エンカレッジ・テクノロジ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エンカレッジ・テクノロジ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エンカレッジ・テクノロジは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。セキュリティ対策や内部統制強化に対応するパッケージソフトウエア事業を単一展開しています。直近の業績は、コンサルティングや保守サポートが堅調に推移し増収を達成した一方で、法人税等の税金費用が増加したことにより減益となりました。


※本記事は、エンカレッジ・テクノロジ株式会社の有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エンカレッジ・テクノロジってどんな会社?


セキュリティ対策や内部統制強化に対応するパッケージソフトウエア製品の開発・販売を主力としています。

(1) 会社概要


2002年11月、ソフトウエアの開発及び販売を目的に設立されました。同年12月、統合プロセス監視システム「ESS」をリリース。2004年8月には特権ID等のヒューマンリスク管理に対応した「ESS REC」をリリースし、事業の柱を築きました。2013年12月に東京証券取引所マザーズへ上場し、2022年4月にスタンダード市場へ移行しました。2021年3月には次世代型特権ID管理製品「ESS AdminONE」をリリースするなど、システム運用の安全と安定稼働に貢献し続けています。

現在の従業員数は124名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長を務める石井進也氏で、第2位および第3位には投資ファンドであるUHPartnersの投資事業有限責任組合が名を連ねています。

氏名 持株比率
石井 進也 26.81%
UHPartners3投資事業有限責任組合 7.57%
UHPartners2投資事業有限責任組合 7.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は石井進也氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
石井 進也 代表取締役社長 1983年4月コンピュータサービス(現SCSK)入社。ビー・エム・シー・ソフトウエアやブロードの最高執行責任者などを経て、2002年11月同社設立。代表取締役社長に就任し現在に至る。
日置 喜晴 取締役サービス統括部長 兼マーケティング部長 第一ホテルやソフトバンクコマースなどを経て、2008年10月同社入社。マーケティング部長や事業推進部長を歴任し、2024年4月より現職。
飯塚 伸 取締役経営管理部長 矢澤会計事務所やニフティを経て、2017年7月同社入社。経営管理部長を務め、2019年6月より現職。
上田 浩 取締役プロダクト統括部長 兼カスタマーサポート部長兼 品質保証部長 住友信託銀行や住信情報サービスでのシステム開発部長等を経て、2019年1月同社入社。技術統括本部長等を経て、2024年4月より現職。
渡部 信之 取締役セールス統括部長 兼戦略営業部長 兼ソリューション営業部長兼 パートナー営業部長 富士銀ソフトウエアサービス等を経て、住信情報サービス取締役常務執行役員を歴任。2022年4月同社入社。2024年9月より現職。
梶 亨 取締役常勤監査等委員 日本ビジネスコンサルタントや日興システムセンター等を経て、エンサイドットコム証券取締役を歴任。2018年7月同社入社。2021年6月より現職。


社外取締役は、工藤克彦(元三井住友トラスト・ホールディングス専務執行役員)、板垣浩二(合同会社Vista Plusパートナーズ代表社員CEO)です。

2. 事業内容


同社は、「パッケージソフトウエア事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) ライセンスおよび保守サポートサービス


セキュリティ対策や内部統制強化に対応するパッケージソフトウエア製品の開発・販売を行っています。主力製品として、特権ID管理や証跡監査ツールを提供し、企業の情報資産を守るシステム運用管理者を主な顧客としています。

収益源は、製品の使用許諾を顧客に引き渡す対価としてのライセンス売上と、製品の改良版の提供やQ&A対応等の役務提供期間にわたって受け取る保守サポートサービス料です。運営は同社が単独で行っています。

(2) クラウドサービス


従来から提供しているパッケージソフトウエア製品と同等の機能を、サーバー構築や保守が不要なクラウド環境で利用できるサービスを提供しています。これにより、顧客の導入負荷の軽減と利便性の向上を実現しています。

収益源は、契約期間にわたってクラウドの利用環境を維持提供する義務に対するクラウドサービス利用料や、期間限定利用に伴う利用期間内の保守サポートサービス料です。運営は同社が行っています。

(3) コンサルティングおよびSIO常駐サービス


自社製品の導入に伴うインストールやトレーニング、アドバイザリーサービスなどの導入支援を行っています。また、顧客企業のシステム現場に常駐し、製品を使用したIT統制管理業務の支援も提供しています。

