ケイアイスター不動産 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケイアイスター不動産 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケイアイスター不動産は、東京証券取引所プライム市場に上場し、「高品質、だけど低価格なデザイン住宅」を提供する分譲住宅事業や注文住宅事業を主力としています。直近の業績では、売上高が過去最高を更新し、営業利益および経常利益も大幅な増益を達成するなど、力強い成長トレンドとなる増収増益を記録しています。


※本記事は、ケイアイスター不動産株式会社の有価証券報告書(第36期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ケイアイスター不動産ってどんな会社?


分譲住宅事業および注文住宅事業を軸に、高品質と低価格を両立したデザイン住宅を提供する不動産企業です。

(1) 会社概要


1990年に埼玉県本庄市で不動産の売買および賃貸等を目的として創業し、2009年には注文住宅「はなまるハウス」の提供を開始しました。2015年に東証二部へ上場を果たし、その後2016年に東証一部へ銘柄指定されています。近年は複数社のM&Aを積極的に行い、オーストラリアや米国など海外への事業展開も推進しています。

同社グループの連結従業員数は2,897名、単体従業員数は1,536名です。筆頭株主は創業者である塙圭二氏の資産管理会社とみられるフラワーリングで、第2位および第3位には資産管理業務などを行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
フラワーリング 34.50%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.18%
日本カストディ銀行(信託口) 5.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長は塙圭二氏が務めており、取締役9名のうち3名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
塙圭二 代表取締役社長 1990年11月有限会社ケイアイプランニング(現同社)設立にあたり創業メンバーとして参画。1991年7月代表取締役社長。フラワーリング代表取締役などを経て現職。
浅見匡紀 取締役常務執行役員CSO 中央住宅を経て2008年4月同社入社。2014年6月取締役東京分譲事業部長。ケイアイスターデベロップメント代表取締役などを経て現職。
松倉誠 取締役常務執行役員D-CSO 2003年5月ケイアイプランニング(現同社)入社。2011年6月取締役。ケイアイスタービルド代表取締役などを経て現職。
真杉恵美 取締役常務執行役員CCO 1996年11月グランビルホーム入社。2017年6月同社取締役戦略開発本部長。はなまるハウス代表取締役などを経て現職。
阿部和彦 取締役常務執行役員CFO 三菱銀行、カプコン取締役最高財務責任者(CFO)、ネクスト(現LIFULL)執行役員などを経て、2022年6月同社取締役。KSキャリア代表取締役などを経て現職。
原田賢 取締役常務執行役員CQO 2003年10月同社入社。2014年1月執行役員建設本部長。ケイアイクラフト取締役、ケイアイエポックメイキング取締役などを経て現職。


社外取締役は、花井健(元楽天証券取締役)、酒井弘行(元あずさ監査法人理事長)、金子恵美(元総務大臣政務官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「分譲住宅事業」「注文住宅事業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 分譲住宅事業


同事業は、「高品質、だけど低価格なデザイン住宅」を安定的に提供することを目指し、規格型デザインを基盤とした分譲住宅の販売を行っています。各地域の特性や周辺環境に応じた住宅設計を行う独自のアプローチにより、高品質でありながらコストパフォーマンスに優れた住宅を提供しています。

収益源は、一般顧客に対する分譲住宅の販売代金です。今後は大都市圏を中心に戦略的な店舗展開と用地仕入を積極的に進める一方、生産性の向上を通じて利益率の改善を図ります。運営は主にケイアイスター不動産およびよかタウンなどの連結子会社が行っています。

(2) 注文住宅事業


同事業は、フルオーダー型に比べて安定した品質で低価格な住宅を短期間で提供できる体制を構築し、規格型の注文住宅を中心に建築請負サービスを展開しています。規格の充実を図ることで、注文住宅に求められる自由度を高めています。

収益源は、顧客との工事請負契約に基づく注文住宅の建築請負代金です。分譲住宅事業独自の「1棟からのコンパクト分譲」で培われた生産管理や品質管理の体制、調達・生産面におけるスケールメリットなどを共有しています。運営はケイアイスター不動産およびそのグループ会社が担っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、中古住宅再生事業、アパート・収益不動産事業、分譲マンション事業などの既存事業の拡張や、不動産賃貸業、不動産仲介事業などを展開しています。また、豪州や米国での海外事業も拡大しています。

