QLSホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

QLSホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース、名証ネクスト市場に上場し、保育事業、介護福祉事業、人材派遣事業を展開しています。直近の業績は、M&Aや新規開設等の効果により売上高105億円(前期比26.2%増)、当期利益1.2億円(同30.8%増)となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社QLSホールディングス の有価証券報告書(第7期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. QLSホールディングスってどんな会社?


保育所の運営を主軸に、介護福祉施設や人材派遣など、ライフステージを支える事業を多角的に展開する企業です。

(1) 会社概要


2005年に有限会社クオリスとして設立され、介護事業を開始しました。2019年に株式移転により持株会社体制へ移行し、同年TOKYO PRO Marketへ上場しました。その後、2023年に名古屋証券取引所ネクスト市場、2024年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。

同グループの従業員数は連結で933名、単体で18名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社であるGRITで、第2位は代表取締役社長の雨田武史氏、第3位は専務取締役の光田佳生氏となっており、経営陣が主要な株式を保有するオーナー系企業の特徴を持っています。

氏名 持株比率
GRIT 60.61%
雨田 武史 6.02%
光田 佳生 0.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は雨田武史氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
雨田 武史 代表取締役社長 クリスタルを経て、クオリス(現株式会社クオリス)に入社。同社執行役員、代表取締役を経て、2019年2月より現職。
光田 佳生 専務取締役経営企画室長 クリスタルを経て、クオリス(現株式会社クオリス)に入社。同社統括部長、常務執行役員、ダウイン取締役等を経て、2023年7月より現職。
大畑 清香 取締役事業本部長 エンファコミュニケーションズを経て、クオリス(現株式会社クオリス)に入社。同社取締役、当社管理部長を経て、2021年6月より現職。
豊田 尚孝 取締役CFO管理本部長 ゴウダ、有限責任監査法人トーマツを経て、公認会計士登録。当社執行役員経理部長を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、川畑大輔(元レカム取締役CFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「保育事業」「介護福祉事業」「人材派遣事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 保育事業

認可保育所、小規模認可保育所、企業主導型保育所、学童保育などを運営しています。「インクルーシブ保育」を掲げ、障がいの有無にかかわらず共に育つ環境を提供しているほか、英語教室やリトミックなどのプログラムも実施しています。

収益は主に自治体からの委託費や補助金、および利用者からの保育料です。運営は主に株式会社クオリスが行っており、株式会社エルサーブも一部施設を運営しています。

(2) 介護福祉事業

訪問介護、居宅介護支援、障がい者グループホーム(共同生活援助)、放課後等デイサービス、就労支援、有料老人ホームなどを運営しています。0歳から高齢者まで幅広い年齢層に対応したサービスを提供しています。

収益は国や自治体からの介護給付費や障害福祉サービス報酬、および利用者からの利用料です。運営は株式会社クオリス、株式会社エルサーブ、株式会社和み、株式会社和みライフケアが行っています。

(3) 人材派遣事業

自動車整備士を中心とした専門人材の派遣サービスを展開しています。特に自動車メーカーのリコール対応時などの緊急時派遣に強みを持ち、外国人労働者の採用・派遣にも注力しています。また、介護・保育・看護分野やホテル業界への派遣も行っています。

収益は派遣先企業からの人材派遣料です。運営は株式会社ダウインが行っています。

(4) その他

携帯電話等の通信機器の販売業務を受託しています。

収益は業務受託による販売手数料等です。運営は株式会社ダウインが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第3期の45億円から第7期の105億円へと、右肩上がりで成長を続けています。経常利益も第3期の0.6億円から第7期には5.9億円まで拡大しており、事業規模の拡大に伴い利益創出能力も向上していることがうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 45億円 56億円 69億円 84億円 105億円
経常利益 0.6億円 1.4億円 3.4億円 4.0億円 5.9億円
利益率(%) 1.3% 2.5% 4.9% 4.8% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.2億円 0.2億円 0.5億円 0.9億円 1.2億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は16%台で安定的に推移しており、事業規模が拡大しても収益性を維持できていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 84億円 105億円
売上総利益 13億円 17億円
売上総利益率(%) 16.1% 16.5%
営業利益 4.1億円 6.1億円
営業利益率(%) 4.9% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.4億円(構成比21%)、租税公課が2.4億円(同21%)、役員報酬が1.4億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


保育事業は学童保育の運営開始等により増収となりました。介護福祉事業はM&Aや事業譲受けにより売上が急拡大し、前年比で大幅な増収となっています。人材派遣事業も自動車整備士派遣の需要回復により増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
保育事業 52億円 59億円
介護福祉事業 15億円 26億円
人材派遣事業 13億円 16億円
その他 4億円 4億円
連結(合計) 84億円 105億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラスを維持し、借入金の返済を進めつつ投資も行う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5.1億円 5.1億円
投資CF -2.1億円 -2.1億円
財務CF -0.9億円 -0.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Quality of Life 全ての人に質の高い生活を‼」を企業理念として掲げています。保育や介護福祉、人材派遣といった事業を通じて、関わる全ての人々の生活の質を向上させることを目指しています。

(2) 企業文化


地域密着企業として社会に貢献すること、時代や顧客ニーズの変化に柔軟に対応したサービスを提供すること、そして全てのステークホルダーから信頼される企業であり続けることを経営方針としています。これらに基づき、地域社会との信頼関係構築やサービスの質の維持向上を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と企業価値向上のため、収益力の強化と経営効率化を目指しています。重要な経営指標としては、事業規模を示す「売上高」に加え、事業の通常収益を示す「営業利益」、および開設前費用や補助金の影響を考慮した「経常利益」を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存の保育事業の安定運営に加え、介護福祉事業や人材派遣事業の収益拡大を目指しています。具体的には、障がいの有無にかかわらず共に育つ「インクルーシブ保育」の実践や、多事業・多地域運営の強みを活かした採用コストの最大効率化、ドミナント戦略による地域密着展開などを推進し、事業間のシナジー効果を最大化する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多事業・多地域展開の強みを活かし、グループ全体での人材確保・定着と採用コストの効率化を図っています。具体的には、派遣スタッフからのキャリアアップや、保育から介護への転換など、グループ内での柔軟なキャリア形成を可能にしています。また、魅力ある職場環境の整備や研修の充実に努め、優秀な人材の育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.2歳 4.9年 3,399,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 53.2%
男女賃金差異(正規雇用) 53.2%
男女賃金差異(非正規) -


※男性育児休業取得率について:当事業年度において、男性労働者の育児休業取得の実績はありません。
※男女賃金差異(非正規)について:パート・有期労働者はおりません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新規開設時の収益変動リスク

新たに保育所等を開設する場合、開設初年度は高年齢クラスの定員が埋まりにくく、かつ採用コスト等の経費が先行するため営業損失となる傾向があります。また、開園前費用の発生や補助金収入のタイミングにより、経常損益やキャッシュ・フローが変動する可能性があります。

(2) 固定資産の減損リスク

保育事業や介護福祉事業において、事業の業績が悪化し、建物や設備等の投資回収が困難と判断された場合、減損処理が必要となり、財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 利用者の減少リスク

少子高齢化や待機児童数の減少などにより、保育所や介護施設の利用率が想定を下回った場合、業績に影響を与える可能性があります。特に保育事業においては、4月の進級に伴う一時的な児童数減少などの季節変動もあります。

(4) 人材確保のリスク

施設の増加に伴い、保育士や介護福祉士などの有資格者の確保が不可欠です。人材紹介会社の活用等を進めていますが、計画通りに人材を確保できない場合、施設運営や新規開設に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。