Kudan 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Kudan 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(グロース)に上場するKudanは、機械が現実空間を認識するための「空間知覚」技術を中心とするAP事業を展開しています。直近の業績は、ソリューション展開の進展により大幅な増収を達成しており、研究開発などの先行投資は継続しているものの、赤字幅の縮小を実現しています。


※本記事は、Kudan株式会社の有価証券報告書(第12期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Kudanってどんな会社?


空間知覚技術の研究開発やソフトウェアライセンスの提供を手がけ、自動化・省人化を支援するDeep Tech企業です。

(1) 会社概要


2011年にKudan Limitedを英国に設立し、独自の研究開発を開始しました。2014年にKudanを東京に設立し、翌2015年にKudan Limitedを完全子会社化しています。2018年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2020年には独Artisense Corporationをグループ会社化するなど、事業と技術領域を拡大しています。

従業員数は連結で30名、単体で15名です。筆頭株主は創業者である大野智弘氏で、第2位は資産管理業務等を行う信託銀行、第3位は事業会社となっています。

氏名 持株比率
大野智弘 29.33%
UNION BANCAIRE PRIVEE 6.97%
ヘルシア 2.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役は大野智弘氏、代表取締役CEOは項大雨氏です。社外取締役比率は約43%です。

氏名 役職 主な経歴
項大雨 代表取締役CEO トヨタ自動車、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2016年に同社入社。取締役COOを経て、2020年に代表取締役CEOに就任。Arteisense Corporation取締役CEO等を経て現職。
大野智弘 代表取締役 アンダーセン・コンサルティング等を経て2011年Kudan Limited設立、代表取締役に就任。2014年の同社設立とともに代表取締役に就任。キッチハイク社外取締役などを経て現職。
郝天 取締役COO 日本エリクソンを経て2021年に同社入社。執行役員CROを経て、2023年に取締役COOに就任。
浅野礼子 取締役 NTTドコモを経て2024年に同社入社。日本事業統括責任者を経て、2026年に取締役に就任。


社外取締役は、美澤臣一(元トランス・コスモス専務取締役CFO)、小栗久典(内田・鮫島法律事務所パートナー)、三井田隆(公認会計士・三井田公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AP事業」を展開しています。

(1) 空間知覚ソフトウェア・ライセンス提供


同社はSLAMを中心とした自己位置推定や環境地図生成技術の研究開発を行っており、ロボットやデジタルツイン等に組み込まれるソフトウェアアルゴリズムやソリューションとして提供しています。建設、インフラ点検、製造、物流等の幅広い産業が顧客です。

主に技術のライセンス供与や開発支援、保守・サポートの形で顧客から収益を獲得しています。運営は同社やKudan Limited等のグループ各社が連携して行っています。

(2) ハードウェア・パッケージ販売


ソフトウェアの利用を補完し、顧客のシステム導入や実証実験、商用展開を円滑に促進するため、関連する3Dスキャナー、センサ、コンピュータ、ロボット等のハードウェア機器を提供しています。

外部ベンダーから調達したハードウェア機器と自社のソフトウェアを組み合わせて販売し、顧客から料金を受け取っています。運営は同社やグループ子会社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、顧客製品化やソリューション展開が進んだことで売上高は継続的な成長を続けており、特に直近の事業年度では大幅な増収を達成しています。一方で、研究開発や事業基盤構築への先行投資が続いているため、各期において経常損失を計上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2.7億円 3.3億円 4.9億円 5.2億円 12.0億円
経常利益 -6.8億円 -3.9億円 -0.5億円 -7.4億円 -1.7億円
利益率(%) -250.5% -118.6% -10.3% -143.6% -14.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -22.4億円 -4.1億円 -0.7億円 -8.0億円 -1.9億円

(2) 損益計算書


売上高が大きく伸びる中で、売上総利益も着実に増加しています。営業損失は依然として計上されていますが、売上の拡大や固定費削減施策の成果により、前期と比較して赤字幅は縮小傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5.2億円 12.0億円
売上総利益 3.4億円 3.7億円
売上総利益率(%) 65.8% 31.0%
営業利益 -8.0億円 -5.9億円
営業利益率(%) -154.7% -49.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与が2.8億円(構成比29%)、研究開発費が2.1億円(同22%)、支払手数料が1.3億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


単一セグメントであるAP事業において、デジタルツイン向け及びロボット向けを中心にソリューションの提供が拡大し、売上高が大きく成長しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
AP事業 5.2億円 12.0億円
連結(合計) 5.2億円 12.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は先行投資等でマイナスですが、将来の成長に向けた借入等で投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -8.2億円 -6.3億円
投資CF -1.6億円 -0.1億円
財務CF 18.5億円 0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は非開示ですが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は88.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「Eyes to the all machines(全ての機械に眼を与える)」をコーポレートビジョンとして掲げ、空間知覚に関する研究開発と先端技術企業への研究成果の提供を生業とする技術集団として、継続的な研究開発を通じて産業界に新たなイノベーションを起こすことを目指しています。

(2) 企業文化


研究開発や事業展開において、常に同社グループを他社と比較できない存在ならしめるような方針を定め、市場において唯一の存在となることを重視して経営を行っています。多様な人材が意欲をもって活躍する活力ある組織の構築を推進しています。

(3) 経営計画・目標


特定の数値目標は明記されていませんが、各産業における自動化・省人化・リモート化の実現を支える技術基盤の構築や、グローバルでの事業展開を通じて、中長期的な成長と企業価値の拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後は従来の空間知覚技術をさらに発展させ、生成AI等の技術との融合を進めることで、人の指示や現場状況に応じて自律的に行動する「フィジカルAI」の実現に取り組みます。ロボティクスやデジタルツイン領域を中心に製品化・ソリューション化を推進し、空間知覚技術の中核企業として事業拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材」を競争力の源泉と位置づけ、グローバル規模で性別や国籍を問わず多様な人材の採用を行っています。フルリモートワークやフレックス制度を採用し、時間や場所にとらわれない働き方ができる環境を整備することで、様々な人材が活躍できる組織の構築に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.6歳 2.2年 9,347,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向に関するリスク

空間知覚市場は将来的な拡大が想定されていますが、発展が同社の想定通りに進まなかった場合や、代替技術の急激な進歩、競合する技術の出現等により同社の技術優位性が維持できなくなった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 知的財産権の侵害リスク

第三者の知的財産権を侵害しないよう注意を払って事業展開していますが、認識の範囲外で侵害してしまう可能性があり、損害賠償請求や差止め請求等の訴訟を起こされた場合、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 収益化と事業モデル移行のリスク

同社の事業は顧客の研究開発や製品化等の進展に応じて収益が見込まれますが、顧客の方針や予算等の変更によりライセンスやソリューション導入が想定通りに進展しない場合、収益の安定性や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。