フォーライフ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォーライフ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。横浜・川崎・東京城南地区を中心に、狭小3階建の分譲住宅や注文住宅の建築・販売を展開しています。2025年3月期は、主力事業での販売棟数増加等により、売上高は前期比5.6%増、経常利益は同148.4%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、フォーライフ株式会社の有価証券報告書(第26期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フォーライフってどんな会社?


横浜・川崎・東京城南エリアに特化し、「都市型・狭小・低価格」の3階建戸建住宅を提供する不動産会社です。

(1) 会社概要


1996年にフォーライフアンドカンパニー有限会社として設立され、2004年に分譲住宅事業、2008年に注文住宅事業を開始しました。2016年に東証マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証グロース市場へ移行しています。地域密着型の事業展開を進めています。

同社(単体)の従業員数は102名です。筆頭株主は社長の奥本健二氏で、第2位は同社の従業員持株会、第3位は個人株主となっています。経営陣と従業員が株式の過半数を保有しており、オーナーシップの強い資本構成です。

氏名 持株比率
奥本 健二 66.01%
フォーライフ従業員持株会 5.66%
嶋田 文吾 1.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は奥本健二氏が務めています。取締役6名のうち2名が社外取締役で、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
奥本 健二 代表取締役社長執行役員 住友不動産販売を経て、1996年に同社を設立し代表取締役に就任。2015年より現職。
中村 仁 専務取締役執行役員住宅営業本部長 2012年に同社入社し常務取締役に就任。住宅営業部長、分譲住宅営業本部長などを歴任し、2022年より現職。
髙橋 効志 取締役執行役員建築本部長施工部長 2006年に同社入社。住宅事業部長、施工部長を経て、2022年より現職。
鈴木 亨 取締役執行役員管理本部経理財務部長 2015年に同社入社。経営管理部長、経理財務部長などを歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、井上悦孝(元銀泉代表取締役兼副社長執行役員)、武井佐代里(元国土交通省住宅生産課長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「分譲住宅事業」「注文住宅事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 分譲住宅事業


横浜市、川崎市、東京城南地区を中心に、「都市型・狭小・低価格」をコンセプトとした新築3階建戸建住宅の企画・開発・販売を行っています。一次取得者層を主要顧客とし、自社で企画から施工管理、アフターメンテナンスまでを一貫して手掛けています。

主な収益は、開発した分譲住宅および宅地の販売代金です。また、建築条件付宅地分譲や宅地のみの更地分譲も行っています。運営は主に同社が行っています。

(2) 注文住宅事業


分譲住宅事業と同様のエリアにおいて、顧客の要望に合わせた新築戸建住宅の建築請負を行っています。「人生の価値を考える住まいの提供」をテーマに、コストバランスを重視した住宅ブランドの構築を目指しています。

主な収益は、顧客からの建築請負工事代金です。自社設計・自社施工管理により中間コストを削減し、規格化・標準化によるコストダウンを図っています。運営は主に同社が行っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、区分所有マンションのリノベーション販売や、既存住宅のリフォーム工事等を行っています。特に京都住宅事業部において、中古マンションの買取再販などを手掛けています。

主な収益は、リノベーション物件の販売代金やリフォーム工事代金です。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は108億円から148億円へと拡大傾向にあります。利益面では、2024年3月期にかけて原材料高騰等の影響で利益率が低下していましたが、2025年3月期には売上拡大と利益率改善により、経常利益が前期比で倍増するなどV字回復を果たしました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 108億円 124億円 141億円 140億円 148億円
経常利益 5.8億円 7.1億円 3.4億円 2.1億円 5.2億円
利益率(%) 5.4% 5.8% 2.4% 1.5% 3.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.8億円 4.8億円 2.4億円 1.5億円 5.5億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に加え、売上総利益率が改善したことで、営業利益が大幅に伸長しました。特に営業利益率は1.9%から4.0%へと向上しており、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 140億円 148億円
売上総利益 14億円 18億円
売上総利益率(%) 9.9% 12.0%
営業利益 2.6億円 5.9億円
営業利益率(%) 1.9% 4.0%


