※本記事は、株式会社Ubicomホールディングスの有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Ubicomホールディングスってどんな会社?
Ubicomホールディングスは、医療情報システムの開発やグローバルなITソリューションを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2005年に設立され、2007年にBPO事業を承継しました。2012年にエーアイエスを子会社化してメディカル事業へ参入し、2016年にマザーズ市場へ上場しました。2017年に現在のUbicomホールディングスへ社名変更を行い、近年は医療システム関連の販売代理店の買収などM&Aを積極的に推進しています。
現在の従業員数は連結で992名、単体で55名となっています。筆頭株主は代表取締役社長である青木正之氏で、第2位は光通信KK投資事業有限責任組合無限責任組合員光通信、第3位は小西彰氏が名を連ねており、創業者が高い持株比率を維持する体制となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 青木 正之 | 39.65% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合無限責任組合員光通信 | 7.04% |
| 小西 彰(常任代理人 Ubicomホールディングス) | 5.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は青木正之氏が務めており、社外取締役比率は37.5%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青木 正之 | 代表取締役社長 | ワールドクリエイティブラボ代表取締役社長などを経て、2005年同社代表取締役会長。2013年より現職。 |
| 北岡 明哲 | 取締役コーポレート本部長兼経営企画部長兼メディカル事業本部長 | 富士ソフトなどを経て、2008年同社入社。エーアイエス取締役副社長等を歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、橋谷義典(元ソニーコーポレートサービス代表取締役執行役員社長)、露口泰介(元日本医師会ORCA管理機構代表取締役社長)、堀川なつ美(元グーグル合同会社戦略代理店マネージャー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「テクノロジーコンサルティング事業」および「メディカル事業」を展開しています。
■(1) テクノロジーコンサルティング事業
日本やフィリピンを主要拠点とし、医療、金融、自動車、製造等の幅広い産業領域に向けて高度なITソリューションやシステム開発支援、ソフトウェアテストの自動化、AI活用などを提供しています。特にAI駆動開発体制への移行を進めています。
収益源は、顧客企業からのシステム受託開発における請負代金や、エンジニアの人材派遣、準委任契約によるシステム開発支援の役務提供による利用料です。運営は同社のほか、Advanced World SystemsやAdvanced World Solutionsなどのフィリピン子会社が担っています。
■(2) メディカル事業
病院等の医療機関向けに、医療情報システムのソフトウェア開発・販売、データ分析、コンサルティングを提供しています。主力のレセプト点検ソフトなどで医療機関の経営課題解決やDX化の推進を支援しています。
収益源は、医療機関からのシステム導入費用や、クラウドサービスをはじめとするサブスクリプション型の利用料です。運営は中核子会社であるエーアイエスやISM、ラジエンスウエアなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は第20期まで順調に拡大していましたが、直近の第21期は減収となりました。利益面については一時的な減少局面があったものの、第20期以降は経常利益率21%台という高水準を維持しており、安定した収益力を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 47.3億円 | 52.5億円 | 59.4億円 | 63.4億円 | 59.9億円 |
| 経常利益 | 10.6億円 | 10.0億円 | 9.4億円 | 13.4億円 | 12.9億円 |
| 利益率(%) | 22.3% | 19.1% | 15.7% | 21.2% | 21.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.8億円 | 1.8億円 | 3.4億円 | 10.6億円 | 8.9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期では売上高が減少した一方で、売上総利益は微増しており、売上総利益率は約42%へと改善しています。営業利益率も21%台後半に上昇しており、高付加価値化に向けた構造転換が進展しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 63.4億円 | 59.9億円 |
| 売上総利益 | 25.1億円 | 25.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.6% | 42.2% |
| 営業利益 | 13.2億円 | 13.0億円 |
| 営業利益率(%) | 20.8% | 21.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.3億円(構成比27%)、役員報酬が1.2億円(同9%)、業務委託費が1.0億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
