※本記事は、冨士ダイス株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
同社グループは、超硬合金を用いた耐摩耗工具及びその素材である超硬合金チップの製造販売を主たる事業としています。創業以来、工具・金型に対する高精度化、長寿命化のニーズに応え、実績を重ねてきました。
単体従業員数は845名、連結従業員数は1,078名です。同社グループは耐摩耗工具関連事業の単一セグメントです。
主な国内グループ会社は、新和ダイス(耐摩耗工具等の製造)、冨士シャフト(引抜鋼管の製造販売)などです。
国内連結子会社は、新和ダイス(耐摩耗工具等の製造)、冨士シャフト(引抜鋼管の製造販売)などです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
冨士ダイスは、耐摩耗工具関連事業を主軸とする企業として、社員一人ひとりの幸せを尊重する企業理念を掲げています。事業を通じて社会に貢献するとともに、多様性を尊重し、柔軟な働き方を推進する職場環境の構築を目指していることがうかがえます。このような方針は、長期的なキャリア形成を考える上で重要な要素となるでしょう。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高めであることから、長期的なキャリア形成を支援し、人材の定着を重視する傾向があると考えられます。安定した環境で専門性を深めたいと考える方にとって、魅力的な職場環境である可能性があります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,705,659円 |
| 平均勤続年数 | 21.9年 |
| 平均年齢 | 44.8歳 |
| 単体従業員数 | 845人 |
| 連結従業員数 | 1,078人 |
| 単体のグループ内比率 | 78.4% |
同社グループは、従業員の退職給付制度として確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の両方を採用しています。適用範囲は国内グループ会社です。
なお、退職一時金の有無や支給条件、従業員ごとの会社拠出額などは、有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
当連結会計年度末の退職給付債務は13.2億円です。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、「人の成長が企業の成長の源泉である」という考えのもと、「社員一人ひとりの幸せを尊重し、事業を通じて広く社会に貢献する」ことを企業理念としています。一人ひとりの「やってみよう」を応援し、個性を企業の成長につなげることを目指しています。
経営戦略に連動した中長期的な人財の確保・育成・制度整備を推進しています。具体的には、生産性や働きがいの向上につながる柔軟な働き方や職場環境の構築、多様性を尊重し、国籍・性別・年齢などに関わらず活躍できる企業を目指す方針です。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 5.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 70.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 73.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 84.2% |
多様性・登用
提出会社単体の任意開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性採用比率 | 20.0% |
健康・安全
提出会社単体の任意開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| ストレスチェック高受検率 | 98.9% |
| 労働災害発生件数 | 9件 |
人材育成・エンゲージメント
提出会社単体の任意開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 人権教育の実施 | 5件 |
| スキルアップ・自立型人材育成研修等の実施 | 25,114時間 |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
冨士ダイスは、超硬合金を用いた耐摩耗工具とその素材である超硬合金チップの製造販売を主たる事業としています。高精度化や長寿命化といった顧客のニーズに応え、幅広い産業分野に製品を提供しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、超硬合金を用いた耐摩耗工具の専門メーカーとして事業を展開しています。タングステンカーバイドなどの硬質金属炭化物と鉄系金属を粉末冶金法で焼き固めて作る超硬合金を基盤としています。この超硬合金は、鋼よりも硬く変形しにくい特性を持ち、精密加工を施して工具や金型として利用されます。
製品は主に「超硬製工具類」「超硬製金型類」「その他の超硬製品」に分類され、輸送用機械、鉄鋼、非鉄金属、飲料缶、電機・電子部品、生産・業務用機械など多岐にわたる分野で活用されています。また、超硬合金の精密加工で培った技術を活かし、鋼やセラミックスなどの超硬合金以外の素材を用いた耐摩耗工具等の製造販売も行っています。
同社グループの収益モデルは、顧客ごとのカスタムメイド製品が中心です。顧客の設計思想や生産プロセスが色濃く反映されるため、多品種少量生産に対応できる営業、生産、研究開発の一貫体制を構築しています。営業拠点は国内に加えてアジアの複数国に展開しており、海外での事業拡大にも注力しています。
直近の売上高は、超硬製工具類、超硬製金型類、その他の超硬製品がいずれも前期から増加しました。特にその他の超硬製品は大きく伸び、超硬製金型類も堅調に推移しています。一方で、超硬以外の製品は前期から減少しています。地域別では日本が最大の売上高を占め、アジアがこれに続いています。
