昭栄薬品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

昭栄薬品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。オレオケミカルを中心とした化学品事業を主軸に、日用品や土木建設資材も展開する専門商社です。2025年3月期の連結業績は、売上高250億円(前期比10.7%増)、経常利益7.6億円(同16.2%増)と増収増益を達成しています。


※本記事は、昭栄薬品株式会社 の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 昭栄薬品ってどんな会社?


天然油脂由来の「オレオケミカル」を主力とする化学品専門商社です。花王の国内主要代理店でもあります。

(1) 会社概要


1937年に化学品卸「鐵野商店」として創業し、1951年に花王石鹸(現花王)製品の販売を開始しました。1960年に昭栄薬品へ改組し、1965年には土木建設資材事業、1987年には日用品事業へ参入しました。2016年にJASDAQ(現スタンダード)市場へ上場し、事業を拡大しています。

連結従業員数は77名、単体では59名です。筆頭株主は創業家出身の鐵野磨輝男氏、第2位は昭栄薬品社員持株会、第3位はベンチャー育成等を行う大阪中小企業投資育成です。花王との長年の取引関係が事業基盤となっており、安定した株主構成のもと経営が行われています。

氏名 持株比率
鐵野 磨輝男 11.59%
昭栄薬品社員持株会 11.30%
大阪中小企業投資育成 9.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤原佐一郎氏です。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
藤原 佐一郎 代表取締役社長 1980年同社入社。名古屋営業所長、取締役大阪化学品副本部長、取締役大阪営業副本部長などを経て、2015年6月より現職。
成瀬 幸次 常務取締役財務本部長 1986年同社入社。財務部長、取締役財務本部長を経て、2021年6月より現職。
小池 宏美 取締役総務本部長 1987年同社入社。総務部長を経て、2015年6月より現職。
西尾 英之 取締役営業第2本部長 花王石鹸(現花王)入社後、海外現地法人社長や花王クエーカー代表取締役社長を歴任。2020年同社入社、取締役国際推進本部長等を経て、2021年6月より現職。
内田 勝也 取締役営業第1本部長 1988年同社入社。大阪化学品部長、大阪営業兼東京営業副本部長等を経て、2021年6月より現職。
西蔭 久朗 取締役営業第1副本部長 1991年同社入社。名古屋営業所長、営業第1副本部長を経て、2025年6月より現職。
田嶋 和重 取締役(監査等委員)(常勤) 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行後、支店長等を歴任。2011年同社入社、監査役を経て、2016年6月より現職。


社外取締役は、岩井伸太郎(公認会計士・税理士)、福本暁弘(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学品事業」「日用品事業」および「土木建設資材事業」を展開しています。

化学品事業


天然油脂由来の「オレオケミカル(脂肪酸、グリセリン等)」や、これらを原料とする界面活性剤等を扱っています。家庭用洗剤や化粧品、工業用製品の原材料として、幅広い業界のメーカーに供給しています。花王を主要仕入先とし、同社の国内主要代理店としての地位を確立しています。

オレオケミカル等を油脂メーカーから仕入れ、中間製品メーカーや最終製品メーカーへ販売することで収益を得ています。また、新興国化学品の新規開拓や環境関連ビジネスも推進しています。運営は主に同社、昭栄祥(上海)貿易有限公司、SHOEI TRADING(THAILAND)CO.,LTD.が行っています。

日用品事業


「安心・安全」をテーマに、「簡単・便利」をコンセプトとした家庭用洗剤や業務用洗浄剤等の企画・販売を行っています。化学品事業の知見を活かし、最適な原材料調達や生産委託先の選定を行うことで、小ロットでも効率的な供給を可能にしています。

企画した商品を外部に生産委託し、相手先ブランド(OEM)で販売することで収益を得ています。また、2016年からはオリジナル商品の販売も開始しています。主な運営は同社が行っています。

土木建設資材事業


地盤改良工法(グラウト工法)やコンクリート補修補強工法に使用する材料・添加剤、汚染土壌改良のための環境改善薬剤などを扱っています。環境負荷低減に配慮した薬剤提案や、新工法開発の技術サポートに強みを持ちます。

