ギークス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ギークス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のIT人材事業会社です。ITフリーランス活用支援を行う国内事業と、豪州での人材派遣を行う海外事業、IT人材育成のSeed Tech事業を展開しています。2025年3月期は、国内事業の伸長に加え豪州事業の増収が寄与し、売上高は過去最高を更新、営業利益も大幅な増益となりました。


※本記事は、ギークス株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ギークスってどんな会社?


ITフリーランスと企業をマッチングするプラットフォーム事業を主軸に、グローバルなIT人材育成や海外派遣事業も展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2007年に株式会社ベインキャリージャパンとして設立され、IT人材事業を開始しました。2013年に現社名へ変更後、2019年に東証マザーズへ上場し、2020年には東証一部へ市場変更を果たしました。その後、2023年に豪州の人材サービス企業Launch Group Holdings Pty Ltd等を、2025年には株式会社アライヴを連結子会社化するなど、グローバル展開と事業拡大を推進しています。

連結従業員数は291名、単体では172名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社である合同会社アトムで、第2位は創業社長の曽根原稔人氏本人となっており、経営陣が過半数の株式を保有するオーナーシップの強い資本構成です。第3位には株式会社全国個人事業主支援協会が名を連ねています。

氏名 持株比率
合同会社アトム 37.75%
曽根原 稔人 26.15%
株式会社全国個人事業主支援協会 2.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役CEOは曽根原稔人氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
曽根原 稔人 代表取締役 株式会社パレスホテル、クルーズ株式会社代表取締役副社長を経て、2007年に同社設立、代表取締役社長に就任。2009年にMBOにより全株式取得。
佐久間 大輔 取締役 日本アジア投資株式会社、クルーズ株式会社を経て、2015年に入社。経営企画本部長等を歴任し、2018年より現職。
成末 千尋 取締役IT人材事業本部長 住友商事株式会社、トレンダーズ株式会社を経て、2009年に入社。PR・採用戦略本部長等を経て、2018年より現職。
高原 大輔 取締役海外事業推進室長 株式会社コムスン等を経て、2010年に入社。NexSeed Inc. General Manager等を歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、松島俊行(松島俊行税理士事務所代表)、佃友貴(TAコンサルティング株式会社代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「IT人材事業(国内)」「IT人材事業(海外)」「Seed Tech事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) IT人材事業(国内)


ITフリーランスを活用した技術リソースのシェアリングプラットフォームを提供しています。主な顧客はシステム開発のニーズを持つ企業で、エンジニア不足の課題に対し、データベースに登録されたITフリーランスをマッチングし、準委任契約に基づき技術支援を行います。

収益は、顧客企業から受け取るシステム開発支援等の対価です。契約に基づきITフリーランスへ業務を再委託し、その差額が収益となります。運営は主にギークスが行っており、2025年2月より連結子会社となった株式会社アライヴも本セグメントに含まれます。

(2) IT人材事業(海外)


オーストラリア市場において、IT人材に特化した人材派遣および人材管理ソリューション(MSP)を提供しています。現地の企業や政府機関に対し、多様な雇用形態での人材供給を行い、人材調達から管理までの一連のプロセスを支援しています。

収益は、派遣スタッフの稼働実績に応じた人材派遣料や、包括的な人材管理サービスに対する対価です。運営は、現地の連結子会社であるLaunch Group Holdings Pty LtdおよびLaunch Recruitment Pty Ltdが担っています。

(3) Seed Tech事業


日本とフィリピンを拠点に、IT人材の育成とオフショア開発を行っています。プログラミングスクール「Seed Tech School」やSaaS型DX/IT人材育成サービス「ソダテク」を提供し、企業のDX推進やエンジニア育成を支援しています。

収益は、オフショア開発の受託費、IT留学やスクールの受講料、および育成サービスの利用料等です。運営は、シードテック株式会社、およびフィリピンの現地法人NexSeed Inc.、SEED TECH PHILIPPINES INC.が行っています。

