※本記事は、ギークス株式会社の有価証券報告書(第19期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ギークスってどんな会社?
主力のIT人材マッチングサービスを軸に、海外展開やDX人材育成にも注力する企業です。
■(1) 会社概要
ギークスは、2007年にIT人材事業を展開するベインキャリージャパンとして設立されました。2013年に現在の社名へ変更し、2019年に上場を果たしました。その後も、2021年のシードテック設立による人材育成事業の強化や、2023年のオーストラリア企業の子会社化による海外展開など、事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結で300名、単体で173名体制です。大株主の構成は、筆頭株主が代表取締役CEOの資産管理会社である合同会社アトムで、第2位も創業者の個人名が名を連ねています。第3位には光通信関連の投資ファンドが入り、経営陣を中心とした安定した資本基盤を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 合同会社アトム | 38.38% |
| 曽根原稔人 | 26.59% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 3.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役CEOは曽根原稔人氏が務めており、取締役6名のうち社外取締役は2名で、社外取締役比率は33.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 曽根原稔人 | 代表取締役CEO | パレスホテル等を経て、2007年に同社を設立。代表取締役社長に就任し現在に至る。 |
| 佐久間大輔 | 取締役CFO | 日本アジア投資等を経て、2015年に同社入社。2018年より取締役として経営管理全般を管掌。 |
| 成末千尋 | 取締役IT人材事業本部長 | 住友商事等を経て、2009年に同社入社。2018年より取締役として国内のIT人材事業を牽引。 |
| 高原大輔 | 取締役海外事業推進室長 | コムスン等を経て、2010年に同社入社。フィリピンでの子会社立ち上げ等に尽力し、2024年より現職。 |
社外取締役は、松島俊行(松島俊行税理士事務所代表)、佃友貴(TAコンサルティング代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「IT人材事業(国内)」「IT人材事業(海外)」「Seed Tech事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■IT人材事業(国内)
ITフリーランスと企業のプロジェクトをマッチングするサービスです。生成AI普及に伴う市場ニーズの高度化を受け、要件定義などの上流工程やプロジェクトマネジメントを担う高度人材の集客を強化しています。正社員とフリーランスによるハイブリッドチームの提案など、付加価値の高いDX支援も展開しています。
主に企業からの業務委託等によるシステム開発支援やコンサルティングの対価を収益源としています。フリーランスには営業代行や福利厚生等のサポートを提供します。事業の運営は主にギークスが担っています。
■IT人材事業(海外)
オーストラリア市場において、カジュアル雇用人材やフリーランスを活用したIT人材特化型の人材サービスを展開しています。現地の企業や公的機関に対して、人材派遣や人材紹介、顧客の人材調達から管理までを一貫して請け負うMSP事業(包括的管理システム提供)などを提供しています。
主に顧客企業からの人材派遣料や人材紹介手数料、MSPシステムの提供に伴う管理手数料を収益源としています。シドニーやメルボルンに拠点を構え、運営は傘下のLaunch Group Holdingsなどの海外子会社が担っています。
■Seed Tech事業
企業向けにDX化を現場で伴走支援する実務型デジタル人材提供サービスを展開しています。フィリピンの英語が堪能なIT人材によるオフショア開発受託のほか、セブ島へのデジタル留学事業や、非エンジニアのリスキリングを支援するSaaS型DX・IT人材育成サービス「ソダテク」などを提供しています。
主に企業からのシステム開発受託料、留学プログラムの受講料、SaaSサービスのシステム利用料などを収益源としています。事業の運営はシードテックやフィリピン子会社のNexSeedなど複数のグループ企業が連携して担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は堅調な右肩上がりで推移しており、直近5年間で大幅に事業規模を拡大しています。経常利益はM&Aに伴う減損などの影響により2024年3月期で一時的に大きく落ち込みましたが、その後は海外事業の収益改善等もあり、当期はV字回復を見せ再び成長軌道に乗っています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 143億円 | 160億円 | 237億円 | 252億円 | 264億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 6億円 | 0.8億円 | 5億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 7.9% | 3.5% | 0.3% | 2.0% | 3.2% |
| 当期利益(親会社株主帰属) | 7億円 | 2億円 | -15億円 | 0.5億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
当期は売上高が増加し、それに伴い売上総利益も拡大しました。付加価値の高いサービスの提供や海外事業の立て直しが進んだことで、営業利益は前期から大幅に増加し、収益性の改善が明確に表れています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 252億円 | 264億円 |
