プロパティデータバンク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

プロパティデータバンク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。不動産・施設の運用管理クラウド「@property」を提供し、資産管理のDXを支援しています。直近決算は売上高33億円(前期比31.9%増)、経常利益9億円(同114.6%増)と大幅な増収増益を達成しました。顧客基盤を拡大し、プラットフォームサービスの強化を進めています。


※本記事は、プロパティデータバンク株式会社 の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. プロパティデータバンクってどんな会社?


不動産管理クラウド「@property」を主力とするIT企業です。清水建設の社内ベンチャーとして創業しました。

(1) 会社概要


2000年に清水建設の社内事業家制度を活用して設立され、不動産クラウド「@property」の提供を開始しました。2018年に東証マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証グロース市場へ移行しました。2024年にはシステム開発を行うリーボを完全子会社化するなど、事業領域の拡大を進めています。

連結従業員数は82名(単体48名)の組織体制です。筆頭株主は創業母体である総合建設業の清水建設で、第2位は不動産事業やホテル運営を行うケン・コーポレーション、第3位は創業者の板谷敏正氏となっています。

氏名 持株比率
清水建設 24.02%
ケン・コーポレーション 12.51%
板谷敏正 9.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長は板谷敏正氏、代表取締役社長は武野貞久氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
板谷敏正 取締役会長(代表取締役) 1989年清水建設入社。2000年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2022年より現職。プロパティデータテクノス取締役等を兼任。
武野貞久 取締役社長(代表取締役) 1992年清水建設入社。2003年同社入社。SI事業部長、営業本部長、クラウド事業本部長、取締役副社長などを歴任し、2022年より現職。
大田武 常務取締役 1993年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。2006年同社入社。企画管理本部長、営業本部長などを歴任し、2019年より現職。管理部門を管掌。
堀之内はる代 取締役 1990年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年同社入社。ソリューション事業本部長、クラウド事業本部長などを歴任し、2019年より現職。


社外取締役は、窪田達史(清水建設グループ経営戦略室事業管理部長)、山口弘信(元みずほリース常務執行役員)、鏑木耕三(元オリックス銀行常勤監査役)、小田島労(元NTTデータ経営研究所取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「クラウドサービス」「ソリューションサービス」および「その他」事業を展開しています。

(1) クラウドサービス


不動産・施設の運用管理を支援する統合資産ERP「@property」をSaaS形式で提供しています。不動産ファンドや管理会社、一般事業会社などが主な顧客です。機能は「基本情報」「プロパティマネジメント」「ビルマネジメント」「ポートフォリオ分析」などのメニューで構成されています。

収益は、顧客から受け取る登録建物データ数に応じた月額利用料(従量課金)および保守サービス料で構成されるストック型ビジネスモデルです。運営は同社が行っています。

(2) ソリューションサービス


「@property」の導入を支援するサービスです。初期データ登録代行、教育・講習会、顧客固有のニーズに対応するカスタマイズ開発、既存社内システムとの連携機能開発などを提供しています。

収益は、顧客から受け取る初期コンサルティング料やシステム開発費用などで構成されるフロー型ビジネスモデルです。運営は同社が行っています。

(3) その他


連結子会社による周辺事業です。不動産文書のデジタル化・管理サービス、商業店舗売上予測サービス、Web・モバイルアプリの受託開発などを提供しています。

収益は、文書管理料、データ分析料、システム開発受託料などです。運営は主にプロパティデータテクノス、プロパティデータサイエンス、リーボの各子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間において、売上高は25.2億円から33.2億円へと大きく成長しました。経常利益も4.4億円から9.4億円へと倍増しており、利益率は17.4%から28.3%へと大幅に改善しています。クラウドサービスの積み上げに加え、ソリューション案件の大型化や子会社の寄与により、増収増益基調が鮮明です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 25.2億円 33.2億円
経常利益 4.4億円 9.4億円
利益率(%) 17.4% 28.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.0億円 6.3億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益率は56.0%から59.7%へ上昇しました。営業利益率は17.3%から28.2%へと大きく伸長しており、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 25.2億円 33.2億円
売上総利益 14.1億円 19.8億円
売上総利益率(%) 56.0% 59.7%
営業利益 4.3億円 9.4億円
営業利益率(%) 17.3% 28.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.9億円(構成比19%)、役員報酬が1.5億円(同15%)、支払手数料が1.4億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


