※本記事は、エンカレッジ・テクノロジ株式会社 の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エンカレッジ・テクノロジってどんな会社?
システム運用管理とセキュリティ対策に特化したパッケージソフトウエアの開発・販売を行う企業です。
■(1) 会社概要
2002年に設立され、同年システム運用管理製品「ESS」をリリースしました。2013年に東証マザーズへ上場し、2016年には東証一部へ市場変更を果たしました。その後、2018年に働き方改革支援製品、2020年に次世代型特権ID管理製品「ESS AdminONE」をリリースするなど製品ラインナップを拡充しています。
同社(単体)の従業員数は127名です。筆頭株主は創業者の石井進也氏で、第2位・第3位は情報通信サービス大手とその関連会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 石井 進也 | 26.81% |
| 光通信 | 7.71% |
| UH Partners 2 | 7.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は石井進也氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石井 進也 | 代表取締役社長 | コンピュータサービス(現SCSK)、ブロード最高執行責任者を経て、2002年11月同社設立。代表取締役社長より現職。 |
| 日置 喜晴 | 取締役サービス統括部長 兼マーケティング部長 | 第一ホテル(現阪急阪神ホテルズ)、シトリックス・システムズ・ジャパンを経て、2008年同社入社。2024年4月より現職。 |
| 飯塚 伸 | 取締役経営管理部長 | 矢澤会計事務所、ニフティ経営戦略室長を経て、2017年同社入社。2019年6月より現職。 |
| 上田 浩 | 取締役プロダクト統括部長 兼カスタマーサポート部長 兼品質保証部長 | 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)、住信情報サービス(現三井住友トラスト・システム&サービス)を経て、2019年同社入社。2024年4月より現職。 |
| 渡部 信之 | 取締役セールス統括部長 兼戦略営業部長 兼ソリューション営業部長兼 パートナー営業部長 | 富士銀ソフトウエアサービス(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)、住信情報サービス(現三井住友トラスト・システム&サービス)取締役を経て、2022年同社入社。2024年9月より現職。 |
| 梶 亨 | 取締役常勤監査等委員 | 日本ビジネスコンサルタント(現日立システムズ)、日興システムセンター(現日興システムソリューションズ)、エンサイドットコム証券取締役を経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、工藤克彦(元三井住友トラスト・ホールディングス専務執行役員)、板垣浩二(合同会社Vista Plusパートナーズ代表社員CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「パッケージソフトウエア事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) パッケージソフトウエア事業(製品・クラウド)
システム運用管理のセキュリティ対策や内部統制強化に対応するパッケージソフトウエア製品の開発・販売を行っています。また、クラウドサービスや期間限定利用に対応する製品の提供、および製品導入後の保守サポートサービスも手掛けています。主要製品にはシステム証跡監査ツール「ESS REC」などがあります。
収益は、顧客企業から受け取るソフトウエアのライセンス料、クラウドサービスの利用料、および保守契約に基づくサポート料から構成されます。ストックビジネスとしての保守・クラウド売上が拡大傾向にあります。運営は同社が行っています。
■(2) パッケージソフトウエア事業(サービス・その他)
同社製品の導入に伴うインストール作業、トレーニング、アドバイザリーなどのコンサルティングサービスを提供しています。また、顧客企業のシステム現場に常駐し、同社製品を使用したIT統制管理業務を行う「SIO常駐サービス」も展開しています。
収益は、顧客企業から受け取る役務提供の対価(コンサルティングフィーや業務委託料)です。ライセンス販売に付随して発生するフロー収益としての性質を持ちます。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に2024年3月期にかけて大きく伸長しています。利益面では、経常利益率が10%台を維持しており、安定した収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 18億円 | 21億円 | 21億円 | 25億円 | 25億円 |
| 経常利益 | 1.7億円 | 3.5億円 | 2.4億円 | 3.2億円 | 3.0億円 |
| 利益率(%) | 9.2% | 16.9% | 11.5% | 12.9% | 12.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.4億円 | 2.5億円 | 1.7億円 | 2.2億円 | 2.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期と同水準を維持しましたが、売上総利益率は微増しました。一方で、営業利益および営業利益率は低下しており、販売費及び一般管理費の増加が利益を圧迫している傾向が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 25億円 | 25億円 |
| 売上総利益 | 13億円 | 13億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.9% | 51.5% |
| 営業利益 | 3.2億円 | 3.0億円 |