同社グループは、中期経営計画において経営基盤の強化、生産性向上・業務効率化、海外事業の飛躍、脱炭素・循環型社会への貢献、新規事業の確立といった施策に取り組んでいます。特に、超硬合金の主原料であるタングステンの供給不安定化リスクに対し、リサイクル事業の推進や代替原材料の研究、価格改定などの対応を進めています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高は概ね横ばいから微増の傾向にあります。直近の当期は前期から増加となりました。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は、期間中に変動が見られますが、当期は前期から大きく増加しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 169億円 | 172億円 | 167億円 | 166億円 | 174億円 |
| 経常利益 | 12.0億円 | 12.2億円 | 8.8億円 | 6.0億円 | 8.8億円 |
| 経常利益率 | 7.1% | 7.1% | 5.3% | 3.6% | 5.1% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 7.9億円 | 12.9億円 | 7.1億円 | 4.3億円 | 5.7億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 39.93 | 65.19 | 35.72 | 21.42 | 29.03 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、前期から当期にかけて増加しています。また、従業員1人あたりの営業利益も前期から当期にかけて増加しており、生産性の向上がうかがえる状況です。これらの指標の改善は、同社グループが推進する生産性向上や業務効率化の取り組みが成果を上げていることを示唆しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 15.2百万円 | 16.2百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 0.4百万円 | 0.8百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
冨士ダイスは、強固な財務基盤と安定したキャッシュフローを維持しており、事業活動で得た資金を将来への投資に回しながらも、手元資金を確保している状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループは高い自己資本比率を維持しており、強固な財務基盤を示しています。手元資金も十分に確保されており、不測の事態にも対応できる体制が整っていると考えられます。一方で、ROE(自己資本利益率)はプライム市場の平均と比較して低い水準となっています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 207億円 | 204億円 |
| 自己資本比率 | 81.0% | 79.6% |
| ROE(自己資本利益率) | 2.1% | 2.8% |
| 現金及び預金 | 69.5億円 | 71.3億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上などにより、当連結会計年度において11.6億円の収入となりました。前期の18.0億円と比較すると減少しています。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や定期預金への預け入れによる支出があったものの、定期預金の払い戻しによる収入もあり、当連結会計年度は△7.2億円の支出となりました。前期の△8.5億円と比較すると支出額は減少しています。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いや自己株式の取得による支出があり、当連結会計年度は△11.3億円の支出となりました。前期の△6.6億円と比較すると支出額が増加しています。
これらの結果、フリー・キャッシュ・フローは当連結会計年度において4.4億円の収入となりました。本業で安定的に資金を生み出し、投資活動も行いながら、自由に使える資金を確保している状況がうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 18.0億円 | 11.6億円 |
| 投資CF | △8.5億円 | △7.2億円 |
| 財務CF | △6.6億円 | △11.3億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 9.5億円 | 4.4億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、米国の通商政策や中東情勢の緊迫化、日中関係の緊張による資源輸出規制の動向など、先行き不透明な状況が続いていると認識しています。特に、超硬合金の主原料であるタングステンの対日供給が中国政府による輸出規制強化の影響で極めて不安定な状況となっており、原料調達リスクへの対応が今後の収益確保において重要な施策であると考えています。
③ 人材・組織に関するリスク
人材・組織に関するリスクの記載はありません。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
冨士ダイスは、「社員一人ひとりの幸せを尊重し、事業を通じて広く社会に貢献する」ことを企業理念に掲げています。
持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指し、変化に対応できる企業体質への転換を進めている会社です。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「社員一人ひとりの幸せを尊重し、事業を通じて広く社会に貢献する」ことを企業理念としています。
広く産業とくらしを支え、社会に貢献できる人、そして自分を必要としてくれる社会に対して感謝の気持ちを持つことができる人を育てることを目指しています。
真に人間が働く喜びを味わえる企業経営を行うことを、経営の基本方針としています。
中期的には「変化に対応できる企業体質への転換」を方針に掲げています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、サステナビリティ基本方針において、行動指針として「誠実」「好奇心」「スピード」「挑戦」「一体感」を礎としています。
企業理念である「社員一人ひとりの幸せ」を尊重すべく、生産性や働きがい向上につながる柔軟な働き方や職場環境を築くことを目指しています。
多様性を尊重し、国籍・性別・年齢などの区別なく活躍できる企業を目指す方針です。
