※本記事は、株式会社ZUU の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ZUUってどんな会社?
金融とテクノロジーを融合したフィンテック領域で、メディア運営や金融仲介、支援サービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
2013年に設立され、同年、富裕層向け金融メディア「ZUU online」をリリースしました。2018年に東京証券取引所マザーズへ上場を果たしています。その後、2019年に株式会社COOL、2020年に株式会社ユニコーンを子会社化し、クラウドファンディング事業等へ領域を拡大しました。2025年には株式会社経済界を子会社化しています。
同グループの連結従業員数は121名、単体では98名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役の冨田和成氏で、第2位は個人株主の吉岡裕之氏、第3位は株式会社ACNホールディングスとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 冨田 和成 | 50.62% |
| 吉岡 裕之 | 7.39% |
| ACNホールディングス | 5.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役は冨田和成氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 冨田 和成 | 代表取締役 | 2006年野村證券入社。2013年同社設立し代表取締役就任。ZUU Funders代表取締役などを兼任し、2025年3月より経済界代表取締役社長も務める。 |
| 樋口 拓郎 | 取締役 | 2007年リクルート入社。カカクコムを経て2016年同社入社。2017年執行役員に就任し、2021年6月より現職。 |
| 永山 忠義 | 取締役 | ウィルソン・ラーニングワールドワイド、誠文堂新光社、Supershipを経て、2016年マネーフォワード入社。2020年同社入社、執行役員を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、五味廣文(元金融庁長官)、髙橋正利(元野村バブコックアンドブラウン社長)、髙見由香里(ウィルウィル代表取締役)、駒林素行(元DSBソーシング社長)です。
2. 事業内容
同グループは、「フィンテック・プラットフォーム事業」および「フィンテック・トランザクション事業」を展開しています。
■フィンテック・プラットフォーム事業
金融資産3,000万円以上等のアッパーマス~富裕層を主なターゲットとした「ZUU online」等の自社メディア運営を行い、金融機関等とユーザーのマッチングを行っています。また、金融や不動産企業向けにメディア・プラットフォームの構築・運営支援やデジタル・マーケティングのコンサルティングを提供しています。
収益は、顧客企業からの広告掲載料や、送客ユーザー数等に応じた成果報酬、メディア構築・運用のコンサルティング報酬等から得ています。運営は主に同社が行っていますが、2025年3月に子会社化した株式会社経済界等も関連しています。
■フィンテック・トランザクション事業
融資型・株式型クラウドファンディング、IFA(金融商品仲介業)、保険代理業などを展開しています。また、同社のコアバリューである「鬼速PDCA」をベースとした組織コンサルティングやPDCA支援システムも提供しています。
収益は、クラウドファンディングの手数料収入、貸付運用による収入、ファンドを通じた資金調達支援や運用支援による手数料、PDCA関連サービスの利用料等から得ています。運営は、株式会社COOL、株式会社ユニコーン、株式会社ZUU IFA、同社などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は30億円前後で推移していますが、利益面では変動が見られます。2022年3月期から2024年3月期にかけて当期純損益は赤字と黒字を行き来していましたが、2025年3月期は親会社株主に帰属する当期純利益が黒字となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 28億円 | 34億円 | 34億円 | 29億円 | 30億円 |
| 経常利益 | 0.1億円 | -2.4億円 | 2.1億円 | 1.3億円 | 0.5億円 |
| 利益率(%) | 0.3% | -7.2% | 6.2% | 4.4% | 1.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3.0億円 | -2.3億円 | 0.9億円 | -0.5億円 | 1.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、営業利益は減少しました。売上原価および販売費・一般管理費が増加傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 29億円 | 30億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 20億円 |
| 売上総利益率(%) | 65.7% | 65.5% |
| 営業利益 | 1.2億円 | 0.1億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比36%)、業務委託費が1.8億円(同9%)を占めています。売上原価においては、具体的な内訳の記載はありませんが、コンテンツ制作費やシステム関連費用が含まれると考えられます。
■(3) セグメント収益