(4) その他


スポーツ領域(ゴルフ等)を中心としたデジタルマーケティング支援やD2C支援を行っていました。なお、本事業は当連結会計年度において撤退することが決定しています。

収益は、デジタルマーケティング支援やD2C支援サービスに対する対価です。運営はギークスが行っていましたが、事業撤退に伴い縮小しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は過去5期間で継続的に拡大しており、34億円規模から252億円へと急成長を遂げています。利益面では、M&Aや先行投資の影響により変動が見られますが、直近の2025年3月期は経常利益が大幅に回復し、当期純利益も黒字転換を果たしました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 34億円 143億円 160億円 237億円 252億円
経常利益 7.1億円 11億円 5.7億円 0.8億円 4.9億円
利益率(%) 20.8% 7.9% 3.5% 0.3% 2.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.3億円 3.6億円 3.2億円 -5.0億円 1.1億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価の増加率がそれを上回り、売上総利益率は低下しています。一方で、販売費及び一般管理費の抑制が進み、営業利益率は大きく改善しました。コストコントロールの効果により、営業利益額は約5倍に拡大しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 237億円 252億円
売上総利益 41億円 36億円
売上総利益率(%) 17.5% 14.2%
営業利益 0.9億円 5.0億円
営業利益率(%) 0.4% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が13億円(構成比41%)、広告宣伝費が2.6億円(同8%)を占めています。売上原価は216億円で、主にエンジニアへの再委託費等の外注費で構成されています。

(3) セグメント収益


国内IT人材事業は売上・利益ともに堅調に推移し、全社の利益を牽引しています。海外IT人材事業は売上が大幅に伸長したものの、営業損失が続いています。Seed Tech事業は黒字転換を果たしました。その他事業は撤退により縮小しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
IT人材事業(国内) 141億円 153億円 11億円 13億円 8.4%
IT人材事業(海外) 72億円 94億円 -1.4億円 -1.6億円 -1.7%
Seed Tech事業 2.7億円 3.2億円 -0.2億円 0.1億円 1.8%
その他 1.3億円 0.8億円 0.0億円 -0.2億円 -22.7%
調整額 -0.3億円 -0.3億円 -5.4億円 -6.2億円 -
連結(合計) 237億円 252億円 0.9億円 5.0億円 2.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「積極型」です。本業の営業活動で得たキャッシュと、財務活動による資金調達を合わせ、M&Aを含む投資活動に積極的に資金を投下している状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -0.0億円 0.5億円
投資CF 3.2億円 -4.2億円
財務CF -3.3億円 2.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、グランドビジョンとして「21世紀で最も感動を与えた会社になる」を掲げています。インターネット普及による社会の変化を捉え、組織的な対応力を強みに、サービスの創造・進化を通じて成長し続け、永続的な企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「挑戦」「楽しむ」「感動」といったキーワードを大切にする文化を持っています。組織的対応力を強みとし、変化する環境において、提供サービスの創造や進化を通じて常に成長し続ける姿勢を重視しています。また、ITフリーランスに寄り添い、柔軟で多様性のあるキャリア支援を行うことで、信頼関係の構築を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、日本のIT人材不足を解決する会社として、総合的なITソリューションサービスを提供するグループを目指しています。具体的な数値目標としては、中長期的な視点での企業価値向上を掲げつつ、足元の事業においてはDX施策による業務効率化や収益性の向上に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


国内IT市場の拡大を背景に、既存事業の強化と事業領域の拡大を図ります。国内事業では、ITフリーランス以外の多様な契約形態への対応や新規ソリューションの構築を進めます。海外事業では、豪州市場での法令遵守体制整備や人材ネットワーク拡充により成長を目指します。また、M&Aを活用した事業拡大も推進し、シナジー創出を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な人材が活躍できる環境整備と活力ある組織構築を目指し、「ウェルビーイング」「エンゲージメント」「キャリアディベロップメント」の3軸で人材戦略を推進しています。心身ともに健康で挑戦できる基盤づくり、組織への愛着を高める取り組み、自律的なキャリア形成支援に注力し、研修制度の拡充やAI活用の推進も行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 32.0歳 3.6年 5,115,000円


※平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社は従業員規模が300人以下のため、男女賃金差異については有報には本稿の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT人材事業に関するリスク


IT・インターネット業界の成長鈍化や予期せぬ法的規制により、ITフリーランスへの需要が減少した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、ITフリーランスによる不祥事や、独自の基幹システムにおける障害・登録ミスも、社会的信用の毀損や業績への悪影響をもたらすリスクがあります。

(2) 海外事業に関連するリスク


豪州やフィリピンでの事業展開において、現地の法規制、商慣習、政治情勢、為替変動等の外部要因がリスクとなります。特に豪州では役員の居住義務や労働法制の変更、フィリピンでは外資規制による経営権維持の課題があり、これらが事業運営や収益性に影響を与える可能性があります。

(3) その他のリスク


成長戦略の一環として推進するM&Aにおいて、買収後の統合やシナジー創出が想定通り進まない場合、減損損失の計上等により業績に影響を与える可能性があります。また、事業領域に関連する労働者派遣法や下請法などの法的規制の強化や変更も、事業展開への制約となる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。