Ubicomホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Ubicomホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する同社グループは、医療機関向けシステム開発を行うメディカル事業と、国内外でのシステム開発を行うテクノロジーコンサルティング事業を展開しています。2025年3月期は、主力事業が好調に推移し、売上高63億円、経常利益13億円の増収増益を達成しました。


#記事タイトル:Ubicomホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社Ubicomホールディングス の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Ubicomホールディングスってどんな会社?


同社は、医療領域の自社パッケージソフト開発と、フィリピン拠点を活用したグローバルなシステム開発支援を行うIT企業です。

(1) 会社概要


同社は2005年に株式会社AWSとして設立され、翌2006年にフィリピンの開発拠点を子会社化しました。2012年には医療情報システムのエーアイエスを子会社化し、現在の事業基盤を確立しました。2016年に東証マザーズへ上場し、2017年には東証一部へ市場変更を果たしました。その後、2017年に現社名へ変更し、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は977名、単体では50名です。筆頭株主は代表取締役社長の青木正之氏で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。第3位には従業員持株会等の常任代理人名義が見られます。

氏名 持株比率
青木 正之 39.65%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 12.04%
小西 彰(常任代理人 株式会社Ubicomホールディングス) 5.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は青木正之氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
青木 正之 代表取締役社長 1985年ルモンデグルメ入社。ワールドグループを経て2005年WCL社長。同年同社代表取締役会長。2013年より現職。
北岡 明哲 取締役コーポレート本部長兼経営企画部長兼広報IR部長兼メディカル事業本部長 2001年富士ソフト入社。2008年同社入社。戦略企画本部長、執行役員等を経て2024年7月より現職。


社外取締役は、橋谷義典(元ソニーグループ執行役員)、伊藤俊幸(金沢工業大学大学院教授)、齊藤裕子(元ユニゾホールディングス常務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディカル事業」および「テクノロジーコンサルティング事業」を展開しています。

(1) メディカル事業


医療機関の経営課題解決や医療DX推進のため、レセプト点検ソフト「MightyChecker」やオーダリングチェックソフト「Mighty QUBE」等の開発・販売を行っています。また、医療データ分析や保険業界向けソリューションも提供しており、主な顧客は病院等の医療機関や生命保険会社です。

収益は、主に医療機関や保険会社等からのソフトウェア利用料(サブスクリプション形式含む)やライセンス料、コンサルティング料等から得ています。運営は主に子会社の株式会社エーアイエスが行っています。

(2) テクノロジーコンサルティング事業


日本およびフィリピン、中国を拠点に、金融、医療、自動車、製造業等の幅広い業界向けにITソリューションサービスを提供しています。オフショア開発のノウハウを活かし、エンタープライズ領域の業務アプリケーション開発や、AI、テスト自動化等の先端技術を活用した開発支援を行っています。

収益は、顧客企業からのシステム開発委託費やエンジニア派遣料等から得ています。運営は主にAdvanced World Systems, Inc.、Advanced World Solutions, Inc.(フィリピン子会社)および北京愛維森科技有限公司(中国子会社)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、成長が続いています。利益面でも、経常利益は高い水準を維持しており、2025年3月期には過去最高益を更新しました。利益率も20%前後と高い収益性を確保しており、安定した成長軌道にあることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 42億円 47億円 52億円 59億円 63億円
経常利益 9億円 11億円 10億円 9億円 13億円
利益率(%) 20.9% 22.3% 19.1% 15.7% 21.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 4億円 2億円 3億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は30%台後半から40%近くまで向上しており、収益性が高まっています。営業利益率も改善傾向にあり、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 59億円 63億円
売上総利益 22億円 25億円
売上総利益率(%) 37.8% 39.6%
営業利益 11億円 13億円
営業利益率(%) 18.0% 20.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.0億円(構成比25%)、業務委託費が1.5億円(同13%)を占めています。売上原価においては、人件費等の労務費や外注費が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


テクノロジーコンサルティング事業は堅調な増収増益を達成し、全社売上の約7割を占める主力事業として成長しています。メディカル事業も増収増益となり、特に利益率が極めて高く、全社利益への貢献度が大きいことが特徴です。両事業ともに好調を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
テクノロジーコンサルティング事業 43億円 46億円 4億円 6億円 12.2%
メディカル事業 16億円 17億円 10億円 11億円 65.5%
その他 0.0億円 - 0.0億円 - -
調整額 -0.4億円 -0.4億円 -4億円 -4億円 -
連結(合計) 59億円 63億円 11億円 13億円 20.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で獲得したキャッシュに加え、資産売却や投資回収によって投資CFもプラスとなっており、借入返済を進めつつ財務基盤を強化している「改善型」の状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7億円 9億円
投資CF -3億円 0.2億円
財務CF -2億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Unique beyond comparison(唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーであり続ける)」「Go Global(グローバル展開)」「Win-Win(ステークホルダーとの相互発展)」を経営理念として掲げています。時代の先を見据え、社会課題解決に資するITソリューションの創造を目指しています。

(2) 企業文化


「3A」(Automation、Analytics、AI)をコア技術とし、これらを進化・発展させた次世代型ソリューションの展開を重視しています。また、グローバル視点での思考や、ニッチ市場でのNo.1ポジションの構築、他社に先駆けたマーケット創造を志向する企業風土を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は長期的な成長を目指し、収益基盤の強化に取り組んでいます。具体的な数値目標としては、継続的な「最高益達成」を掲げています。また、メディカル事業における新規プラットフォームビジネスの創出や、テクノロジーコンサルティング事業での高収益モデルへの転換などを推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


メディカル事業では、既存の「Mighty」シリーズの安定拡大に加え、データ分析や保険業界向けプラットフォーム等の新規事業により、新たなサブスク型収益源の確立を目指します。テクノロジーコンサルティング事業では、フィリピン拠点を中核とした高度IT人材の育成や、AI等の先端技術領域への注力により、高付加価値案件の獲得を進めます。

また、全社的な取り組みとして、知財を活用した新規事業育成や、M&Aを含む戦略的提携による「Win-Winインベストメントモデル」を推進し、企業価値向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


テクノロジーコンサルティング事業においては、フィリピンの自社研修センター「ACTION」を活用し、高度な技術力と日本語能力を兼ね備えたトップエンジニアの育成に注力しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備として、定年後の再雇用制度や在宅勤務制度を導入し、ワークライフバランスの向上や多様性の確保を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 49.9歳 6.0年 6,748,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.4%
男女賃金差異(全労働者) 34.0%


※男性育児休業取得率については、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向による影響


日本、フィリピン、中国、米国等で事業を展開しており、取引先もグローバルに活動しています。そのため、事業拠点や取引先地域の経済環境、社会環境の変化、景気動向の影響を受け、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) メディカル事業に係るリスク


クラウドサービスにおいて重要な個人情報を取り扱っているため、システム障害や情報漏洩が発生した場合、信用低下や損害賠償等により業績に影響する可能性があります。また、特定製品への依存度が高く、販売中止や他社製品への乗り換え等の影響を受けるリスクや、診療報酬改定による顧客の設備投資縮小リスクがあります。

(3) テクノロジーコンサルティング事業に係るリスク


システム開発プロジェクトにおいて、仕様変更やトラブルにより見積もりを超過した費用負担が発生し、採算性が悪化するリスクがあります。また、海外での事業展開に伴う法規制変更、政治経済情勢の変化、為替変動、自然災害等のリスクに加え、競争激化による価格競争や技術革新への対応遅れ等が業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。