| 売上総利益 | 36億円 | 40億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.2% | 15.0% |
| 営業利益 | 5億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 2.0% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が12億円(構成比40%)、広告宣伝費が3億円(同8%)を占めています。売上原価の多くはITフリーランスや派遣人材等への支払いにあたる外注費が占めており、人材ビジネスの特性が表れています。
■(3) セグメント収益
主力の国内IT人材事業が安定的に利益を創出し、全体を力強く牽引しています。また、前期は赤字だった海外IT人材事業が、経営体制の見直しやコスト削減により黒字転換を果たしたことが、当期の連結利益の大きな押し上げ要因となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| IT人材事業(国内) | 153億円 | 166億円 | 13億円 | 14億円 | 8.4% |
| IT人材事業(海外) | 94億円 | 92億円 | -2億円 | 0.3億円 | 0.4% |
| Seed Tech事業 | 3億円 | 5億円 | 0.1億円 | 0.3億円 | 7.3% |
| 連結(合計) | 252億円 | 264億円 | 5億円 | 9億円 | 3.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金や資産回収等のキャッシュによって、借入金の返済等を着実に進める「改善型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.5億円 | 7億円 |
| 投資CF | -4億円 | 0.8億円 |
| 財務CF | 2億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、グランドビジョンに「21世紀で最も感動を与えた会社になる」を掲げています。AI技術の普及やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により変化する社会において、「日本をDX・AXでアップデートする会社」として顧客企業の変革課題に伴走し、新たな経済成長に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
「年中無休の好奇心」「変化を楽しむ」などからなる「10の心得」を価値基準とし、従業員がプロフェッショナルとして自律的に成長し続ける組織を志向しています。この「Culture Deck」を基軸に採用や評価を行い、多様な人材が意欲を持って活躍するエンゲージメントの高い企業文化の醸成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2027年3月期に向けた重要取組項目として各事業のKPIを設定しています。「GEECHS JOB」の新規登録者数や取引企業数の拡大、AXコンサルタントやPMへのリスキリングプログラム実施のほか、「ソダテク」利用者の増加や健康経営の推進などを中短期の目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
AI技術による市場ニーズの高度化に対応するため、単なるリソース提供にとどまらず、ハイブリッドチームの提案や独自のAIシステムを活用したマッチング精度の向上を図っています。海外市場では現地法令の遵守とサービス品質の向上に注力し、また成長戦略の一環としてシナジーを見込めるM&Aも積極的に推進していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」を最も重要な資本と位置づけ、従業員の「ウェルビーイング」「エンゲージメント」「キャリアディベロップメント」を3本柱とする人材戦略を展開しています。年齢や性別に関係なく多様な人材が活躍できる環境を整備するとともに、自社サービスを活用した研修制度等で自律的な成長とスキル向上を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 32.0歳 | 3.9年 | 5,182,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、「Wevox」エンゲージメント総合スコア(75)、オンライン型研修「ソダテク」利用率(60%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AI普及等に伴う市場ニーズの高度化
生成AIの急速な進化により一部の定型業務が代替されるなど、企業が求めるIT人材の要件が変化しています。急激な市場ニーズの変化に同社が適時に対応できなかった場合、あるいは正社員エンジニアによるソリューション提供において想定通りに案件を獲得できなかった場合、人件費負担の増大等が収益を圧迫するリスクがあります。
■(2) 海外事業における法規制と商慣習の違い
オーストラリア等の海外市場は成長機会が大きい一方で、現地居住者を役員に選任する義務や特殊な商慣習が存在します。管理体制が複雑化することで経営の柔軟性に影響が出るほか、現地の労働法制や税制の変更、為替変動、競合環境の変化といった外部要因が事業運営や収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 稼働人材による不祥事やコンプライアンス違反
同社のサービスを通じて就業するITフリーランスや正社員エンジニアが、派遣先や業務提供先において情報漏洩、規律違反、不正行為などの不祥事を発生させた場合、同社グループに対する社会的信用が著しく低下し、事業活動および業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。



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