メディカル事業はサブスクリプションモデルの拡大やM&Aの寄与等により増収増益を達成しました。一方、テクノロジーコンサルティング事業はAI人材育成を見据えた戦略的な受注抑制を実施したため、減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| テクノロジーコンサルティング事業 | 46.2億円 | 40.4億円 | 5.6億円 | 4.3億円 | 10.7% |
| メディカル事業 | 17.2億円 | 19.5億円 | 11.3億円 | 12.3億円 | 62.9% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -3.7億円 | -3.5億円 | -% |
| 連結(合計) | 63.4億円 | 59.9億円 | 13.2億円 | 13.0億円 | 21.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9.3億円 | 9.8億円 |
| 投資CF | 0.2億円 | -0.6億円 |
| 財務CF | -1.3億円 | -6.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.5%となっており、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「Unique beyond comparison」「Go Global」「Win-Win」の3つを掲げています。社会課題の解決に資するITソリューションを創造する唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーであり続け、ビジネススキームを米国やアジアを中心にグローバル展開し、すべてのステークホルダーとの相互発展を目指しています。
■(2) 企業文化
常に他社に先駆けてマーケットを創造し、新たに創出したニッチマーケットにおいてNo.1の地位を築くことを目指す文化を持っています。グループ各社の特性を最大限に活かしつつ、世界目線で思考し続ける姿勢を重視し、独自のビジネスモデルを確立しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な成長に向けて、メディカル事業の収益性最大化を図るための戦略的なM&Aを推進しています。具体的な目標として以下を掲げています。
* 2025年~2030年にかけて、累計8~10社のM&Aを実施
■(4) 成長戦略と重点施策
メディカル事業では、既存のストック型ビジネスの安定的な拡大に加え、新規プラットフォームビジネスの創出やM&Aを通じた直販モデルの強化を推進し、新たなサブスク型の収益源確立を目指します。テクノロジーコンサルティング事業では、AI駆動開発体制の構築に向けて基盤整備を進め、若く優秀なバイリンガルITエンジニアの確保や育成に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
AI領域等に対応可能なエンジニアを育成するため、フィリピンの自社研修センターにおいて実践的な教育プログラムを実施し、高度な技術と日本語能力を備えた人材を輩出しています。また、定年後の再雇用制度や在宅勤務制度を導入することで、多様な人材がライフステージに合わせて柔軟に活躍できる環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 50.7歳 | 6.0年 | 6,512,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.4% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | -% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | -% |
※同社は公表義務の対象事業者ではありませんが、ESGの観点から一部の指標を自主的に開示しています。そのため、法定開示外の項目については記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、株式会社エーアイエスの女性管理職比率(14.29%)、Advanced World Systems等の女性管理職比率(37.84%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報システムの障害とセキュリティリスク
同社グループが提供するクラウドサービスは、患者の個人情報や診療記録を取り扱っています。システムに予期せぬ不具合が生じた場合や、個人情報・機密情報が外部に漏洩した場合には、信用低下や損害賠償責任の負担等が発生し、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の主力製品への依存リスク
メディカル事業におけるレセプト点検ソフト等の主力製品は、連結売上高の大きな割合を占めています。予期せぬ事由によりこれらの製品が販売中止となった場合や、他社製品への乗り換えによって売上高が大幅に減少した場合には、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 診療報酬の改定による影響
現行法上、診療報酬は2年に1度改定されます。この改定によって診療報酬が引き下げられ、販売先である医療機関の経営が圧迫された場合、医療機関の設備投資が縮小するおそれがあり、同社の事業や業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外での事業展開に関するリスク
フィリピン、中国、米国などに事業拠点を置いており、各国の法規制、税制、政治経済情勢、インフラの状況等の影響を受けます。また、IT人材の確保や為替相場の変動、海外拠点間の送金規制の変更などが発生した場合には、事業活動や業績に悪影響が及ぶ可能性があります。



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