ヴィス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヴィス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヴィスは東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、オフィスデザインを中心としたワークデザイン事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高163億円(前期比12.9%増)、営業利益19.2億円(同25.7%増)と増収増益を達成し、過去最高益を更新しています。


※本記事は、株式会社ヴィス の有価証券報告書(第27期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヴィスってどんな会社?


同社は「はたらく人々を幸せに。」をパーパスに掲げ、オフィスデザインや働き方のコンサルティングをワンストップで提供するワークデザイン企業です。

(1) 会社概要


1998年に創業し、2004年にデザイナーズオフィス事業へ転換しました。2020年にマザーズ市場へ上場し、2021年には自社運営のフレキシブルオフィス「The Place Osaka」を開業しました。2022年には東証スタンダード市場へ移行するとともに、コンサルティング領域を強化するため子会社を設立しています。

連結従業員数は272名、単体では269名です。筆頭株主は資産管理会社のクレドで、第2位は創業会長の中村勇人氏です。経営陣や従業員が株主上位を占めており、オーナーシップを持った経営体制が特徴です。

氏名 持株比率
クレド 41.07%
中村勇人 22.59%
竹内理人 4.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は金谷智浩氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
中村勇人 代表取締役会長 1998年4月有限会社ヴィス設立。1999年同社代表取締役社長。2022年6月より現職。
金谷智浩 代表取締役社長コンサルティングDiv.長 2004年同社入社。東京事業部長、デザイナーズオフィス事業本部長等を経て2022年6月より現職。
大滝仁実 専務取締役クリエイティブDiv.長 2003年個人事務所スタイル開業。2006年同社取締役、2015年常務取締役を経て2022年6月より現職。
矢原裕一郎 常務取締役コーポレートDiv.長 飛島都市開発、フジ医療器等を経て2017年同社入社。管理本部長等を経て2022年6月より現職。


社外取締役は、浜本亜実(Humanext代表取締役)、戸出健次郎(戸出総合法律事務所代表弁護士)、西村勇作(梅ヶ枝中央法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ブランディング事業」および「データソリューション・プレイスソリューション事業」を展開しています。

(1) ブランディング事業


企業の移転や改装に伴うオフィスデザイン、グラフィックデザイン、ウェブデザインなどをワンストップで提供しています。企業のアイデンティティやブランドを空間とデザインで表現し、企業価値や社員エンゲージメントの向上を支援しています。

収益は、顧客企業から受け取るオフィスのプランニング、設計、デザイン、施工および各種制作物の対価からなります。案件ごとに異なる課題に対し、蓄積されたノウハウを活かしたソリューションを提供します。運営は主にヴィスが行っています。

(2) データソリューション・プレイスソリューション事業


ワークプレイス構築DXツール「ワークデザインプラットフォーム」や組織改善サーベイ「ココエル」等のデータ活用サービス、およびビル資産価値を向上させるコンバージョンやフレキシブルオフィス「The Place」の運営を行っています。

収益は、DXツールやサーベイの利用料、およびフレキシブルオフィスの入居テナントや利用者から受け取る賃料やサービス利用料等から構成されます。運営はヴィスおよび連結子会社のワークデザインテクノロジーズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間において、売上高は着実に増加しており、成長基調を維持しています。利益面でも、経常利益および当期純利益ともに毎期増益を達成しており、利益率も10%前後の高い水準で推移または向上しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 132億円 144億円 163億円
経常利益 13億円 15億円 19億円
利益率(%) 9.6% 10.5% 11.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 10億円 13億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は29%台で安定的に推移しています。営業利益率も向上しており、販管費の増加を吸収して収益性が高まっていることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 144億円 163億円
売上総利益 40億円 47億円
売上総利益率(%) 27.7% 29.1%
営業利益 15億円 19億円
営業利益率(%) 10.6% 11.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9.4億円(構成比33%)、賞与が6.8億円(同24%)を占めています。売上原価においては、外注費が107億円(売上原価比93%)と大半を占めており、施工等の外部委託が主なコスト要因です。

(3) セグメント収益


両セグメントともに増収増益となりました。主力のブランディング事業は高成長企業を中心とした受注獲得により順調に拡大しています。データソリューション・プレイスソリューション事業は、売上の伸びに加え、利益率が大幅に改善し、収益の柱として成長しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ブランディング事業 138億円 156億円 16億円 19億円 12.2%
データソリューション・プレイスソリューション事業 6億円 6億円 0.5億円 1億円 19.7%
調整額 -1億円 -2億円 -1億円 -1億円 -
連結(合計) 144億円 163億円 15億円 19億円 11.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


健全型:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 15億円 16億円
投資CF -4億円 -3億円
財務CF -2億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.3%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も64.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「はたらく人々を幸せに。」をパーパス(存在意義)として掲げています。ワークデザインを通じて働く空間や仕組みを進化させ、一人ひとりの想像力と創造力を引き出し、誰もが自分らしく最大の力を発揮できる社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「バリューズ(価値観)」として、「誰より前を走ろう。」「共に高め合おう。」「得意を増やそう。」「常に新しくいよう。」「深く寄り添おう。」の5つを定めています。これらは、パイオニア精神、多様性への信頼、プロフェッショナルとしての成長、進化、相手への思いやりを行動の指針とすることを意味しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期から2028年3月期までの新中期経営計画を策定し、最終年度の財務目標として以下の数値を掲げています。
* 連結売上高:201億円
* 連結営業利益:20億円

(4) 成長戦略と重点施策


オフィスデザインから「ワークデザイン」へと事業領域を拡大し、データの抽出・分析により顧客課題を可視化・解決することで事業拡大を図ります。また、IT・DXによる業務効率化、コンサルティングができる人材の確保・育成、ターゲットを明確にしたマーケティング強化を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人の成長=企業の成長」という考えのもと、「理念・文化の共有」「教育・研修」「健康経営と多様性の推進」を軸に人的資本経営に取り組んでいます。フィロソフィーの浸透によるカルチャー醸成、階層別研修や資格取得支援によるスキル向上、ワークライフバランス制度の充実などを通じ、多様な個性が力を発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.2歳 5.9年 8,260,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 23.3%
男性労働者の育児休業取得率 25.0%
労働者の男女の賃金の差異 -


※労働者の男女の賃金の差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制による影響


建設業法、建築基準法、建築士法などの法的規制の下で事業を行っており、これらの法令違反があった場合、業務停止や社会的信用の失墜により業績に影響が及ぶ可能性があります。また、産業廃棄物処理法に基づく適切な処理が求められており、違反時の行政処分リスクもあります。

(2) 製品・施工の欠陥リスク


協力会社から納品された製品の欠陥や施工不良により第三者に損害を与えた場合、多大な費用負担や損害賠償責任が発生する可能性があります。これにより社会的評価が低下し、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) オフィス需要の動向


企業のオフィス移転や新規開設の需要に依存しているため、経済環境の悪化や企業業績の低迷によりこれらの需要が減少した場合、業績が悪化する可能性があります。また、既存顧客からのリピート受注の減少もリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。