コプロ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コプロ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コプロ・ホールディングスは、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する企業です。建設技術者派遣・紹介、機電・半導体技術者派遣・請負サービスを主力事業として展開しています。直近の業績トレンドは、技術者数の大幅な増加により、売上高および各段階利益ともに増収増益を達成しています。


※本記事は、コプロ・ホールディングスの有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コプロ・ホールディングスってどんな会社?


建設および機電・半導体分野に特化した技術者派遣と紹介サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


2006年に人材派遣・紹介事業を目的として設立されました。2015年に持株会社体制へ移行し、コプロ・ホールディングスへ社名を変更するとともに主要事業を子会社へ移管しました。2019年に東京証券取引所マザーズ等に株式を上場し、2022年にプライム市場等へ移行しています。2026年には同業他社を買収し完全子会社化しました。

現在の従業員数は、連結で8,402名、単体で61名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は同社代表取締役社長の資産管理会社であるリタメコで、第2位は創業者の清川甲介氏です。第3位には個人の大株主が名を連ねており、創業者およびその関連による持株比率が高い傾向にあります。

氏名 持株比率
リタメコ 43.84%
清川甲介 13.73%
蔭山恭一 5.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は清川甲介氏が務め、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
清川甲介 代表取締役社長 1998年建装工業入社。2006年コプロ・ホールディングスの前身を設立し代表取締役社長就任。グループ各社の代表を歴任し、2026年よりトライトエンジニアリング等の代表取締役社長を兼務し現職。
越川裕介 常務取締役 2008年コプロ・ホールディングスの前身に入社。支店長や本部長を歴任し2017年取締役就任。2024年より常務取締役および事業子会社の代表取締役社長を兼務し現職。
小粥哉澄 取締役 2001年インプレス入社。2006年コプロ・ホールディングスの前身に入社。支店長や事業本部長を歴任し2016年取締役就任。常務取締役管理本部長を経て2025年より取締役として現職。


社外取締役は、葉山憲夫(社会保険労務士法人葉山事務所所長)、田邉えり子(ディップ社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設」「機電・半導体」「IT」関連事業を展開しています。

(1) 建設

同社グループの中核として、建設・プラントエンジニア専門の人材派遣および人材紹介サービスを提供しています。建築、土木、設備、プラント分野における現場監督やCADオペレーターなどの技術者を対象としており、未経験者の採用・育成にも注力して全国展開しています。

主に派遣先企業から受け取る技術者の派遣料金や、紹介先企業からの紹介手数料が収益源となります。この事業の運営は、主にコプロコンストラクションおよび2026年にグループ入りしたトライトエンジニアリングが行っています。

(2) 機電・半導体

機電・半導体エンジニアに特化した人材派遣および請負サービスを提供しています。半導体デバイスや半導体製造装置、輸送用機器、産業用機械などの大手製造業を主な顧客とし、生産技術、開発、設計部門に対する技術者の派遣や業務の請負を行っています。

顧客企業からの人材派遣に伴う派遣料金や、設計業務などの請負契約に基づく業務委託料が主な収益源となっています。この事業の運営は、主にコプロテクノロジーが行っています。

(3) IT

IT技術者派遣および準委任契約を伴うIT人材サービスを提供してきました。しかし、経営資源を注力領域である建設および機電・半導体分野へ集中させるための事業構造改革の一環として、2026年にこのIT技術者派遣サービスはジャパニアスへ事業譲渡されました。

