コプロ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コプロ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コプロ・ホールディングスは東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、建設・機電・IT分野のエンジニア派遣事業を展開しています。2025年3月期は、旺盛な建設需要やエンジニア数の増加により、売上高24.6%増、営業利益29.1%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社コプロ・ホールディングス の有価証券報告書(第19期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コプロ・ホールディングスってどんな会社?


コプロ・ホールディングスは、建設・プラント・機電・IT分野に特化したエンジニア派遣および紹介事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


2006年に株式会社トラスティクルーとして設立され、人材派遣・紹介事業を開始しました。2008年に株式会社コプロ・エンジニアードへ社名変更し、全国へ支店網を拡大。2015年に持株会社体制へ移行し、現社名となりました。2019年に東証マザーズおよび名証セントレックスへ上場し、2020年には東証一部・名証一部へ市場変更。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場・プレミア市場へ移行しました。

同グループの従業員数は連結で5,154名、単体では58名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社であるリタメコで、第2位は創業社長本人です。創業家が過半数の株式を保有する安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
リタメコ 44.11%
清川 甲介 13.81%
蔭山 恭一 5.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は清川甲介氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
清川 甲介 代表取締役社長 1998年建装工業入社。その後人材派遣会社での営業所長や社長を経て、2006年にトラスティクルー(現コプロ・ホールディングス)を設立し代表取締役に就任。以降、グループ経営を牽引し現職。
小粥 哉澄 常務取締役 2001年インプレス入社。人材派遣会社を経て2006年にトラスティクルー入社。支店長や取締役を歴任し、2021年より常務取締役。現在は管理本部長および事業子会社取締役を兼務し現職。
越川 裕介 常務取締役 2006年スタイルファクトリーかべす入社。2008年トラスティクルー入社。支店長、採用戦略本部長、人事戦略本部長等を歴任。2024年よりコプロコンストラクション社長および当社常務取締役に就任し現職。


社外取締役は、葉山憲夫(社会保険労務士法人葉山事務所所長)、藤巻正司(ティー・ハンズオンインベストメント代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設技術者派遣・紹介」「機電・半導体技術者派遣・請負」「IT技術者派遣」等のサービスを展開しています。

建設技術者派遣・紹介


建設・プラントエンジニア専門の人材派遣および紹介サービスを提供しています。主な顧客は建設会社やプラントエンジニアリング会社で、建築・土木・設備・プラントにおける施工管理技士(現場監督)やCADオペレーターなどの技術者を派遣しています。

収益は、派遣先企業からの人材派遣料および人材紹介手数料によって構成されています。運営は主に連結子会社のコプロコンストラクションが行っています。同グループの主力事業であり、全国に拠点を展開しています。

機電・半導体技術者派遣・請負


機械設計、電気・電子設計、半導体製造装置の保守・保全などを行うエンジニアの派遣および請負サービスを提供しています。輸送用機器、産業用機械、家電、半導体関連の大手製造業などが主な顧客です。

収益は、派遣契約に基づく派遣料金や請負契約に基づく報酬です。運営は連結子会社のコプロテクノロジーが行っています。特に半導体分野では、専用の研修施設「セミコンテクノラボ」を活用した未経験者の育成・派遣に注力しています。

IT技術者派遣


ITエンジニア派遣およびシステムエンジニアリングサービス(SES)を提供しています。システム開発会社や事業会社の情報システム部門に対し、ソフトウェア開発やインフラ構築・運用を行うエンジニアを派遣しています。

