※本記事は、デクセリアルズ株式会社 の有価証券報告書(第13期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. デクセリアルズってどんな会社?
光学材料、電子材料等の製造・販売を行う機能性材料メーカー。「Value Matters」をビジョンに掲げ、高付加価値製品を提供。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1962年にソニーが設立したソニーケミカルに始まります。2012年に事業を承継してデクセリアルズとして独立し、2015年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2021年には本社を栃木県下野市に移転し、2024年にはフォトニクス事業を担う子会社を設立するなど、体制強化を進めています。
2025年3月31日時点で、連結従業員数は1,888名、単体では1,369名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001、第3位は日本カストディ銀行(信託口)と、金融機関が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 17.54% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 10.15% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 5.72% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は新家 由久氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新家 由久 | 代表取締役社長(社長執行役員) | 2001年ソニーケミカル(現同社)入社。商品開発本部長、オートモーティブソリューション事業部長等を経て、2019年6月より現職。 |
| 佐竹 俊哉 | 代表取締役(専務執行役員) | 1983年北海道東北開発公庫(現日本政策投資銀行)入庫。同行地域企画部長等を経て2014年同社常勤監査役。2021年6月より現職。 |
| 谷口 正人 | 取締役(常勤監査等委員) | 1981年ソニー入社。1997年ソニーケミカル(現同社)転籍。蘇州子会社董事・総経理等を経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、横倉 隆(元トプコン社長)、田口 聡(元ENEOS常務執行役員)、萩原 利仁(テクノプロ・ホールディングス常務取締役兼CFO)、佐藤 りか(弁護士)、加賀谷 哲之(一橋大学大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「光学材料部品」、「電子材料部品」事業を展開しています。
■(1) 光学材料部品事業
ディスプレイパネルの視認性を向上させる反射防止フィルムや、ディスプレイモジュールとカバーガラスの貼り合わせに使われる光学弾性樹脂などを提供しています。主な顧客は、スマートフォン、タブレットPC、ノートPCおよび自動車向けディスプレイのメーカーやセットメーカーです。
収益は、顧客仕様に合わせてカスタマイズした製品の販売により得ています。特に反射防止フィルムは、ノートPC向けや車載ディスプレイでの採用が拡大しています。運営は主にデクセリアルズが行うほか、米国や欧州、アジアの販売子会社を通じてグローバルに展開しています。
■(2) 電子材料部品事業
電子部品の接続に用いられる異方性導電膜(ACF)や表面実装型ヒューズ、フォトニクス製品などを提供しています。ACFはスマートフォン等の小型・薄型化に寄与しており、世界市場で高いシェアを有しています。また、フォトニクス領域では光通信用デバイス等の開発・製造を行っています。
収益は、顧客仕様のカスタマイズ製品および汎用製品の販売対価として得ています。運営はデクセリアルズおよび中国の連結子会社Dexerials (Suzhou) Co.,Ltd.、デクセリアルズフォトニクスソリューションズなどが製造・販売を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績を見ると、売上収益は増加傾向にあり、利益面でも拡大が続いています。特に当期は、高付加価値製品の販売増や為替の円安効果等により、売上収益、各利益段階ともに前期を上回る結果となりました。当期利益も順調に推移しており、収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 1,052億円 | 1,104億円 |
| 税引前利益 | 309億円 | 394億円 |
| 利益率(%) | 29.4% | 35.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 226億円 | 277億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は50%台後半で推移しており、高い収益性を維持しています。営業利益率も30%台後半と高水準であり、効率的な事業運営が行われていることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,052億円 | 1,104億円 |
| 売上総利益 | 565億円 | 621億円 |
| 売上総利益率(%) | 53.7% | 56.3% |
| 営業利益 | 319億円 | 397億円 |
| 営業利益率(%) | 30.3% | 36.0% |
販売費及び一般管理費のうち、外注費が55億円(構成比23%)、研究開発費が53億円(同22%)を占めています。売上原価については、原材料費や労務費などが含まれています。
■(3) セグメント収益
