※本記事は、ケイアイスター不動産株式会社 の有価証券報告書(第35期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ケイアイスター不動産ってどんな会社?
分譲住宅を主軸に、注文住宅や不動産仲介などを展開する総合不動産企業です。
■(1) 会社概要
1990年に埼玉県本庄市で不動産売買・賃貸を目的として創業しました。2015年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌2016年には市場第一部へ指定替えとなりました。その後も、M&Aにより株式会社よかタウンや株式会社旭ハウジングなどを子会社化してエリアを拡大し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。
同グループの従業員数は連結で2,664名、単体で1,456名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社であるフラワーリング、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は代表取締役社長の塙圭二氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| フラワーリング | 34.51% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.92% |
| 塙 圭二 | 7.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長は塙圭二氏が務めています。取締役9名のうち3名が社外取締役で、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 塙 圭二 | 代表取締役社長 | 1990年11月に同社の前身である有限会社ケイアイプランニングを設立し、翌年代表取締役社長に就任。以来、グループ各社の取締役を兼任し、トップとして経営を牽引。現職。 |
| 浅見 匡紀 | 取締役 常務執行役員Co-CSOKIS戸建分譲事業管掌 | 2002年株式会社中央住宅入社。2008年に同社入社後、東京営業部長などを歴任。2023年より取締役常務執行役員Co-CSOに就任。現職。 |
| 松倉 誠 | 取締役 常務執行役員Co-CSOファーストドア分譲事業管掌 | 2003年に入社し、第二販売部部長などを経て2011年に取締役就任。北関東事業部長などを歴任し、2023年より取締役常務執行役員Co-CSO。現職。 |
| 真杉 恵美 | 取締役 常務執行役員CCO広報IRおよび戦略開発管掌 | 1996年株式会社グランビルホーム入社。戦略開発部長などを経て2017年に取締役就任。2023年より取締役常務執行役員CCO。現職。 |
| 阿部 和彦 | 取締役常務執行役員CFOコーポレート経営管掌 | 株式会社三菱銀行出身。株式会社カプコンCFOなどを経て、2020年に同社顧問。2023年より取締役常務執行役員CFO。現職。 |
| 原田 賢 | 取締役常務執行役員CQOグループ生産管掌 | 2003年入社。埼玉分譲事業部長、建設本部長などを歴任。2024年より取締役常務執行役員CQO。現職。 |
社外取締役は、花井健(元株式会社日本興業銀行常務執行役員)、酒井弘行(元あずさ監査法人理事長)、金子恵美(元総務大臣政務官)です。
2. 事業内容
同社グループは、「分譲住宅事業」、「注文住宅事業」および「その他」事業を展開しています。
■分譲住宅事業
「高品質、だけど低価格なデザイン住宅」をコンセプトに、規格型デザインを基盤としつつ地域特性に合わせた住宅を供給しています。土地の仕入れから建築、販売までを一貫して行い、一次取得者層を主なターゲットとしています。
収益は、一般顧客への住宅販売代金が中心です。運営は、ケイアイスター不動産のほか、株式会社よかタウン、株式会社旭ハウジングなどの連結子会社が行っています。
■注文住宅事業
分譲住宅で培ったノウハウを活かし、規格型注文住宅を中心に展開しています。フルオーダー型に比べて工期短縮と低価格を実現しつつ、自由度を高めた住宅を提供しています。
収益は、顧客からの建築請負代金です。運営は、主にケイアイスター不動産が行っています。
■その他事業
上記セグメントに含まれない事業として、中古住宅事業、アパート・収益不動産事業、不動産賃貸業、不動産仲介事業などを展開しています。
収益は、不動産の販売代金、賃料収入、仲介手数料などです。運営は、ケイアイスター不動産および各事業を担当する連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は1,558億円から3,426億円へと2倍以上に拡大しており、力強い成長トレンドにあります。利益面でも、2024年3月期に一時的な落ち込みが見られたものの、2025年3月期には経常利益が151億円へと回復し、増収増益基調に戻っています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,558億円 | 1,844億円 | 2,419億円 | 2,831億円 | 3,426億円 |
| 経常利益 | 128億円 | 232億円 | 185億円 | 101億円 | 151億円 |
| 利益率(%) | 8.2% | 12.6% | 7.6% | 3.6% | 4.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 61億円 | 106億円 | 83億円 | 53億円 | 57億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約595億円増加し、それに伴い売上総利益も大幅に伸長しました。営業利益率は前期の4.0%から5.0%へと改善しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,831億円 | 3,426億円 |
| 売上総利益 | 326億円 | 420億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.5% | 12.3% |
