※本記事は、TANAKEN株式会社(旧会社名 田中建設工業株式会社) の有価証券報告書(第44期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. TANAKENってどんな会社?
建築構造物の解体工事を専業とし、施工管理に特化したビジネスモデルで「環境ビジネス」を展開しています。
■(1) 会社概要
1982年、創業者が前身となる企業を東京都文京区に設立し、同年田中工業へ商号変更しました。その後、解体工事業の許可を取得し事業を拡大、2018年には東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)市場へ上場しました。2025年4月には、現在のTANAKENへと商号を変更し、ブランド価値の向上を図っています。
2025年3月31日時点の従業員数は単体で102名となっており、連結子会社は持ちません。筆頭株主はスリーハンドレッドホールディングスで発行済株式の59.56%を保有しており、第2位は富士倉庫運輸、第3位は個人株主の田中俊昭氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スリーハンドレッドホールディングス | 59.56% |
| 富士倉庫運輸 | 2.56% |
| 田中俊昭 | 2.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名、計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役(社長執行役員)は中尾安志氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中尾 安志 | 代表取締役(社長執行役員) | 埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入行。りそな銀行専務執行役員、埼玉りそな銀行代表取締役副社長等を経て、2021年6月より現職。 |
| 内田 政美 | 取締役(専務執行役員)本社統括兼管理本部長 | 協和銀行(現りそな銀行)入行。埼玉りそな銀行常務執行役員などを経て、2024年4月より現職。 |
| 白石 憲治 | 取締役(常務執行役員)施工本部長 | 五洋建設入社。アフラック生命保険総務部ファシリティマネジメント室長などを経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、中目隆夫(元丸広百貨店取締役副社長)、鈴木和宏(元福岡高等検察庁検事長・弁護士)です。
2. 事業内容
同社は、「解体事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■解体事業
同社は、ビルやマンションなどの建築構造物の解体工事に加え、それに付随する土木工事、山留工事、基礎解体工事などの施工管理を行っています。また、工事に伴って発生するアスベストやPCB、ダイオキシンなどの有害物質の除去、地下水浄化、土壌改良といった環境関連業務もワンストップで提供しており、主な顧客はデベロッパーやゼネコン、建物所有者です。
収益は、顧客である施主や元請業者から受け取る工事代金によって構成されています。自社で重機や職人を直接保有するのではなく、施工管理、安全管理、近隣対応などのマネジメント業務に特化し、実際の施工は協力会社を指導・監督して行うビジネスモデルを採用しています。運営はTANAKENが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は90億円台から120億円台へと着実に拡大しています。特に直近の2025年3月期は売上高123億円、経常利益23億円と過去最高水準を記録しました。利益率も14%〜19%台と高い水準で推移しており、安定した収益性を維持しながら成長を続けています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 90億円 | 98億円 | 112億円 | 107億円 | 123億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 14億円 | 16億円 | 16億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 16.2% | 14.6% | 14.2% | 15.4% | 19.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 10億円 | 11億円 | 11億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益計算書を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が大きく伸長しています。売上総利益率は23.4%から26.9%へ改善しており、大型工事の増加による生産性向上が寄与しています。販管費も増加していますが、利益の伸びがこれを上回り、営業利益率も大幅に向上しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 107億円 | 123億円 |
| 売上総利益 | 25億円 | 33億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.4% | 26.9% |
| 営業利益 | 16億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 15.1% | 18.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.3億円(構成比23%)、役員報酬が1.0億円(同11%)を占めています。また、売上原価においては、外注費が76億円(構成比85%)と大半を占めており、協力会社を活用するビジネスモデルの特徴が表れています。
■(3) セグメント収益
同社は解体事業の単一セグメントですが、大型工事の受注増や生産性向上により増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 解体事業 | 107億円 | 123億円 |
| 連結(合計) | 107億円 | 123億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、事業運営上必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。元請工事の維持・拡大に伴う立替資金需要に対応するため、豊富な手元流動資金と金融機関の信用枠を活用しています。システム投資や株主への利益還元も、運転資金以外の主な資金需要です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 21億円 |
| 投資CF | -0.4億円 | -0.8億円 |
| 財務CF | -3億円 | -3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「思いやり・信頼・感謝」をキーワードに、「お客様・社員・家族・地域社会・環境への思いやり」「会社・技術・社員への信頼」「お客様・家族・仲間・仕事への感謝」を経営理念としています。解体事業を「環境ビジネス」の一環と捉え、社業を通じて人にやさしい環境づくりに貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、持続的な企業価値向上と持続可能なエコ社会の実現を目指し、ビジネスモデルである「相談を起点とした営業の好循環」を重視しています。また、企業の社会的責任を果たすため、経営の効率を高めつつ公正性・透明性を確保し、ステークホルダーとの適切な関係を保つことを基本方針としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、10年後のあるべき姿を示した「TANAKEN“Vision NEXT 10”」の実現に向け、2024年度から始まる中期経営計画「Primary Phase」を推進しています。これは基盤構築の3ヵ年計画であり、ブランド価値向上や競争力の源泉である人財・技術・アライアンスの拡充を目指しています。
* 売上高目標140億円(当面の目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として、都市再生案件の取り込み、顧客基盤の充実、地下関連工事および環境改善関連工事の受注拡大を推進しています。また、大阪営業所を起点とした地方案件の受注強化や、将来的な大阪支店化を見据えた営業人員の拡充を図り、リピート顧客の維持拡大と元請工事の比重を高める方針です。
* 施工管理者55名体制の早期実現
* 現場ITサポートシステムの導入による生産性向上
* 専門会社とのアライアンス強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
業容拡大に伴う増員を計画しており、本社移転や完全週休二日制の導入など就業環境の整備を進めています。特に施工管理者の増員と技術者の多能化を推進し、休暇を取得しやすい環境づくりに注力しています。また、資格取得支援や人事制度・評価制度の再構築を通じ、人的資本の質・量の充実を図る方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.3歳 | 7.3年 | 7,031,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は常時雇用する労働者が300人以下であり、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) マクロ経済環境変化によるリスク
主要な受注先はデベロッパーやゼネコン、建物所有者など多岐にわたりますが、地政学的リスクを含むマクロ経済環境の変動により民間建設需要が大幅に減退した場合や、資材・人件費の高騰によりコストが上昇した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 契約不適合工事リスク
ISO9001に基づく施工管理やITツールの活用により不適合の未然防止に努めていますが、想定外の事態により契約不適合工事となった場合、契約解除や損害賠償、補修費用の発生などにより、経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規制について
建設業法に基づく許認可や、廃棄物処理法、労働安全衛生法などの各種法令を遵守していますが、万一法令違反等により許認可の取り消しや営業停止などの処分を受けた場合、事業継続に重大な支障をきたし、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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