第四北越フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

第四北越フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する第四北越フィナンシャルグループは、銀行業務を中心にリース、証券、クレジットカード等の幅広い金融サービスを提供する企業です。直近の業績では、国内市場金利の上昇やコンサルティング機能の発揮により、経常収益および当期純利益ともに前期を上回る増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社第四北越フィナンシャルグループの有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 第四北越フィナンシャルグループってどんな会社?


同社グループは、新潟県を地盤とし、銀行、リース、証券などの幅広い金融サービスを展開する企業グループです。

(1) 会社概要


2018年10月に第四銀行と北越銀行が共同で株式移転を行い、両行の完全親会社として設立されました。同月に東京証券取引所に上場し、2019年10月には第四北越証券を完全子会社化しています。2021年1月に傘下の両行が合併して第四北越銀行が発足し、現在の経営基盤を構築しました。

現在の従業員数は連結で3,456名、単体で13名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。第3位には生命保険事業を展開する明治安田生命保険が名を連ねており、機関投資家や金融機関が高い持ち株比率を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.99%
日本カストディ銀行(信託口) 5.89%
明治安田生命保険 3.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は殖栗道郎氏が務めており、社外取締役の比率は役員全体の35.7%を占めています。

氏名 役職 主な経歴
殖栗道郎 取締役社長(代表取締役) 1986年第四銀行入行。東京支店長、グループ戦略企画部長などを歴任。2018年同社取締役に就任し、第四銀行常務取締役などを経て、2021年より現職。第四北越銀行の取締役頭取も兼任。
並木富士雄 取締役会長 1975年第四銀行入行。高田支店長、営業本部長などを歴任し、2012年同社取締役頭取に就任。2018年に同社取締役社長を務め、2021年より現職。第四北越銀行の取締役も兼任。
高橋信 専務取締役(代表取締役) 1985年北越銀行入行。五泉支店長、融資部長、総合企画部長などを歴任し、2018年に同社取締役に就任。2021年に第四北越銀行常務取締役を務め、2023年より現職。
柴田憲 常務取締役(代表取締役) 1989年第四銀行入行。燕南支店長、総合企画部長などを経て、2018年に同社経営企画部長に就任。2021年に第四北越銀行常務取締役を務め、2024年より現職。
牧利幸 取締役 1990年第四銀行入行。三条支店長、コンサルティング推進部長などを歴任。2020年に第四銀行常務取締役を務め、2021年に同社取締役地域創生推進本部長に就任。2025年より現職。
田中孝佳 取締役 1987年第四銀行入行。人事部長、本店営業部長などを歴任。2021年に第四北越銀行専務執行役員本店営業部長兼新潟空港出張所長を務め、同年より現職。
石坂貴 取締役 1986年北越銀行入行。ソリューション営業部長、営業統括部長などを歴任。2021年に第四北越銀行執行役員を務め、2023年に同社取締役地域創生推進本部長に就任。2025年より現職。
馬場佳子 取締役 1991年第四銀行入行。人事部副部長などを経て、2019年に第四北越キャリアブリッジ代表取締役社長に就任。2025年に同社取締役人的資本戦略部長を務め、2026年より現職。


社外取締役は、松本和明(明治大学大学院経営学研究科兼任講師)、白井正(かなで監査法人パートナー)、菊池弘之(柾谷小路法律特許税務事務所長)、佐藤明(新潟日報社代表取締役社長)、桒原美樹(新潟テレビ21代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」「証券業」および「その他」事業を展開しています。

銀行業


同社グループの中核として、預金業務や貸出業務をはじめ、内国および外国為替業務、国債などの公共債や証券投資信託、保険商品の窓口販売業務を行っています。新潟県内を中心とした地域のお客さまを対象に、幅広い金融商品やサービスを提供しています。

主な収益は、預金による資金調達費用と貸出金や有価証券運用による利息収益の差額である資金利益のほか、各種手数料から構成されています。運営は傘下の第四北越銀行が行っています。

リース業


地元新潟県の事業者のお客さまを中心に、設備投資等のニーズに応える総合リース業務をはじめとした各種金融サービスを提供しています。企業の設備導入を金融面から支援し、地域経済の活性化に貢献しています。

収益は、リース契約に基づくお客さまからのリース料等から得ています。事業の運営は、第四北越リースおよび北越リースが共同で展開しています。

証券業


地域のお客さまの資産運用や資金調達のニーズに応えるため、有価証券の売買等の委託媒介や、有価証券の募集および売出しの取り扱いなどを行っています。地域密着型の証券サービスを通じて、顧客の多様な資産形成をサポートしています。

収益は、有価証券の売買や媒介に伴う手数料等によって構成されています。本事業は第四北越証券が主体となって運営しています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、クレジットカード業務、システム関連業務、人材紹介業務などの周辺金融サービス事業を展開しています。金融の枠を超えた質の高い商品やサービスの提供により、お客さまの利便性および満足度の向上に努めています。

収益は、各サービスを通じた手数料やコンサルティング報酬等から得ています。運営は、第四北越ジェーシービーカード、第四北越ITソリューションズ、第四北越キャリアブリッジなどのグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、経常収益および経常利益はともに安定した成長を続けています。特に直近の事業年度では、国内市場金利の上昇や有価証券ポートフォリオの見直し効果などが寄与し、経常利益が大幅な増益を記録しました。当期利益についても着実な増加傾向を示しており、収益基盤の強化が進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 1357億円 1488億円 1821億円 1946億円 2603億円
経常利益 235億円 250億円 309億円 411億円 611億円
利益率(%) 17.3% 16.8% 17.0% 21.1% 23.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 151億円 178億円 212億円 293億円 421億円

