※本記事は、SANEI株式会社の有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. SANEIってどんな会社?
同社は、給水栓や給排水金具の製造・販売を専門に行う水栓金具メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1954年に三栄水栓製作所として創業し、水道用品の卸販売を開始しました。1960年に組織改編を行い自社製造の体制を構築して成長を遂げました。2018年に現在のSANEIに社名を変更し、2020年には東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)への上場を果たしています。
現在の従業員数は連結で827名、単体で630名体制となっています。大株主については、筆頭株主が代表取締役社長の西岡利明氏、第2位が代表取締役副社長の吉川正弘氏と役員層が上位を占めており、第3位には自社従業員の持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 西岡利明 | 28.31% |
| 吉川正弘 | 23.15% |
| SANEI従業員持株会 | 7.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は西岡利明氏が務めています。取締役8名のうち、社外取締役は2名であり、社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西岡利明 | 代表取締役社長 | 1982年入社。取締役、常務取締役、大連三栄水栓有限公司董事長などを経て、2004年より現職。 |
| 吉川正弘 | 代表取締役副社長 | 1985年入社。取締役、常務取締役などを経て、2004年より現職。 |
| 新田裕二 | 常務取締役執行役員コーポレート本部長購買本部長 | 1986年入社。営業本部副本部長、営業統括本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 早川徹 | 取締役執行役員ものづくり本部長 | 1996年早川バルブ製作所入社。同社社長等を経て2021年SANEI入社。2024年より現職。 |
| 丸川達也 | 取締役執行役員開発本部長 | 1985年ノーリツ入社。2022年SANEIに入社し、同年より現職。 |
| 松井優樹 | 取締役執行役員営業統括本部長B&D本部長 | 2004年入社。東京支店管工機材部部長、管工機材営業本部長などを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、瀧勝巳(タキカツミアンドプロデューサーズ設立)、永山祐子(永山祐子建築設計設立)です。
2. 事業内容
同社グループは、水栓金具事業の単一セグメントにて事業を展開しています。
■水栓金具事業
同社は、単水栓、湯水混合水栓、止水栓などの給水栓や給排水金具を専門に取り扱うメーカーとして製品を提供しています。プロダクトデザイナーとの協働による高付加価値な高級水栓から実用的な生活雑貨まで幅広く展開し、一般住宅だけでなくホテルや公共施設などの非住宅分野も主要な顧客としています。
事業の収益源は、製品の販売による対価です。管材店向けの管工機材ルート、量販店向けのリテールルート、住宅設備機器メーカー向けのメーカールート、海外ルートの4つの販路を通じて販売しています。事業の運営は親会社であるSANEIのほか、水生活製作所などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けており、230億円規模から290億円規模へと着実に拡大しています。経常利益と当期利益については、原材料価格の高騰などの影響を受けて増減を繰り返していますが、おおむね10億円以上の利益水準を確保し、一定の収益性を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 230億円 | 266億円 | 275億円 | 285億円 | 290億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 9億円 | 20億円 | 18億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 3.4% | 7.2% | 6.5% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 7億円 | 13億円 | 13億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比でわずかに増加していますが、売上原価の増加などにより売上総利益はほぼ横ばいとなっています。また、販売費及び一般管理費が増加した影響で、営業利益と営業利益率はいずれも前期を下回る結果となり、コストコントロールが課題となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 285億円 | 290億円 |
| 売上総利益 | 89億円 | 89億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.4% | 30.8% |
| 営業利益 | 19億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 6.6% | 6.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が22億円(構成比31%)、運賃及び荷造費が6億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは水栓金具事業の単一セグメントで事業を展開しており、高機能・高付加価値製品の販売拡大により増収を達成しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 水栓金具事業 | 285億円 | 290億円 |
| 連結(合計) | 285億円 | 290億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっています。営業で得た資金や借入によって積極投資を行っている積極型の局面と判定できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 0.5億円 |
| 投資CF | -14億円 | -11億円 |
| 財務CF | -4億円 | 7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「人類ある限り水は必要である」という社是を掲げています。人間の乾きを潤す水まわりを中心に生活の泉や憩の泉を創造し、社会に有益な存在となることを企業価値の向上と位置づけています。より快適で多様なライフスタイルに寄り添う水まわりの実現を追求しています。
■(2) 企業文化
使用する人の目線に立った製品の提供や、高い倫理観を持った企業活動の推進を重視しています。従業員一人ひとりの個性を尊重した安全で豊かな職場環境の実現や、社会との積極的なコミュニケーション、地球規模の環境配慮など、グループ全体で共有して経営を進める文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
株主価値の向上に向けて、グループ各社の収益性を高め、シナジーを最大限に発揮することを目指しています。中長期的な目標として適正な利益の確保と着実な成長の実現を掲げており、重要な経営指標として資本効率の改善に取り組んでいます。
・ROE(自己資本利益率)の向上
■(4) 成長戦略と重点施策
従来の「点の販売」から水道インフラ全体をカバーする「線の販売」、さらに住空間全体を提案する「水域=面の販売」への事業領域拡大を推進しています。また、住宅市場でのシェア拡大と並行して非住宅市場へのアプローチを強化し、自動化やバリアフリー化による生産体制の効率化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な企業成長のため、優秀な人材の確保と従業員一人ひとりの成長を重要視しています。役割や職責に応じた公平な評価・処遇制度の整備や、働き方の多様化を促進しています。また、変化に対応し変革を生み出す「自ら考え行動する人材」の育成を目指し、社内環境の整備と制度の確立に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.7歳 | 14.5年 | 5,618,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.6% |
| 男性育児休業取得率 | 37.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 56.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済・市場動向による影響
同社の製品需要は、新築やリフォーム市場などの住宅政策や金利動向に大きく影響を受けます。また、価格競争が激化する中で、競合他社に対する優位性が確保できない場合、収益が圧迫される可能性があります。これに対し、付加価値の高い製品の開発やコスト削減に取り組んでいます。
■(2) 原材料や物流費の高騰リスク
水栓金具の主材料である銅などの原材料価格の高騰や、円安進行に伴うエネルギーコストの上昇が収益に影響を及ぼす可能性があります。また、配送を伴うため物流費の増加リスクも存在しており、複数の調達先や物流委託先との取引関係強化、製品価格への転嫁によって対応を図っています。
■(3) 製品の欠陥に伴うリコールリスク
同社は国際標準規格に基づく品質管理を徹底していますが、万が一製品に欠陥が生じ、大規模なリコールに発展した場合は、ブランドへの信頼低下や多額の損害賠償費用が発生する恐れがあります。これを防ぐため、トレーサビリティシステムの導入による影響把握の迅速化など、品質管理体制を強化しています。



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