売上原価のうち、土地購入費が65億円(構成比50%)、外注加工費が47億円(同36%)を占めています。販売費及び一般管理費においては、販売手数料が4.4億円(構成比37%)、給料手当及び賞与が1.8億円(同15%)となっています。

(3) セグメント収益


主力の分譲住宅事業は、販売棟数の増加や単価上昇により増収増益となり、全社業績を牽引しました。一方、注文住宅事業は需要低迷の影響を受け、減収減益となりました。その他事業は規模が小さく、損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
分譲住宅事業 113億円 124億円 6.0億円 10億円 8.0%
注文住宅事業 25億円 22億円 1.7億円 1.4億円 6.3%
その他 2.4億円 1.1億円 -0.3億円 -0.2億円 -20.2%
調整額 - - -4.8億円 -5.2億円 -
連結(合計) 140億円 148億円 2.6億円 5.9億円 4.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7.9億円 -7.4億円
投資CF -4.1億円 8.4億円
財務CF -5.9億円 6.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「建物創りを通して、志を持って事業にあたる」ことや、「お客様に、安心と安全を備えた、低価格で高品質な住宅を提供する」ことを経営理念として掲げています。第一次住宅購入層を中心に、高品質で安全性の約束されたスタンダード住宅を提供することをメインテーマとしています。

(2) 企業文化


同社は「時に合わせて柔軟に変化する能力を養いスピーディな営業を目指す」ことや、「社内の協調と協働により一人当たりの生産性において地域においての業界ナンバーワンを目指す」ことを理念として掲げており、変化への対応力とチームワークによる高い生産性を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標として「売上高」「営業利益率」「ROE(自己資本利益率)」を特に重視しています。これらの指標の向上を通じて、高い生産性、効率性、財務健全性の維持を目指しています。

- 売上高:148億円(2025年3月期実績)
- 営業利益率:4.0%(2025年3月期実績)
- ROE:14.8%(2025年3月期実績)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は中長期的な収益力向上のため、「事業エリアの拡充」「事業用地仕入の強化」「原価管理の強化」等を重点施策としています。具体的には、既存営業エリアでの基盤強化に加え、関西圏域での事業展開や、仕入ルートの多元化による適正価格での用地確保、スケールメリットを活かしたコスト低減等を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を最優先すべき資本の一つと位置付け、持続的な成長のために積極的な投資を行っています。具体的には、事業用地の仕入を担当する企画営業職や、建築士・施工技術者の確保を進めるとともに、資格取得支援や報酬制度の充実を通じてエンゲージメント強化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.1歳 5.1年 8,343,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.4%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 71.1%
男女賃金差異(正規) 72.4%
男女賃金差異(非正規) 39.0%


※男性労働者の育児休業取得率について、当事業年度は対象者がいないため「-」としています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、5年超在籍者比率(48%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢の変動によるリスク


不動産・住宅業界は景気、金利、税制の影響を受けやすく、事業用地の仕入価格や建築費の変動、在庫過多等が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は原価管理の強化や工期短縮、完成在庫期間の短縮化等により、品質維持と収益確保に努めています。また、消費税率引き上げ時の反動減リスクに対しては、需要の高い地域への注力等でリスク低減を図っています。

(2) 競合リスク


主力事業を展開する東京神奈川圏は参入障壁が低く競争が激しいため、競合状況により用地仕入計画や販売価格に影響が出る可能性があります。同社は狭小物件へのノウハウ蓄積による差別化や、既存店舗の拡充、仕入ルートの多元化、関西エリア等での事業展開により競争力の維持とリスク分散を図っています。

(3) 建築工事に関するリスク


建築工事は協力会社に発注していますが、工事量の増加や職人不足等により適切な業者を確保できない場合や、施工トラブルが発生した場合は業績に影響する可能性があります。同社は品質維持を最優先とし、品質が維持できない場合は取扱物件数を抑制し、営業地域も拡大しない方針をとっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。