| 営業利益率(%) | 12.8% | 11.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3.0億円(構成比30.5%)、役員報酬が1.0億円(同10.0%)を占めています。また、研究開発費は0.9億円(同9.0%)となっています。売上原価においては、外注費が構成比39.2%、労務費が同34.2%を占めています。
■(3) セグメント収益
パッケージソフトウエア事業単一セグメントのため、全社の業績動向と一致します。ライセンス売上は大型案件の延伸等により減少しましたが、保守サポートサービスおよびクラウドサービスなどのストック売上が伸長し、全体としては微増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| パッケージソフトウエア事業 | 25億円 | 25億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 25億円 | 25億円 | - | - | - |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って借入金の返済(財務CFマイナス)や投資(投資CFマイナス)を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.6億円 | 3.5億円 |
| 投資CF | -3.6億円 | -2.6億円 |
| 財務CF | -1.3億円 | -1.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「勇気づける(エンカレッジ)」をモットーとし、システム運用に関わる人々が誇りを持って業務に取り組める環境づくりを目指しています。2024年には「すべての人々が安心してITを利用できる社会を創る」をパーパスとして定め、ソフトウエアとサービスの提供を通じてシステム運用の安全と安定稼働に貢献することを掲げています。
■(2) 企業文化
同社は「価値創造の源はお客様にある」「お客様の喜びは我々の幸せである」等の経営方針を掲げ、顧客との対話を通じて真のニーズを捉えることを重視しています。また、「小さな成長も大きな感動を育む企業風土を創造する」として、社員と会社の目的を一致させ、誠実かつ公平な業務遂行を重んじる文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2030年に向けた長期ビジョン「VISION2030」を策定し、システム運用分野での新たな価値創造とソリューション展開を目指しています。第1次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を投資フェーズと位置づけ、既存製品の販売で原資を確保しつつ、新製品開発への投資を行う方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて「フロー売上拡大」「ストック売上拡大」「生産性向上」を重点施策としています。具体的には、ライセンス売上の回復と新規案件の獲得、保守更新率の維持やクラウドサービスの強化に取り組みます。また、次世代リーダーの育成や組織体制の再編を通じた人材スキルの向上も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人材」を重要課題(マテリアリティ)と位置づけ、性別や年齢、国籍を問わない多様な人材の採用と育成を推進しています。特に次世代リーダーの育成や女性管理職の登用に注力しており、新人事制度の定着による自律的な働き方の促進や、競争力のある賃金体系への見直しを通じて、人材の確保と定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.6歳 | 5.7年 | 7,014,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.3% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 113.7% |
※男性育児休業取得率について、当事業年度において育児休業制度に該当する子を有する男性社員がいなかったため算出されていません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(11.6%)、月平均残業時間(25時間55分)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品及びサービスについて
主力製品「ESS REC」を含むシステム証跡監査ツールや特権ID管理市場において、国内外の競合製品との競争が激化しています。技術革新への対応遅れや、機能・価格面での競争力低下が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、製品の不具合や開発遅延もリスク要因となります。
■(2) 特定取引先に対する取引依存
同社の売上高に占めるNTTデータへの販売割合が高く、2025年3月期は22.2%となっています。同社とは代理店契約を締結し安定的な取引を行っていますが、契約内容の変更や解消などがあった場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 人材の確保及び組織的経営について
新製品開発やサービス提供には優秀な技術者や営業人材の確保が不可欠ですが、IT人材不足や採用競争の激化により計画通りの採用が進まないリスクがあります。また、事業拡大に伴うマネジメント層の育成が遅れた場合、事業計画の遂行に支障をきたす可能性があります。
■(4) 情報セキュリティに関するリスク
業務において顧客や自社の機密情報を扱っているため、サイバー攻撃やウイルス感染、内部不正による情報漏洩のリスクが存在します。これらが顕在化した場合、社会的信用の失墜や損害賠償などにより、同社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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