(2) 損益計算書


経常収益は前期から堅調な伸びを示しており、それに伴い営業利益も大幅に増加しています。市場環境の変化を捉えた資金利益や役務取引等利益の増加が収益全体を押し上げました。営業利益率も改善傾向にあり、生産性向上の取り組みが成果として表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 1946億円 2603億円
営業利益 85億円 152億円
営業利益率(%) 4.4% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料・手当が7億円(構成比47%)、事務委託費が2億円(同12%)、交際費が1億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の銀行業が経常収益の大部分を牽引しており、前期と比較して大幅な増収増益を達成しています。有価証券ポートフォリオの改善やコンサルティング機能の強化が奏功しました。一方、リース業や証券業などの周辺事業も安定した収益を維持し、グループ全体の総合力発揮に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
銀行業 1600億円 2244億円 351億円 567億円 25.3%
リース業 213億円 224億円 11億円 0.5億円 0.2%
証券業 51億円 59億円 19億円 24億円 40.7%
その他 82億円 86億円 109億円 163億円 189.5%
調整額 -0.3億円 -10億円 -80億円 -143億円 -
連結(合計) 1946億円 2603億円 411億円 611億円 23.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは事業検討型の傾向を示しています。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -2558億円 -4967億円
投資CF 1866億円 3895億円
財務CF -94億円 -135億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も5.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「私たちは信頼される金融グループとしてみなさまの期待に応えるサービスを提供し地域社会の発展に貢献し続けます 変化に果敢に挑戦し新たな価値を創造します」という経営理念を掲げています。この理念は「行動の規範(プリンシプル)」「使命(ミッション)」「あるべき姿・方向性(ビジョン)」から構成され、金融仲介機能および情報仲介機能の発揮により、圧倒的に支持される金融・情報サービスグループを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、全役職員の合言葉として「一志勇躍(いっしゆうやく)」を掲げています。グループの全役職員が志を一つにし、強い気持ちで変化に果敢に挑戦していく行動様式を重視しています。また、高い倫理観の確立によるコンプライアンス(法令等遵守)最優先の業務運営を実践し、ステークホルダーとの強固な信頼関係を築く誠実な企業文化が根幹にあります。

(3) 経営計画・目標


2024年4月からスタートした第三次中期経営計画では、「グループ全役職員が志を一つに、強い気持ちで変化に挑戦し、勇ましく飛躍するステージ」と位置づけ、財務および環境・社会課題の双方の解決を目指すサステナビリティ経営を推進しています。最終年度となる2026年度に向けて経営指標を上方修正し、収益力や生産性の向上を目指しています。

* 連結当期純利益:500億円
* 連結OHR:50%台
* 連結ROE:8.7%以上
* 連結自己資本比率:11%~12%

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、「グループ総合力の発揮」「生産性向上の追求」「人的資本価値の向上」「リスクマネジメントの深化」の4つの基本戦略を掲げています。さらに全戦略共通のテーマとして、広域連携である「TSUBASAアライアンスの深化」に取り組み、規模のメリットを最大限に活用します。2027年4月には群馬銀行と経営統合を行い、「群馬新潟フィナンシャルグループ」として経営の質と規模の両面で飛躍を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは従業員を最も重要な価値創造の源泉と位置づけ、「人は財産である」という考えのもと人的資本経営を推進しています。求める人材像として、高い倫理観を持ち主体的に変化に挑戦する人材や、自律的に学び新たな価値を創造する人材を掲げています。多様な人材が活躍できる組織を目指し、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進するとともに、働きがいやウェルビーイングの実現に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.3歳 23.0年 12,343,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.8%
男性育児休業取得率 106.2%
男女賃金差異(全労働者) 53.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 67.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 66.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量削減率(-74.3%)、サステナブルファイナンス実行額(1,180,500,000,000円)、従業員エンゲージメント総合スコア(78.4点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク及び市場リスク


取引先の倒産や信用状況の悪化により貸出金等の価値が減少するリスクや、国内外の金利、有価証券の価格、外国為替相場の変動により保有資産の価値が変動するリスクがあります。同社グループでは、バリュー・アット・リスク(VaR)を用いてリスク量を日次で把握し、自己資本の範囲内に収まるよう厳格な管理を行っています。

(2) サステナビリティに関するリスク


気候変動による大雪や豪雨、台風等の自然災害や生態系の劣化が、貸出先の返済能力低下や担保資産の減価、自社拠点の業務停滞を引き起こす可能性があります。また、人権尊重やコンプライアンスに関する取り組みが不十分であった場合、ステークホルダーからの信用失墜を招き、業績や財務状況に悪影響を及ぼす懸念があります。

(3) 群馬銀行との経営統合に関するリスク


2027年4月に予定している群馬銀行との株式交換による経営統合に関連して、予期せぬ損失や多額の費用等が発生した場合、同社グループの業績や財務状況、株価に影響を及ぼす可能性があります。事業環境の変化や手続きの遅延などが、統合効果の創出を妨げるリスクとして認識されています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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