アイドママーケティングコミュニケーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイドママーケティングコミュニケーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のアイドママーケティングコミュニケーションは、流通小売業向けの統合型販促支援を主力とします。2025年3月期は、物価高騰による販促調整等の影響で減収となりましたが、業務効率化や子会社清算に伴う税効果等により大幅な増益(最終黒字化)を達成しました。


※本記事は、株式会社アイドママーケティングコミュニケーション の有価証券報告書(第46期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイドママーケティングコミュニケーションってどんな会社?


食品スーパーを中心とする流通小売業に対し、企画・デザイン・制作などの販促支援をトータルで行う企業です。

(1) 会社概要


1977年に創業し、1979年に法人化しました。流通小売業向けの折込広告制作から事業を開始し、マーケティング支援へと領域を拡大。2016年にマザーズへ上場し、2017年には東証一部へ市場変更しました。その後、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は194名、単体では180名です。筆頭株主は創業者の蛯谷貴氏が代表を務める株式会社シュリンプバレーで、第2位は創業者で社長の蛯谷貴氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
シュリンプバレー 40.44%
蛯谷 貴 19.68%
日本カストディ銀行(信託E口) 2.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は蛯谷貴氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
蛯谷 貴 代表取締役社長 1977年4月アイドマ創業。1979年4月同社設立代表取締役就任より現職。シュリンプバレー代表取締役を兼任。
岸下 義弘 取締役副社長 元みずほ証券常務執行役員。日本投資環境研究所常務執行役員などを経て、2021年4月同社入社。同年6月より現職。
中川 強 取締役常務 1999年11月同社入社。経営管理部長、取締役を経て、2017年3月より現職。


社外取締役は、長富一勲(長富一勲公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「統合型販促支援事業」を展開しています。

統合型販促支援事業


食品スーパーマーケットをはじめとする流通小売業を主な顧客とし、販売促進に関わる企画・提案・デザイン・制作までをトータルでサポートします。折込広告などの従来型メディアに加え、電子棚札やデジタルサイネージ、アプリを含めたデジタル販促支援を一気通貫で提供する「ARSS(Aidma Retail Support System)」を展開しています。

収益は、クライアントからの販売促進支援委託料として受け取ります。これは、マーケティング分析や企画・デザイン料に加え、折込広告などの成果物の制作部数に応じた金額等で構成されています。運営は主にアイドママーケティングコミュニケーションが行い、子会社のジャム・コミュニケーションズも連携しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は60億円前後で推移していましたが、直近では減少傾向にあります。一方、利益面では変動が見られ、44期には赤字を計上しましたが、46期には経常利益3.8億円、当期利益4.7億円と大きく回復しました。特に46期は子会社清算に伴う税効果等が寄与し、当期利益が大幅に増加しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 61.0億円 61.2億円 59.6億円 58.4億円 55.9億円
経常利益 2.5億円 2.9億円 3.5億円 3.0億円 3.8億円
利益率(%) 4.1% 4.7% 5.9% 5.1% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -4.1億円 0.6億円 -1.3億円 1.6億円 4.7億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益および営業利益は増加しました。原価低減や業務効率化が進んだことで、売上総利益率は22.6%から24.9%へ、営業利益率は5.2%から6.4%へと改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 58.4億円 55.9億円
売上総利益 13.2億円 13.9億円
売上総利益率(%) 22.6% 24.9%
営業利益 3.0億円 3.6億円
営業利益率(%) 5.2% 6.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料が3.7億円(構成比36%)、役員報酬が1.4億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは単一セグメントですが、販売実績においては主要顧客であるバローやライフコーポレーションへの売上が全体の一定割合を占めています。物価高騰による販促活動の調整やメディアの多様化等の影響を受け、主力の統合型販促支援事業の売上高は前期比で減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
統合型販促支援 58.4億円 55.9億円
連結(合計) 58.4億円 55.9億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3.0億円 2.3億円
投資CF -0.6億円 -1.4億円
財務CF -1.9億円 -0.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.1%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も72.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは、国際社会の中で社員一人一人の自己の成長と企業の安定、発展をはかり感謝と誠意をもって顧客へサービスを提供し社会に貢献しつづける。」を経営理念として掲げています。顧客や社会への貢献を通じて企業の発展を目指す姿勢を示しています。

(2) 企業文化


商品、店舗、消費者に関するあらゆるデータとクリエイティブを基に、統合型販促支援サービスを展開しています。クライアントの課題に対し、新たな時代の販売促進を実現するコンサルティングファームとして、常に「新しいバリュー」を提供することを経営の基本方針としています。

(3) 経営計画・目標


持続的な利益成長と事業拡大を目指し、各サービスにおける成長性や効率性の向上に取り組んでいます。特に以下の指標を重要な経営指標として位置づけています。

* 売上高
* 経常利益

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、サービス品質の向上と人材育成による営業力強化、および販促支援サービスの拡充に取り組む方針です。具体的には、マーケティングチームの拡充やインターネット技術を活用した分析の強化による自社サービスのレベルアップ、シナジーのある新領域への投資、多様な人材の確保・育成を重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


さらなる成長のために優秀な人材の確保と育成が不可欠であると認識しています。人材の多様性を重視したうえで、新卒・中途採用の強化を行い、継続的な人材育成を図る方針です。また、ESG経営の観点からも、多様な人材の活躍推進を重要課題と位置づけています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.4歳 9.8年 3,953,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 30.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性労働者の割合(72.8%)、男女の平均継続勤務年数の差異(正規雇用労働者:男性10.7年、女性8.8年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 流通小売業界への依存


同社グループの事業は国内の流通小売業界に依存しており、経済環境や個人消費の動向、顧客企業の景況感の影響を受けやすい傾向にあります。取引先数の減少や販促費の抑制が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定取引先への依存


バローに対する売上高の割合が2割を超えており、特定の取引先への依存度が高い状態にあります。同社とは安定的な関係にありますが、取引関係の変化や先方の販促政策の変更等が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 組織体制と人材確保


代表取締役の蛯谷貴氏は創業者であり、経営全般において重要な役割を果たしています。同氏への過度な依存からの脱却を進めていますが、業務執行が困難になった場合の影響は否定できません。また、事業拡大に必要な優秀な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、事業展開に支障が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。