IT技術者の労働力提供に伴う派遣料金や準委任契約に基づく収益を得ていましたが、事業譲渡により同領域からは撤退し、現在は中核事業の競争力強化と持続的な成長に注力しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が毎期連続して増加しており、順調な事業規模の拡大が見られます。利益面については一時的な踊り場があったものの、その後は利益率も回復傾向にあり、増収増益のトレンドを力強く維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 156億円 188億円 241億円 300億円 367億円
経常利益 16億円 13億円 22億円 28億円 37億円
利益率(%) 10.4% 7.0% 9.2% 9.3% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 5億円 10億円 14億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しており、売上総利益率も改善傾向にあります。積極的な採用投資等による費用の増加を増収効果で吸収し、営業利益および営業利益率ともに向上を果たしています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 300億円 367億円
売上総利益 83億円 104億円
売上総利益率(%) 27.7% 28.3%
営業利益 28億円 36億円
営業利益率(%) 9.2% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料が18億円(構成比27%)、採用費が16億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である建設分野の派遣・紹介サービスが順調に伸長し、全体の売上増を強力に牽引しています。また、機電・半導体分野も大きく成長する一方で、経営資源を注力領域へ集中させるためIT分野は事業譲渡による見直しが行われました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設 267億円 330億円
機電・半導体 18億円 24億円
IT 14億円 12億円
連結(合計) 300億円 367億円


直近のキャッシュ・フローは、営業活動で安定的に資金を獲得しつつ、金融機関からの借入等により資金調達を行い、企業買収などの積極的な投資を実行している積極型の状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 22億円 31億円
投資CF -4億円 -284億円
財務CF -16億円 280億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は31.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は20.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、パーパス(存在意義)として『最高の「働き方」と最高の「働き手」を。』を掲げています。技術者一人ひとりのキャリアアップを応援し、人を尊重してその可能性を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上と社会への貢献を目指す姿勢を鮮明にしています。

(2) 企業文化

創業以来、人間力を最重要視した組織風土の醸成に努めており、「人にフォーカスをした経営」を推進しています。若手主体の組織ならではの機動力を活かし、早期から自律して「考動(考えて動く)」する文化を育むことで、企業成長を牽引する人材の育成に注力しています。

(3) 経営計画・目標

中期経営計画「コプロ・グループ Build the Future 2027」において、売上高や各種段階利益の中期的な成長を重視しています。また、事業子会社の技術者派遣事業においては、客観的な非財務指標として技術者の在籍人数、稼働率、定着率を重要視し、継続的なモニタリングと改善を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営戦略の核として、技術者のキャリアパス形成を能動的に支援する「エンジニア応援プラットフォーム」の構築を推進しています。自社求人サイトの強化による未経験者のローコスト採用や、充実した研修施設での技術教育を通して、定着率を高めながら圧倒的業界No.1の規模と品質を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

一人ひとりが自律し挑戦し続けられる環境整備こそが企業価値向上の鍵であると考え、未経験からでも安心してエンジニアとしてのキャリアを築ける教育プログラムを提供しています。また、資格取得支援などの福利厚生を充実させ、社員のスキルアップを強力にバックアップする体制を整えています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.0歳 3.6年 5,138,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 40.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 60.1%
男女賃金差異(正規雇用) 60.1%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男性労働者の育児休業取得率、およびパート・有期労働者の男女賃金差異に関する記載は有価証券報告書にありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(4.33)、キャリアに関するエンゲージメントスコアの男女差異(-0.6pt)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気動向と雇用維持の負担

同社グループの技術者の多くは無期雇用であるため、顧客の属する業界の景気が悪化し派遣契約の中途解約等が生じた場合、待機技術者の人件費負担が増大し、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材採用の競争激化

少子高齢化による労働人口の減少や構造的な人手不足を背景に、新卒および中途採用の競争が激化しています。十分な採用力を維持し、優秀な人材を継続して確保・定着できなければ、事業成長の制約となるリスクがあります。

(3) 企業買収に伴うのれんの減損

M&Aによる積極的な事業拡大に伴い、多額ののれんを計上しています。期待したシナジー効果が創出できず、事業環境の変化等により将来の収益力が低下した場合、減損損失が発生して業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。

(4) レピュテーション・リスク

多くの人材を雇用し派遣する社会的責任の大きな事業であるため、コンプライアンスを軽視した行為や業界全体に対するイメージの悪化が生じた場合、社会的信用の低下やレピュテーションの悪化を通じて事業運営に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。