※本記事は、株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルの有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイ・パートナーズフィナンシャルってどんな会社?
金融商品仲介業を基軸に、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)向けのプラットフォームを提供する企業です。
■(1) 会社概要
2006年にアイ・ブレーンとして設立され、2007年に証券仲介業を開始しました。2009年に現社名へ変更し、2010年には子会社を設立しています。2016年に親会社であったアイ・パートナーズホールディングスを吸収合併し、2021年に東証マザーズへ上場しました。
同社の従業員数は連結で39名、単体で34名です。筆頭株主は同社役員の石原章太郎氏で、第2位は個人株主の中道謙氏、第3位は投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 石原 章太郎 | 10.79% |
| 中道 謙 | 9.79% |
| 千代田インベストメント第1号投資事業有限責任組合 | 5.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性0名の計4名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は田中譲治氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中 譲治 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 1979年大和証券入社。モルガン・スタンレー、メリルリンチ等を経て2002年IFAとして独立。2009年同社入社、2014年代表取締役就任。2018年より現職。 |
| 吉川 昌利 | 取締役(常勤監査等委員) | 2003年税理士法人山田&パートナーズ入所。2007年税理士登録。2016年吉川昌利税理士事務所開設。同社取締役を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、上野博史(元農林水産事務次官)、中川洋(元メリルリンチ証券会社東京支店副会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金融商品仲介サービス」および「その他金融サービス」事業を展開しています。
■(1) 金融商品仲介サービス
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)が顧客に対して資産運用のアドバイスを行うためのビジネスプラットフォームを提供しています。同社は複数の証券会社と業務委託契約を結んでおり、所属IFAは特定の金融機関に縛られず、中立的な立場で顧客に金融商品の提案や取引の取次ぎを行います。
収益源は、顧客が証券会社へ支払った手数料のうち所定割合を受け取る報酬と、IFAから徴収するシステム使用料です。運営は主にアイ・パートナーズフィナンシャルが行っています。同社は米国の「スーパーOSJ」や「TAMP」のような役割を担い、IFAの業務支援やコンプライアンス管理を提供しています。
■(2) その他金融サービス
顧客のライフサイクルに合わせた総合コンサルティングとして、生命保険や損害保険の募集業務を行っています。また、資産運用や保険以外にも、不動産、相続・贈与、事業承継など、顧客のライフステージに応じた様々なニーズや悩みに対応するため、外部の専門家とのマッチングサービスも提供しています。
収益源は、保険会社からの代理店手数料や、ビジネスマッチングに伴う手数料などです。運営は主に連結子会社のAIPコンサルタンツが担っており、金融商品仲介業とのシナジーを発揮しながら、顧客へのワンストップサービスを提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円台で推移しており、2025年3月期は前期比で微増となりました。一方、利益面では変動が見られ、2023年3月期に損失を計上した後、2024年3月期は黒字回復しましたが、直近の2025年3月期は再び赤字となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 40億円 | 38億円 | 30億円 | 37億円 | 38億円 |
| 経常利益 | 2.4億円 | 1.1億円 | -1.2億円 | 0.1億円 | -0.0億円 |
| 利益率(%) | 5.9% | 2.9% | -4.0% | 0.4% | -0.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.6億円 | 0.7億円 | -1.3億円 | 0.1億円 | -0.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は増加したものの、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。販売費及び一般管理費は微減しましたが、売上総利益の減少をカバーできず、営業損益は赤字に転落しています。利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 37億円 | 38億円 |
| 売上総利益 | 7.7億円 | 7.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.7% | 19.8% |
| 営業利益 | 0.1億円 | -0.0億円 |
| 営業利益率(%) | 0.4% | -0.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.4億円(構成比32.4%)、地代家賃が1.5億円(同20.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
金融商品仲介サービスは売上が増加しましたが、その他金融サービスも微増ながら安定しています。全体としては増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 金融商品仲介サービス | 36億円 | 36億円 |
| その他金融サービス | 1.8億円 | 1.8億円 |
| 連結(合計) | 37億円 | 38億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アイ・パートナーズフィナンシャルは、金融商品仲介業等に係る売上債権の減少や仕入債務の減少等により、営業活動による資金は減少しました。投資活動では、社員及びIFA向けのPC取得や差入保証金の差入等により、使用した資金は前年度より減少しました。財務活動では、株式発行による収入があったものの、配当金の支払い等により、使用した資金は前年度より減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.1億円 | -0.0億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -0.1億円 |
| 財務CF | -0.3億円 | -0.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「日本のリテール金融改革を通じて社会に貢献します。」を経営理念として掲げています。金融商品仲介業における媒介する資産残高を増大させることで、グループの持続的な成長と企業価値の向上を図ることを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
「IFAビジネスに関わる全ての人々の幸せを目指します。」をビジョンに掲げ、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)と共に真のお客様重視を実現することを目指しています。また、お客様本位の業務運営に関する方針(フィデューシャリー宣言)を定め、IFAの独立性・中立性の堅持や、お客様の最善の利益の追求を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、以下の2点を重視しています。具体的な数値目標については、有価証券報告書内での記載はありません。
* 媒介する資産残高
* 同社に所属するIFA数
■(4) 成長戦略と重点施策
IFAビジネスこそが「真のお客様重視」を実現すると確信し、IFAへのビジネスプラットフォームの付加価値向上に注力しています。具体的には、IFAの満足度向上による契約継続と新規紹介の促進、研鑽機会の提供等による金融サービスのクオリティ向上、および事業拡大に対応するための内部管理体制の強化を優先的に対処すべき課題として挙げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員の能力向上が優れたサービス提供に重要であるとの認識から、能力を十分に発揮できる職場環境作り、自律的なキャリア形成支援、働きがいの向上を人材育成方針としています。具体的には、女性管理職比率目標の設定や派遣社員からの正社員登用、DX推進を主眼とした研修機会の提供などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 48.6歳 | 5.3年 | 6,580,000円 |
※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 55.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 92.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 87.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | -% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場及び事業環境に関するリスク
主力事業である金融商品仲介業や保険募集業務は、景気動向や株式相場等の金融市場の影響を受けやすく、市場環境が悪化した場合、顧客の投資意欲減退により収益が減少する可能性があります。また、金融商品の売買手数料無料化が進展し、所属IFAが十分な付加価値を提供できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定事業およびIFA数への依存
同社グループはIFAビジネスに特化しており、事業環境の変化や競争力低下によりIFA数が伸び悩む場合、業績に影響が出る可能性があります。IFAのミスマッチによる解約や競合他社との争奪激化、風評被害などがリスク要因として挙げられます。
■(3) 特定取引先への依存
金融商品仲介業務において、特定の証券会社(楽天証券、SBI証券など)への売上依存度が高くなっています。取引先の経営環境や契約内容の変更が生じた場合、同社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。



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