土木建設資材メーカーへの原材料販売や、ゼネコン等への工法に応じた材料提案・販売を通じて収益を得ています。特定の工法に関しては、特許実施契約を締結し独占的な販売権を有しているものもあります。主な運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間において、売上高は着実な成長傾向にあります。特に2022年3月期以降は売上高200億円台で推移しており、当期は250億円を突破しました。利益面でも、経常利益率はおおむね3%前後を維持し、当期は過去最高益水準となっています。親会社株主に帰属する当期純利益も安定して推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 170億円 211億円 245億円 226億円 250億円
経常利益 3.1億円 4.7億円 6.7億円 6.5億円 7.6億円
利益率(%) 1.8% 2.2% 2.7% 2.9% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.5億円 5.7億円 4.2億円 4.8億円 5.0億円

(2) 損益計算書


前期と比較して、売上高および各利益段階ですべて増加しています。売上総利益率は8.4%と前年並みを維持しつつ、営業利益率は2.2%に改善しました。増収効果に加え、利益率の改善も進んでおり、本業の収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 226億円 250億円
売上総利益 19億円 21億円
売上総利益率(%) 8.4% 8.4%
営業利益 4.4億円 5.6億円
営業利益率(%) 1.9% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6.5億円(構成比43%)、運賃及び荷造費が1.7億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


化学品事業が売上高の9割以上を占める主力事業であり、当期は増収増益となりました。日用品事業は増収ながら減益、土木建設資材事業は増収かつ大幅な増益となりました。全社費用を除くセグメント利益の合計は増加しており、主力の化学品事業の好調が全体の業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
化学品事業 205億円 229億円 5.3億円 6.4億円 2.8%
日用品事業 7.5億円 8.0億円 0.8億円 0.8億円 9.4%
土木建設資材事業 13億円 13億円 0.0億円 0.1億円 0.5%
調整額 - - -1.7億円 -1.6億円 -
連結(合計) 226億円 250億円 4.4億円 5.6億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業・投資・財務いずれもマイナスですが、これは前期末日が金融機関の休日であったことによる決済の期ズレ影響で、実質的な営業CFはプラスです。形式上は**末期型(期末休日に伴う決済ずれの影響)**となります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 8.2億円 -1.7億円
投資CF -0.2億円 -0.2億円
財務CF -1.7億円 -1.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、環境と安全に配慮した価値ある商品の提供と、新しい市場の開発を通じて、真の顧客満足を実現し、企業の発展と社会への貢献を果たすことを経営理念として掲げています。また、業務の有効性・効率性の向上、正しい財務報告と資産管理、法令順守を継続することを宣言しています。

(2) 企業文化


「仕入先には信頼感」「得意先には満足感」「自分自身は責任感」という3つの行動規範を重視しています。市場情報の共有による仕入先との信頼構築、価値ある提案による顧客満足の実現、そして自己研鑽と責任ある仕事の遂行を社員一人ひとりに求めています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と発展の基盤は利益であるとの認識の下、売上総利益の絶対額の持続的な増加を目標としています。2026年3月期の業績見通しとして、以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:244億6400万円
* 連結売上総利益:20億1600万円

(4) 成長戦略と重点施策


「オレオケミカルを中心とした化学品分野」に経営資源を集中させる「集中戦略」を採用しています。情報、ノウハウ、信用力等の「情報的経営資源」を各事業で有効活用し、シナジー効果の最大化を図ります。

* グローバル・ネットワークの構築:海外子会社と国内事業の連携強化、提案力向上。
* 組織機能の向上・人材育成:組織間の連携強化と機動的に対応できる人材の確保・育成。
* コア・コンピタンスの向上:原材料選定支援、サプライチェーン活用、技術サポート力の強化。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「全体を捉え経営参画意識が高く、提案力を持った専門性の高い人材」や「目標を掲げてチャレンジし、スピーディーに責任を持って仕事をする人材」を求めています。公正な人事考課、目標面接制度によるスキルアップ支援、階層別研修などを通じて、組織全体の生産性向上と従業員の成長を促進する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.5歳 17.3年 8,999,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員満足度調査(総合評点50)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取扱商品と市況変動


主力のオレオケミカルはパーム油等の天然油脂を原料としており、これらの市況や為替変動、産地の天候不順等の影響を受けます。価格転嫁を進める方針ですが、著しい変動があった場合、マージンの減少や供給不足により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 主要取引先(花王)との関係


花王は仕入・販売両面での主要取引先であり、仕入総額の約4割を占めています。同社ケミカル事業の国内主要代理店としての地位にありますが、花王の販売戦略変更や供給支障が生じた場合、同グループの事業基盤や業績に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 海外展開のリスク


中国やタイ等のアジア諸国での事業展開において、予期せぬ法規制変更、政治・社会情勢の変動、為替変動等のカントリーリスクが存在します。また、取引先である日系企業の海外展開に十分対応できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。