MS-Japan 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MS-Japan 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。管理部門・士業に特化した人材紹介事業を主力とします。当連結会計年度は、豪州人材会社の連結子会社化や国内人材紹介の伸長により大幅な増収となりました。一方で、海外子会社の取り込みに伴う費用の増加等により、利益面では経常利益が横ばい、当期純利益は減益となりました。


※本記事は、MS-Japan の有価証券報告書(第35期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

MS-Japan転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. MS-Japanってどんな会社?


管理部門(経理・人事等)と士業(弁護士・会計士等)に特化した人材紹介およびメディア運営を行う企業です。

(1) 会社概要


1990年に大阪で設立され、会計事務所への人材支援や管理部門特化型人材紹介を開始しました。2016年にマザーズへ上場し、翌2017年には東証一部(現プライム市場)へ変更。2022年には総合転職サービス「MS Career」を開始しました。2024年には豪州の人材会社FourQuarters Recruitment Pty.Ltd.を連結子会社化し、グローバル展開を加速させています。

連結従業員数は253名、単体では205名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社であるT&Aホールディングスで、第2位は創業者の有本隆浩氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業家が過半数の株式を保有しており、安定したオーナーシップのもとで経営が行われています。

氏名 持株比率
T&Aホールディングス 34.90%
有本 隆浩 22.03%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 5.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表取締役会長兼社長 CEOは有本隆浩氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
有本 隆浩 代表取締役会長兼社長 CEO 1985年リクルート入社。1990年同社設立し代表取締役就任。2023年より現職。FourQuarters Recruitment Pty.Ltd.取締役も兼任。
藤江 眞之 常務取締役 COO 2006年同社入社。経営管理本部長、メディア事業本部長などを歴任し、2023年より現職。FourQuarters Recruitment Pty.Ltd.取締役も兼任。
山本 拓 常務取締役 CFO 2010年あずさ監査法人入所。2013年同社入社。経営管理部長などを経て2023年より現職。FourQuarters Recruitment Pty.Ltd.取締役も兼任。


社外取締役は、和田育子(フリービット取締役)、大浦善光(元ジャフコ専務取締役)、坂元英峰(弁護士法人マーキューリージェネラル代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「人材紹介」「メディア」「DRM」「海外人材」事業を展開しています。

**人材紹介**
管理部門職種(経理・財務・人事等)と士業(弁護士・公認会計士等)に特化した人材紹介サービス「MS Agent」を提供しています。主に東京・大阪・名古屋・横浜等の都市圏を中心に展開しています。
収益は、紹介した求職者の採用が決定し入社した段階で、採用企業から成功報酬として手数料を受け取ります。運営は同社が行っています。

**メディア**
士業と企業の管理部門向けコミュニケーションプラットフォーム「Manegy(マネジー)」等を運営しています。業務に役立つコンテンツを提供し、日常的な利用を通じて潜在的な求職者の会員化を図っています。
収益は、広告出稿を希望する企業からの広告料や、リード(見込み顧客情報)提供による対価を受け取ります。運営は同社が行っています。

**DRM(ダイレクトリクルーティング)**
求職者が求人に直接応募でき、採用企業が直接スカウトを行えるサービス「MS Jobs」等を提供しています。「MS Agent」と統合された「MS Career」として展開されています。
収益は、採用企業からの利用料や成功報酬等を受け取ります。運営は同社が行っています。

**海外人材**
オーストラリアにおいて、財務・会計、銀行・金融、テクノロジー等に特化した人材紹介・派遣事業を行っています。
収益は、人材紹介手数料や人材派遣による対価を受け取ります。運営は連結子会社のFourQuarters Recruitment Pty.Ltd.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は34億円から75億円へと急拡大しています。特に当期は、海外子会社の新規連結により売上高が前期比約1.6倍に伸長しました。一方、経常利益は16億円前後で安定的に推移していますが、売上規模の拡大に伴い利益率は低下傾向にあります。当期純利益については、10億円台前半で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 34億円 38億円 43億円 46億円 75億円
経常利益 16億円 15億円 18億円 17億円 17億円
利益率(%) 47.9% 41.0% 41.6% 36.4% 22.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 10億円 12億円 13億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の46億円から75億円へと大幅に増加しました。これは主に海外事業の取り込みによるものです。売上総利益も増加しましたが、原価率の上昇により売上総利益率は低下しています。営業利益は16億円台で横ばいとなっており、事業規模拡大に伴う販管費の増加が利益の伸びを抑制した形です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 46億円 75億円
売上総利益 46億円 59億円
売上総利益率(%) 100.0% 79.2%
営業利益 16億円 16億円
営業利益率(%) 35.5% 21.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が13億円(構成比31%)、広告宣伝費が7億円(同16%)を占めています。売上原価については、人材派遣業等の原価が含まれ、売上原価合計の100%を占めています。

