QLSホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

QLSホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

QLSホールディングスは東京証券取引所グロース市場および名古屋証券取引所ネクスト市場に上場し、保育事業、介護福祉事業、人材派遣事業を展開しています。認可保育所等の運営を主力に安定成長を続け、直近の業績では各事業が堅調に推移したことで売上高と経常利益がともに増加し、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社QLSホールディングスの有価証券報告書(第8期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. QLSホールディングスってどんな会社?


認可保育所や介護福祉施設の運営、および自動車整備士などの専門人材派遣事業を全国で展開しています。

(1) 会社概要


2005年にクオリスを設立し介護事業を開始、2012年に認可保育所を開設して保育事業に参入しました。2019年に株式移転により持株会社のQLSホールディングスを設立し、同年東京証券取引所TOKYO PRO Marketに上場、2024年には同グロース市場への上場を果たしました。

従業員数は連結で1,069名、単体で21名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長を務める雨田武史氏の資産管理会社であるGRITで、第2位株主は雨田武史氏個人、第3位は外国法人等となっています。

氏名 持株比率
GRIT 60.56%
雨田 武史 6.01%
RE FUND 107-CLIENT AC 1.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は雨田武史氏が務めており、社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
雨田 武史 代表取締役社長 2001年クリスタル入社。2004年クリスタル介護センター代表取締役。2006年クオリスに入社し、2007年代表取締役に就任。2019年より現職。
光田 佳生 専務取締役経営企画室長 1995年北斗工業入社。2003年クリスタル入社。2006年クオリス入社し統括部長に就任。2013年同社常務執行役員。2023年より現職。
大畑 清香 取締役事業本部長 2004年エンファコミュニケーションズ入社。2006年クオリス入社。2019年QLSホールディングス取締役管理部長に就任。2021年より現職。
豊田 尚孝 取締役CFO管理本部長 2008年ゴウダ入社。2015年有限責任監査法人トーマツ入所。2018年公認会計士登録。2020年QLSホールディングス入社。2021年より現職。
伊藤 栄治 取締役監査等委員 1987年イトウ電化センター入社。複数社を経て2014年ダウイン入社。2018年QLSホールディングス監査役に就任。2025年より現職。


社外取締役は、川畑大輔(元アスモ代表取締役社長)、赤木啓輔(公認会計士・税理士)、白﨑識隆(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「保育事業」、「介護福祉事業」、「人材派遣事業」および「その他」事業を展開しています。

保育事業


認可保育所、小規模認可保育所、学童保育などの保育施設を運営しています。「豊かな人間性をもった子どもを育成すること」を理念とし、児童福祉法などに基づいた行き届いた環境を提供して、子どもたちの育成に努めています。

主な収益源は、児童数や職員配置に応じて自治体から交付される委託費および補助金です。一部の施設では保護者から直接保育料を徴収します。事業の運営は主にクオリスおよびエルサーブが行っています。

介護福祉事業


訪問介護や居宅介護支援を提供する介護事業所や、障がい者グループホーム、放課後等デイサービス、就労支援などを運営しています。0歳から高齢者まで、利用者のライフステージに合わせた多様なサービスを提供しています。

主な収益源は、国や自治体が定めた利用者単価に利用回数を乗じた報酬(介護保険報酬や障害福祉サービス報酬)であり、国保連合会を通じて給付されます。また、利用者の所得に応じた自己負担分を利用料として徴収します。運営はクオリス、エルサーブ、和み、和みライフケアが行っています。

人材派遣事業


自動車ディーラー等を主な顧客とし、自動車整備士などの専門性を持つ人材派遣サービスを提供しています。自動車メーカーのリコール対応などの緊急時における人材派遣や、外国人労働者の派遣にも強みを持っています。

人材派遣契約に基づき、派遣スタッフの稼働時間に応じて派遣先企業から派遣料金を受け取る収益モデルです。自動車業界のほか、福祉関係の事業所やホテル業界への人材派遣も行っており、事業の運営はダウインが行っています。