「@property」を中心とするクラウドサービスが順調に拡大し、売上高は前期比約1.5億円増となりました。ソリューションサービスは大型案件の寄与により前期比約4.4億円増と急伸しています。また、新規サービスの売上も計上され、全体的な成長に貢献しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
クラウドサービス 17億円 18億円
ソリューションサービス 6億円 11億円
プロパティデータテクノス 2億円 2億円
プロパティデータサイエンス 0.2億円 0.3億円
新規サービス - 2億円
連結(合計) 25億円 33億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の範囲内で投資(投資CFマイナス)と配当等の支払い(財務CFマイナス)を行う「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6.7億円 12.8億円
投資CF -5.6億円 -3.6億円
財務CF -1.4億円 -1.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「新しい知識社会の創造」をミッションとし、単なるデータ処理を超えた優れたサービスの提供を目指しています。ビジョンには「知識の集約により顧客の業務に革命を 顧客の資産に価値向上を」を掲げ、顧客業務の深化と効率化を通じて資産価値向上に貢献することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は「挑戦し、自らを変革する中長期志向の経営」を方針の一つとしています。技術革新の中で長期的に成長するため、自らの技術や事業を変革し続ける姿勢を重視しています。また、パイオニアとして「斬新かつ卓越したクラウドサービスの創造」に挑む文化を持ち、顧客業務の深い理解に基づいた工夫を積み重ねています。

(3) 経営計画・目標


同社は2022年度から2026年度までの中期経営計画を推進しており、最終年度にあたる2027年3月期の数値目標を掲げています。

* 売上高:75億円
* 営業利益:17億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「PDB-Platform」構想を掲げ、IaaSからSaaSまでを一気通貫で提供するプラットフォームの強化を進めています。経営コンセプト「原点継承×仕組革新」のもと、クラウドサービスの多機能性を訴求し、顧客基盤を従来の不動産オーナーから製造業や小売業などへ拡大することを目指しています。

* クラウドサービス:ERP提案による案件大型化
* ソリューション事業:案件大型化の継続
* 子会社事業:不動産文書デジタル化、店舗売上予測、受託開発等の拡大

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は2022年度より新人事制度を導入し、「職責」「専門性」「パフォーマンス」の3つの観点から社員を処遇・支援しています。貢献した人が公正に報われる仕組みにより、優秀な人材の確保と育成を目指しています。また、健康経営にも注力しており、「銀の認定」を取得するなど職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.5歳 5.6年 7,507,871円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性労働者の割合(32.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 「@property」事業への依存


同社グループの事業は主力サービス「@property」に大きく依存しており、売上高の大部分を占めています。特定のサービスに収益基盤が集中しているため、競合の出現や市場環境の変化により当該サービスの競争力が低下した場合、業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。同社は新サービスの拡充により収益源の多様化を進めています。

(2) 情報管理と情報漏洩


クラウドサービスを提供する事業特性上、顧客情報や業務上の機密情報を多数取り扱っています。サイバー攻撃や人為的ミスにより情報漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求により、業績に重大な影響を与える可能性があります。同社は国際規格の認証取得や多層防御などの対策を講じています。

(3) システム障害


サービスはインターネット経由で提供されており、通信インフラやデータセンターに依存しています。自然災害や事故によりシステム障害が発生し、サービス停止やデータ消失が起きた場合、利用料の減額や損害賠償により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はデータセンターの3拠点化などバックアップ体制を構築しています。

(4) 人材の確保


事業拡大や競争力維持には、プロジェクトマネージャーやエンジニアなど優秀な専門人材の確保が不可欠です。採用競争の激化などにより計画通りに人材を確保できない場合や、既存社員の流出が進んだ場合、事業展開やサービス品質に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。