ZUU 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ZUU 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ZUUは東京証券取引所グロース市場に上場する、金融特化型メディアの運営や企業の資金調達支援等を行う企業です。フィンテック領域でのプラットフォーム事業とトランザクション事業を主力としています。直近の業績は、売上高が前期比で減収となり、営業利益や経常利益も赤字となる減収減益の厳しい状況となっています。


※本記事は、株式会社ZUUの有価証券報告書(第13期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ZUUってどんな会社?


富裕層向けメディアやクラウドファンディングを通じた投資機会の提供など、金融領域に特化したサービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


2013年に設立され、富裕層向けの金融経済メディア「ZUU online」の提供を開始しました。2018年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2019年以降は金融子会社の設立や買収により事業を拡大しています。直近では2025年に経済界、2026年にグローバルマーケティングを子会社化しました。

同社の従業員数は連結で96名、単体で65名です。大株主の状況としては、筆頭株主が創業者の冨田和成氏で株式の過半数を保有しており、第2位は事業会社であるACNホールディングス、第3位は個人の吉岡裕之氏となっています。

氏名 持株比率
冨田 和成 50.62%
ACNホールディングス 9.00%
吉岡 裕之 7.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役は冨田和成氏が務めています。また、役員のうち5名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
冨田 和成 代表取締役 2006年野村證券入社。2013年同社を設立し代表取締役就任。ZUU Funders代表取締役などを経て、2025年より経済界代表取締役社長。
樋口 拓郎 取締役 2007年リクルート入社。カカクコムを経て2016年同社入社。執行役員を経て2021年取締役就任。2026年よりグローバルマーケティング取締役。


社外取締役は、五味廣文(元金融庁長官)、髙橋正利(元野村バブコックアンドブラウン取締役社長)、髙見由香里(ウィルウィル代表取締役)、駒林素行(元DSBソーシング代表取締役社長)、長南伸明(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「フィンテック・プラットフォーム事業」および「フィンテック・トランザクション事業」を展開しています。

フィンテック・プラットフォーム事業


「ZUU online」などの金融特化型自社メディアを運営し、金融資産3,000万円以上や年収700万円以上の富裕層向けに金融関連情報を提供しています。また、金融機関や不動産企業向けにDX支援としてメディアプラットフォームの構築・運営やマーケティングのコンサルティングも行っています。

顧客企業からの広告料や、プラットフォームの構築・運用支援に伴うコンサルティング報酬などを主な収益源としています。事業の運営は同社のほか、子会社のグローバルマーケティングなどがデジタルマーケティング領域を中心としてサービスを提供しています。

フィンテック・トランザクション事業


中小や中堅企業向けのファンド組成や資金調達支援、クラウドファンディングを通じた投資機会の提供を行っています。また、富裕層向けの資産運用アドバイスや金融商品仲介、さらには独自のPDCAサイクルを用いた業務効率化のためのコンサルティングサービスも展開しています。

資金調達企業からのアドバイザリー報酬や、投資家からの資産運用手数料、クラウドファンディングにおける各種手数料を主な収益源としています。本事業は、ZUU Funders、COOL、ユニコーン、ZUU Wealth Managementなどの金融子会社が主体となって運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は34億円規模から直近では26億円へと縮小傾向にあります。経常利益は2023年3月期から2025年3月期まで黒字を維持していましたが、直近の2026年3月期は減収の影響などで赤字に転落しています。最終損益についても複数の期で赤字を計上しており、収益基盤の再構築が急務となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 34億円 34億円 29億円 30億円 26億円
経常利益 -2億円 2億円 1億円 1億円 -1億円
利益率(%) -7.2% 6.2% 4.4% 1.8% -2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 1億円 -2億円 -1億円 -4億円

