交換できるくん 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

交換できるくん 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

交換できるくんは東京証券取引所グロース市場に上場し、住宅設備機器の交換工事を見積もりから注文までネットで完結するeコマース事業を展開しています。業績は堅調に推移しており、需要拡大やM&A効果により直近の決算では大幅な増収増益を達成しました。今後も交換士の育成などを通じて成長を見込んでいます。


※本記事は、株式会社交換できるくんの有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 交換できるくんってどんな会社?


インターネットを通じて住宅設備機器と交換工事をセットで販売するeコマース事業を展開しています。

(1) 会社概要


1998年11月に有限会社ケイシスとして設立され、2001年1月に住宅設備機器のWebサイトを開設しました。2018年にサービス名称を「交換できるくん」へ変更し、2020年12月に東京証券取引所マザーズ市場(現在はグロース市場)へ上場しました。直近では2025年11月にキッチンワークスを子会社化するなど、積極的なM&Aによる事業領域の拡大を進めています。

現在の従業員数は連結で277名、単体で79名です。筆頭株主は創業者である栗原将氏の資産管理会社であるCRESCUNTで、第2位も創業者の栗原将氏個人となっており、経営陣が上位株主を占めています。

氏名 持株比率
CRESCUNT 40.17%
栗原 将 15.47%
栗原 剛 4.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は栗原将氏が務めています。社外取締役の比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
栗原 将 代表取締役社長 1996年メガ入社。1998年ケイシス(現交換できるくん)を設立し代表取締役社長に就任。KOUKANDEKIRUKUN ASIA PTE. LTD.代表取締役等を経て現職。
佐藤 浩二 取締役副社長コーポレート本部長 1992年日本ユニシス入社。豆蔵ホールディングス代表取締役社長等を経て、2022年より取締役副社長。KDサービス代表取締役等を経て現職。
吉田 正弘 取締役アドバイザリーセールス本部長 1992年エヌ・シー・アイ入社。フォスターネット代表取締役等を経て、2022年KDサービス取締役、2023年同社代表取締役。同年より現職。


社外取締役は、吉野登(元モスフードサービス常務取締役経営戦略本部長)、鈴木謙吾(鈴木謙吾法律事務所代表)、野田優子(野田綜合会計事務所代表)、服部道子(パリオリンピックゴルフ競技日本代表女子コーチ)です。

2. 事業内容


同社グループは、「住設DX事業」および「ソリューション事業」を展開しています。

住設DX事業


キッチンやトイレなどの住宅設備機器について、Web媒体「交換できるくん」を通じて注文を受け、訪問による交換工事をワンストップで提供しています。一般消費者が主な顧客です。

顧客から商品代と工事費を含む料金を受け取る収益モデルです。ネットで見積もりから受注までを完結させ、現地調査を行わないことで営業工数を削減しています。運営は主に交換できるくんが行い、交換工事はKDサービスなどの子会社も担っています。

ソリューション事業


要件定義から運用保守まで一気通貫して、様々なITシステムの提供を行っています。

顧客に対してシステム開発や運用保守等のサービスを提供し、その対価として開発受託料などを得ています。アイピーエスなどの子会社が主体となって事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、M&AやWebマーケティングの強化によって需要を捉え、売上高が継続的に拡大しています。一方で利益面は、認知度向上のための広告宣伝費やシステム開発等の先行投資により一時的に利益率が低下する局面も見られますが、着実な黒字を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 48.1億円 60.4億円 75.7億円 102.9億円 126.0億円
経常利益 1.0億円 3.0億円 3.4億円 1.7億円 1.8億円
利益率(%) 2.1% 5.0% 4.4% 1.7% 1.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.7億円 1.9億円 2.3億円 0.9億円 0.9億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益および営業利益も前年を上回る実績を残しています。戦略的な広告投資や人員拡充を進めつつも、利益率を維持しながら事業規模の拡大を達成しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 102.9億円 126.0億円
売上総利益 23.7億円 28.3億円
売上総利益率(%) 23.0% 22.4%
営業利益 1.6億円 1.8億円
営業利益率(%) 1.6% 1.4%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が6.8億円(構成比26%)、給料及び手当が6.0億円(同23%)を占めています。売上高の成長を牽引するためのマーケティング投資と、事業拡大に伴う人的資本への投資が主なコストとなっています。

(3) セグメント収益


主力の住設DX事業は、Web集客の強化やM&Aによる事業領域の拡大により、売上が大幅に伸長しています。ソリューション事業もシステム開発の受注が堅調に推移し、増収に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
住設DX事業 92.1億円 112.7億円
ソリューション事業 10.8億円 13.3億円
連結(合計) 102.9億円 126.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは積極型です。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0.5億円 2.2億円
投資CF -5.3億円 -1.3億円
財務CF 3.3億円 6.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「『出会えて良かった!』のために」を経営理念とし、顧客には「心から頼んで良かった」と満足してもらい、従業員には「心から働いて良かった」と誇りを持てる会社を目指しています。嘘をつかず、がっかりさせないことを信条に、安心と納得のサービスの提供を第一としています。

(2) 企業文化


インターネット完結型のビジネスモデルを強みとし、「透明性のある料金体系を提示し安心施工を約束すること」を事業コンセプトとしています。商品紹介やユーザーレビューを蓄積して有益なコンテンツを提供し、顧客の不安を払拭する明朗な情報開示やきめ細かい対応を重視しています。

(3) 経営計画・目標


客観的な経営指標として、売上高および営業利益を重視し、継続的な収益力の向上と適正な利益確保に努めています。また、事業モデルを勘案した重要なKPI(重要業績評価指標)として、売上高を構成する工事件数と平均単価のうち、特に工事件数を重要な指標として設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後はSEO対策やコンテンツ拡充による低コスト集客の実現、効果的な広告宣伝を通じた知名度向上とユーザー層の拡大に注力します。また、システムの安定稼働に向けた継続投資や、M&Aなどを活用したBtoB領域への販路拡大を進め、事前訪問見積り不要の現調レスモデルの構築を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人への投資」を成長の原動力と位置づけ、技術と接遇を兼ね備えた「交換士」の自社育成と多能工化(マルチエンジニア化)を推進しています。生産性向上による成果は給与やインセンティブへ還元し、長期定着を図る方針です。また、M&Aに伴う組織統合でもDXノウハウを共有しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.5歳 5.2年 5,387,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


交換できるくんおよび連結子会社は、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) EC・リフォーム市場の競争激化


不動産や家具家電などの異業種からの参入があり、ECを主力販路とする競合が増加するなど、リフォーム市場において競争が激化した場合、同社の事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 検索エンジンへの集客依存


集客の多くを検索サイト経由の自然流入に依存しているため、検索エンジン運営者による表示ロジックの変更などで、これまで有効であったSEO対策が機能しなくなった場合、サイト流入が減少し業績に影響するリスクがあります。

(3) 物流拠点の集中リスク


商品の入荷から出荷に至るまでを主に横浜市の商品センターで行っています。自然災害や火災などで同センターが操業できなくなった場合、在庫の損失やサービスの遅延・停止が生じる可能性があります。

(4) 情報セキュリティとシステム障害


Webサイト管理や受発注等の業務の大半をシステムに依存しており、サイバー攻撃の高度化による情報漏洩や想定外のシステム障害が発生した場合、損害賠償や信用失墜等により事業運営に重大な支障をきたすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。