フィンテック・プラットフォーム事業は、検索エンジンのアルゴリズム変更の影響等により減収減益となりました。一方、フィンテック・トランザクション事業は、ファンド組成を中心に金融トランザクションが伸長し、大幅な増収となりましたが、営業損益は赤字となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| フィンテック・プラットフォーム | 17億円 | 11億円 | 1.0億円 | 0.4億円 | 3.2% |
| フィンテック・トランザクション | 12億円 | 19億円 | 0.1億円 | -0.2億円 | -1.1% |
| 連結(合計) | 29億円 | 30億円 | 1.2億円 | 0.1億円 | 0.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の収益である税金等調整前当期純利益はプラスですが、営業CFはマイナスとなっています。これは、匿名組合出資預り金の減少などの要因によるものです。投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、借入や出資受入によって資金調達を行い、投資活動を継続している「勝負型」の状態です。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に匿名組合出資預り金の減少(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.2億円 | -7.4億円 |
| 投資CF | -31億円 | -5.6億円 |
| 財務CF | 33億円 | 21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は13.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「機会格差を解消し、持続的に挑戦できる世界へ」というパーパスを掲げています。ビジョンとして、「挑戦を加速させる資本へのアクセシビリティを自由に解放し、世の中に存在する様々な機会格差を解消する。そして、90億人が自分の夢や人の夢に熱狂し、心から応援し合いながら、ともに挑戦を楽しみ続けている世界を実現する。」としています。
■(2) 企業文化
同社のコアバリューとして「鬼速PDCA」を掲げています。これをベースとした業務効率化・生産性向上のための仕組みを導入・定着させるとともに、顧客に対してもPDCAシステムや組織コンサルティングを提供しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、企業価値を向上させ高い成長を継続させるために、事業規模の拡大とマネタイズの多様化を図る必要があると認識しています。具体的な数値目標としての記載はありませんが、新規事業・サービスの立ち上げを課題とし、クラウドファンディング領域等の新たなサービス展開を随時開始しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
事業基盤であるフィンテック・プラットフォーム事業については、UI/UX向上やアプリの改良、コンテンツの拡充を進め、ユーザー層の拡大を目指します。フィンテック・トランザクション事業では、富裕層・経営者ネットワークの形成や金融商品ラインナップの拡大に取り組みます。また、M&Aやアライアンスも積極的に活用し、事業規模の拡大を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
今後の事業拡大には優秀な人材(人財)の採用と育成が重要であると認識しており、経営理念と企業文化を共有できる人材の採用強化を行っています。また、既存社員の能力・スキル向上のため、各種研修等の人材育成制度を充実させ、企業と人材が共に成長できる体制の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 34.3歳 | 3.1年 | 6,544,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.8% |
| 男性育児休業取得率 | 57.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 51.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規採用における外国籍 人材比率(6.9%)、新規リーダー職以上登用者数(8名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 広告・マーケティング収入への依存
フィンテック・プラットフォーム事業の主要収益は広告・マーケティング収入です。企業のマーケティング活動は景気動向の影響を受けやすく、顧客企業の広告宣伝費が縮小した場合には、同グループの事業及び業績に大きな影響を与える可能性があります。
■(2) 自社メディア訪問者数の伸び悩み
自社メディアへの訪問ユーザー数増加に注力していますが、競合メディアの登場や検索エンジンのアルゴリズム変更等により、ユーザー数が想定通りに増加しない可能性があります。その場合、媒体価値が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) インターネット技術革新への対応
インターネット業界の急速な技術変化やユーザーニーズの変化に対応できず、予期しない技術革新への対応遅れや技術者の確保難が生じた場合、サービスの競争力が低下し、事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 特定人物への依存
代表取締役の冨田和成氏は創業者であり、経営方針や事業戦略の決定等において重要な役割を果たしています。経営体制の整備を進めていますが、同氏が業務を継続困難となった場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。