デクセリアルズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デクセリアルズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デクセリアルズは東証プライム市場に上場し、光学材料や電子材料の開発・製造を行う機能性材料メーカーです。スマートフォンや車載ディスプレイ向け製品に強みを持ちます。直近の業績は、データセンター向け光通信製品などの需要拡大により、増収を達成しつつも先行投資の増加等で営業減益のトレンドとなっています。


※本記事は、デクセリアルズ株式会社の有価証券報告書(第14期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. デクセリアルズってどんな会社?


電子部品や接合材料、光学材料などの開発から製造・販売までを手掛けるグローバルな機能性材料メーカーです。

(1) 会社概要


同社のルーツは1962年にソニーが設立したソニーケミカルに遡ります。回路基板用製品や接着剤の製造から始まり、1977年には異方性導電膜(ACF)、2002年には反射防止フィルムの製造を開始しました。2012年にソニーグループから独立してデクセリアルズへ商号変更し、2015年に上場を果たしました。直近では2022年に京都セミコンダクターを子会社化し、フォトニクス事業を強化しています。

連結従業員数は1,802名、単体では1,344名体制で事業を運営しています。大株主の構成を見ると、上位の多くを国内外の信託銀行や資産管理法人が占めています。筆頭株主は国内の信託銀行であり、第2位には外国法人の信託機関が名を連ねるなど、機関投資家からの保有比率が高い安定した資本構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.08%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 9.72%
日本カストディ銀行(信託口) 7.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は新家由久氏が務めており、社外取締役が過半数を占める透明性の高いガバナンス体制を構築しています。

氏名 役職 主な経歴
新家由久 代表取締役社長(社長執行役員) 2001年にソニーケミカル(現同社)入社。商品開発本部長などを経て、2020年10月より現職。
北所克史 代表取締役(専務執行役員) 1990年に日本開発銀行入行。日本政策投資銀行の取締役常務執行役員などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、細谷和男(元SUBARU副社長)、田口聡(元ENEOSホールディングス常務執行役員)、萩原利仁(元テクノプロ・ホールディングス常務取締役)、加賀谷哲之(一橋大学大学院教授)、中山代志子(ケーエルエー・テンコール法務部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「光学材料部品」および「電子材料部品」事業を展開しています。

(1) 光学材料部品

反射防止フィルムや光学弾性樹脂、精密接合用樹脂などを開発・製造しています。主にスマートフォンやタブレット、ノートPC、車載ディスプレイなどに使用されており、独自のスパッタリング製法による優れた低反射特性と耐擦傷性で、顧客から高い評価を獲得しています。

顧客の仕様に合わせてカスタマイズし、液晶パネルメーカーやセットメーカーなどに販売して収益を得るモデルです。事業の運営は同社が主体となりつつ、販売面ではDexerials Europe B.V.やDexerials America Corporationなどの海外子会社群と連携してグローバルに展開しています。

(2) 電子材料部品

異方性導電膜(ACF)や二次保護ヒューズ、光半導体、無機光学素子などの製造および販売を行っています。特に異方性導電膜は、各種デバイスの小型化・薄型化に貢献し、スマートフォンのフレキシブルOLEDパネル向けにおいて世界のデファクトスタンダードとして広く採用されています。

カスタマイズ製品や標準タイプの汎用製品を電子部品メーカーおよび材料加工メーカーなどに販売し、収益を得ています。製造と同社製品の販売は同社のほか、Dexerials (Suzhou) Co.,Ltd.やデクセリアルズ フォトニクス ソリューションズが担い、グローバル市場への供給体制を構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の売上収益は順調に拡大を続けており、1,000億円台で推移しています。一方で、利益面については、売上の成長に伴い高水準を維持していますが、成長領域への投資や市場環境の変化などの影響を受け、当期は微減益のトレンドとなっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 1052億円 1104億円 1138億円
税引前利益 309億円 394億円 384億円
利益率(%) 29.4% 35.7% 33.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 226億円 277億円 280億円