各サービスを通じた不動産販売や手数料などが主な収益源となっており、ケイアイスター不動産およびグループ各社がそれぞれ事業を運営しています。リフォーム事業やストック事業を通じて、顧客の生涯価値の最大化にも取り組んでいます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上高は右肩上がりの成長を継続しており、毎期増収を達成しています。経常利益は一時的に落ち込む時期もありましたが、直近の期では大きく回復し、増収増益の力強い成長を示しています。利益率も直近で改善傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,844億円 2,419億円 2,831億円 3,426億円 3,939億円
経常利益 232億円 185億円 101億円 151億円 250億円
利益率(%) 12.6% 7.6% 3.6% 4.4% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 106億円 83億円 53億円 57億円 122億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率および営業利益率も前期と比較して上昇しており、収益性の改善が進んでいることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,426億円 3,939億円
売上総利益 420億円 561億円
売上総利益率(%) 12.3% 14.2%
営業利益 173億円 270億円
営業利益率(%) 5.0% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が93億円(構成比32%)、給料及び手当が58億円(同20%)を占めています。売上原価については、材料費が1,524億円(構成比70%)、外注費が528億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の分譲住宅事業は、大都市圏のシェア拡大や収益性改善が寄与し、大幅な増収増益を達成しました。注文住宅事業は売上高が減少したものの、子会社の経営統合等による粗利益率の改善や販管費の削減が進み、利益面では増益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
分譲住宅事業 3,228億円 3,658億円 193億円 276億円 7.5%
注文住宅事業 70億円 64億円 0.4億円 1億円 1.6%
その他 128億円 218億円 19億円 41億円 18.9%
調整額 -2億円 -2億円 -39億円 -48億円 -
連結(合計) 3,426億円 3,939億円 173億円 270億円 6.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期の営業CFはマイナス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続する勝負型の状態です。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -6億円 -275億円
投資CF -75億円 -40億円
財務CF 22億円 353億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「豊かで楽しく快適なくらしの創造をめざす『豊・楽・快(ゆたか)』創造企業」を経営理念として掲げています。また、「すべての人に持ち家を」をビジョンに定め、すべての従業員が本当に豊かな住まいとは何かを常に追求し、住まいづくりに取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、お客様や従業員、パートナー、地域社会、株主などの多くのステークホルダーに支えられているという認識のもと、持続的に相互に発展し、関わるすべての方々とともに「豊・楽・快」な未来を実現する文化を大切にしています。また、多様な強みを最大限に発揮できる環境を整備しています。

(3) 経営計画・目標


少子高齢化や世帯数減少に伴う新築住宅着工戸数の減少が見込まれる中、「中期経営計画2028」を策定し、事業成長への強い意志とコミットメントを共有しています。

・売上高5,000億円(2028年3月期)
・純利益180億円(2028年3月期)

(4) 成長戦略と重点施策


事業成長に向け、「戸建住宅事業の成長」「戸建住宅事業以外の事業の拡大」「経営基盤の強化」の3つの方針を掲げています。分譲住宅事業ではエリアを区分して最適な投資戦略を推進し、その他の事業では注文住宅や海外展開などを強化します。経営基盤については「経営の見える化」を徹底し、事業リスク評価と投資判断の迅速化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大と持続的成長のため、人材の確保と育成を重要な経営課題と位置付けています。新卒やキャリア採用に加え、多様な働き方を促進して人的資本の量的拡大を図ります。また、研修の拡充や抜擢人事により、多様な知識や多角的な視点を確保し、生産性向上を支える質的向上につなげています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 32.8歳 4.1年 5,103,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.2%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.8%
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(パート・有期) 74.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 住宅市場の動向


住宅需要はお客様の購入意欲が景気や金利、税制等の影響を受けやすく、供給面でも競合他社や資材価格変動等により住宅価格や供給数に影響を及ぼす可能性があります。同社は住宅の需給状況を常に分析し、在庫回転率を重視したコンパクト分譲を展開してリスクの分散を図っています。

(2) 有利子負債への依存


住宅用地の取得資金やM&A資金を主に金融機関からの借入により調達しており、有利子負債の比率が高くなっています。調達環境の悪化や財務制限条項に抵触した場合、資金調達や返済に影響を及ぼす可能性があります。資金の効率化や金融機関との関係維持によりリスク低減に努めています。

(3) 棚卸資産の保有


保有する販売用不動産等の棚卸資産は、景気や金利動向、不動産市況、価格競争等の影響を受けます。保有期間の長期化や販売価格の下落が発生した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は在庫回転率を重視したコンパクト分譲を展開し、保有期間を適切に管理しています。

(4) 中東情勢による事業への影響


中東情勢の緊迫化に伴い、原油価格の高騰や石油化学製品を中心としたサプライチェーンの混乱が生じる可能性があります。建築資材や住宅設備の価格高騰が発生した場合、住宅供給に影響を及ぼす懸念があります。先行発注や調達ルートの分散化により調達リスクへの対応に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ケイアイスター不動産の転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

ケイアイスター不動産の2026年3月期3Q決算は、売上高が過去最高を更新し、通期予想を上方修正。M&Aによる事業拡大や不動産テックの推進が奏功しています。「なぜ今、不動産×DXの同社なのか?」「成長著しい注文住宅や中古再生事業でどんな役割を担えるのか」を整理します。