収益は、顧客企業からの派遣料金や準委任契約に基づく報酬です。運営は連結子会社のコプロテクノロジーが行っています。ITエンジニア向け求人サイト「ベスキャリIT」の運営も行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に2025年3月期は売上高が300億円を突破し、経常利益も過去最高を更新しました。利益率も9〜10%程度の高い水準を維持しており、事業規模の拡大と収益性の向上を両立させています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 148億円 156億円 188億円 241億円 300億円
経常利益 14億円 16億円 13億円 22億円 28億円
利益率(%) 9.7% 10.4% 7.0% 9.2% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 9億円 5億円 10億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率は約28%で安定しています。販管費も増加していますが、増収効果がそれを上回り、営業利益率は9%台を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 241億円 300億円
売上総利益 68億円 83億円
売上総利益率(%) 28.1% 27.7%
営業利益 21億円 28億円
営業利益率(%) 8.9% 9.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料が15億円(構成比27%)、採用費が13億円(同23%)を占めています。採用費への積極投資が続いていますが、売上拡大により吸収しています。

(3) セグメント収益


全サービスにおいて増収となりました。主力の建設分野は技術者数の増加により20%以上の増収を達成しました。機電・半導体分野およびIT分野も、採用強化やM&A効果により大きく伸長しています。特にIT分野は売上が急拡大しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
建設 219億円 267億円
機電・半導体 14億円 18億円
IT 8億円 14億円
連結(合計) 241億円 300億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ現金を、株主還元(配当・自己株式取得)や設備投資に充てる健全なキャッシュ・フロー構造です。2025年3月期は自己株式の取得により財務CFのマイナス幅が拡大しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 23億円 22億円
投資CF -3億円 -4億円
財務CF -5億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.3%で市場平均を大きく上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.2%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、パーパス(存在意義)として『最高の「働き方」と最高の「働き手」を。』を掲げています。エンジニア一人ひとりのキャリアアップを支援し、それを応援する仕組みを備えた「エンジニア応援プラットフォーム」を構築することで、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは創業以来、「人間力」を最重要視した組織風土の醸成に努めており、人にフォーカスした経営を推進しています。エンジニアのキャリア形成を支援する姿勢を重視し、入社時研修からアフターフォロー、専門的な技術研修まで、教育・サポート体制の充実に力を入れています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「コプロ・グループ Build the Future 2027」において、最終年度である2027年3月期の財務目標を上方修正し、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:470億円
* Non-GAAP営業利益:62億円
* 一株当たり当期純利益:185円

(4) 成長戦略と重点施策


「エンジニア応援プラットフォーム」の構築を核として、未経験者を含む多様な人材の採用と育成を強化しています。自社求人サイトの活用による採用効率の向上や、研修施設での教育を通じた付加価値の高いエンジニアの輩出、定着率の改善に取り組んでいます。また、既存事業の成長に加え、M&Aによる非連続な成長も視野に入れています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の確保を成長の礎と位置づけ、自社求人サイト「ベスキャリ」シリーズやリファラル採用など多様なチャネルで採用を強化しています。また、「エンジニア応援プラットフォーム」により、未経験者が安心してキャリアを積める環境を整備。研修施設「監督のタネ」「セミコンテクノラボ」での教育や、きめ細かなフォロー体制により、定着率向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.2歳 3.2年 4,836,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合(提出会社) 14.3%
男性労働者の育児休業取得率(提出会社) 0.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者・提出会社) 68.6%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用・提出会社) 68.6%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用・提出会社) -%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修受講割合(73.0%)、月平均残業時間(21.2h)、エンゲージメント指数(4.86)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設業界への依存


同社グループの主要顧客は建設業界であり、業績は国内の建設投資動向の影響を受けます。景気変動や公共事業の削減、民間投資の落ち込み等により建設投資が著しく減少した場合、または法改正等の影響により人材派遣需要が構造的に変化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保


エンジニアの採用は事業成長の要ですが、労働需給の逼迫により人材獲得競争が激化しています。同社は自社サイトや多様なチャネルでの採用強化を進めていますが、採用市場の動向によっては人材確保が難航したり、採用コストが増加したりする可能性があり、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 労働者派遣法等の改正対応


労働者派遣法や労働基準法などの関連法令は頻繁に改正されており、規制強化や同一労働同一賃金への対応が求められています。同社は法令遵守と適切な労務管理に努めていますが、今後の法改正の内容や適応コストの増加、顧客による契約形態の変更などが、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。