その他


報告セグメントに含まれないその他の事業として、業務受託による携帯電話などの通信機器の販売等を行っています。

通信機器の販売等による収益を得るモデルです。本事業はダウインが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上高と経常利益はともに右肩上がりで成長を続けています。特に直近の2026年3月期は、保育施設や介護施設の新規開設やM&Aによる事業拡大が寄与し、大幅な増収増益を達成しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 56億円 69億円 84億円 105億円 120億円
経常利益 1.4億円 3.4億円 4.0億円 5.9億円 9.0億円
利益率(%) 2.5% 4.9% 4.8% 5.6% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.1億円 2.3億円 2.3億円 3.7億円 5.1億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益と営業利益も順調に拡大しています。事業規模の拡大により利益率も向上傾向にあり、収益性の改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 105億円 120億円
売上総利益 17億円 21億円
売上総利益率(%) 16.5% 17.2%
営業利益 6.1億円 8.8億円
営業利益率(%) 5.8% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.8億円(構成比23%)、租税公課が2.6億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて売上高が前期を上回りました。特に主力の保育事業は新規施設の開設が寄与して増収となり、介護福祉事業や人材派遣事業も需要の増加を取り込んで好調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
保育事業 59億円 67億円 12億円 13億円 19.8%
介護福祉事業 26億円 30億円 1.0億円 1.3億円 4.4%
人材派遣事業 16億円 19億円 1.7億円 2.4億円 12.2%
その他 3.7億円 3.8億円 0.3億円 0.5億円 13.7%
調整額 - - -8.5億円 -8.7億円 -%
連結(合計) 105億円 120億円 6.1億円 8.8億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金の範囲内で投資や借入金の返済を行う「健全型」となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 5.1億円 7.7億円
投資CF -2.1億円 -4.3億円
財務CF -0.8億円 -0.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Quality of Life 全ての人に質の高い生活を!!」を企業理念として掲げています。この理念のもと、「地域密着企業として地域社会に貢献する」「時代や顧客ニーズの変化に柔軟に対応したサービスを提供する」「関わる全てのステークホルダーに信頼される企業であり続ける」という3つの経営方針を定めて事業を推進しています。

(2) 企業文化


同社グループは、国籍や障がいの有無にかかわらず、同じ空間で生活・教育を行う「インクルーシブ保育」を実践し、子ども一人ひとりの違いを受け入れ互いに認め合う文化を大切にしています。また、保育、介護、人材派遣という3つの事業を持つことで、従業員が事業をまたいでキャリア形成できる柔軟な組織風土を構築し、多様な人材の定着を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長と企業価値の向上のため、収益力を高めるとともに経営の効率化を図ることを目標としています。グループの事業規模を示す売上高や、事業の通常収益を示す営業利益を重要な経営指標として管理しています。また事業の特性上、保育所の開設前費用や補助金が多額に発生することがあるため、経常利益も重要な指標として位置づけています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存サービスの安定的な成長に加え、多種多様なサービス形態の運営ノウハウを活かした新規施設の開設や、事業連携によるシナジーの創出を成長戦略としています。安全かつ高品質なサービス提供の維持向上、労働環境の整備による優秀な人材の確保と育成、そして利用者の多様なニーズに対応できるサービスの拡大を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「市場価値の高い専門人材の獲得」と「自律型リーダーの早期育成」を人材戦略の基本方針としています。サービスの品質向上と専門資格の取得支援や、次世代役職者向けの選抜型教育など、ビジネスモデルに直結した人材育成を行っています。また、フレックスタイム等の柔軟な働き方を導入し、ジョブローテーションやグループ内転籍制度を通じて自律的なキャリア構築を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。年齢や勤続年数にとらわれず、高い成果を上げた従業員や専門スキルを持つ人材に対し、市場価値に見合った競争力のある給与を提示する方針を掲げています。派遣事業等では業績連動型給与の比率を高め、成果評価を賞与に連動させる仕組みを導入しています。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 32.7歳 4.4年 3,563,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 46.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 46.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※当事業年度において、男性労働者の育児休業取得の実績はありません。パート・有期労働者はおりません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新たに保育所等の施設を開設する場合の経営成績に対する影響


同社グループは保育所の運営を主力としており、新規施設の開設時には経費が先行して発生するため、開設初期は営業損失となる傾向があります。また、新規開設に伴う費用や設備投資に対して自治体から補助金が交付されることがありますが、開設計画の遅れや計画の見直しが発生した場合、業績の見通しに影響を及ぼす可能性があります。

(2) 固定資産の減損に関するリスク


同社グループが運営する保育事業および介護福祉事業において、事業環境の変化等により業績が著しく悪化した場合、保育施設や介護施設の建物・設備等の投資回収が困難になる可能性があります。その結果、固定資産の減損処理が必要と判断された場合には、同社グループの財政状態および業績に大きな影響を与えるリスクがあります。

(3) 利用者の減少


保育事業および介護福祉事業は国内の居住者を対象としているため、人口動態の変化による影響を強く受けます。少子高齢化や女性就業率の上昇などを背景に市場拡大が見込まれているものの、想定以上に利用率が低下し、施設利用者が減少した場合には、同社グループの財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 国や自治体による方針や関連法規制等の改訂等


事業運営において、子ども・子育て支援新制度や介護保険法など、国や自治体の制度・方針に大きく依存しています。今後、法規制の改定や補助金の削減が行われたり、企業による認可保育所の開設が制限されたりした場合、事業の拡大が阻害され、同社グループの業績に重大な影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。