ヴィス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヴィス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場し、オフィス等の「ワークデザイン」を軸に、空間設計から組織改善ツールまでを提供する企業です。直近の業績は、主力のブランディング事業が牽引し、高成長企業を中心に受注を獲得して増収増益の堅調なトレンドを維持しており、新しい働き方のニーズを捉えて成長を続けています。


※本記事は、株式会社ヴィスの有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヴィスってどんな会社?


同社は「はたらく人々を幸せに。」を掲げ、オフィス環境や働き方を総合的にデザインする事業を展開しています。

(1) 会社概要


1999年に大阪市で商業施設等のデザイン業務を目的に設立され、2004年にデザイナーズオフィス業務へ事業を転換しました。2020年にマザーズ市場へ上場し、2021年にはフレキシブルオフィス「The Place」を開業しました。2022年にはワークデザインコンサルティングを担う子会社を設立し、データ領域への事業拡大も進めています。

同社グループは連結で301名、単体で296名の従業員を擁しています。筆頭株主は代表取締役会長の資産管理会社であるクレドで、第2位は創業者で代表取締役会長の中村勇人氏、第3位は個人の竹内理人氏となっています。安定株主が一定の議決権を保有しつつ、中長期的な企業価値向上を目指す体制が構築されています。

氏名 持株比率
クレド 40.66%
中村勇人 22.36%
竹内理人 5.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。
代表取締役会長は中村勇人氏、代表取締役社長コンサルティングDiv.長は金谷智浩氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
中村勇人 代表取締役会長 1998年有限会社ヴィス設立。1999年ヴィスへ組織変更し代表取締役社長就任。2022年より現職。
金谷智浩 代表取締役社長コンサルティングDiv.長 1999年実鷹企画入社。2004年同社入社。取締役、常務取締役、子会社社長を経て2022年より現職。
大滝仁実 専務取締役クリエイティブDiv.長 2003年個人事務所スタイル開業。2006年同社取締役就任。クリエイティブ事業部長、常務取締役を経て2022年より現職。
矢原裕一郎 常務取締役コーポレートDiv.長 飛島都市開発等を経て2017年同社入社。管理本部長、取締役を経て2022年より現職。


社外取締役は、浜本亜実氏(Humanext代表取締役)、西村勇作氏(梅ヶ枝中央法律事務所所属弁護士)、渡邉淳氏(公認会計士渡邉淳事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ブランディング事業」および「データソリューション・プレイスソリューション事業」の2つを報告セグメントとして展開しています。

ブランディング事業


同事業は、オフィスの移転や改装を行う企業に対し、オフィスデザインからグラフィックデザイン、ウェブデザインまでのすべてをワンストップで提供しています。プランニングから設計・施工までの一連のマネジメントを担い、企業のアイデンティティ確立とブランド構築を支援し、働く人々のエンゲージメント向上に貢献しています。

主な収益源は、オフィス設計・施工や各種デザイン制作に伴う顧客企業からの対価です。事業の運営は同社が主体となって行い、高成長企業を中心とした中小企業から、社員満足度の向上や働き方改革を経営課題とする大手企業まで幅広く対応し、これまでに培った8500件以上の実績に基づく最適な解決策を提供しています。

データソリューション・プレイスソリューション事業


同事業は、ワークプレイスの空間稼働率分析などを行う構築DXツールや、従業員の状態を把握する組織改善サーベイを提供しています。また、スタートアップ企業や成長企業向けのフレキシブルオフィス「The Place」を運営し、テナント賃貸やシェアオフィスを通じて企業間の交流と新たな価値創出の場を提供しています。