人の成長が企業の成長の源泉であるという考えのもと、一人ひとりの「やってみよう」を応援し、それぞれの個性を企業の成長につなげることを目指しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、「中期経営計画2026」の最終年度として、成長戦略である「経営基盤の強化」「新事業の確立」に取り組んでいます。
経営基盤の強化では、コーポレート・ガバナンス機能の向上やグループ企業理念の見直し、新たなビジョンと行動指針の策定を進めています。
また、DXを活用した営業活動の見える化の推進、全社的なワークフロー導入によるデジタル化、業務効率化などにも取り組んでいます。
原料調達リスクに対応するため、調達先の複線化や超硬リサイクル事業の推進、代替原材料の研究などを積極的に進めています。
新事業の確立に向けては、新事業開発室を立ち上げ、新事業シーズの探索と事業化検討が可能な体制を構築しています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
冨士ダイスは、監査等委員会設置会社として、取締役会による業務執行の監督機能と意思決定の迅速化を図っています。独立社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会を設置し、経営監視機能の強化に努めています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
冨士ダイスの株主構成を見ると、筆頭株主はCHARLES SCHWAB FBO CUSTOMERであり、複数の機関投資家や事業会社、そして冨士ダイス社員持株会が上位に名を連ねています。特定の株主グループが過半数を占める形ではなく、多様な株主によって支えられている資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| CHARLES SCHWAB FBO CUSTOMER(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) | 9.63% |
| CS企画 | 8.99% |
| 冨士ダイス社員持株会 | 7.54% |
| KP | 6.39% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.85% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は13名(男性12名・女性1名)で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は春田善和氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 春田 善和 | 代表取締役社長 | 1987年同社入社後、業務本部で財務・企画部門を歴任。2015年取締役就任後、業務本部長、常務、専務を歴任し、2024年1月より代表取締役社長現職。 |
| 津田 雅宣 | 常務取締役 海外事業本部長 | 1988年同社入社後、生産開発、営業部門を歴任。2020年取締役就任後、営業本部長、海外事業本部長を歴任し、2024年1月より常務取締役海外事業本部長現職。 |
| 篠宮 護 | 取締役技術開発本部長 | 1994年同社入社後、生産開発本部、技術開発本部で開発センター長などを歴任。2020年6月取締役技術開発本部長兼開発センター長兼製品開発部長に就任し、2020年7月より取締役技術開発本部長現職。 |
| 馬渡 和幸 | 取締役品質保証本部長 | 1990年同社入社後、西日本事業部、生産本部で製造所長などを歴任。2021年6月取締役生産本部長に就任し、2025年6月より取締役品質保証本部長現職。 |
| 松岡 恭弘 | 取締役営業本部長 | 1991年同社入社後、九州事業部、生産本部で生産技術部長、製造所長などを歴任。2022年6月取締役生産本部副本部長に就任し、2023年7月より取締役営業本部長現職。 |
| 髙安 真生 | 取締役業務本部長 | 1982年日本電気入社。2017年同社入社後、業務本部人事部長、副本部長などを歴任。2024年6月取締役業務本部長に就任し、2025年7月より取締役業務本部長現職。 |
| 輪竹 暢久 | 取締役生産本部長 | 1994年同社入社後、FUJILLOY (THAILAND)でMANAGING DIRECTORなどを歴任。2025年6月取締役生産本部長兼生産技術部長に就任し、2025年7月より取締役生産本部長現職。 |
社外取締役は、澤井英久氏(新四谷法律事務所代表)、内田伊知郎氏(元トラベルブック常勤監査役)、上田典由氏(元キヤノンファインテックニスカ代表取締役社長)、江口泰志氏(公認会計士江口泰志事務所所長・監査等委員)、中村美智子氏(プラス法律事務所弁護士・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、取締役に対する監査・監督機能の強化と意思決定の迅速化を図っています。独立社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会を設置し、経営監視機能を強化する体制を構築しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
冨士ダイスの役員報酬は、基本報酬、単年度業績連動報酬である賞与、そして譲渡制限付株式の付与による株式報酬で構成されています。社外取締役は独立性を確保するため基本報酬のみが支給されます。業績連動報酬の指標には連結経常利益が採用されており、企業価値向上への貢献意欲を高める仕組みとなっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 7名 | 2.0億円 | 28.7百万円 |
| 監査等委員(社外除く) | 1名 | 9百万円 | 9.0百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 3百万円 | 3.0百万円 |
| 社外取締役(監査等委員を除く) | 4名 | 22百万円 | 5.5百万円 |
| 社外監査役 | 2名 | 3百万円 | 1.5百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
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