※本記事は、SANEI株式会社 の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. SANEIってどんな会社?
デザイン性の高い水栓金具を強みとし、住宅・非住宅向けに給水栓や配管部材等を製造・販売するメーカーです。
■(1) 会社概要
1954年に三栄水栓製作所を創業し、1960年に法人化しました。2018年に現在のSANEIへ社名変更しています。2020年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2022年には株式会社水生活製作所を連結子会社化しています。
連結従業員数は845名、単体では642名です。筆頭株主は代表取締役社長の西岡利明氏、第2位は代表取締役副社長の吉川正弘氏であり、創業家および経営陣が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 西岡 利明 | 28.40% |
| 吉川 正弘 | 23.15% |
| SANEI従業員持株会 | 6.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は西岡 利明氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西岡 利明 | 代表取締役社長 | 1982年12月同社入社。2003年大連三栄水栓有限公司董事長、2004年10月代表取締役社長に就任。2023年より(一社)日本バルブ工業会会長を兼任。 |
| 吉川 正弘 | 代表取締役副社長 | 1985年4月同社入社。1991年常務取締役を経て、2004年10月より現職。 |
| 新田 裕二 | 常務取締役執行役員コーポレート本部長購買本部長 | 1986年4月同社入社。営業本部本部長、営業統括本部長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 早川 徹 | 取締役執行役員ものづくり本部長 | 株式会社水生活製作所(旧早川バルブ製作所)代表取締役社長などを経て、2021年4月同社入社。2024年3月より現職。 |
| 丸川 達也 | 取締役執行役員開発本部長 | 株式会社ノーリツを経て、2022年5月同社入社。2022年6月より現職。 |
| 松井 優樹 | 取締役執行役員営業本部長 | 2004年4月同社入社。管工機材部長、営業副本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、瀧 勝巳(タキカツミアンドプロデューサーズ設立)、永山 祐子(永山祐子建築設計設立)です。
2. 事業内容
同社グループは、「水栓金具事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 水栓金具事業
単水栓、湯水混合水栓、シャワー等の給水栓類や、給排水金具、継手、配管部材等の製造・販売を行っています。住宅向け製品に加え、ホテルやオフィスビル等の非住宅向け製品、デザイン性の高い高級水栓シリーズ、ファインバブル技術を活用した製品などを提供しています。
主に管材店などの代理店、ホームセンターや家電量販店などのリテール事業者、住宅設備機器メーカー等へ製品を販売することで収益を得ています。運営は主にSANEIが行い、部品製造や鋳造工程等を大連三栄水栓有限公司や株式会社水生活製作所等の連結子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間で一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では2024年3月期に回復を見せたものの、直近の2025年3月期は減益となり、利益率は6.5%程度で推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 222億円 | 230億円 | 266億円 | 275億円 | 285億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 15億円 | 9億円 | 20億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 7.2% | 6.5% | 3.4% | 7.2% | 6.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 7億円 | 7億円 | 13億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高が増加し、売上総利益も増加しましたが、売上総利益率は31%台で安定しています。一方で、営業利益率は前期より低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 275億円 | 285億円 |
| 売上総利益 | 86億円 | 89億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.3% | 31.4% |
| 営業利益 | 20億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 7.2% | 6.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が21億円(構成比30%)、運賃及び荷造費が6億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は水栓金具事業の単一セグメントであるため、全社売上高がそのまま事業収益となります。直近では高機能・高付加価値製品の販売拡大等により増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 水栓金具事業 | 275億円 | 285億円 |
| 連結(合計) | 275億円 | 285億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、水栓金具事業を中心に、高付加価値製品の拡販や販売価格改定により、営業活動で多くの収入を得ています。一方で、設備投資への支出が大きかったため、手元資金は減少しました。また、借入金の返済や株主への配当金の支払いにより、財務活動でも支出がありました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 17億円 |
| 投資CF | -11億円 | -14億円 |
| 財務CF | 0.4億円 | -4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人類ある限り水は必要である」という社是のもと、人間の乾きを潤す水まわりを中心に生活の泉、憩の泉の創造を実現することで社会に貢献し、会社繁栄と全社員の幸福の源とすることを基本方針としています。また、グループ企業理念として「ALWAYS WITH JOY」を掲げています。
■(2) 企業文化
「Contribution(貢献)」「Creation(創造)」「Communication(意思の疎通)」の3つのCを重視しています。人と水をつなぐ企業として社会的責任を果たし、感性に響く質の高いモノづくりで感動を届け、人とのつながりを絆に変えて歓びの環を広げることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
株主価値の増大に向け、グループ各社の収益性を高めて着実な成長を図ることを中長期的な目標としています。具体的には、事業の収益力を示す売上高、経常利益率及びROEを重視する経営指標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
水栓金具単体の販売(点)から、水道インフラ全体(線)、さらには住空間全体(面)への提案へと事業領域の拡大を進めています。また、住宅市場だけでなくホテルやオフィス等の非住宅市場への販売強化、アジア諸国を中心とした海外展開、エレクトロニクス技術との融合による新製品開発に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員が能力を伸ばし発揮できる環境整備を重要な経営課題と位置づけています。2023年より公平かつ透明性の高い評価制度や働き方の多様化を目的とした新人事制度を導入し、変化に対応して変革を起こせる「自ら考え行動する人材」の育成を目指しています。また、中途採用も積極的に実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.5歳 | 14.5年 | 5,435,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.7% |
| 男性育児休業取得率 | 21.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 63.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 55.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向による影響
売上の大部分は国内の景気や需要動向に影響を受けます。法律・制度の規制緩和、住宅政策の転換、金利動向などにより新築・リフォーム需要が大きく変動した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の高騰
銅合金などを使用した水栓金具を製造しており、原材料価格の上昇時はコスト削減や販売価格への転嫁で吸収を図っています。しかし、予想以上の価格高騰が発生した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 競争の激化
業界における価格競争は熾烈なものとなっています。市場ニーズに合った製品を投入していますが、将来においても競争優位を維持できる保証はなく、激しい価格競争にさらされた場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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