※本記事は、TANAKENの有価証券報告書(第45期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. TANAKENってどんな会社?
建築構造物の解体工事から関連する土木・環境改善工事までをワンストップで提供する専門企業です。
■(1) 会社概要
1982年に創業者田中俊昭氏が独立する形で設立され、1996年に田中建設工業へ商号変更しました。2016年に解体工事業の特定建設業許可を取得し、2018年にJASDAQ(現スタンダード市場)へ上場を果たしました。そして2025年4月に現在のTANAKENへと商号を変更しています。
従業員数は単体で110名です。筆頭株主はスリーハンドレッドホールディングスで、第2位は富士倉庫運輸、第3位は創業者の田中俊昭氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スリーハンドレッドホールディングス | 59.56% |
| 富士倉庫運輸 | 2.56% |
| 田中俊昭 | 2.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は中尾安志氏が務めています。取締役5名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中尾安志 | 代表取締役(社長執行役員) | 埼玉りそな銀行代表取締役副社長や富士倉庫運輸代表取締役社長等を経て、2021年6月より現職。 |
| 内田政美 | 取締役(専務執行役員)本社統括兼コーポレート本部長 | 埼玉りそな銀行常務執行役員等を経て、2023年4月に同社入社。2026年4月より現職。 |
| 白石憲治 | 取締役(常務執行役員)施工本部長 | 五洋建設やアフラック生命保険等を経て、2018年5月に同社入社。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、中目隆夫(元丸広百貨店取締役副社長)、鈴木和宏(元福岡高等検察庁検事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「解体事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 解体事業
建築構造物の解体工事及びそれに付随する各種工事の施工管理を提供しています。現況調査から工法の提案、設計、施工計画、安全管理、近隣対応などの業務全般に加え、土木工事、山留工事、アスベストやPCB等の有害汚染物質の除去、土壌改良までをワンストップで提案し、多様な顧客ニーズに応えています。
デベロッパー、ゼネコン、一般法人、再開発組合などの顧客に対し、元請工事を主体にサービスを提供し、請負代金を受け取る収益モデルです。相談段階からの提案営業によるリピート顧客の拡充を図っており、運営はTANAKENが主体となって協力会社を指導・監督しながら解体工事等を施工しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は大型元請工事の受注増などを背景に順調に拡大傾向にあり、堅調な事業成長が伺えます。経常利益も概ね安定して推移しており、都市再開発案件の取り込みや環境改善関連工事の受注拡大が業績を下支えしている状況です。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 98億円 | 112億円 | 107億円 | 123億円 | 148億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 16億円 | 16億円 | 23億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | 14.6% | 14.2% | 15.4% | 19.1% | 14.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 11億円 | 11億円 | 16億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が増加した一方で、施工難易度の高い工事の増加に伴う安全対策費などの原価増により売上総利益率は低下しています。営業利益も広告宣伝費や採用強化による費用増の影響を受け、減益となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 123億円 | 148億円 |
| 売上総利益 | 33億円 | 32億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.9% | 21.6% |
| 営業利益 | 23億円 | 22億円 |
| 営業利益率(%) | 19.0% | 14.7% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が4億円(構成比41.3%)、給与手当が2億円(同23.7%)を占めています。売上原価は116億円であり、そのうち外注費が98億円(構成比84.6%)、経費が18億円(同15.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は解体事業の単一セグメントであるため、全社の売上高がそのままセグメントの収益となります。デベロッパーやゼネコン向けの元請工事を中心に堅調な受注環境が続いており、増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 解体事業 | 123億円 | 148億円 |
| 連結(合計) | 123億円 | 148億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的(末期型)な状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 21億円 | -6億円 |
| 投資CF | -1億円 | -1億円 |
| 財務CF | -3億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
設立以来、「思いやり・信頼・感謝」というキーワードを経営理念とし、お客様・社員・家族・地域社会・環境への思いやり、会社・技術・社員への信頼などを標榜しています。解体事業を「環境ビジネス」の一環と捉え、社業を通じて人にやさしい環境づくりに貢献していくことを企業理念としています。
■(2) 企業文化
経営理念である「思いやり・信頼・感謝」を実現する人財の育成を重視しています。「社員の成長が企業の成長である」との考えのもと、社員の努力や成果に対する適切な評価と処遇を通じたエンゲージメントの向上を図り、社員一人一人のウェルビーイングに資する労働環境の実現を推進する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2026年5月に中期経営計画「TANAKEN“Vision NEXT 10” Secondary Phase」を策定し、10年後のあるべき姿の実現を目指しています。基盤構築の期間を経て、更なる基盤強化と施工力強化を図る3ヵ年計画として「成長戦略」を位置づけ、ブランド価値の向上や人財強化を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
営業戦略として、都市再生案件の取り込み、顧客基盤の充実、地下関連工事の受注拡大、環境改善関連工事の受注、人財育成と生産性向上の5点を推進しています。相談段階からの提案でリピート顧客を拡充し、良好な収益基盤を支える元請工事の維持・拡大を図ることで、持続的企業価値向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
競争力の源泉である「持たざる経営」の最重要基盤を「人財」と位置づけ、その量的・質的な充実を喫緊の課題としています。本社移転によるオフィス環境の充実、完全週休二日制の導入、休暇制度の拡充などの就労環境整備を進め、研修制度を通じた社員の自律的なキャリア形成を後押ししています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.6歳 | 7.0年 | 7,215,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) マクロ経済環境変化によるリスク
デベロッパーやゼネコン等の多様な受注先を確保していますが、地政学的リスクを含む想定外の経済環境の変動に伴う民間建設需要の減退や、資材・人件費の高騰によるコストの大幅な上昇があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人財の確保について
建設事業では優秀な資格者と施工実績が重要であり、現場への主任技術者の配置が必須です。働き方改革や処遇改善、資格取得支援を推進していますが、継続的に必要な人財を確保できなかった場合、施工能力に問題が生じるリスクがあります。
■(3) 契約不適合工事リスクについて
施主との契約に適合した施工を完遂するため、品質マネジメントシステムやITツールを活用した施工管理を実施しています。しかし、想定外の事態が発生し結果的に契約不適合工事となった場合、損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 協力会社の確保について
工事の施工管理を行う同社にとって、実際の作業を担う優秀な協力会社の確保・育成は不可欠です。業容拡大に伴う地方現場の増加等で協力会社の確保が困難になった場合、施工能力に想定外の問題が発生する可能性があります。



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