MS-Japan 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MS-Japan 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MS-Japanは東京証券取引所プライム市場に上場し、管理部門・士業に特化した人材紹介事業を主力に、ビジネスメディアや海外人材事業を展開しています。業績トレンドとしては、堅調な人材需要や各サービスの連携によるシナジーにより増収を達成し、当期純利益も安定した水準を維持して推移しています。


※本記事は、株式会社MS-Japan の有価証券報告書(第36期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. MS-Japanってどんな会社?


管理部門職種や専門的な士業に特化した人材紹介を中心に、関連メディア事業も幅広く展開する専門型人材サービス企業です。

(1) 会社概要


同社は1990年に設立され、1995年より現在の主力である管理部門特化型の人材紹介事業を開始しました。2016年に東証マザーズへ上場し、翌2017年には東証第一部へ市場変更を果たしています。近年は2022年の総合転職サービス開始による国内基盤の強化に加え、2024年にオーストラリアの人材会社を連結子会社化し、海外市場への展開も進めています。

同社グループの従業員数は連結で251名、単体で210名となっています。筆頭株主は創業者の資産管理会社であるT&Aホールディングスで、第2位は創業者の有本隆浩氏、第3位は信託業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
T&Aホールディングス 34.89%
有本 隆浩 21.10%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 3.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役会長 CEOは有本隆浩氏が務めています。社外取締役の比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
有本 隆浩 代表取締役会長 CEO 1985年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。1990年同社設立、代表取締役就任。2023年代表取締役会長兼社長 CEOを経て、2025年より現職。
藤江 眞之 取締役社長 COO 2006年同社入社。経営管理室長、経営管理本部長、メディア事業部長などを歴任。2023年常務取締役 COOを経て、2025年より現職。
山本 拓 取締役副社長 CFO 2010年あずさ監査法人入所。2013年同社入社。経営管理部長などを歴任。2023年常務取締役 CFOを経て、2025年より現職。


社外取締役は、西田穣(元オープンアップグループ会長兼社長CEO)、和田育子(元フリービット経営企画本部長)、大浦善光(元ジャフコグループ専務)、坂元英峰(マーキュリー総合法律事務所開設)です。

2. 事業内容


同社グループは、国内や海外における「人材紹介関連」などの事業を展開しています。

(1) 人材紹介・DRM事業


管理部門職種(経理・人事・法務等)や士業(弁護士・公認会計士等)に特化した人材紹介、および求職者と採用企業が直接マッチングできるダイレクトリクルーティングサービス「MS Jobs」を提供しています。双方のサービスを統合した「MS Career」を基盤に効率的なマッチングを実現しています。

紹介した求職者の採用が決定し入社した段階で採用企業から成功報酬を受け取るモデルを採用しています。特化型の強みを活かして同社が主体となって自社で集客と紹介を行い、国内の専門的な人材ニーズに対応しています。

(2) メディア事業および海外人材事業


管理部門や士業向けのビジネスメディア「Manegy」等のポータルサイト運営を行っています。また、海外ではオーストラリアにおいて財務・会計領域等に特化した人材紹介・人材派遣事業を幅広く展開しています。

メディア事業は、企業からの広告収益や資料請求等を通じたリード提供の収益を柱としており、同社が運営しています。海外人材事業は、派遣就業や人材紹介に伴う手数料を収益源とし、子会社のFourQuarters Recruitment Pty.Ltd.が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期において、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に数期前にはM&Aなどにより大幅な増収を記録し事業規模を拡大させています。利益面では高い経常利益率を維持しつつ、毎期10億円以上の当期純利益を安定して創出しており、着実な成長と強固な収益基盤を両立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 38億円 43億円 46億円 75億円 76億円
経常利益 15億円 18億円 17億円 17億円 17億円
利益率(%) 41.0% 41.6% 36.4% 22.5% 22.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 12億円 13億円 13億円 13億円

