アイ・パートナーズフィナンシャル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイ・パートナーズフィナンシャル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するアイ・パートナーズフィナンシャルは、特定の金融機関に属さないIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)による金融サービス提供事業を主力としています。直近の業績は、売上高が45.8億円へ拡大し、経常利益は1.1億円の黒字へ転換するなど、増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルの有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイ・パートナーズフィナンシャルってどんな会社?


IFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)による金融サービス提供事業を基軸に展開するグロース市場上場企業です。

(1) 会社概要


同社は2006年2月に設立され、2007年9月に証券仲介業(現・金融商品仲介業)を開始しました。2016年8月に組織再編を経て、保険代理店業務を行うAIPコンサルタンツを完全子会社化しています。2021年6月に東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たし、その後も複数の証券会社と業務委託契約を拡大しています。

現在の従業員数は連結38名、単体35名です。筆頭株主は個人の石原章太郎氏で、第2位は投資事業組合の無限責任組合員である千代田インベストメント、第3位は個人の中道謙氏となっています。

氏名 持株比率
石原 章太郎 10.72%
千代田インベストメント第1号投資事業有限責任組合無限責任組合員 千代田インベストメント 10.12%
中道 謙 9.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は田中譲治氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田中 譲治 代表取締役社長兼社長執行役員 大和証券やメリルリンチ日本証券等を経てIFAとして独立。2014年より現職。
松波 精二 取締役兼上席執行役員 日興證券(現SMBC日興証券)を経て2018年に同社入社。2025年より現職。
吉川 昌利 取締役(常勤監査等委員) 税理士法人等を経て2007年税理士登録。2018年より現職。


社外取締役は、上野博史(元農林水産事務次官・元農林中央金庫理事長)、中川洋(元メリルリンチ証券会社東京支店副会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「IFAによる金融サービス提供事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

金融商品仲介サービス


特定の金融機関に属さない独立・中立の立場から、顧客のライフステージに応じた金融商品・サービスの提案を行うIFAビジネスプラットフォームを提供しています。複数の証券会社と提携し、株式や債券、投資信託などの売買注文を取り次いでいます。

顧客が金融商品の売買や預かり資産残高に応じて証券会社に支払った手数料等のうち、所定の割合を証券会社から報酬として受け取り、その一部をIFAへ支払う仕組みです。また、プラットフォーム利用の対価としてIFAからシステム使用料を徴収しており、運営は同社が行っています。

その他金融サービス


保険・証券の総合コンサルティングに対する顧客のニーズに対応するため、保険代理店としての保険募集業務や、不動産、相続などの専門家マッチングサービスを提供しています。

保険会社等からの代理店手数料等を主な収益源としています。当該事業は子会社のAIPコンサルタンツが運営していましたが、経営資源を金融商品仲介業に集中させるため、2026年3月末をもって保険募集の新規契約を終了し、撤退する方針です。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円から45.8億円規模へと拡大傾向にあります。経常利益は一時赤字を計上したものの、当期は1.1億円の黒字へと回復し、利益率も改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 38.1億円 30.0億円 37.3億円 38.0億円 45.8億円
経常利益 1.1億円 -1.2億円 0.1億円 - 1.1億円
利益率(%) 2.9% -4.0% 0.4% -0.1% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.6億円 -1.3億円 0.1億円 -0.1億円 0.9億円

(2) 損益計算書


売上高の堅調な増加に伴い売上総利益が拡大しています。販売費及び一般管理費の増加を吸収したことで、営業利益は黒字転換を果たし、収益性が改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 38.0億円 45.8億円
売上総利益 7.5億円 8.8億円
売上総利益率(%) 19.8% 19.3%
営業利益 - 1.1億円
営業利益率(%) -0.1% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.4億円(構成比31%)、地代家賃が1.5億円(同19%)を占めています。単体の売上原価では、IFAへの支払成果報酬が34.6億円(構成比99%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントであるため、サービス別の売上高推移を記載します。主力である金融商品仲介サービスの売上が牽引し、全体の増収に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
金融商品仲介サービス 36.1億円 43.2億円
その他金融サービス 1.8億円 2.7億円
連結(合計) 38.0億円 45.8億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF - 1.3億円
投資CF -0.1億円 -0.1億円
財務CF -0.1億円 -0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.0%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「日本のリテール金融改革を通じて社会に貢献します。」を経営理念に掲げています。また、「IFAビジネスに関わる全ての人々の幸せを目指します。」をビジョンに据え、所属するIFAがファイナンシャル・アドバイス業務に専念し、顧客と共に真の顧客重視を実現できる環境の提供を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、フィデューシャリー宣言(お客様本位の業務運営に関する方針)を掲げ、顧客の利益を最優先に考え行動する文化を重視しています。顧客との長期的な信頼関係の構築を最も重要だと考え、IFAに対して営業ノルマを課さない仕組みを採用し、真の意味での独立性・中立性を堅持しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、媒介する資産残高(AUM)、AUMに対する金融商品仲介売上比率、および所属IFA数を重視しており、これらの増大によって持続的な成長と企業価値の向上を図る方針です。

・2029年3月期連結売上高:68.7億円
・所属IFA数:239名
・2029年3月期連結経常利益:3.8億円

(4) 成長戦略と重点施策


「顧客の人生に伴走するIFA」から選ばれる金融商品仲介業者となるため、IFAが提供するサービスの質的向上と支援体制の強化を推進しています。AI技術の積極的な導入による定型業務の効率化や、他業種との業務提携等を通じたプラットフォームの付加価値向上を図っています。

・IFAの満足度向上と業務支援システムの拡充
・内部管理体制の強化
・資金調達方法の多様化による財務基盤の構築

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、従業員の能力向上が優れたサービスを提供するうえで極めて重要との認識に立ち、すべての従業員が能力を十分に発揮できる職場環境づくりと、自律的なキャリア形成を支援する教育機会の提供を方針としています。また、労働生産性の向上を目指し、社長を責任者とする「健康経営」を推進し、多様な働き方を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.3歳 5.9年 6,626,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 50.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 97.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 90.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント総合スコア(68.5)、平均残業時間(5.0時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動と金融市場の動向


主力事業である金融商品仲介業は、景気動向や株式相場等の金融市場の影響を受けやすく、市場環境が悪化した場合、投資意欲の減退や取引の縮小により収益が減少する可能性があります。同社は長期分散投資を推奨することで影響の軽減に努めています。

(2) 特定取引先への依存


同社は複数の証券会社と業務委託契約を締結していますが、直近では特定の証券会社2社で連結売上高の大部分を占めています。取引先の経営環境や事業方針、契約内容の変更などが生じた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制とコンプライアンス


同社は金融商品取引法等の各種法令の規制を受けており、違反が生じた場合には業務停止や登録取消などの行政処分を受けるリスクがあります。また、所属するIFAや役職員によるコンプライアンス違反が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償責任を負う可能性があります。

(4) 競合とIFA確保の動向


金融商品仲介業への参入障壁の低下に伴い、競合企業の参入が見込まれます。競合他社とのIFA獲得競争が過熱し、IFA数の伸び悩みや所属IFAの流出が生じた場合、手数料収入が減少し、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。