※本記事は、神戸天然物化学株式会社 の有価証券報告書(第41期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 神戸天然物化学ってどんな会社?
有機化学品の合成技術を核に、医薬品や機能材料の研究開発支援から量産までを一貫して受託する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1985年に神戸市西区で設立され、1993年に市川研究所を開設しました。2018年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いグロース市場へ移行しました。2019年には本社・神戸研究所をポートアイランドへ移転し、近年は出雲工場やバイオリサーチセンターへの設備投資を積極的に進めています。
同社(単体)の従業員数は321名です。大株主については、筆頭株主はKNC興産で、第2位は個人株主、第3位は創業者の宮内仁志氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KNC興産 | 19.56% |
| 広瀬 克利 | 18.41% |
| 宮内 仁志 | 10.74% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は真岡宅哉氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 真岡 宅哉 | 取締役社長(代表取締役)兼管理本部長 | 2000年同社入社。海外営業部長、営業本部長等を経て2023年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。 |
| 宮内 仁志 | 取締役会長 | 1985年同社設立時より取締役。常務、専務を経て2018年代表取締役社長に就任。2023年代表取締役会長を経て2024年より現職。 |
| 閨 正博 | 常務取締役医薬事業管掌 兼 信頼性保証推進部長 | 藤沢薬品工業(現アステラス製薬)を経て2007年同社入社。医薬事業部などで要職を歴任し、2023年常務取締役就任。2025年4月より現職。 |
| 井上 隆一 | 取締役バイオ事業管掌 | 1990年同社入社。本社営業部長、経営企画部長等を歴任。2023年取締役に就任し、2025年4月より現職。 |
| 栗山 康秀 | 取締役 | 石原産業を経て1997年同社入社。総務部長、管理本部長等を歴任。2024年4月より総務管掌兼経理管掌。2025年4月より現職。 |
| 釜坂 公浩 | 取締役機能材料事業部長 | 1996年同社入社。出雲工場長、機能材料第二部長等を歴任。2024年6月取締役に就任し、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、毛利充邦(ナガセケムテックス元社長)、丸山修(住化分析センター元社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「有機化学品の研究・開発・生産ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 機能材料事業
表示材料、半導体製造用化学品、カーボンナノチューブ分散体等の機能性有機材料を取り扱っています。エレクトロニクス分野や産業用部材として使用される化学品の研究開発から量産までを手掛け、主に化学メーカーや電子部品メーカー等が顧客となります。
収益は、顧客からの製品開発・製造受託による対価として得ています。研究・開発ステージでのサンプル供給から量産ステージでの製品販売まで、フェーズに応じたソリューションを提供しています。運営は主に神戸天然物化学が行っています。
■(2) 医薬事業
医薬品の原薬(API)および中間体、治験原薬、研究開発用化合物の製造支援を行っています。低分子医薬品から核酸・ペプチド医薬などの中分子医薬品まで幅広く対応し、製薬会社が主な顧客となります。
収益は、製薬会社等からの受託合成、プロセス開発、製造受託による売上が中心です。開発初期の少量サンプル合成から、治験薬製造、上市後の商用生産までを一貫して支援することで対価を得ています。運営は主に神戸天然物化学が行っています。
■(3) バイオ事業
遺伝子組換え技術等を用いたバイオ医薬品の原薬・中間体や、抗体医薬製造用の助剤などを取り扱っています。バイオテクノロジーを活用した物質生産プロセスを強みとし、製薬会社やバイオベンチャー等が顧客です。
収益は、バイオプロセスによる受託製造や研究開発支援に対する対価です。微生物を用いた発酵生産技術等を活用し、高付加価値な製品やサービスを提供することで売上を得ています。運営は主に神戸天然物化学が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は60億円台から90億円台まで拡大した後、当期は82億円へと減少しました。経常利益も前期の21億円から当期は9.3億円へと半減しています。利益率は10〜25%の高い水準で推移してきましたが、当期は11.4%に低下しました。全体として、成長トレンドから一転して調整局面に入った形となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 60億円 | 74億円 | 86億円 | 92億円 | 82億円 |
| 経常利益 | 6.8億円 | 11.0億円 | 22.0億円 | 20.9億円 | 9.3億円 |
| 利益率(%) | 11.2% | 14.8% | 25.5% | 22.9% | 11.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.0億円 | 6.4億円 | 15.4億円 | 14.9億円 | 7.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高が減少する一方で、売上原価はほぼ横ばいで推移しており、売上総利益率は36.0%から28.4%へ低下しました。販売費及び一般管理費は増加傾向にあり、営業利益率は22.7%から9.4%へと大きく低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 92億円 | 82億円 |