(2) 損益計算書


直近の損益構造を比較すると、堅調な売上成長に伴い売上総利益が増加しています。事業拡大に向けた採用投資等を行いつつも、効果的なコストコントロールによって高い営業利益率を確保しており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 75億円 76億円
売上総利益 59億円 59億円
売上総利益率(%) 79.2% 77.5%
営業利益 16億円 17億円
営業利益率(%) 21.5% 21.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が14億円(構成比32%)、広告宣伝費が7億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は人材事業の単一セグメントですが、サービス別の売上状況をみると、主力の国内人材紹介事業が堅調に推移しているほか、海外人材事業も事業基盤を活かし売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
人材紹介 42億円 43億円
メディア 2億円 2億円
DRM 1億円 1億円
海外人材 29億円 30億円
連結(合計) 75億円 76億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ資金を使って投資や借入金の返済等を順調に行っている健全な状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 15億円 16億円
投資CF -3億円 -6億円
財務CF -16億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も88.1%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「新しい価値創造・融合と調和・個の自主自立」という企業理念のもと、自主自立した個と組織が有機的に融合し調和する社会を実現するため、次代に必要な新しい価値を創造することを経営理念に掲げています。士業と企業の管理部門領域で蓄積したデータベースやネットワークを活用し、人々の課題解決に直結するサービスを提供し続けることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、これまでの常識や成功体験に固執することなく、最新技術と多様な価値観を積極的に取り入れ、激しい市場の変化を成長のチャンスと捉える柔軟な組織風土を重視しています。社員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、変化を恐れずに挑戦し続けるプロフェッショナルとしての行動様式が求められており、対面での協働によるシナジー創出を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、既存の国内人材紹介事業のさらなる成長に加え、海外での事業展開や新規事業創出に伴う投資を確実に回収し、持続的な成長を維持することを重要視しています。各種利益率を高水準で維持し、調整後当期純利益および調整後EPS(1株当たり当期純利益)などの継続的な成長を重要な経営指標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存コア事業のシェア拡大を図るとともに、中長期的な企業価値向上に向けて周辺領域での新規ビジネス創出を推進します。蓄積した行動データや属性データをAI技術などで高度に利活用し、付加価値の向上を図ります。総合転職プラットフォームのマッチング精度の向上や、英語圏を中心とした海外市場でのM&A・業務提携を戦略的に推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業における持続的な成長と新しい価値の創造に向け、社員一人ひとりが能力を発揮し、挑戦し続ける組織づくりを基本方針としています。個人の適性やキャリア志向に応じた成長機会を提供するほか、新卒・中途や性別等の属性に依存しない公平な登用を推進しています。また、リモートワークやフレックスタイム制などを導入し、多様な働き方を支える制度整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 32.4歳 5.4年 5,431,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 84.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材需要の変動と経済状況の影響


同社の事業は国内の経済情勢や雇用情勢に影響を受けます。将来的に景気が停滞し、企業が人材採用を抑制・凍結する場合には求人案件が減少し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、既存コア事業の深耕とともに事業領域の多角化を推進し、経済状況の変動に左右されにくい強固な経営基盤の構築に努めています。

(2) 個人情報等の情報セキュリティリスク


求職者や取引先などの多くの個人情報を保有しており、情報の漏洩や改ざん、不正使用等が生じた場合、損害賠償請求やブランドの毀損により事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、プライバシーマークを取得し、厳格な情報管理規程の運用や定期的なモニタリング、継続的な社員教育を通じたセキュリティ対策を講じています。

(3) 法規制の変更とコンプライアンスリスク


主力の国内人材紹介事業は職業安定法に基づく有料職業紹介事業の許可が必要です。将来的に著しく不利な法改正が実施された場合や、関連法規に関する重大な違反行為があった場合には、業務停止などの影響を受ける可能性があります。リスクマネジメントシステムにより関連法規のリスクを可視化し、適切な予防策の整備と運用を行っています。

(4) 海外事業における地政学・カントリーリスク


オーストラリアで海外人材事業を展開しているため、現地の政治や経済の変化によって資産価値が変動するカントリーリスクや、地政学リスクが存在します。各国の法規制やリスクが複雑化する中、政府関係機関等を通じた情報収集や危機管理体制の整備を進め、グループ全体での内部管理体制の高度化とガバナンス機能の強化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。