第四北越フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

第四北越フィナンシャルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、銀行業務を中心に、リース、証券業務等を展開する金融グループです。国内市場金利の上昇や貸出金利息の増加などが寄与し、連結経常収益は1,946億円、親会社株主に帰属する当期純利益は293億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社第四北越フィナンシャルグループ の有価証券報告書(第7期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 第四北越フィナンシャルグループってどんな会社?

新潟県を地盤とする地域金融グループで、第四銀行と北越銀行の経営統合により誕生しました。

(1) 会社概要

2018年10月に株式会社第四銀行と株式会社北越銀行が経営統合し、持株会社として設立されました。2021年1月に両行が合併し、中核子会社の株式会社第四北越銀行が発足しました。同年10月にリース会社等を完全子会社化し、2022年4月にプライム市場へ移行、2024年4月より第三次中期経営計画を推進しています。

連結従業員数は3,504名、単体従業員数は9名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には事業会社である明治安田生命保険相互会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.30%
日本カストディ銀行(信託口) 6.87%
明治安田生命保険相互会社 3.64%

(2) 経営陣

同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.6%です。代表取締役社長は殖栗道郎氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
殖栗 道郎 取締役社長(代表取締役) 1986年第四銀行入行。総合企画部長、東京支店長等を経て、2021年4月より現職。第四北越銀行取締役頭取を兼務。
高橋 信 専務取締役(代表取締役) 1985年北越銀行入行。営業統括部長、取締役総合企画部長等を経て、2023年6月より現職。第四北越銀行専務取締役を兼務。
柴田 憲 常務取締役(代表取締役) 1989年第四銀行入行。総合企画部長、常務取締役等を経て、2024年6月より現職。
並木 富士雄 取締役会長 1975年第四銀行入行。取締役頭取を経て、2018年同社取締役社長、2021年4月より現職。
牧 利幸 取締役 1990年第四銀行入行。地域創生推進本部長等を経て、2023年6月より現職。第四北越銀行専務取締役を兼務。
田中 孝佳 取締役 1987年第四銀行入行。人事部長、常務取締役等を経て、2021年6月より現職。第四北越銀行常務取締役を兼務。
石坂 貴 取締役 1986年北越銀行入行。営業統括部長、地域創生推進本部副本部長等を経て、2023年6月より現職。第四北越銀行常務取締役を兼務。
宮越 忠範 取締役 1984年北越銀行入行。市場営業部長、執行役員東京支店長等を経て、2023年6月より現職。
馬場 佳子 取締役 1991年第四銀行入行。人事部副部長、第四北越キャリアブリッジ社長等を経て、2024年6月より現職。
此村 隆義 取締役(監査等委員) 1985年第四銀行入行。審査部長、監査部長等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、松本和明(京都産業大学教授)、森邦雄(元新潟県副知事)、白井正(公認会計士)、菊池弘之(弁護士)、佐藤明(新潟日報社社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「銀行業」「リース業」「証券業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業

株式会社第四北越銀行の本支店等において、預金、貸出、内国・外国為替業務を行うほか、代理業務、公共債・投資信託・保険商品の窓口販売業務等を行い、幅広い金融商品・サービスを提供しています。

収益は主に貸出金利息や有価証券利息配当金、各種手数料等からなり、運営は株式会社第四北越銀行が行っています。

(2) リース業

地元事業者の顧客を中心に、リース業務などの金融サービスを提供しています。

収益は顧客からのリース料等からなり、運営は第四北越リース株式会社および北越リース株式会社が行っています。

(3) 証券業

有価証券の売買等および委託の媒介、募集・売出しの取扱い等を行い、資産運用と資金調達の両面からサービスを提供しています。

収益は委託手数料やトレーディング損益等からなり、運営は第四北越証券株式会社が行っています。

(4) その他

クレジットカード業務、システム関連業務、人材紹介業務等の金融サービスに係る事業を行っています。

収益はクレジットカード手数料やシステム受託料等からなり、第四ジェーシービーカード株式会社などの関係会社が運営しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。これは、資金運用収益の増加により経常収益が増加した一方、経常費用は債券売却損の増加などにより増加したことが主な要因です。過去からの趨勢としては、経常収益、経常利益、当期純利益ともに増加傾向で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 14,313 13,571 14,876 18,206 19,465
経常利益(億円) 1,750 2,355 2,505 3,087 4,111
当期純利益(億円) 1,079 1,514 1,777 2,120 2,935