主な収益源は、ツールやサーベイのシステム利用料、およびフレキシブルオフィスのテナントやシェアオフィス等の賃貸収入です。運営は同社および子会社のワークデザインテクノロジーズが担い、データの抽出と分析によって課題を可視化することで、より質の高いワークデザインの提案と継続的な事業成長へとつなげています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が順調に拡大を続け、160億円を超える規模に成長しています。経常利益や当期利益も売上成長に伴って着実に増加しており、利益率も9%台から11%台へと改善傾向を示しています。付加価値の高いソリューションの提供と原価管理の徹底が奏功し、安定した収益基盤の強化が進んでいる状況です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - 132億円 144億円 163億円 165億円
経常利益 - 13億円 15億円 19億円 19億円
利益率(%) - 9.6% 10.5% 11.8% 11.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 9億円 10億円 14億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、売上総利益はほぼ同水準を維持し、売上総利益率も安定して推移しています。一方で、販売費及び一般管理費がわずかに減少したことにより営業利益も微増し、営業利益率は前期と同水準を確保しています。オフィスの移転費用などのコスト増をこなしつつ、堅実な利益創出が図られています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 163億円 165億円
売上総利益 47億円 47億円
売上総利益率(%) 29.1% 28.7%
営業利益 19億円 19億円
営業利益率(%) 11.8% 11.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比38%)、賞与が5億円(同17%)を占めています。売上原価においては、外注費が110億円(構成比93%)、労務費が7億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のブランディング事業は、多様なマーケティング手法による新規顧客獲得と既存顧客へのフォローが奏功し、増収増益を達成しました。一方、データソリューション・プレイスソリューション事業は、システム提供や新規オフィス開設費用が先行した影響もあり、減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ブランディング事業 156億円 159億円 19億円 20億円 12.6%
データソリューション・プレイスソリューション事業 6億円 6億円 1億円 0.6億円 10.8%
調整額 - - -1億円 -1億円 -
連結(合計) 163億円 165億円 19億円 19億円 11.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業で得た資金を投資に回しつつ、余剰資金で有利子負債の返済等を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 16億円 13億円
投資CF -3億円 -3億円
財務CF -3億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「はたらく人々を幸せに。」をパーパス(存在意義)として掲げています。独自のワークデザインによって働く空間や仕組みを進化させ、一人ひとりの想像力と創造力を引き出して多彩なつながりを生み出すことで、誰もが自分らしく力を発揮できる社会を目指しています。企業と共創し、人々の幸せがふくらんでいく世界の実現を使命としています。

(2) 企業文化


同社は、自らが新しい働き方をリードする「誰より前を走ろう」、多様性の力を信じて成長し合う「共に高め合おう」、可能性を探求し心を動かす「得意を増やそう」、自ら学び進化する「常に新しくいよう」、相手の喜びのために熱い想いで尽くす「深く寄り添おう」という5つの価値観(バリューズ)を大切にし、行動の指針としています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期から3年間を対象とした新中期経営計画(VISION2027)を推進しており、最終年度の2028年3月期に連結売上高201億円、連結営業利益20億円の達成を計画しています。既存事業の成長に加え、外部成長戦略によって新たな市場機会を創出し、ワークデザインの事業領域拡大と企業規模の持続的な成長を目指しています。

* 売上高成長率:年平均7.0%
* 営業利益成長率:年平均12.9%
* 営業利益率:11.8%

(4) 成長戦略と重点施策


オフィスデザインを主軸とする事業を持続的に成長させつつ、データの抽出と分析によって顧客の課題を解決するデータおよびプレイス領域のソリューションを拡大させる方針です。また、生成AIなどの新技術を活用した業務のデジタルトランスフォーメーションを推進し、社員の負担軽減と高付加価値なサービス提供の両立を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人の成長=企業の成長」という考えのもと、理念と文化の共有、教育・研修、健康経営と多様性の推進を軸とした人的資本経営に取り組んでいます。顧客のニーズに合わせて現状分析から解決策の提案までを一貫して実行できる人材の確保と育成を最重要課題と位置づけ、従業員満足度の向上と優秀な人材の定着を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.2歳 5.9年 7,301,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.1%
男性育児休業取得率 114.3%
男女賃金差異(全労働者) 78.2%
男女賃金差異(正規労働者) 78.7%
男女賃金差異(非正規労働者) 30.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設業や建築士法等の法的規制


同社は建設業法、建築基準法、建築士法などの様々な法的規制の下で事業を行っています。これらの法令等に違反して罰金や業務停止などの行政処分を受けた場合や、建設業の許可が何らかの事情により取り消された場合には、業務に支障が生じ、同社グループの社会的評価や信用、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 施工不良や欠陥に伴う損害賠償


付加価値の高いサービスの提供に努めていますが、協力会社から納品された製品の欠陥や施工不良によって顧客など第三者に損害を与えた場合、修繕や対応に多大な費用負担が発生するリスクがあります。契約不適合責任に基づく損害賠償を負う事態となれば、信用低下を招き業績に影響を与える可能性があります。

(3) 類似他社や業界内での競合激化


顧客のニーズに対応した質の高いソリューションを提供することに全力を挙げていますが、オフィスデザインや内装工事業界には多くの類似企業が存在します。他社との差別化が難しくなり、価格競争などで十分な競争優位性を確保できなくなった場合には、受注機会の逸失や利益率の低下により業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。