| 営業利益 | 114億円 | 173億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 5.0% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が80億円(構成比32%)、給料及び手当が52億円(同21%)を占めています。売上原価は3,006億円で、売上高に対する構成比は88%です。
■(3) セグメント収益
主力の分譲住宅事業は、新規エリア進出と既存エリアの深耕により大幅な増収増益を達成しました。注文住宅事業も売上高は増加しましたが、M&Aに伴う一時的な原価増などにより減益となりました。その他事業は収益不動産事業などが寄与し、成長しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 分譲住宅事業 | 2,702億円 | 3,228億円 | 142億円 | 193億円 | 6.0% |
| 注文住宅事業 | 55億円 | 70億円 | 8億円 | 0.4億円 | 0.5% |
| その他 | 74億円 | 128億円 | 8億円 | 19億円 | 14.8% |
| 調整額 | 4億円 | 2億円 | -44億円 | -39億円 | - |
| 連結(合計) | 2,831億円 | 3,426億円 | 114億円 | 173億円 | 5.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、分譲用地取得や建設投資、運転資金を主な資金需要とし、金融機関からの借入等で調達しています。
営業活動では、棚卸資産の増減などが影響し、資金を使用しました。
投資活動では、貸付による支出が主な要因となり、資金を使用しました。
財務活動では、借入による調達が主な要因となり、資金を得ました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -153億円 | -6億円 |
| 投資CF | -49億円 | -75億円 |
| 財務CF | 271億円 | 222億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「豊かで楽しく快適なくらしの創造をめざす、『豊・楽・快(ゆたか)』創造企業」を経営理念として掲げています。すべての従業員が「本当に豊かな住まいとは何か?」を追求し、関わるすべての人々(顧客、従業員、パートナー、地域社会、株主)と共に、持続的に発展し合える未来の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「高品質、だけど低価格なデザイン住宅」を安定供給することを通じて、社会に貢献するという価値観を共有しています。規格型デザインを基盤としつつ、地域や周辺環境に合わせた住宅デザインを一つひとつ提供する独自のビジネスモデルを構築しており、常に価値創造と市場シェアの拡大を目指す姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2024年11月に公表した「中期経営計画2028」において、以下の数値目標を掲げています。
* 2028年3月期 売上高:5,000億円
* 2028年3月期 純利益:180億円
* 分譲住宅事業 当面の販売棟数目標:15,000棟/年
* 分譲住宅事業 年平均成長率:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「戸建住宅事業の成長」「戸建住宅事業以外の事業の拡大」「経営基盤の強化」の3つを方針として掲げています。分譲住宅事業では、展開エリアを「安定成長」「拡大注力」「ネットワーク活用」に区分し、M&Aや新規出店などの最適な投資戦略を推進します。また、事業多角化として、海外事業(豪州、米国)やリフォーム事業などを拡大し、分譲以外の売上構成比を高める方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長のため、人材の確保と育成を最重要課題としています。新卒・キャリア採用に加え、多様な人材(再雇用、障がい者、外国人等)の活用を推進し、DE&Iに取り組んでいます。また、職人不足に対応するため、独自の「マイスター制度」を通じて社内職人の早期育成を行い、施工体制の強化と品質向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 32.3歳 | 3.9年 | 5,175,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.4% |
| 男性育児休業取得率 | 108.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 72.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量の販売棟数原単位(Scope1,2)(2030年度までに33.6%削減目標)、協力会社数(年平均+10.0%以上目標)、社内職人数(年平均+10.0%以上目標)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 住宅市場の変動リスク
住宅購入意欲は景気、金利、税制の影響を受けやすく、また地価や資材価格、人件費の変動も供給に影響を与えます。同社は在庫回転率を重視したコンパクト分譲を展開し、市場分析に基づくエリア戦略を行うことでリスクの分散・最小化を図っています。
■(2) 有利子負債への依存
用地取得やM&A資金を主に金融機関からの借入で調達しており、総資産に占める有利子負債比率は高水準です。調達環境の悪化や財務制限条項への抵触リスクに対し、キャッシュマネジメントシステムによる資金効率化や金融機関との関係強化で対応しています。
■(3) 棚卸資産の価格変動リスク
販売用不動産等の棚卸資産は、市況や競合状況の影響を受け、長期化や価格下落のリスクがあります。同社はコンパクト分譲による回転率重視の戦略により、保有期間を適切に管理することで、これらのリスク低減に努めています。
■(4) 人的資本と施工体制の確保
事業拡大には人材確保が不可欠であり、特に建設業界における職人不足と高齢化は重要な課題です。十分な人材や協力業者を確保できない場合、成長に影響が出る可能性があります。同社は多様な人材の活用やマイスター制度による職人育成を推進しています。



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