| 売上総利益 | 33億円 | 23億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.0% | 28.4% |
| 営業利益 | 21億円 | 7.7億円 |
| 営業利益率(%) | 22.7% | 9.4% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が4.2億円(構成比27%)、給与及び手当が3.1億円(同20%)を占めています。売上原価においては、経費が30億円(構成比47%)、労務費が21億円(同33%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は、機能材料事業部門が医薬・医療関連材料の堅調な需要により増収となりました。一方、主力である医薬事業部門は既存製品の需要減少により2割超の減収となり、バイオ事業部門も開発ステージ案件の進捗遅れにより減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 機能材料事業部門 | 27億円 | 30億円 |
| 医薬事業部門 | 46億円 | 35億円 |
| バイオ事業部門 | 18億円 | 17億円 |
| 連結(合計) | 92億円 | 82億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 15億円 |
| 投資CF | -24億円 | -33億円 |
| 財務CF | 1.8億円 | 9.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「私たちの目標」を経営理念として掲げています。化学技術によって社会の発展に貢献するとともに、自らも成長して持続的な発展を目指し、ビジネスパートナーとの共存共栄を図り、社会の一員としての責任を果たすことを経営の基本としています。
■(2) 企業文化
顧客とのパートナーシップを重視する文化があります。研究から商業生産まで一貫して支援する中で、単なる受託に留まらず、顧客と密に協力しながら課題解決を行う姿勢を大切にしています。また、環境保全と安全確保を最重要事項と位置づけ、コンプライアンスやリスク管理を徹底する堅実な企業風土を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「ステージアップ・グロース」モデルの推進を掲げています。これは、顧客の製品開発ステージが研究・開発から量産へと進むのに伴い、各段階に応じたソリューションを提供し、顧客とともに成長するモデルです。2025年3月期の数値目標として売上高90億円、経常利益13.8億円を計画していましたが、実績は未達となりました。
■(4) 成長戦略と重点施策
「ステージアップ・グロース」モデルをさらに推し進めるため、量産ステージのビジネス拡大を軸とした成長戦略を描いています。具体的には、生産能力・生産性の引き上げ、営業力の強化、研究開発から事業化への加速などを重点施策としています。また、通年での業績平準化による業績見通しの蓋然性向上にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ステージアップ・グロース」モデルの実現に向け、価値基準・行動指針に重点を置いた人事制度の構築を目指しています。成果(事実)を重視し、能力と役割に見合った処遇を行うことで、従業員のスキルや適性を引き出し、大きな役割へのチャレンジを促す方針です。また、多様性を尊重し、公平な人事制度の運用に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.5歳 | 11.9年 | 6,585,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 83.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 44.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(25.9%)、平均継続勤続年数(男性11.9年、女性10.4年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気、個人消費及び顧客の動向によるリスク
同社は化学品や医薬品メーカーから生産・研究開発を受託していますが、顧客の製品需要は国内外の景気や個人消費の影響を受けます。景気後退や顧客の事情により委託量が減少したり、顧客が生産撤退や倒産に至ったりした場合、同社の経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 顧客、当社の研究開発及び生産計画の進捗に関するリスク
業績は顧客の開発品や生産計画に依存しており、顧客の研究計画の中止・中断リスクは避けられません。また、同社自身の技術開発等が実用化されない可能性もあります。これらの計画が大幅に遅延、変更、中止となった場合、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 研究開発・製造支援事業特有のリスク
研究・開発や商業生産初期の支援業務では、技術的トラブルや収益率低下のリスクがあります。また、顧客から預かる原材料や中間体等の保管・使用中に劣化や破損等が生じ、賠償を求められる可能性もあります。こうした事業特有の事象が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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