Kudan 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Kudan 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。機械の「眼」に相当する人工知覚(AP)技術の研究開発およびライセンス提供を行うDeep Tech企業。当連結会計年度の業績は、売上高5.2億円(前期比5.4%増)と増収した一方、研究開発費等の負担により経常損失7.4億円、当期純損失8.1億円となり、前期より赤字幅が拡大しました。


※本記事は、Kudan株式会社 の有価証券報告書(第11期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Kudanってどんな会社?


人工知覚(AP)技術、特にSLAM(自己位置推定と地図作成)アルゴリズムの研究開発を行う技術集団です。

(1) 会社概要


2011年に英国ブリストルでKudan Limitedが設立され、SLAM技術の研究開発を開始しました。2014年に日本法人として同社が設立され、2018年に東証マザーズへ上場を果たしました。2021年にはドイツのArtisense Corporationを完全子会社化し技術力を強化、2022年にはソリューション事業を開始するなど、グローバルな体制で事業を拡大しています。

従業員数は連結41名、単体14名と少数精鋭の組織です。筆頭株主は創業者の大野智弘氏で、第2位はスイスに本拠を置くプライベートバンクのUNION BANCAIRE PRIVEE、第3位は投資会社のグロース・キャピタルとなっています。

氏名 持株比率
大野 智弘 24.94%
UNION BANCAIRE PRIVEE(常任代理人 株式会社三菱UFJ銀行) 6.99%
グロース・キャピタル 4.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは項大雨氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
項大雨 代表取締役CEO トヨタ自動車、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2016年同社入社。取締役COOなどを歴任し、2020年11月より現職。Artisense CorporationのCEOも兼務。
大野智弘 代表取締役 アクセンチュア等を経て2011年にKudan Limited(英国)を設立し代表取締役に就任。2014年11月同社設立時に取締役となり、同年12月より現職。
郝天 取締役COO エリクソン・ジャパンを経て2021年同社入社。執行役員CROを経て、2023年6月より現職。
柴田裕亮 取締役 監査法人トーマツ、野村證券出向を経て、エアトリ取締役CFO、代表取締役CFOを歴任。2020年同社代表取締役社長兼CFOに就任。2021年6月より現職。


社外取締役は、美澤臣一(元トランス・コスモス専務取締役CFO)、小栗久典(内田・鮫島法律事務所パートナー)、三井田隆(三井田公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AP事業」および「その他」事業を展開しています。

AP(人工知覚)事業


機械に高度な視覚的能力を与えるAP(人工知覚)の基幹技術であるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)アルゴリズムを「KudanSLAM」としてソフトウェアライセンス化し、顧客に提供しています。主な顧客は、ロボティクス、自動運転、ドローン、AR/VRデバイス、デジタル地図等の開発を行う企業です。

収益は、顧客が技術を利用するために支払うライセンス料(評価ライセンス、開発ライセンス、製品ライセンス)が中心です。また、顧客製品化に向けたアルゴリズムのカスタマイズや技術コンサルティングを行う共同研究開発(開発受託)、保守・サポート、ハードウェアパッケージの販売からも収益を得ています。運営は主にKudan、Kudan Limited(英国)、Kudan USA LLC(米国)、Artisense Corporation(米国・ドイツ)等のグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績は以下の通りです。売上高は増加傾向にありますが、先行投資が続いており、利益面では損失計上が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1.3億円 2.7億円 3.3億円 4.9億円 5.2億円
経常利益 -15.8億円 -6.8億円 -3.9億円 -0.5億円 -7.4億円
利益率(%) -1232.4% -250.5% -118.6% -10.3% -143.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -17.0億円 -23.0億円 -5.6億円 -4.4億円 -8.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益実績は以下の通りです。売上高は増加しましたが、営業損失および経常損失は拡大しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4.9億円 5.2億円
売上総利益 4.4億円 3.4億円
売上総利益率(%) 89.4% 65.8%
営業利益 -5.3億円 -8.0億円
営業利益率(%) -107.4% -154.7%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が3.8億円(構成比33%)、給与が2.6億円(同23%)を占めています。技術開発および人材への投資が費用の大半を占める構造となっています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローがマイナスである一方、財務キャッシュ・フローが大幅なプラスとなっており、将来の成長に向けた投資資金を外部調達で賄う「勝負型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -4.9億円 -8.2億円
投資CF -4.3億円 -1.6億円
財務CF 17.6億円 18.5億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は91.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Eyes to the all machines」(全ての機械に眼を与える)をコーポレートビジョンとして掲げています。AP(人工知覚)に関する研究開発と先端技術企業への成果提供を通じて、産業界に新たなイノベーションを起こすことを目標とする技術集団です。

(2) 企業文化


経営理念として「独樹一幟、標新立異」(樹独り幟一つ、新しきを標し異なりを立てる)を掲げています。これは、他社と同じことをせず、一般に正しいと信じられていることを敢えて否定することを意味します。研究開発や事業展開において、他社と比較できない唯一の存在となることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


具体的な数値目標は記載されていませんが、中長期的な目標として、AP(人工知覚)技術の技術発展と応用拡大による技術需要を戦略的に取り入れ、市場における専業独立企業としてのシェア維持と更なる拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後は、ロボティクス・自動運転領域におけるソリューション化や、半導体や生成AIを含む人工知能との技術融合を推し進め、より革新性の高い人工知覚技術の開発を推進する方針です。また、製品普及の早いロボティクス・マッピング領域を中心に継続的な顧客製品化と市場販売の拡大を目指しつつ、中長期的には製品関連売上の積み上げによる利益拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


基盤技術およびソフトウェア開発に不可欠な、卓越した能力と専門分野を超えた応用力を持つ人材の確保・育成を重視しています。グローバル規模での採用活動を展開し、多様なバックグラウンドを持つ従業員を採用するとともに、開発パートナーとの共同研究開発や複数案件の経験を通じて、各従業員の能力・専門知識の継続的な向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.1歳 2.1年 8,495,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象でないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新への対応


同社グループが属する情報通信業は技術革新が著しく、代替技術の進歩や競合の出現により技術優位性が維持できなくなる可能性があります。万が一、新しい技術に対応できなかった場合や想定外の新技術・競合が出現した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、M&Aや事業提携を含めた戦略でDeep Tech領域でのポジション確立を進めています。

(2) 市場動向の影響


AP(人工知覚)市場は拡大が想定されていますが、技術発展が想定通りに進まない場合、業績に影響が出る可能性があります。これに対し、物流・製造・建設等の幅広い領域で、ロボティクス・自動運転・ドローン等の自動化技術支援を行い、グローバルな事業開発を通じて中長期的な成長を目指しています。

(3) 収益の変動


中長期の成長を見据えた長期案件や大型契約が増加しており、各案件の進捗遅れにより収益認識のタイミングが変動する可能性があります。これに対し、事業開発人員やエンジニアを増員し、各案件の進捗を適切に管理することでリスク低減を図っています。

(4) 海外事業展開リスク


海外展開を積極的に進めていますが、現地の法規制、商慣習、経済事情等の違いにより、予期せぬ費用増加や損失が発生するリスクがあります。これに対し、海外事業経験豊富な管理人員の増員や、現地の専門家との顧問契約等を通じてリスク低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。