(2) 損益計算書


直近の損益状況を見ると、売上高の減少に伴って売上総利益も減少しており、売上総利益率は約65%の推移となっています。また、販売費及び一般管理費の負担が重く、直近では営業利益が赤字に転落し、営業利益率もマイナス水準に落ち込んでいます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 30億円 26億円
売上総利益 20億円 17億円
売上総利益率(%) 65.5% 64.8%
営業利益 0.1億円 -3億円
営業利益率(%) 0.5% -13.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比27%)、役員報酬が3億円(同12%)を占めています。また、売上原価は9億円となっており、売上高に対する構成比は35%となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の収益状況を見ると、フィンテック・プラットフォーム事業は送客事業の合弁会社化などの影響で大幅な減収となり、営業赤字に転落しています。一方、フィンテック・トランザクション事業は資金調達支援などが伸びて増収を確保したものの、コスト負担増により赤字幅が拡大しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
フィンテック・プラットフォーム 11億円 6億円 0.4億円 -0.1億円 -1.6%
フィンテック・トランザクション 19億円 20億円 -0.2億円 -3.4億円 -16.5%
連結(合計) 30億円 26億円 0.1億円 -3.5億円 -13.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に営業貸付金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -7億円 -2億円
投資CF -6億円 -51億円
財務CF 21億円 46億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期の純損失計上により算出されていません。また、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.9%となっており、市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「機会格差を解消し、持続的に挑戦できる世界へ」というパーパス(存在意義)を掲げています。また、「挑戦を加速させる資本へのアクセシビリティを自由に解放し、世の中に存在する様々な機会格差を解消する。そして、90億人が自分の夢や人の夢に熱狂し、心から応援し合いながら、ともに挑戦を楽しみ続けている世界を実現する」というビジョンのもと事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、自社のコアバリューとして「鬼速PDCA」を掲げています。これは目標達成に向けたプロセスを高速で回転させる独自の手法であり、顧客の業務効率化支援に活用されるだけでなく、自社の組織運営の基盤としても根付いています。また、AI駆動型組織への変革を最重要テーマに位置づけ、経営トップが率先してAI活用を進めるなど、先進的なテクノロジーを積極的に取り入れています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な成長に向け、フィンテック・トランザクション事業(ファイナンスセグメント)とフィンテック・プラットフォーム事業(グロースセグメント)の二軸での成長を追求しています。ファンド運営や資金調達支援を通じて運用資産残高を持続的に増加させ、管理報酬や成功報酬の積み上げによる収益基盤の強化を目指すとともに、AIを活用した生産性の飛躍的向上を目標に掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は今後の成長戦略として、M&Aを通じたグループ強化と買収後の統合プロセス(PMI)の推進を掲げています。既存リソースとのシナジーを優先し、投資効率を高めながら競争優位性を強化します。また、「全社BtoB営業組織化」を推進し、富裕層データベースを活用したアウトバウンド営業へ転換することで事業拡大を図るとともに、AIエージェントの全社活用により業務自動化を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、BtoBビジネスモデルへの変革を推進するため、営業力の強化とそれを担う人材の確保・育成を最重要課題と位置づけています。新卒採用に加えて若手層の中途採用を強化し、早期に活躍できる営業メンバーの育成プログラムを推進しています。また、年齢や社歴にとらわれない若手社員の積極的な抜擢や女性活躍の推進を図り、多様な人材が挑戦し能力を発揮できる組織づくりに努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.8歳 3.9年 7,225,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 42.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 33.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規採用におけるジェンダー比率の女性比率(40.0%)、新規採用における外国籍人材比率(0.0%)、新規リーダー職以上登用者数(8名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット市場及び同関連市場の変動


同社のプラットフォーム事業はインターネット広告市場の拡大を前提としています。新たな法的規制の導入や技術革新によりメディア運営が困難になる場合や、急激な景気変動によって広告・マーケティング需要が減少した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金融商品取引法などの法的規制の変更


同社グループは、少額電子募集取扱業や金融商品仲介業などの金融ライセンスを保有しています。金融商品取引法などの関連法令が改正され、規制強化が行われた場合には、管理体制の再整備や追加的なコスト負担が発生し、事業展開や業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) 新規事業やサービスの進捗遅延


同社は中長期的な成長に向けて新規事業やサービスの立ち上げを課題と認識しています。法改正や顧客ニーズの変化に合わせて新たなサービスを展開していく中で、計画通りに事業が進捗しなかった場合や想定通りの収益を確保できなかった場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定の人物(代表取締役)への依存


同社の代表取締役である冨田和成氏は、創業以来の豊富な経験や知識を有し、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を担っています。組織体制の強化により過度な依存からの脱却を進めていますが、何らかの理由で同氏が業務を継続できなくなった場合、事業に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。