データセクション株式会社の有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. データセクションってどんな会社?


同社はAIクラウドスタック『TAIZA』やAIカメラを活用したマーケティング分析など、AI技術を駆使した多彩なソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は2000年にデータ分析の技術力で実社会の変革を推進する目的で設立されました。2014年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場し、2018年からは小売店支援ツール「FollowUP」の開発・販売事業を譲受しています。直近では2024年に新規事業としてAIインフラ事業を開始し、2025年には自社開発のAIクラウドスタック『TAIZA』を正式ローンチするなど事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で244名、単体で26名です。筆頭株主は投資業を営むFIRST PLUS FINANCIAL HOLDINGS PTE. LTD.であり、その他上位株主には東海東京証券等の金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
FIRST PLUS FINANCIAL HOLDINGS PTE. LTD. 33.03%
東海東京証券 7.34%
FUTU SECURITIES INTERNATIONAL (HONG KONG) LIMITED 3.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは石原紀彦氏が務めており、社外取締役が2名在籍しています。

氏名 役職 主な経歴
石原 紀彦 代表取締役社長執行役員CEO ゴールドマン・サックス証券等を経てサンインベストメントを設立。バルクホールディングス(現VLCセキュリティ)等の代表を経て、2024年12月より現職。
Pablo Casado Blanco 取締役会長 スペイン政府前首相首席補佐官や下院議員などを歴任。Archery Capital SL会長等を経て、2024年12月より現職。
John Ellis Bush Jr. 取締役 Fairchild PartnersやBush VenturesのManaging Partner等を歴任。Finback Investment PartnersのFounding Partner等を経て、2024年12月より現職。
土田 誠行 取締役(常勤監査等委員) 日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)、あおぞら銀行、産業革新機構(現INCJ)等で役員を歴任。2024年12月より現職。


社外取締役は、平山剛氏(平山剛公認会計士事務所 代表)、German Alcayde Fort氏(Atlantic Business Consulting Executive Chairman)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内事業」および「海外事業」を展開しています。

(1) 国内事業


同セグメントでは、AIクラウドスタック『TAIZA』やGPUクラウドサービスの提供などを行う「AIインフラ事業」を戦略的コア事業として展開しています。また、ビッグデータ分析を活用したシステム開発、データドリブン経営のコンサルティングを行う「データサイエンス事業」「システムインテグレーション事業」等も手掛けています。

AIインフラ事業においては、AIデータセンタープラットフォームの利用サービスやGPUサーバーの専用利用サービスから収益を得ており、同社自身が運営を主導しています。その他の領域については、ディーエスエスやソリッドインテリジェンス、MSSなどの子会社がサービス提供や受託開発を担い、コンサルティング費用やシステム利用料を顧客から受け取るモデルとなっています。

(2) 海外事業


同セグメントでは、小売店舗に設置したAIカメラで取得する画像・動画データとPOSデータを掛け合わせて分析し、店舗の業績向上を支援するサービス「FollowUP」を南米等の海外市場で展開しています。

店舗に導入されたデバイスの設置費用や、クラウドを通じた分析データの継続的な提供に対するストック型のサービス利用料を小売業界等の顧客から受け取るビジネスモデルです。運営はチリに拠点を置くJach Technology SpAや、その傘下の現地子会社各社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間では先行投資等の影響もあり赤字が続いていましたが、2026年3月期はAIインフラ事業での大型契約稼働等により売上高が336.1億円へと急拡大し、純利益も28.0億円の黒字へと大きく転換する飛躍的な成長を記録しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 16.9億円 19.2億円 22.3億円 29.4億円 336.1億円
経常利益 1.7億円 0.5億円 -2.4億円 -6.1億円 36.3億円
利益率(%) 9.8% 2.4% -10.5% -20.8% 10.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.3億円 -5.3億円 -12.6億円 -6.5億円 28.0億円

