森六 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

森六 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の老舗企業で、自動車用樹脂部品の製造を行う樹脂加工製品事業と、化学品全般を取り扱うケミカル事業を展開しています。当期は売上高が前期比で微増となりましたが、中国事業の減損やメキシコ子会社の譲渡に伴う特別損失を計上したことなどにより、当期純利益は赤字に転落しました。


※本記事は、森六株式会社 の有価証券報告書(第110期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 森六ってどんな会社?


1663年創業の歴史を持ち、自動車部品メーカーと化学専門商社の二つの顔を併せ持つグローバル企業です。

(1) 会社概要


1663年に阿波徳島で藍・肥料商として創業し、1916年に森六商店を設立しました。1958年には本田技研工業と共同で二輪車部品の樹脂化に成功し、以降ホンダ向けの自動車部品製造を主力としています。2008年に持株会社体制へ移行し、2017年に東証一部へ上場しました。創業362年を迎えた2025年4月には、グループ再編に伴い商号を森六へ変更し、事業持株会社体制へと移行しています。

連結従業員数は4,360名、単体では71名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行(三井化学の退職給付信託口)で、第2位も信託銀行、第3位は森六従業員持株会となっており、安定的な株主構成です。また、創業家出身者も大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本カストディ銀行(三井住友信託銀行再信託分・三井化学退職給付信託口) 9.57%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.15%
森六従業員持株会 7.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長最高経営責任者は黒瀨直樹氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
黒瀨 直樹 代表取締役社長最高経営責任者 1988年同社入社。北米子会社のEVPや森六テクノロジー執行役員などを経て、2023年常務執行役員。2024年6月より現職。
菊地 耕一 代表取締役副社長最高財務責任者 元カルビー取締役副社長。日本アイ・ビー・エムCFOなどを歴任後、同社に入社。2025年4月より現職。


社外取締役は、柴田幸一郎(弁護士)、平井謙一(元KHネオケム常務取締役)、大塚亮(大塚ポリテック社長)、横手仁美(認定NPO法人セカンドハーベスト・ジャパンCEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「樹脂加工製品事業」および「ケミカル事業」を展開しています。

(1) 樹脂加工製品事業


主に自動車四輪部品(内装樹脂部品、外装樹脂部品等)の開発から生産、販売までを一貫して行っています。軽量化ニーズに対応した大型樹脂部品の製造ノウハウや加飾技術を強みとし、日本、北米、中国、アジアのグローバル拠点で事業を展開しています。

収益は、主に自動車メーカーに対する製品販売により獲得しています。主要な販売先は本田技研工業およびそのグループ会社です。運営は、森六テクノロジーや北米のMoriroku Technology North America Inc.などの国内外の子会社が行っています。

(2) ケミカル事業


基礎化学品から電子材料、コーティング材料、生活材料まで幅広い化学製品を取り扱うほか、高機能多層フィルムの製造なども手掛けています。360年以上の歴史で培った知識とグローバルな販売網を活かし、商社機能とメーカー機能を併せ持っています。

収益は、国内外の顧客に対する化学品・合成樹脂製品の販売や輸出入により獲得しています。運営は、森六ケミカルズを中心に、製造拠点として四国化工や五興化成工業などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は1,400億円台から1,500億円台で推移しており、当期は前期並みの水準を維持しています。一方、利益面では経常利益が減少傾向にあり、当期は大幅な減益となりました。さらに当期は、特別損失の計上により当期純損失となり、赤字に転落しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,555億円 1,288億円 1,420億円 1,456億円 1,462億円
経常利益 56億円 30億円 16億円 62億円 22億円
利益率(%) 3.6% 2.3% 1.1% 4.2% 1.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 50億円 31億円 13億円 -62億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。営業利益も減少しており、収益性が低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,456億円 1,462億円
売上総利益 243億円 236億円
売上総利益率(%) 16.7% 16.1%
営業利益 57億円 41億円
営業利益率(%) 3.9% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が64億円(構成比33%)、運賃保管料が33億円(同17%)、研究開発費が29億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


樹脂加工製品事業は、北米での増産や円安効果により増収となりましたが、中国やアジアでの減産、メキシコ子会社の業績悪化等の影響で減益となりました。ケミカル事業は、自動車向け原材料の販売伸び悩み等により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
樹脂加工製品事業 1,187億円 1,201億円 46億円 34億円 2.9%
ケミカル事業 269億円 261億円 15億円 12億円 4.7%
連結(合計) 1,456億円 1,462億円 57億円 41億円 2.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期は純損失計上のため算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.1%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 148億円 93億円
投資CF -66億円 -38億円
財務CF -72億円 -64億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「森六グループは、未来を先取りする創造力と優れた技術で高い価値を共創し、時を越えて、グローバル社会に貢献します。」を経営理念として掲げています。この理念のもと、時代を先取りする創造力と技術力で価値を生み出し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


創業以来大切にしてきた価値観として、「進取の精神」と「同心協力」を掲げています。時代を先取りして企業価値向上に努めるとともに、チームワークを尊重し理想を追求する姿勢を重視しています。また、行動指針として「法令遵守」「人間尊重」「顧客満足」「社会貢献」を定めています。

(3) 経営計画・目標


2035年長期ビジョン「CREATE THE NEW VALUE」の実現に向けた中間ステップとして、第14次中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)を策定しています。最終年度の目標として以下の数値を掲げています。

* 営業利益伸長率:110%以上(2026年3月期実績比)
* ROE(自己資本利益率):6%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「アジリティ経営で未来を拓く」を基本方針とし、主力事業の利益追求と将来に向けた開発を推進します。具体的には、グローバル市場でのシェア拡大や生産効率化による収益力強化を図るほか、ものづくり技術の強化により独自性の高い製品開発を進めます。また、事業部門間のシナジーによる価値創造や、コーポレート機能と事業戦略の融合による経営基盤の強化にも取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のために、「多様な人材の確保と育成」「人材と組織の活性化」「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」に取り組んでいます。自律的なキャリア形成を支援する教育プログラムや、従業員エンゲージメントを高める職場環境づくりを進めるとともに、性別や国籍等を問わない人材の採用・登用を積極的に推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.3歳 14.9年 7,967,374円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.2%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.8%
男女賃金差異(正規雇用) 73.6%
男女賃金差異(非正規) 47.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場の変化


日本、北米、欧州、アジアなど世界各国で事業を展開しているため、各市場における景気低迷や需要の低下が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、各国の経済状況を随時把握し、本社と海外拠点が一体となって対策を講じています。

(2) 海外活動に伴うリスク


海外市場への積極的な進出に伴い、予期しない法的規制の変更や慣習等に起因する事態が発生するリスクがあります。現地の情報を積極的に収集しグループ内で共有するとともに、社員教育の充実を通じて適切な対応を図っています。

(3) 特定の得意先への依存


樹脂加工製品事業において、本田技研工業およびそのグループ会社への売上依存度が高く、同社の生産・販売動向の影響を強く受けます。独自の技術融合による新規顧客開拓や、他業種への参入等により、事業ポートフォリオの最適化を目指しています。

(4) 原材料等の調達リスク


製品の製造に必要な原材料や部品の一部を特定の取引先に依存しているため、供給寸断等が生産・販売活動に影響を与える可能性があります。国内外の複数拠点からの調達や、同一品質で供給可能なサプライヤーの複数確保など、サプライチェーンの多様化を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。