収益源は、システム構築の要件実現に向けた役務提供や作業の進捗に応じて顧客から受け取るコンサルティング料金、および現場での業務受託によるサービス料です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、企業のIT投資意欲の高まりや情報セキュリティ対策需要を背景に、売上高は着実に拡大傾向にあります。一方で利益面は、積極的な人材投資や新製品の機能拡張に向けた研究開発投資の増加などの影響を受け、年度によって増減を繰り返しながら推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 20.7億円 21.2億円 25.0億円 25.0億円 25.8億円
経常利益 3.5億円 2.4億円 3.2億円 3.0億円 3.2億円
利益率(%) 16.9% 11.5% 12.9% 12.1% 12.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.5億円 1.7億円 2.2億円 2.2億円 2.1億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で増加となりましたが、主力となるライセンス販売の減少をコンサルティングサービスやクラウドサービス等の伸長でカバーしました。利益面においては、協力会社への単価引き上げによる外注費や人員増に伴う労務費の増加などの影響により、各利益率がわずかに低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 25.0億円 25.8億円
売上総利益 12.9億円 13.0億円
売上総利益率(%) 51.5% 50.3%
営業利益 3.0億円 3.0億円
営業利益率(%) 11.9% 11.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.9億円(構成比29%)、役員報酬が1.0億円(同10%)を占めています。売上原価においては、外注費が6.1億円(構成比47%)、労務費が5.5億円(同43%)と大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


同社はパッケージソフトウエア事業の単一セグメントであるため、事業全体での分析となります。当期は、特権ID管理製品などの大型商談において失注が発生しライセンス売上が減少したものの、クラウドサービスやコンサルティングサービスが好調に推移したことで全体として増収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
パッケージソフトウエア事業 25.0億円 25.8億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済等を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3.5億円 7.5億円
投資CF -2.6億円 -9.4億円
財務CF -1.3億円 -1.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「勇気づける(エンカレッジ)」をモットーとし、お客様企業にとって最適なシステム運用の実現と、そこで従事する運用者が誇りを持ち効率的に業務遂行できる環境づくりに貢献することを掲げています。また、「すべての人々が安心してITを利用できる社会を創る」をパーパスとして定め、社会のデジタル化に伴うシステム障害やサイバー攻撃への備えを支える役割を果たしています。

(2) 企業文化


同社は「価値創造の源はお客様にある」「お客様の喜びは我々の幸せである」等の経営方針を掲げています。新たな製品開発に際しては、顧客とのディスカッションとヒアリングを徹底し、悩みの根本原因や真のニーズを自分の事として捉えることを重視しています。過信することなく絶えず自らの技術を磨き、勇気を持ってチャレンジする風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年に向けた長期ビジョン「VISION2030」を設定し、直近3ヶ年を第1次中期経営計画(投資フェーズ:2025年3月期~2027年3月期)として位置付けています。現行製品やサービスを着実に販売して収益を獲得し、原資を確保することで、その後の成長フェーズに向けた新製品の開発に積極的に投資していく計画です。具体的な数値目標として以下を掲げています。

* 配当性向33.3%以上
* 純資産配当率(DOE)5%程度

(4) 成長戦略と重点施策


投資フェーズにおいては、「ライセンス売上の達成」「保守更新率の達成」「既存製品の移行推進」を重要ポイントとして事業を展開しています。特権IDや証跡管理などのシステム運用分野において、クラウドサービスへの本格参入やコンサルティングサービスなどの新たなソリューションを展開するとともに、次世代のリーダー育成に注力し、顧客志向で一体化した機動力ある新体制を築く戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業活動の成否を左右する重要な要素は「社員一人ひとりの専門性や経験、創造力や発想力」であるとし、「人材」を重点項目に位置付けています。性別や年齢に制約を設けず多様な人材を採用し、現行等級のまま上位業務に挑戦できる「チャレンジ制度」を導入するなど、公平な評価と柔軟な働き方を両立させることで、社員が自律的に高いエンゲージメントを持って働ける職場環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.0歳 6.3年 6,575,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 90.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 90.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 108.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の人数(51名)、離職率(11.5%)、月平均残業時間実績(27時間43分)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品競争力と新製品開発のリスク


システム証跡監査ツール市場は新規参入が続いており、他社から高機能または低価格の競合製品が出現して自社製品の優位性が失われた場合、売上に影響を及ぼす可能性があります。また、顧客の環境に適合しない製品を開発した場合や、未知の脆弱性が発見され改修に多大な工数を要した場合、開発費用の回収ができず経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 特定取引先への依存リスク


同社はNTTデータへの売上高の割合が高く、当期においても全体の19.7%を占めています。同社とは代理店契約を締結し安定した取引を継続していますが、今後何らかの理由で当該契約が変更または解消された場合には、同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


同社はクラウドサービスやリモートワーク環境を導入しているため、サイバー攻撃やマルウェアによる顧客・機密情報の流出リスクが常に存在しています。また、退職者等による営業機密の不正な持ち出しが発生した場合、社会的信用の失墜等によって財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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