光学材料部品事業は、反射防止フィルム等が好調でしたが、一部製品の販売終息等により減収減益となりました。一方、電子材料部品事業は、異方性導電膜の拡大や表面実装型ヒューズの増収等により、大幅な増収増益を達成しました。全体として、電子材料部品事業の成長が業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 光学材料部品 | 515億円 | 506億円 | 153億円 | 146億円 | 28.7% |
| 電子材料部品 | 544億円 | 604億円 | 188億円 | 235億円 | 38.9% |
| 調整額 | -6億円 | -7億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 1,052億円 | 1,104億円 | 319億円 | 397億円 | 36.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ資金で投資を行い、借入返済や株主還元も進めている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 284億円 | 404億円 |
| 投資CF | -113億円 | -223億円 |
| 財務CF | -107億円 | -213億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.6%で市場平均を大きく上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「Integrity 誠心誠意・真摯であれ」を経営理念とし、顧客の期待を超える価値を創造することを目指しています。また、企業ビジョンとして「Value Matters 今までなかったものを。世界の価値になるものを。」を掲げ、世の中にない新しい価値を提供し続けることで、社会の質的向上に貢献することを企業の姿としています。
■(2) 企業文化
社名の元になっている「かしこく、機敏に」材料の力を組み合わせ、常に新しい価値を創造できる「人」を社内に創ることを使命としています。社員一人ひとりが「自ら学び、自ら考え、自ら行動し、成長し続ける」ことを求める行動指針「Dexerials Way」を設定し、挑戦と成長を支援する文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2029年3月期を最終年度とする中期経営計画2028「進化の実現」を策定しています。事業ポートフォリオの拡大と経営基盤の強化を推進し、持続的成長を目指しています。
* 売上高:1,500億円
* 事業利益:500億円
* EBITDAマージン:43.0%
* EPS:626円
* ROIC:14.0%程度
* ROE:25.0%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
今後成長が見込まれる「自動車」「フォトニクス」領域での事業拡大を掲げ、2029年3月期には成長領域の売上高構成比を30%まで引き上げる計画です。また、既存領域では高付加価値製品の拡大による質的強化を図ります。これらを支えるため、技術と人財への投資、製造機能の強化(スマートファクトリー化)、知的財産の活用を重点施策として推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最大の経営資源と位置づけ、グローバルな視点で「技術」と「マーケティング」に携わる人材の強化を進めています。ジョブ型人事制度の導入により役割と成果に基づく処遇を実現し、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。また、ダイバーシティ推進や健康経営にも取り組み、社員が能力を最大限発揮できる環境整備を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.3歳 | 15.4年 | 7,591,460円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.9% |
| 男性育児休業取得率 | 24.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 86.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 83.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 86.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児支援休暇取得率(96.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況の動向
グローバルに事業を展開しているため、世界経済の減速や金融不安、地政学リスク等が製品需要に影響を与える可能性があります。特に主要顧客であるスマートフォン等の最終製品市場は景気変動の影響を受けやすく、需要減少時には業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競争の激化
同社が展開する市場では競争が激しく、競合他社との技術開発競争や価格競争に直面しています。また、主要顧客であるディスプレイメーカー等の戦略変更により、仕入先が変更されるリスクもあります。競争優位性を維持できない場合、シェア低下により業績に影響が出る可能性があります。
■(3) 事業ポートフォリオの変革の遅れ
現在はコンシューマーIT関連製品の売上比率が高い状態にあります。自動車やフォトニクスなどの新規領域への転換が遅れ、特定の市場への依存度が低下しない場合、当該市場の需要変動の影響を大きく受けるリスクがあります。
■(4) 業績の季節的変動等
スマートフォン等の新モデル投入時期や年末商戦に向けて生産が集中するため、第2・第3四半期に業績が偏重する傾向があります。最終製品の販売動向や顧客の在庫調整等の影響により、四半期ごとの業績が変動する可能性があります。



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