(3) セグメント収益


人材紹介事業は堅調に推移し微増収となりました。メディア事業はDX需要の一巡等により減収となっています。DRM事業は増加しました。当期より新たに加わった海外人材事業が29億円の売上を計上し、連結売上の大幅増に寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
人材紹介 41億円 42億円
メディア 3億円 2億円
DRM 1億円 1億円
海外人材 - 29億円
連結(合計) 46億円 75億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資や株主還元、借入返済に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11億円 15億円
投資CF -39億円 -3億円
財務CF -12億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「新しい価値創造・融合と調和・個の自主自立」を企業理念として掲げています。この理念のもと、自主自立した個や組織が有機的に融合し調和する社会の実現を目指し、次代に必要な新しい価値を創造することを経営理念として事業活動を行っています。

(2) 企業文化


同社は、個々の自主自立を重んじるとともに、それらが有機的に融合し調和することを重視しています。特定の領域に専門特化し、蓄積したデータベースやネットワークを活用して、人材関連事業にとどまらず、士業や管理部門領域の人々の課題解決につながるサービスを提供していく方針を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、専門性の高いノウハウを活かしたマッチング機会の提供により社会に新たな価値を創造することを目指しています。重要な経営指標として、売上高、営業利益、EBITA、経常利益、当期純利益、各種利益率、および調整後当期純利益(親会社株主に帰属する当期純利益にのれん償却額を加算したもの)を設定し、これらの継続的な成長を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、総合転職サービス「MS Career」の利便性向上や、メディア「Manegy」の充実と人材サービスとの連携強化を進めています。また、管理部門・士業領域のデータを活用した新規事業の創出や、豪州子会社を基盤としたグローバル展開を推進しています。特に英語圏を中心とした海外市場でのプレゼンス強化を図り、持続的な成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、ミッション・ビジョン・バリューを体現できる人材の育成に取り組んでいます。個々の適性やキャリア志向を踏まえた成長機会を提供し、変化を柔軟に捉えて行動できる人材を求めています。また、フレックスタイム制度や時短勤務、柔軟なリモートワーク制度を導入し、従業員がパフォーマンスを最大限発揮できる環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 31.8歳 5.1年 5,308,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.8%
男女賃金差異(正規) 70.4%
男女賃金差異(非正規) 54.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変動に関するリスク


事業や業績は国内経済情勢の影響を受けます。パンデミックや地政学リスク等により景気が停滞し、企業の採用抑制が起こった場合、求人減少に伴い経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は専門性の高い領域に特化しているため影響は緩やかであるものの、想定を超えた変化が生じた場合には影響を受ける可能性があります。

(2) 情報セキュリティに関するリスク


多数の個人情報を保有しているため、情報漏洩や不正使用が生じた場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜により事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社はプライバシーマークを取得し、管理体制の強化やリスクのモニタリングに努めていますが、リスクを完全に排除することは困難です。

(3) コンプライアンスに関するリスク


主力の人材紹介事業は厚生労働大臣の許可を必要とする許認可事業です。将来的に不利な法改正や、役職員による重大な法令違反が発生した場合、許可の取り消しや業務停止等の処分を受け、事業運営に支障をきたす可能性があります。同社はリスクマネジメントシステムを構築し、コンプライアンス遵守に努めています。

(4) カントリーリスク、地政学リスク


海外子会社の展開に伴い、進出国における政治・経済の変化、法規制、テロや紛争などのカントリーリスクや地政学リスクが存在します。これらが顕在化した場合、現地での事業継続が困難になったり、資産価値が変動したりする可能性があります。同社は情報収集や危機管理体制の整備を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。