(2) 損益計算書


前期は営業損失を計上していましたが、当期は大幅な売上増加に伴い売上総利益が64.0億円へと増加し、営業利益も35.4億円の黒字となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 29.4億円 336.1億円
売上総利益 12.5億円 64.0億円
売上総利益率(%) 42.5% 19.0%
営業利益 -5.0億円 35.4億円
営業利益率(%) -16.9% 10.5%


販売費及び一般管理費のうち、業務委託費が7.7億円(構成比26.9%)、給料手当が6.4億円(同22.5%)を占めています。また、売上原価272.1億円のうち、AIデータセンター等に係るサーバー使用料が251.5億円(構成比92.5%)、人件費が10.2億円(同3.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内事業はAIインフラ事業の大幅な売上増により利益率15.6%の高収益を達成しました。海外事業も南米等での堅調な需要に支えられ、安定した利益水準を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
国内事業 19.2億円 324.7億円 0.9億円 50.6億円 15.6%
海外事業 10.2億円 11.4億円 1.6億円 1.5億円 13.2%
連結(合計) 29.4億円 336.1億円 -5.0億円 35.4億円 10.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は黒字転換を果たしたものの、将来成長に向けた事業拡大により営業CFはマイナスとなっており、大規模な投資を外部からの資金調達で賄いながら攻めの経営を続ける「勝負型」のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -0.8億円 -49.1億円
投資CF -11.9億円 -83.0億円
財務CF 1.6億円 131.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.8%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は『Change The Frame ~テクノロジーで実社会に変革をもたらし、新しい暮らしをつくりあげる~』をミッションとし、その実現を通じて『人々の暮らしを世界中でバージョンアップし続ける』ことをビジョンとして掲げています。社会のAI活用とデータ分析をグローバルで支えることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは「世界のデータ部(セクション)」として事業を推進する方針を掲げています。また、社員の行動指針として「2割は自己成長のためにチャレンジしよう」というスローガンを設定し、自律的な自己研鑽やキャリア構築を積極的に支援する文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年3月期を更なる成長の加速フェーズと位置付けており、事業間シナジーの拡大を見込んでいます。

* 売上高:1,621.9億円
* 営業利益:248.2億円
* 調整後EBITDA:581.9億円
* 経常利益:125.4億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:87.0億円

(4) 成長戦略と重点施策


戦略的コア事業であるAIインフラ事業のグローバルな急拡大を最優先とし、必要資金の調達やAIデータセンター投資、高度人材の確保、有力パートナーとの連携を推進します。同時に、既存事業における自社プロダクトの強化やM&Aを活用した事業間シナジーの創出も図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社はグローバル事業の拡大を支えるため、多様な才能やバックグラウンドを持つ高度人材を積極的に採用しています。フレックス勤務、時短勤務、在宅勤務、育児休業取得などの多様な働き方を後押しし、社員が働きがいを持って成長できる組織環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.5歳 2.0年 7,931,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 57.1%
男女賃金差異(正規雇用) 61.7%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男性労働者の育児休業取得率、およびパート・有期労働者の男女賃金の差異は、当事業年度において対象者がいないため「-」となっています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、過去3年間における男性労働者の育児休業取得率目標の達成水準(30%)、2028年までの男性労働者の育児休業取得率目標(50%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学および調達環境の変化リスク


同社はグローバルに事業を展開し、AIデータセンターの構築等を進めています。各地域の地政学リスクや、必要設備・資材(GPU等のサーバー機器)の需給状況によって供給不足や価格高騰が生じた場合、事業計画に遅れが生じる可能性があります。

(2) 技術革新への対応リスク


AI領域やデータ分析関連分野は新技術の開発が相次いでおり、非常に変化の激しい業界です。エンジニアの採用や技術・知見の獲得において対応が遅れた場合や、顧客ニーズの変化に適切に対応できなかった場合、事業競争力が低下する恐れがあります。

(3) 情報セキュリティとシステム障害リスク


同社グループのサービス基盤はインターネット通信網に大きく依存しています。稼働状況の監視等による未然防止策を講じていますが、万一の大規模なシステム障害や、サイバー攻撃による情報漏洩などが発生した場合、事業活動や信用に多大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。