(2) 損益計算書

当期は、資金運用収益の増加により経常収益が増加しました。経常費用は、債券売却損の増加などにより増加しましたが、経常利益は増益となりました。当期純利益も増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 1,490 1,608
経常費用 1,511 1,535
経常利益 308 411
当期純利益 212 293

(3) 役務取引等収益の内訳

当期の役務取引等収益合計は前期比で増加しました。その中でも、預金・貸出業務が最も大きな割合を占めており、次いで為替業務が続きます。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 252 252
預金・貸出業務 160 161
為替業務 39 38
証券関連業務 17 17
代理業務 12 12

(4) キャッシュ・フローと財務指標

銀行業では貸出金の増加に伴い営業CFがマイナスになることが通例であり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。当期は、投資活動によるキャッシュ・フローがプラスに転じ、財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 2,944 △25,578
投資活動によるキャッシュ・フロー △901 1,865
財務活動によるキャッシュ・フロー △1,050 △943

当期は収益効率の向上が見られました。自己資本利益率(ROE)は前期の4.63%から当期は5.99%へと改善しました。純資産額は、増減しながら推移しており、当期末時点では47,887億円となっています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、信頼される金融グループとして顧客の期待に応えるサービスを提供し、地域社会の発展に貢献し続けることを掲げています。また、変化に果敢に挑戦し、新たな価値を創造することで、顧客や地域から圧倒的に支持される金融・情報サービスグループを目指しています。

(2) 企業文化

経営理念は「行動の規範(プリンシプル)」「使命(ミッション)」「あるべき姿・方向性(ビジョン)」から構成され、全役職員の活動の根源としています。また、グループ全役職員が志を一つにし、強い気持ちで変化に挑戦する姿勢を「一志勇躍(いっしゆうやく)」という合言葉で表現しています。

(3) 経営計画・目標

2024年4月より第三次中期経営計画をスタートさせており、2026年度を最終年度としています。計画の進捗や金利環境の変化等を踏まえ、最終年度の経営指標目標を上方修正しました。
* 連結当期純利益:400億円(2026年度)
* 連結当期純利益:330億円(2025年度)
* 連結OHR:56%台(2025年度)
* 連結ROE:6.4%(2025年度)
* 連結自己資本比率:11%以上(2025年度)

(4) 成長戦略と重点施策

最重要経営課題として「財務的課題」と「環境・社会課題」を設定し、それらの解決に向けた4つの基本戦略(グループ総合力の発揮、生産性向上の追求、人的資本価値の向上、リスクマネジメントの深化)を掲げています。また、TSUBASAアライアンスの深化や群馬・第四北越アライアンスを活用し、地域と持続的に成長する好循環の実現を目指しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人財」を価値創造の源泉と捉え、経営理念のもと人的資本経営を実践しています。多様な属性・経験・価値観を持つ人材が活躍できるようDE&Iを推進し、主体的に変化に挑戦し新たな価値を創造する人材を育成・登用する方針です。また、ウェルビーイングの実現とエンゲージメント向上に向け、心理的安全性の高い職場環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.3歳 24.9年 11,812,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.9%
男性育児休業取得率 106.6%
男女賃金差異(全労働者) 51.1%
男女賃金差異(正規雇用) 65.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 66.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職(代理級以上)比率(26.3%)、従業員エンゲージメント総合スコア(77.8点)、一人当たり研修投資額(65千円)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク及び市場リスク

取引先の倒産等による貸出金の価値減少や、金利・株価・為替等の市場要因の変動により、保有資産の価値が変動して損失を被る可能性があります。同社はVaR(バリュー・アット・リスク)を用いてリスク量を把握し、資本配賦制度等により管理を行っています。

(2) サステナビリティに関するリスク

気候変動による担保資産の減価や、企業のサステナビリティ対応の遅れが信用失墜を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はサステナビリティ基本方針に基づき、環境課題や社会課題の解決に向けた取り組みを推進しています。

(3) 自己資本比率に関するリスク

株式等の価値低下や不良債権増加等により自己資本比率が低下し、国内基準である4%を下回った場合、業務停止等の命令を受ける可能性があります。同社は現状、所要水準を上回っていますが、様々な要因により影響を受ける可能性があります。

(4) 持株会社のリスク

同社は銀行持株会社であり、収入の大部分を銀行子会社からの配当金等に依存しています。規制や契約上の制限、または子会社の利益不足等により、同社株主への配当支払いが不可能となる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。