(2) 損益計算書


売上高が増加したことに伴い、売上総利益も拡大し、利益率は50%を上回る高い水準で推移しています。一方で、将来の成長に向けた研究開発や体制強化の投資負担が先行し、営業利益および営業利益率は前年度をやや下回る結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1104億円 1138億円
売上総利益 585億円 621億円
売上総利益率(%) 53.0% 54.6%
営業利益 397億円 381億円
営業利益率(%) 36.0% 33.5%


販売費及び一般管理費(244億円)のうち、従業員給付費用が86億円(構成比35.2%)、研究開発費が67億円(同27.6%)を占めており、人材と技術に対する積極的な投資姿勢が伺えます。

(3) セグメント収益


光学材料部品は、反射防止フィルムの一部モデルでの販売数量減少などにより減収減益となりました。一方、電子材料部品は、ハイエンドスマートフォン向けの異方性導電膜やデータセンター向けの光通信製品が好調に推移したことで、全体の売上成長を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
光学材料部品 506億円 480億円 146億円 143億円 29.8%
電子材料部品 604億円 667億円 235億円 250億円 37.5%
調整額 -7億円 -9億円 -億円 -億円 -%
連結(合計) 1104億円 1138億円 381億円 394億円 34.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 404億円 275億円
投資CF -223億円 -251億円
財務CF -213億円 -214億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も64.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「Integrity 誠心誠意・真摯であれ」という経営理念のもと、「Value Matters 今までなかったものを。世界の価値になるものを。」を企業ビジョンに掲げています。社会の効率化を実現するデジタルテクノロジーの進化に不可欠なソリューションを提供することが存在意義(パーパス)です。

(2) 企業文化

卓越した独自の技術でお客さまのニーズや課題を機敏に解決する文化が根付いています。付加価値の高い製品を提供し続けるために、常に新しい価値を創造できる「人」を育てることを重視し、「デザイン・イン」と「スペック・イン」を両輪としたビジネスモデルで信頼関係を深めています。

(3) 経営計画・目標

同社は、持続的な成長と企業価値の向上を目指し、中期経営計画2028「進化の実現」をアップデートして推進しています。最終年度に向けた経営目標は以下の通りです。

* 売上高 1,640億円
* EPS 263円

(4) 成長戦略と重点施策

フォトニクスを成長ドライバーと位置づけ、データセンターの高度化を背景とした光半導体などの需要拡大を取り込む戦略です。研究開発の加速や生産能力の強化、サプライチェーンの強靭化を進め、既存領域では高付加価値製品の投入により事業の付加価値向上と持続的な競争優位の確立に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

グローバルで共通の人事制度体系を通じて人的資本を最大限に活用する「人財ポリシー」を定めています。多様な人財から選ばれる会社を目指し、技術・マーケティング分野を中心に人材確保を推進。次世代経営人材育成プログラムや自己啓発支援を通じて、自律的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 15.3年 7,693,479円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.8%
男性育児休業取得率 53.8%
男女賃金差異(全労働者) 86.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 85.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 84.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) グローバル展開と地政学リスク

売上の多くを海外顧客に依存しているため、進出先の政治情勢や経済環境、貿易規制、為替レートの変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。特に東アジア地域における有事や経済安全保障政策の強化による輸出管理規制などの動向を注視し、調達や物流体制の再構築に努めています。

(2) 技術革新と製品競争力の維持

同社が事業を展開する分野は技術革新のスピードが速く、コスト競争も激化しています。競合他社による代替技術や高性能製品の市場投入により、自社製品の競争力や販売価格が低下するリスクがあります。これに対し、独自技術を活かした新製品開発や製造工程の効率化によるコスト低減に取り組んでいます。

(3) 特定領域への依存とポートフォリオ転換

売上高の多くが特定のコンシューマーIT製品に依存しており、業界全体の需要低下や顧客の戦略変更が業績に影響する可能性があります。フォトニクスや自動車事業などの成長分野を育成することで事業ポートフォリオの転換を進めていますが、想定通りに成長が進まないリスクが内在しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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